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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第16話

~モルテニア・ブリーフィングルーム~



「バリアハート制圧作戦、パンダグリュエル制圧作戦ではそれぞれアルバレア公、”総参謀”ルーファス・アルバレアと大手柄首となる者達を自らの手で討ち取り、更にはバリアハート制圧作戦では”想定外の相手”である”有角の若獅子達”とその協力者達をよくぞ撃退した。」

「……身に余るお言葉、恐悦至極に存じます。ですが、それらは全て俺だけの力で成し遂げた訳ではなく、エリゼやセレーネ、ステラ、そしてベルフェゴール達――――多くの仲間達の支えによるものです。」

リウイの賛辞に対してリィンは謙遜した様子で答えた。

「確かに仲間達の支えもあるだろうが、今までの活躍はお前自身の努力の賜物でもあるのだからもっと自分に自信を持つといい。」

「……御意。」

「さて……エリゼとセレーネが自分達の望みをお前に譲った事でお前が望める褒美は3個となったが……何を望む?」

「………………俺が望む褒美の一つは………――――戦争状態に陥ってしまったメンフィル帝国とエレボニア帝国の和解です。」

リウイの問いかけに対して少しの間考え込んでいたリィンは決意の表情でリウイを見つめて自身の望みの一つを答えた。

「フム………従軍義務が免除されているにも関わらず今回の戦争にお主が従軍した理由をエリゼやシグルーンから聞いていたが………我が国とエレボニアの和解を望む理由やはり、両親の為か?」

リィンの望みを聞いたリフィアは静かな表情でリィンに問いかけた。

「―――はい。幼い頃よりメンフィル帝国に留学していた俺とエリゼは元祖国であるエレボニアに対してそれ程思い入れはありませんが、俺が父さんに拾われるまで……―――いえ、俺やエリゼが生まれるまでエレボニアの貴族であった父さんと母さんはエレボニアに思い入れがあり、特にエレボニア皇族である”アルノール家”の方々に対しては今でも自分達にとって大切に思っています。」

「……実際藁にも縋る思いで他国の貴族になった自分達を頼って貴族連合軍の目を盗んでユミルに避難してきたアルフィン皇女を匿った件もありますものね。」

「―――最も、その恩は仇で返される形になってしまい、我が国とエレボニアは戦争状態に陥ってしまったと言っても過言ではありませんが。」

「ファ、ファーミシルス様。」

リィンの説明を聞いたイリーナは静かな表情で答え、イリーナに続くように呆れた表情でアルフィン皇女に対する皮肉を口にしたファーミシルスの答えを聞いたペテレーネは冷や汗をかいた。



「和解の為にはメンフィルが要求する和解条件が書かれてある契約書に”エレボニアの代表者”の資格を持つ者が調印をしなければならない問題があると思うのだが………」

「あら、それなら”パンダグリュエル制圧作戦”で都合良く捕縛したアルフィン皇女に調印させればいいじゃない♪」

「……アルフィン皇女は”帝位継承権”を持つエレボニア皇族ですから、”エレボニアの代表者”であるユーゲント皇帝の代理人としての資格はありますね。」

レーヴェの疑問に対してレンは小悪魔な笑みを浮かべて答え、エクリアは静かな表情で答えた。

「ただ仮にアルフィン皇女に和解条件の契約書に調印させるにしても、メンフィルでもなく、エレボニアでもない中立地帯で国際的な立場がある中立勢力の人物が立ち会った状態で調印してもらわないと、七耀教会のような他勢力や他国―――特にエレボニアと友好を結び、メンフィルと同盟を結んでいるリベール王国が口出ししてくる可能性が考えられますが……」

「ならば、場所をリベールに用意させてアリシア女王かクローディア姫、後は七耀教会の代表者を立ち合わせれば問題はないだろう。元々アリシア女王達はメンフィルとエレボニアの戦争をできれば止めたいと思っておったから、事情を話せば調印の場の提供や立ち会いに応じてくれるだろうしな。」

