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風魔の小次郎 風魔血風録

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68部分:第七話 力と力その四


第七話 力と力その四

「ではここは」
「はい、黄金剣を出しましょう」
 陽炎は告げた。
「我等が謙信公より賜ったあの剣を」
「わかりました。それではあれを出します」
「はっ」
「攻介」
 陽炎に答えたうえでまた壬生に声をかけてきた。
「黄金剣は貴方に任せます」
「有り難うございます」
「夜叉の宝。それを夜叉随一の剣の使い手である貴方に」
「わかりました。ではその黄金剣で以って」
「風魔の面々を倒しなさい。宜しいですね」
「御意」
 壬生は普段よりもさらに深々と頭を下げ応えるのだった。それだkを見ても彼がどれだけ今喜んでいるのかわかる。
「これでこちらの態勢は整いました。ただ」
「ただ?」
「今回の柔道大会に黄金剣が間に合わないのは残念ですね」
 夜叉姫は顔を曇らせてこう述べるのだった。
「折角だというのに」
「いえ、それでも姫様」
 武蔵が夜叉姫に述べてきた。
「何ですか?」
「今回は向こうは劉鵬が出るとのこと。面白い勝負になりそうです」
「力と力ですか」
「はい」
 こう夜叉姫に述べるのだった。
「その通りです。如何でしょうか」
「確かに。面白そうですね」
 夜叉姫もそれを聞いて表情を綻ばせた。とはいっても凄みのある笑みだったが。整っているだけにその笑みはまさに夜叉の笑みに見えた。
「今度の勝負は」
「じっくりと見届けましょう。二人の闘いを」
「小細工なしでですね」
「黒獅子は元々小細工を好まない男」 
 夜叉にしては珍しい男だと言えた。
「だからこそここは」
「そうですね。ではこれで」
「はい」
 話を終えるのだった。夜叉の者達は闇の中に散る。この頃劉鵬は姫子に付き添われて柔道部員達の前にいた。
「はじめまして」
「劉鵬君です」
 横には姫子がいる。彼等は今白凰の柔道場にいる。木の壁には筆で題字が書かれており緑と赤の畳が敷かれている。そこに柔道着姿の劉鵬がいた。
「昨日転校してきたんですよ」
 姫子は拍手と共にこう部員達に説明する。しかし部員達は醒めた顔だった。
「そうなんですか」
「そうなんですよ」
「はあ」
 だが彼等は劉鵬を見ても感動も何もない。無気力なのがすぐにわかる様子だった。
「それでも今更」
「そうだよな」
「けれどこれで試合ができますよ」
 姫子はそんな部員達に対して言う。
「劉鵬君凄い必殺技もありますし」
「あっ、ないです」
「そうですか」
 その劉鵬から突込みが入った。
「強さも」
「白帯じゃないですか」
 ピンクのジャージで眼鏡の女の子が半泣きの顔で言う。マネージャーだ。彼女も他の部員達も畳の上に座って困り果てた顔をしている。
「白帯の人がどうやって」
「あれっ」
 姫子はその言葉に気付いて劉鵬の帯を見る。確かに白帯だ。
「そういえば」
「はじめてですから、柔道は」
「そうですか。はあ」
「あの、総長」
 部員の一人が姫子に言ってきた。
 
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