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風魔の小次郎 風魔血風録

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62部分:第六話 霧の中でその九


第六話 霧の中でその九

「今度会った時が貴様の最期だ。いいな」
「その言葉そっくり御前に返してやるがな」
「次はこうはいかんぞ・・・・・・!」
 こう言い残して落雷と共に姿を消した。後には闇鬼だけが残っている。
「さて、御前達の相手は私だ」
「二対一だ。それでもいいのだな」
「構わん。我が心眼陣は無敵だ」
 霧風に対して平然としたまま答える。
「例え貴様等だろうとな」
「そうか。じゃあ遠慮はいらないな」
 兜丸が前に出て来た。
「風魔蒼雷衝、貴様も受けろ」
「待て、兜丸」
 しかし霧風が彼を止めた。
「どうした?」
「ここは私に任せろ」
 こう彼に言うのだった。
「一対一か」
「そうだ。御前はもう雷電を退けた」
 そのことを彼に言う。
「ならば今度は私の番だ。いいな」
「わかった。じゃあ御前に任せるぞ」
「うむ」
 兜丸の言葉に対して頷いてみせる。
「では貴様に任せる。これでな」
「先に帰っていてくれ」
「吉報を待っているからな」
 兜丸は蒼い落雷の中に消えた。こうして二人の対峙となった。
 霧風はもう霧を出してはいない。そのままで闇鬼と対峙していた。強い目で彼を見据えている。
「どうやら貴様には普通の霧は通用しないな」
「霧は目を晦ませるもの」
 闇鬼は言う。
「その目が見えない私に通用するわけがなかろう」
「そうだな。しかしだ」
「しかし?」
「一つ言っておく」
 彼は言うのだった。
「霧は全てを隠すのだ」
「全てか。だが私は」
「わかるというのか。面白い」
 しかしそれを聞いても霧風は言う。
「ならば私を。見つけ出してみろ」
「面白い。それでは」
 闇鬼は霧の中で動かない。霧風の気配を探り続けている。その中で。彼はその気配を感じ取ったのだった。
「そこ!」
 棒を取り出しそれを投げる。しかし棒は無駄に地面に突き刺さっただけだった。
「かわしたか。いや」
 違う、闇鬼はそれを察した。
「いなかったか。気配は」
「さあ、私は何処にいるのだ」
 また霧風の声がする。
「私は。何処だ」
「貴様の気配は一つ」
 それは感じている。
「匂いも気配もまた」
「そうか。それではだ」
 ここで霧風はある行動に出た。
「これならどうだ」
「むっ!?」
 鈴の音が鳴りはじめた。ちりーーーーーーーん、ちりーーーーーーんと複数の鈴の音が場に鳴る。それにより音が消えてしまったのだった。
「これで音はわからなくなったな」
「残念だが音を消したところで・・・・・・・んっ!?」 
 霧風の声が聞こえなくなった。気配もまた消してきたのだった。
「気配が消えた。見事だ」
 その気配の消し方を褒めてみせる。
「私ですら気配が読めぬ。霧は気配をも消すというわけか」
 しかしそれでも彼は笑っていた。口元には相変わらず余裕の笑みがある。
「感じられない。しかし匂いは」
 彼にはまだそれがあった。鼻があったのだ。
「匂うぞ。そう、間も無く」
 近付いてきているのがわかっていた。それに合わせて場所も変える。だがそれもまた封じられてしまったのだった。霧風の今度の行動で。
 
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