「後は遊撃士協会の代表者も立ち合わせた方がいいわよ♪ユミル襲撃の件は僅かだけど間接的に遊撃士も関わっていたんだから、遊撃士協会はメンフィルのエレボニアに対する要求に対してあまり文句は言えない立場でしょうし♪」

真剣な表情で考え込みながら呟いたシグルーンの疑問に対してリフィアが答え、リフィアに続くように小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「”神速”の件に続いてまた随分と悪辣な事を思いつきましたね、レンさん………」

「もう……確かに政治は時には腹黒い事をする事も必要だけど、あまりやりすぎたら貴女の謀略によって酷い目にあわせられた人達が貴女への”報復”をする為にメンフィル帝国全体を巻き込もうとする事もあるのだから、できればそう言った手段はとらない方がいいのよ?」

ツーヤと共に疲れた表情になったプリネは気を取り直して真剣な表情になってレンに指摘し

「うふふ、確かにプリネお姉様の言う通りね。ちょうど”鉄血宰相”がその見本ね♪」

自分の指摘に対して小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたその場にいる全員は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「洒落になっていないわよ、レン……」

「………”鉄血宰相”の事は置いておいて、実際レン皇女殿下の仰る通り遊撃士協会も調印の場に参加させた方がよいかと。調印の場に立ち会う中立勢力は大いに越した事はありませんし。」

ペテレーネは呆れた表情でレンに指摘し、ゼルギウスはレンの提案に賛成するかのような意見を口にした。

「………そうだな。―――リィン。お前の望み通り、メンフィルがエレボニアと和解する事を叶えてやっても構わないが……先程の俺達の会話を聞いていたのならばわかると思うが、和解の為にはエレボニアは自国の広大な領土を始めとした様々な”代償”をメンフィルに差し出さなければならない。そしてその結果エレボニアは衰退してしまうだろう。それでも構わないのか?」

ゼルギウスの意見に同意したリウイはリィンに確認した。

「―――はい。今回の戦争の原因はエレボニア帝国。代償も無しにエレボニア帝国の内戦に巻き込まれた他国―――メンフィル帝国の”怒り”を鎮める事ができるなんて、常識で考えれば不可能である事は俺が戦争に参加した時から理解しています。それに確かに陛下の仰る通りエレボニアは我が国が要求する様々な”代償”によって、衰退してしまうでしょうが……それでも独立した国家として保つ事ができます。かつて”特務支援課”に出向し、領有権の争いに巻き込まれていたクロスベルをその目にし、ロイド達からも俺が来る前のクロスベルの状況を教えて貰った俺からすれば、戦争に敗北しても独立した勢力でいられる事ができれば十分だと思っています。」

「お兄様………」

「フッ、だがリィンの言う事も一理あるな。」

「うふふ、リィンお兄さんが来る前―――いえ、ヴァイスお兄さん達がクロスベル警察、警備隊の上層部になる前のクロスベルはもっと酷かったものねぇ?」

(”クロスベル問題”、ですね……)

リィンの答えを聞き、リィン同様クロスベルの現状をその目にし、かつての仲間達からも昔のクロスベルの状況を教えてもらった事がある為リィンの気持ちも理解していたセレーネは複雑そうな表情をし、静かな笑みを浮かべるレーヴェの言葉に続くようにレンは小悪魔な笑みを浮かべて呟き、ステラは静かな表情である事を思い出していた。



「………いいだろう。お前の望み通り、これよりメンフィルはエレボニアとの和解に向けて本格的な行動をする事を前メンフィル皇帝にして現メンフィル大使、リウイ・マーシルンの名においてこの場で確約する。」

