FAIRY TAIL 魔道を歩む忍
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二人の救世主の章
第五十話 水流と水竜
「グハァッ!!」
頬を殴られ吹き飛ばされるグレイ。海岸で戦闘をしている為に砂が巻き上がる
「グ..グレイ様!」
グレイを心配するジュビア。しかしその顔からはグレイを心配するよりも目の前の敵、自身の兄であるレイを恐れる表情をしていた。九尾との戦闘でもそんな表情は見せてはいなかったが、余程レイを恐れているのだろう
「この程度で吹き飛ぶのか...やはり弱いなグレイ・フルバスター」
レイはグレイを煽る。グレイは口から血を流しながら起き上がる。そこへすかさずレイの力を込めたローキックがグレイの脇腹へとヒットした。
「ゴハァッ!」
キックが脇腹にヒットした際にグレイのあばら骨が砕け、その破片が内蔵へ突き刺さった為に先程よりも大量血を口から吐き地面へ叩きつけられた
「話にならないな。たったこれだけでこのざまか。期待外れもいいとこだ」
その言葉にジュビアはグッと拳を握りしめレイを睨みつけた。それに対しレイは余裕な表情を見せていた
「この程度では底が知れるな。だからお前はデリオラごときにやられるんだ。さしずめお前の師であるウルも大した事なかったんだな」
レイはさらに煽る。散々やられ、しまいには師をも馬鹿にされグレイは激昂した
「んだとコラァァッッ!!」
あばらが砕けているというのに立ち上がり、レイに殴りかかるがいともたやすく避けられるが、それでも殴るのをやめなかった
「俺を馬鹿にするのはいい!!だが師匠を馬鹿にするやつは許せねぇっ!!」
『アイスメイク大槌兵!!』
巨大な氷のハンマーをレイ目がけて落下させるが
『水竜の剛腕!!』
レイは自らの拳に水の魔力を纏わせ落下してくるハンマーを簡単に砕いて見せた
「え..これって...」
「な..何でてめぇが滅竜魔法を使えんだよ!!」
ジュビアとグレイはレイが使った滅竜魔法を信じられないでいた
「だって..兄さんは幼いころはずっと私と...」
「ああ。過ごしていたよ。お前に魔法も教えてた」
「だったらどういうことなの!!?何で兄さんがナツさんやウェンディと同じ滅竜魔法を..」
「フッ..簡単なことだ。オレの身体には特殊なラクリマが埋め込んである」
「特殊なラクリマだと...?」
グレイは、はあ..はあ..と息を切らしながら問う
「それは、ドラゴンの力を封じ込めたラクリマだ」
ジュビアとグレイは驚愕する
「何を驚いている?お前らのギルドにいたマスターマカロフの孫と六魔将軍のコブラも同じだぞ」
「ラクサスさんに..」
「あの蛇野郎もかよ...てかんなことどうでもいいんだよ!!!てめえはぶっ殺す!!絶対に!!」
グレイは痛みを堪えながら構えたその時だった。街の中心部から眩い光が発せられた
「な...何だこれは...?」
レイは正体不明の光に困惑するがグレイはその光が何なのかすぐに理解した
「この光..間違いねェ!!妖精の法律だ!!」
「妖精の法律...?まさか、あの時の...!!」
ジュビアが言うあの時とは、以前妖精の尻尾とジュビアが以前に所属していたギルド幽鬼の支配者との抗争の時マカロフがファントムのギルドマスターにして聖十大魔道の一人だったジョゼに放った超魔法。その結果としてジョゼは敗れ、幽鬼の支配者は解散となった
「妖精三大魔法のうちの一つか...フ...」
レイが不敵に微笑む
「ア?テメェ、なに余裕ぶっこいてんだ?この魔法で全部終わんだよ。これでこの戦いはーー」
グレイがそう言い終わる前に光はこの海岸にまで及びそこにいた3人をのみこんだ
同時刻。フレンダと戦闘していたキョウと、右腕を負傷したリサーナ。その応急処置をキョウはしていた。折れた右腕を曲げないようにそこらに落ちていたリサーナの肘から下の長さと同じくらいの材木を拾いそれを布で固定した
「これでいいだろう」
「ありがとう...キョウ...」
リサーナが礼を言うがその瞳からは大粒の涙が流れていた
「エルフ兄ちゃん..ミラ姉..」
先の戦闘でエルフマンとミラジェーンはフレンダによって殺害されていたのだ
「リサーナ..」
キョウにはリサーナの気持ちが痛いほど分かっていた。親しい者の死ほど悲しく切ないことに
「あ、あのさキョウ...」
リサーナは涙を拭いキョウに問う
「何だ...?」
「さっきフレンダが言ってた人柱力って何の事...?それにうちはって...」
キョウは少し俯き答える
「それはこの戦いが終わってから全て話す。皆の前でな」
その時だった。キョウの後方から眩い光が街全体を覆っていた
「な..なに..!?」
リサーナは驚き、キョウはハッと気づく
「これは妖精の法律。じいさんか..!?」
リサーナは頭に?を浮かべていた
「なに..それ..?」
妖精の尻尾の者なのに知らないのかと言わんばかりの顔でキョウは説明した
「知らないのか?これは妖精の尻尾に伝わる妖精三大魔法のうちの一つだ。術者が敵だと認識したものを消し去る大魔法だ」
