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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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  ep.044 第3翼 未だ答えなし

飛鳥の灼熱に当てられた修冴はボロボロな状態で立ち上がり、愚痴をこぼすように話す。

「ははっこれが....不死鳥の能力.....良いぜ。 手にする価値は十分にあると見た。」

修冴は再び蒼い翼を展開させ、炎を身に纏う。
すると蒼くグラグラと揺らぐ球体を作り出し、その球体が修冴の手の中で膨張と圧縮を繰り返す。
飛鳥はそれを見て修冴が何をしようとしているのかを瞬時に把握した。

『まさか....コイツ...。』

修冴の体から白煙が立ち始め、顔が歪む。
目には見えない負荷が修冴を襲っていた。

『これが負荷か。 体がグラグラ揺れてすぐにでも人間の形を崩しそうだ。』

修冴が実行しようとしているのは不死鳥の能力のシステムに逆らうこと。
太陽の3部(サード・ソレイユ)を放とうとしていた。

「馬鹿が...自滅するつもりか!?」

飛鳥の言葉は修冴には聞こえていない。
修冴が作り出す蒼い球体はやがて修冴を隠すくらいに大きくなり始める。

『コイツは俺を倒すためには負荷すら承知で攻撃を仕掛けてくる。 それがコイツの覚悟か。』

飛鳥の中で何かのリミッターが切れた。
突然体からこれまでとは比にならないくらいの炎が立ち込め、飛鳥の体から白煙が立ち始める。

「一緒に見ようぜ...到達点(最後の技)を。」

実は飛鳥は自身の内側に存在する不死鳥より最後の技の正体を聞いていた。
不死鳥の能力は名ばかりの不死鳥であり、本来の力のみで見れば不死鳥以上になる。
故に能力にルールが存在し、ルールを破れば不死鳥のカバーで本来の力を防ぎきれないのだ。

◆◆◆◆◆◆

数ヶ月前

飛鳥は不意に精神世界、いわゆる自身の内面の部分へ引き込まれる。

不死鳥の能力は扱いとしては憑依と合成という表し方が正しく、不死鳥にも意識が存在しており、精神世界にてテレパシーでの会話を可能としている。

『契約者よ...運命の時計の針は相も変わらず進んでいるようだ。 故に話すべきことがある。』

『俺も何となく察しは付いている。』

『ならば答えを教えよう。』

不死鳥の解答は飛鳥の予想と同じだった。
4部とされる最後の技。
その正体についてだ。
飛鳥はここに辿り着く前に不死鳥の能力に2つの疑問を持っていた。

・なぜ自身の持てる能力に反動があるのか?

飛鳥が持つのは『不死鳥』の能力だ。
ならば不死鳥を宿す自分がどこまでも能力を使いこなせるのはある意味常識と言っても過言ではないだろう。
だが真実は"その概念"が適応されず使う上でのルールが存在している。

・なぜ段階を踏む能力なのか?

わざわざルールを設けてまで能力を段階的に強化していくスタイルはいくつかの場合がある。

・不死鳥の力を不死鳥自身が制御できない場合

・不死鳥ではない能力を使っている場合

飛鳥の考えは後者だ。
それは技の名前も影響していた。
最後の技は"4部"にも関わらず、技の段階的には2部で不死鳥が出ている。
意識すれば誰もが考え得る疑問だ。

(ぬし)たち契約者は、この能力の最大の力は"治癒能力"だと捉えているだろうがそれは否....断じて否。』

飛鳥は不死鳥の解答を微動だにせず聞く。

『3つの我らは(しゅ)の1つの力を分散したに過ぎず...不死火鳥(われ)は"矛"、理論不死(1翼)は"盾"、命廻天翔(1翼)は"鎧"の役目を成していた。』

飛鳥はその答えでなぜ同様の能力にここまでの差が存在しているのかを理解した。
同じ能力でもその役目に差があったのだ。

『ではお前が言う(しゅ)とは何だ?』

飛鳥が不死鳥に問いただす。
すべてはこの質問の答えにある。

天照大御神(アマテラスオオミカミ)。 主の放つ黒炎こそ、我らが到達点。』

その答えとともに飛鳥は精神世界より放たれた。

◆◆◆◆◆◆

黒炎の4部(アマテラスオオミカミ)。」

何層にも重なった濃い暗黒がむしろ光り輝くように黒光りしているようにさえ見える禍々しい黒炎。
飛鳥が展開していた翼は黒炎に変化し、飛鳥にまとわりつくように展開する。

ちょうどそのタイミングで修冴も技の装填が終わる。

「吹き飛べ桐崎!! 太陽の3部(サード・ソレイユ)!!」

修冴が放った球体は大爆発を起こすように見られたが、それは唐突に跡形もなく消滅する。
次の瞬間、身も凍るようなおぞましい黒炎が修冴を巻き込み荒々しく燃え盛る。

「馬鹿な...こんな...はずではなかっ....たぁのぉにぃ..。」

ドロドロの液体が溶けきっていくように修冴は消え去っていった。

ようやく黒炎が消滅した時には、修冴は骨すらも残ってはいなかったが不死鳥の能力上、自身の持つ寿命に到達するまでは死ぬことはない。

「はぁ.....はぁ...勝った....のか?」

飛鳥は命廻天翔による治癒能力により自滅を防ぐことに成功していた。
不意に糸が切れる如く飛鳥の意識が肉体の外部から内部へと引き込まれた。
そう不死鳥との共鳴だ。

◆◆◆◆◆◆

『契約者よ...最後の審判の(とき)だ。』

飛鳥の背後には赤と黄色の不死鳥が並び、飛鳥の前には青の不死鳥が構えている。

『お前は俺の(もと)に移るのか?』

飛鳥が問う。
そして不死鳥はその問いに1つの解答を出した。

『私は修冴(かれ)の体に残ります。 そちらには同じく主に使えた2翼が居るのです。 私は彼を新しい主だと考えております。 なので私は新たな主に尽くします。』

実に素直で忠誠心を感じさせる解答だった。
そして飛鳥もそれを受け入れることにした。

『3羽の不死鳥は集結すれども1つになることはない"未だ到達せず"ってことか.....。』

飛鳥は精神世界より放たれた。

◆◆◆◆◆◆

息を吹き返したように起き上がった飛鳥は部屋の奥に更に道が続いていることを知る。

「そう簡単に休ませてはくれない.....か。」

飛鳥は歩き出す。
次に迫り来る敵が何かは分からないが、どんな能力であろうともねじ伏せるのみだと考えた。

『俺は俺で"答え"を探さないとな。』

肉体が完全に再生された修冴はそのままこの2つの組織の戦闘が終わるまで目覚めることはなかった。
 
 

 
後書き
今回はここまでです。
しっくり来ないと思った読者さんもいたかも知れませんが僕としてはこの結末を思い描いてました。

次回は再び操作&鈴菜の2人です。
ただ個人的な意見としては次回の戦闘は"過去の出来事"と関連した戦闘になります。

またごちゃごちゃする気はしなくはないですが頑張りたいと思います。
次回もお楽しみに。 
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