「あ、ありがとうございます……!」

「―――ただし、既に兵達にも知らせてある作戦―――12月8日の”オルディス制圧作戦”については中止する事はできない。そこは了承してもらうぞ。」

「ハッ!メンフィル帝国の御慈悲に心から感謝致します!」

リウイの確認の言葉に対してリィンは会釈をして答えた。

「うふふ、それでリィンお兄さん。残り二つの望みはどんな内容なのかしら?」

するとその時レンが興味ありげな表情でリィンに問いかけた。

「それは………………」

レンの問いかけに対してリィンは答えを濁しながら考え込んでいたがふとある人物―――”蒼の深淵”の指示によって母を誘拐しようとしたが、失敗し、メンフィル帝国に囚われたアルティナ・オライオンの事を思い出した。

「二つ目の望みは現在メンフィル帝国が拘束している貴族連合軍もしくは結社に所属していると思われる人物―――アルティナという名の少女の身柄を俺―――いえ、シュバルツァー家に渡して頂き、彼女の今後についてはシュバルツァー家に一任して頂く事です。」

「え…………」

「アルティナさんと言うと確かルシアおばさまを誘拐しようとしていた………」

リィンの口から出た二つ目の望みの内容を知ったエリゼは呆け、セレーネは目を丸くした。



「アルティナ………確かその方はユミルでルシア夫人の誘拐をしようとし、セオビット様達に阻まれて失敗し、囚われた方でしたよね……?」

「………ああ。何故奴の身柄を引き受けようと思ったのだ?奴はお前の母を誘拐しようとしていた張本人だぞ。」

一方かつての出来事を思い出していたペテレーネの確認の言葉に頷いたリウイは眉を顰めてリィンに問いかけた。

「確かに彼女は母さんを誘拐しようとしましたが、陛下達のお陰で”未遂”で済みました。それに彼女の幼い見た目には見えない言動から予測すると、恐らく彼女は幼い頃から彼女が所属していた組織によって”組織の駒”になるように育てられたせいで、犯罪を躊躇いなくできるような子供になったのだと思っています。」

「………まあ、その可能性も十分にありえるだろうな。」

「……そうね………」

リィンの説明を聞いたレーヴェとプリネは幼い頃結社の”蛇の使徒”の暗示によって”執行者”に仕立て上げられた人物――――ヨシュアを思い浮かべて重々しい様子を纏った。

「ちなみに彼女―――アルティナはあの後陛下達によって本国に連行されましたが、彼女は何者なのかわかったのでしょうか?」

「……ファーミシルス、教えてやれ。」

「ハッ。………”黒兎(ブラックラビット)”アルティナ・オライオン。結社”身喰らう蛇”に所属している工房―――”十三工房”の一角である”黒の工房”によって造られた人造人間(ホムンクルス)よ。」

リィンの質問を聞いたリウイに促されたファーミシルスはリィンにアルティナの情報を教えた。



人造人間(ホムンクルス)………?」

「……人造人間(ホムンクルス)とは錬金術等によって生まれた人―――”造られた人”です。」

初めて聞く言葉に首を傾げているリィンにペテレーネが説明した。

「なっ!?」

「と言う事はアルティナさんに両親は………」

「ええ……”最初から存在していない”でしょうね。」

ペテレーネの説明にリィンが驚いている中ある事を察したセレーネは辛そうな表情で言葉を濁し、複雑そうな表情をしているエリゼがセレーネの代わりに答えた。

「奴が人造人間(ホムンクルス)である事を考えるとお前の言う通り、奴を造った組織に裏工作や破壊工作を行うエージェントとして教育されていた可能性は非常に高いだろう。………奴の出自を知ってもなお、奴を引き取りたいと思えるのか?」

「―――はい。彼女が何者かは俺にとっては些細な事です。それにそう言う特殊な出自の人物は既に俺の傍にいて、その人も俺達と同じ”人”である事がよくわかっていますので……」

(ふふふ、ご主人様の傍にいる”特殊な出自の人物”ですか。)

(一体誰の事かしらね♪)

(ア、アハハ……間違いなく合成魔物(キメラ)である私の事でしょうね。)