それを聞いたリサーナは表情を明るくし
「じゃ..じゃあ、もうこの戦いはーーー」
しかしキョウは首を横に振った
「どんな魔法にも必ず欠点があるものだ」
「欠点...?」
リサーナは首を傾げる
「この魔法の欠点は術者が敵と認識した者にしか効かないということだ」
「それってつまりどういうこと?」
「魔法に心を見透かされるか。あるいはーーーー」
「この光は妖精の法律。マスターマカロフ。少し気を急ぎすぎたようだな」
そう言うのは黒地に赤雲の模様が描かれた外套を着用した赤髪の男、長門。彼は先にエルザを殺しカルディア大聖堂のてっぺんに立っていた
マカロフが放った妖精の法律が街全体を包み込み、皆は安堵した。
「や..やった...!!」
「これでオレたち助かるんだな!!」
「さすがマスターだぜ!!」
歓喜の声が響く。だがしかしその安堵は瞬く間に終わりを迎える。
マカロフの前には呆れ顔のライラ。グレイとジュビアの前にはレイが、そしてカルディア大聖堂のてっぺんには長門が何事もなかったかのようにそこに立っていた
「な..なぜじゃ..!!なぜ奴らが消えておらん!!?」
マカロフは妖精の法律がライラ達に全く効いていないことに困惑していた
「あんた、すっかり老いちまったね」
ライラはすぐさま背中から4体の化け物を出した。裂けた皮膚はまた黒い繊維状の物で縫い合わさった
「魔法に心を見透かされるなんて、馬鹿を通り越して呆れるね」
「ば...馬鹿な..そんなはずは...」
マカロフが動揺している中四体の化け物は口をかぱっと開け、赤い仮面は炎を。青は、風。黄色は雷、水色は水を含みそれぞれが攻撃体制に入る
「死にな、マカロフ!!」
ライラの号令とともに攻撃が発射された
「じ..じいさんの妖精の法律が効いて...ねえのか...」
グレイは脇腹を抑え、息を切らしながら驚愕する
「お前らのトコのギルドマスターはもうボケが来ているのか?」
「うるせぇ!」
再度激昂しレイへ殴りかかるグレイ。しかしその拳は弱々しく簡単に受け止められてしまった
「そしてその兵隊は馬鹿の集い..と」
レイはグレイの拳をグッと握る。それは握手する時の強さではな握っている物を潰すときの強さで握った。ましてや滅竜魔導士の握力は常人のそれとはかけ離れている
「ぐあああぁぁぁぁあああぁっっ」
グレイは地に膝から崩れ落ち叫ぶ。痛みからか、それともめちゃめちゃになった自分の右の拳を見てなのか。
「グレイ様ぁぁっ!!!」
ジュビアもまた叫ぶ。自分の最愛の人がこのような姿になっているからだ。レイはグレイをジュビアの元へ放り投げた
「ぐっ...!!」
「グレイ様!」
ジュビアはグレイの右の拳を見る
「酷い..グレイ様になんてことを!!」
「あぁ..そうだ。お前たちに聞いておかなければならないことがある」
ジュビアの激昂を無視して何かを思い出したレイは二人に問う
「うちはキョウはどこにいる?」
一瞬間が開いた。それもそのはず。他のメンバーとは違い以前にヒイラギの街で戦った仮面の男に名乗られていたからだ
「グレイ様...うちはって、あの時の...」
「あぁ..確かあの面ヤローの名前だ。一体どういうことだ..キョウがうちは?わけわかんねぇ..」
レイははたまた呆れ
「お前らまだ解らねえのか?うちはキョウ。それが奴の本名だ。うちはって聞けば大体わかるよな?あいつは忍び一族。つまりオレ達魔導士の敵なんだよ」
「嘘...」
グレイは言葉が出ず、ジュビアは空いた口がふさがらない。さらにレイは続ける
「まぁ..いいんじゃねえか?お前らだって忍びのことは反吐が出るほど嫌いだろ?おまけに人柱力ときた」
二人は葛藤した。確かに忍び一族のことは昔から聞いていた。しかしジュビアにとっては初めての男友達でありヒイラギでも救ってもらった。グレイもニルヴァーナの時やヒイラギ、エドラスでの事もある。グレイは少し悩むが、ジュビアはすぐさま結論を出した
「キョウ君は敵じゃありません!友達のいなかったジュビアとお友達になってくれた心の優しい人です!!たとえ忍びでも人柱力とかいうやつでも、ジュビアは決して友達を売ることなんかできません!!」
「ジュビア...」
ジュビアはレイに怒鳴る。グレイは頭をポリポリと掻き
(オレはなに一瞬でも悩んじまったんだ..あいつには借りもあるってのによ)
グレイは少しでも悩んでしまったことを悔やむ
「その通りだジュビア!!オレたちは仲間を売らねぇ!!売るなら死んだほうがずっとマシだ!!」
するとレイは、はぁ..とため息をつき魔力を解放した。その影響であたりの砂が舞い砂埃が立っていた
「じゃあ死ねぇ!!今ここで!!」
グレイはジュビアを見る。ジュビアのその眼は先程のものとは違い決意をした眼に変わっていた
第五十話 完
後書き
約1年半ぶりの投稿となりました。楽しみにしていてくださった読者の皆様、大変申し訳ありませんでした
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