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風魔の小次郎 風魔血風録

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60部分:第六話 霧の中でその七


第六話 霧の中でその七

「特に兜丸。御前は風魔で一番の雷の使い手らしいな」
「そういう御前は夜叉でも有名だな、雷でな」
「その通りだ。この名前は伊達ではない」
 己の名前を誇ってみせる。
「この雷電の名はな」
「霧風。我等の制圧した地域で色々とやってくれたそうだな」
 闇鬼は雷電の横で静かに立っている。木刀を杖にして目を閉じている。
「そのせいか最近周囲が騒がしい」
「それは私だけではないようだがな」
「何っ!?」
「風魔に気を取られているうちに別の勢力に付け込まれないことだな」
「ふん、我等夜叉がそんな不手際をするものか」
 しかしそれは雷電が否定する。
「我等百八人、遅れを取ることはない」
「そうか」
「そうだ、不知火、白虎、紫炎」
 これまで戦線を離脱した三人の名を霧風と兜丸に述べる。
「三人の無念を晴らさせてもらうぞ」
「じゃあこっちは項羽と林彪だな」
 それに対して兜丸が言う。
「二人もいなくなって家事も増えたんだ。その怨み晴らさせてもらうぞ」
「面白い」
 雷電は早速その両手に鎖を出してきた。両端には分銅が付いている。
「ならばここで倒してくれよう」
「二対二だ」
 闇鬼も言う。
「面白い勝負になりそうだな」
「確かにな。それではだ」
 まずは霧風が前に出た。
「まずはこちらから仕掛けさせてもらうぞ」
「むっ!?」
「風魔霧幻陣」
 前にあった水溜まりに木刀の先を入れる。そうしてそこから霧を出すのだった。
「この技、見破れるか」
「ほお、いきなりそれで来たか」
 兜丸は霧風がその技を出したのを見て楽しげな笑い声をあげた。
「御前も本気なんだな」
「相手は八将軍」
 霧風の声が応える。既に霧は深くなり二人の姿はその中に消えようとしていた。
「ならばこちらもそれなり以上の技を仕掛けなければなるまい」
「そういうことだな」
「では行くぞ」
 今度は雷電と闇鬼に対する言葉だった。
「夜叉よ、貴様等にこの陣が破られるか」
「消えたか・・・・・・」
「雷電、迂闊に動くな」
 闇鬼が周囲を警戒し見回す雷電に対して忠告してきた。彼は木刀を持ったままだ。
「下手に動けばやられるぞ」
「わかっている。だが」
「動かないとこうなるぜ」
 そこにだった。雷球が来る。兜丸のものだった。
「くっ!」
 雷電はそれを左に跳びかわる。
「兜丸、貴様か!」
「兜丸だけではない」
「霧風!」
「私はここだ」
 雷電の後ろから声がした。
「ここにいるぞ」
「くっ!」
 後ろに鎖を投げる。しかしそれは霧の中に浮かぶ影を切り裂いただけだった。
「幻か」
「私はここにいるぞ」
 今度は左からだった。
「今度はそこか!?」
「いや、ここだ」
 しかしまた声がした。今度は正面からだ。
「ここだ」
「ここにいるぞ」
 影が複数になっていく。それに囲まれた雷電は困惑する。明らかに霧風の術にかかっていた。
 それがわかっているからこそ焦る。鎖を両手に持ち周囲を警戒する。そこにまた雷球が来た。
「おのれっ!」
 それを何とか鎖で受ける。しかし劣勢なのは明らかだった。
「まずい、このままでは」
「落ち着け、雷電」
 しかしここで闇鬼はまた彼に言う。
「落ち着くのだ、ここだ」
「しかし闇鬼、このままでは」
「丑寅の方角だ」
 闇鬼はここでふと言った。
「丑寅!?」
「そうだ。そこに仕掛けろ」
「わかった。そこかっ!」
「むっ!?」
 そこにいたのは兜丸だった。右にその鎖をかわす。鎖は後ろの木に絡まる。するとそこに落雷が落ち木を燃やし尽くすのだった。
「危ないところだったな、おい」
「夜叉落雷撃」
 雷電は己の技の名を言った。
 
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