(と言うか、広い意味で考えたらメサイアに限らず私達もその”特殊な出自の人物”になるのだけどね……)

リウイの問いかけに対して答えたリィンの答えを聞いたリザイラとベルフェゴールはからかいの表情でメサイアに念話し、メサイアとアイドスはそれぞれ苦笑していた。

「うふふ、確かに合成魔物(キメラ)のメサイアお姉さんを受け入れているのだから、人造人間(ホムンクルス)なんて”今更”よね♪」

そして小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの指摘を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「レン、その言い方はメサイアさんに失礼にあたるから止めなさい。」

「はーい。」

我に返ったプリネはレンに注意し

「……リィンさん。彼女を引き取りたいと思ったのは、もしかして幼いながらも既に裏組織の使い手として育て上げられた彼女を”憐れ”と感じたからですか?」

「確かに彼女を”憐れ”と思った事は無いとはいえませんが、彼女を引き取りたいと思った一番の理由はカシウス准将の教えによるものです。」

「え……どうしてそこにカシウスさんの名前が出るのですか?」

イリーナの問いかけに対して答えたリィンの答えを聞いたツーヤは戸惑いの表情でリィンに訊ねた。

「……かつて陛下達がカシウス准将に俺を鍛えてもらうように依頼して頂き、カシウス准将が俺を鍛えていた時にカシウス准将から剣以外で”絆”について教えて貰いました。『人は様々なものに影響を受けながら生きていく存在だ。逆に生きているだけで様々なものに影響を与えていく。それこそが『縁』であり―――『縁』は深まれば『絆』となる。そして、一度結ばれた『絆』は決して途切れることがないものだ。遠く離れようと、立場を(たが)えようと何らかの形で存在し続ける……』、と。だから彼女―――アルティナ・オライオンの件も俺の”縁”と思い、彼女を引き取ろうと思ったのです。」

「兄様………」

「フッ、まさかここでもエステル・ブライトや”剣聖”の意志が働くとはな。」

「フフ、さすがセリカ様をも救ったエステルさんの御父上……と言った所でしょうか。」

「うむ、何せ余が認めた友の父じゃから、当然じゃな!」

「ふふっ、”剣聖”カシウス・ブライト………話に聞いていた以上の人格者のようですわね。」

「ああ……機会があれば私達も一度会って、話をしてみたいな。」

リィンの話を聞いたエリゼが驚いている中レーヴェは静かな笑みを浮かべ、エクリアは微笑み、リフィアは自慢げに胸を張り、微笑んでいるシグルーンの言葉にゼルギウスは静かな笑みを浮かべて頷いた。



「……お前がアルティナ・オライオンを引き取りたい理由は理解した。だがアルティナ・オライオンは裏組織―――”黒の工房”に所属しているエージェント。奴は下手をすればお前達が奴にかけた慈悲を裏切り、再び”蒼の深淵”の指示によってルシア夫人やエリゼを攫おうとする危険性がある事は理解しているな?」

「―――はい。勿論そうならないように最大限に気を付けるつもりですし、ベルフェゴール達にも協力してもらう所存です。」

「うふふ、ベルフェゴールお姉さん達にも協力してもらうのだから、そのアルティナって娘はリィンお兄さん達を絶対に裏切れないでしょうね♪」

「た、確かに………」

「フフ、魔神に精霊王女、古神の目を欺いて寝首を掻く者等双界を探してもいないでしょうね。」

リウイの念押しに頷いたリィンの話を聞いたレンはからかいの表情で答え、レンの答えを聞いたツーヤは苦笑し、ファーミシルスは静かな笑みを浮かべた。

「わかった。望み通りアルティナ・オライオンの身柄をお前達に委任するように手配をしておく。それと奴が操っていた人形―――”クラウ=ソラス”だったか。その人形の残骸も残してはいるが、元通りに直しておいてやるのか?」

「……その件については俺では判断する事が厳しいので、恐れ多いですが陛下達の判断に委ねます。」

「―――いいだろう。最後の望みはなんだ?」

そしてリィンの言葉に頷いたリウイはリィンの最後の望みを問いかけた。




「最後の望みは…………」

リウイの問いかけに対してすぐに答えが出なかったリィンは少しの間考え込んでいると、ふと”パンダグリュエル制圧作戦”で捕縛したアルフィン皇女の事を思い出し、答えを口にした。

「最後の望みは………――――この戦争で責任を負わなければならない立場であるアルフィン皇女殿下に対するメンフィル帝国が求める処罰を可能な限り厳しい内容にしないようにして頂く事です。」

「?”パンダグリュエル制圧作戦”でアルフィン皇女を捕縛した時にレンがアルフィン皇女の処遇について口にしたのだけど、どうしてそんな望みにしたのかしら?」

リィンが口にした意外な答えに首を傾げたレンはリィンに問いかけた。

「あの時殿下が口にした件は捕縛したアルフィン皇女の戦争が終わるまでの間の処遇だと思っていたのですが………もしかして、俺の思い違いなのでしょうか?」

「あら、レンとした事が余計な事を口にしちゃったわね♪そう言う訳だから、これ以上は教えてあげられないわ♪」

質問に対して質問で返したリィンの問いかけに目を丸くしたレンは小悪魔な笑みを浮かべて答えを誤魔化し、レンの答えを聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。

「意地悪しないで答えてあげてくださいよ、レンさん……」

「全くもうこの娘ったら………―――レンの言う通り、元々メンフィル帝国はアルフィン皇女に処刑等厳しい処罰を求めるつもりはありません。アルフィン皇女は”被害者”でもあるのですから、そんな彼女に厳しい処罰をしてしまえば、ゼムリア大陸のメンフィル帝国に対するイメージが残虐な国家と見られて、その事によってメンフィル帝国が掲げている理想―――『全ての種族との共存』の弊害にもなりますから。」

ツーヤと共に呆れた表情で溜息を吐いたプリネは気を取り直してリィンの疑問に答えた。

「そうだったのですか………ちなみにメンフィル帝国は現在アルフィン皇女にどのような処罰を求める事になっているのでしょうか?」

「え、え~と、それは………」

「……それを答える前に一つ確認したい事がある。リィン、お前がアルフィン皇女の処罰の軽減を求めている理由は和解の件同様両親の為か?」

リィンの質問を聞いたペテレーネがエリゼとセレーネに視線を向けた後困った表情で答えを誤魔化している中リウイがリィンに問いかけた。



「はい。副長から戦争の件を教えて頂くまで父さん達はユミルが襲撃された件で、アルフィン皇女殿下がメンフィル帝国に厳しい内容の責任を負わなければならない事を要求されないか心配していましたので。」

「シュバルツァー男爵夫妻は本当に親孝行な子供達に恵まれていますね……」

「……ああ。話を戻すがメンフィルが求めるアルフィン皇女に対する処罰は”政略結婚”だ。」

リィンの答えを聞いたイリーナは優し気な微笑みを浮かべてリウイに視線を向け、視線を向けられたリウイは静かな笑みを浮かべて頷いた後気を取り直してリィンに答えた。

「”政略結婚”……………――――!もしかして今回の戦争で得る事になるエレボニアの領土の統治をしやすくする為でしょうか?」

「あら………フフ、中々鋭いですわね。」

「既に未来のクロイツェン統括領主としての器の片鱗は備わっているようだな。」

リィンの推測を聞いたシグルーンとゼルギウスはそれぞれ感心した様子でリィンを見つめた。

「お前の推測通りだ、リィン。エレボニアの皇族―――それも帝位継承者であったアルフィン皇女をメンフィル帝国の有力者が娶る事でエレボニアの平民、貴族共にメンフィルに対する不満をある程度抑える事ができるだろうからな。」

「そして肝心のアルフィン皇女が嫁ぐ相手ですが…………リィンさん、貴方自身です。」

「……………………へ。」

リウイに続くように苦笑しながら答えたイリーナの答えを聞いたリィンは一瞬の間石化したかのように固まった後呆けた声を出し

「ええええええええええええええっ!?」

やがて我に返ると驚きの表情で声を上げた。

(アハハハハハハッ!私達の期待を裏切らない展開になるとは、さすがはご主人様ね♪)

(ふふふ、やはり私達の期待通りの展開になっていましたね。)

(この調子ですと、リィン様が引き取ろうとしているアルティナさんという方も私達やエリゼ様達と”同じ”になってしまうかもしれませんわね………)

(最終的には一体何人になるのでしょうね………)

一方リィン達の様子を見守っていたベルフェゴールは腹を抱えて笑い、リザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアとアイドスは苦笑していた。



「リ、リィンさんがアルフィン皇女殿下の将来の伴侶に………」

「ハハハハハッ!本物の皇女をハーレムの一員にするなんてやるじゃねぇか、リィン!」

ステラは信じられない表情でリィンを見つめ、フォルデは腹を抱えて笑った後からかいの表情でリィンを見つめ

「ア、アハハ………わたくしもエリゼお姉様から教えて貰った時は本当に驚きましたわ………」

「ハア………後何人増やすつもりなのですか、兄様……」

セレーネは苦笑しながらリィンを見つめ、エリゼは溜息を吐いた後ジト目でリィンを見つめた。

「な、ななななな、何故アルフィン殿下の相手に俺が選ばれたのですか……!?」

「アハハ………年齢が釣り合っている事やリィンさんの将来の件等色々と理由がありますけど、一番の理由は今回の戦争勃発の原因になってしまったユミル……いえ、”シュバルツァー家”に対するメンフィル帝国の”お詫び”です。」

混乱している様子のリィンの質問にプリネは苦笑しながら答えた。

「へ……俺達”シュバルツァー家”に対する”お詫び”……ですか?」

「……エレボニアの内戦が勃発した際、エレボニアの内戦にメンフィル帝国領……いや、辺境であるユミルは巻き込まれないと高をくくり、ユミルが襲撃されるまでユミル防衛の為の臨時の派遣兵の一人も送らなかったからな。その”詫び”になる。」

「アルフィン皇女を匿えばユミルが貴族連合軍の手の者に襲撃される危険性がある事がわかっていてもなお、”シュバルツァー家”はアルフィン皇女を匿いました。その件を考えるとシュバルツァー家は今回の戦争勃発の原因になってしまったアルフィン皇女がどのような処罰をメンフィル帝国に要求されるか心配していたと思われていましたから、私達の怠慢によってユミルが襲撃された”お詫び”としてアルフィン皇女をシュバルツァー家の跡継ぎであるリィンさんに嫁がせる事にしたのです。」

「リィンお兄さんとエリゼお姉さんの両親は当然として、リィンお兄さんやエリゼお姉さんも両親の意志を組んで強制的に嫁がされてきたアルフィン皇女を大切にするでしょう?どうせアルフィン皇女の処罰の件でもお人好しなリベール王国あたりが口出しして来る可能性が高いでしょうから、アルフィン皇女を大切に扱う可能性が高いシュバルツァー家にアルフィン皇女を嫁がせた方がリベールを含めたアルフィン皇女の件で文句を言ってくる勢力も納得せざるを得ないでしょう?その理由もあって、アルフィン皇女の嫁ぎ先はシュバルツァー家の跡継ぎであるリィンお兄さんが適任なのよ♪」

不思議そうな表情で首を傾げているリィンにリウイとイリーナがそれぞれ説明し、二人の説明に続くようにレンが小悪魔な笑みを浮かべて二人の説明を補足した。



「それは…………」

リウイ達の説明を聞いたリィンは複雑そうな表情で黙り込んでいたが

「リウイ達が先程説明したようにアルフィン皇女の処罰の件は常識的に考えて相当軽くしている。これ以上の軽減は無理がある事はお主もわかっているじゃろう?」

「……はい。」

リフィアに問いかけると静かな表情で頷いた。

「それでリィンさん。最後の望みであるアルフィン皇女の処罰の軽減の件についてはどうしますか?既にアルフィン皇女の処罰は限界まで軽減されていますから、わざわざ最後の望みをアルフィン皇女の為に使う必要はないと思うのですが……」

「……………でしたら、名目上はアルフィン皇女殿下が俺に嫁いだ事にし、その後エレボニア帝国が望むのならばエレボニア帝国が開く社交界の場にアルフィン皇女殿下個人の参加を許す事とアルフィン皇女殿下自身が心を寄せる男性が現れ、その男性と両想いになった場合、俺との関係を破断にしてその者に嫁いでもメンフィル帝国は黙認するという事にして頂けないでしょうか?」

プリネの確認の言葉に対して少しの間考え来んで答えを出したリィンはリウイ達を見つめて答えた。

「えっと……それってどういう事なのですか?」

「うふふ、要するにリィンお兄さんはアルフィン皇女に一切手を出さない仮面夫婦の関係になって、アルフィン皇女が浮気した際は後腐れなく離婚する事をメンフィル帝国に黙認して欲しいって事よ♪」

困惑の表情をしているツーヤの疑問にレンはからかいの表情で答え、レンの露骨な言い方にその場にいる全員は大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「レン、貴女ね……」

「普通、そういう事は遠回しな言い方をするべきよ………」

プリネとペテレーネはそれぞれ呆れた表情で溜息を吐いてレンを見つめた。



「あ、あの~……恐れながら意見をさせて頂きますがさすがに”仮面夫婦”は言い過ぎかと思われます。俺はアルフィン皇女殿下をシュバルツァー家の”客人”として扱うつもりですし……」

そしてリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせながらレンに指摘し

(うふふ、ご主人様はあんなことを言っているけど、果たしてどうかしらね♪)

(ふふふ、十中八九皇女がご主人様に想いを寄せるようになって、その結果真の意味でご主人様の妻の一人になるのでは?)

(ア、アハハ……よりにもよって相手はリィン様ですからね……)

(しかもリィンがアルフィン皇女に手を出すつもりはないとはいえ、夫婦になるのだから常に顔を合わせてお互いの事をよく知る事になるのだから、リィンの良さに気づいたアルフィン皇女が自ら真の意味でリィンの妻の一人になる事を希望する事になる可能性が高いと思うのだけど……)

リィン達の様子を見守っているベルフェゴールとリザイラが面白おかしそうに談義している中リィン達の将来を予想できていたメサイアとアイドスは苦笑していた。

「……リィンさん。アルフィン皇女にせめて”一人の女性として”幸せになってもらいたいと思い、そのような内容にしたのですか?」

「はい。」

静かな表情で問いかけたイリーナの問いかけに対してリィンは頷き

「フッ、酔狂な男だ。”帝国の至宝”とまで称えられているアルフィン皇女を娶れる等普通に考えれば幸運な事だろうに、アルフィン皇女に一切手を出さない所か他の男の元に行く事を容認するとはな。」

「というかそこまでアルフィン皇女の事を気遣うくらいならば、いっそ無理矢理嫁がされてきたアルフィン皇女を自分で幸福にしてやるくらいの気概を持つべきではないかしら?」

レーヴェは口元に笑みを浮かべてリィンを見つめ、ファーミシルスは呆れた表情でリィンを見つめて指摘した。



「ハハ………大将軍閣下の仰る通りなのですが、俺は既に普通に考えれば絶対にありえない数の魅力的な女性達と将来を共にする事になるのですから、これ以上更に増やす事なんて恐れ多い事ですので。」

「……まあ、エリゼを含めてお主と将来を共にする事になる女性達にはそれぞれ魅力的な部分がたくさんあるからの。今更容姿や血筋程度ではお主の食指が動かなくてもおかしくないな。」

ファーミシルスの指摘に対して苦笑しながら答えたリィンの答えを聞いたリフィアは苦笑した。

「クスクス、リフィアお姉様は要するにこう思ったのでしょう?エリゼお姉さんを除けばリィンお兄さんの婚約者さん達はみんなスタイル抜群だから、容姿や血筋が良いだけのアルフィン皇女にリィンお兄さんは何の魅力も感じないって♪」

レンは小悪魔な笑みを浮かべてリフィアに指摘し、レンの指摘を聞いたエリゼを除いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「………今のレン皇女殿下の話は本当なのかしら、リフィア?」

(た、確かに言われてみれば成長がまだ未熟のエリゼさんを除けば全員スタイルはいいですね……)

「ぬおっ!?余はそこまで言っておらんし、そんな下らん邪推は考えた事もないぞ!?」

冷や汗をかいたツーヤが苦笑しながらエリゼを見つめている中膨大な威圧を纏ったエリゼに微笑まれたリフィアは驚いた後慌てた様子で反論した。

「アハハ………リィンさん。リィンさんはアルフィン皇女を気遣ってそのような望みを口にしましたけど、もしアルフィン皇女自身がリィンさんに好意を抱いてエリゼさん達と同じようにリィンさんの妻の一人になる事を望んだ場合はアルフィン皇女もリィンさんの妻の一人として受け入れるのですか?」

「ええっ!?お、恐れながらその可能性はありえないと思うのですが………”パンダグリュエル制圧作戦”でアルフィン皇女殿下の目の前でルーファス・アルバレアを殺害し、殿下をこの艦に連行した件も含めて俺に対する印象は最悪でしょうし……」

リフィア達の様子を苦笑しながら見守っていたプリネは気を取り直してリィンにある事を確認し、プリネの確認に驚いたリィンは戸惑いの表情で答えた。



「…………………」

一方リィンの推測を聞いたリウイ達は黙り込んでリィンを見つめ

(やれやれ……あれ程多くの女性達と結ばれる事になってもなお、まだ女性の気持ちがわからないのか……)

(あの様子ではステラの気持ちにも全く気づいていないのでしょうね……)

ゼルギウスとシグルーンはそれぞれ呆れた表情で溜息を吐いた。

(そう言う所も全然変わっていませんね、兄様……)

(自分のせいで故郷が襲撃され、両親が傷ついたのに罵声を浴びせるどころかむしろ自分を気遣ってくれたリィンさんに嫌悪を抱くなんて、普通に考えてありえないと思うのですが………)

(むしろ好意を抱いていてもおかしくないですわよね?)

(クク、鈍感な所もマシになるどころかむしろ酷くなっているんじゃねぇのか?)

エリゼはジト目でリィンを見つめ、疲れた表情で呟いたステラの小声にセレーネが苦笑しながら答え、フォルデは笑いを噛み殺してリィンを見つめていた。

「え、えっと……?」

黙り込んでいるリウイ達の様子にリィンは戸惑ったが

「………いいだろう。お前に嫁ぐ事になるアルフィン皇女の”その後”―――エリゼ達同様本物の夫婦関係になろうが、離婚しようが我等メンフィル帝国は一切介入をしない。それでいいか?」

「!はいっ!メンフィル帝国の寛大なお心遣いに心から感謝致します!」

リウイの確認の言葉を聞くと姿勢を正してリウイ達に会釈をした後エリゼ達の所へと戻って行った。



「これにて表彰式を終了とする。各自次の作戦に備えて英気を養っておくように。――――解散!」

「はいっ!――――失礼します!」

そしてリウイの宣言に対してリィン達は力強く返事をした後部屋から退出した。



こうして……リィンの望みの一つであるメンフィル・エレボニア戦争の和解の為にメンフィル帝国は本格的に動き始めた――――




 
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