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風魔の小次郎 風魔血風録

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52部分:第五話 メッセージその十


第五話 メッセージその十

「しかし。当分の間起き上がれそうにもないな」
「そんな、あの林彪が」
「驚くことではない」
 しかし竜魔は呆然とする小次郎に対してこう告げるのだった。
「この男も忍だ。これも覚悟のうえのことだ」
「下手したら死ぬっていうのにかよ!」
「殺し合いが忍の闘い」
 しかし竜魔は言う。
「何ら不思議なことではない」
「殺し合い・・・・・・」
 小次郎はそのことをはじめてわかったのだった。
「それが俺達の闘いなのか」
「そうだ。それよりもだ」
 ここで竜魔が言う。
「項羽は何処だ!?」
「項羽!?そういえば」
「まさかあいつも」
「俺は何とか大丈夫だ」
 右手を押さえつつ蔵のところから出る。
「夜叉の者達の総攻撃を受けた。林彪は前線したが」
「そうか」
「すぐに林彪を担ぎ込んでくれ」
 竜魔は劉鵬に告げた。
「頼むぞ」
「わかった。それではな」
「俺は夜叉の連中を追う」 
 白虎はこう言ってさりげなく屋敷を出ようとする。
「ではな」
「うむ」
 竜魔もこの時は気付いていなかった。だがここで小龍は見た。兄の右手の甲にある傷を。それが何か彼はすぐに悟ったのだった。
「!?貴様!」
 それを見ていきなり項羽に斬り掛かった。
「何者だ一体!」
「くっ!」
 その木刀を左に跳びかわす。それで何とか難を逃れた。
「小龍、御前何考えてるんだ!?」
「一体どうしたんだよ、おい!」
 兜丸と小次郎は今の事態に混乱するばかりだった。竜魔も静かに様子を見ている。
「項羽は御前の兄貴だろうが。それがどうして」
「御前が項羽ならどうしてその右手に傷がある」
「傷!?」
「その傷は白羽陣の傷」
 こう述べる。
「この世で羽根を使える者は項羽とこの小龍だけ。傷を負う筈もない」
「んっ!?そういえば」
「そうだよな」
 兜丸と小次郎もそれに気付いた。
「それに麗羅も戻らねえし。何かおかしいことだらけだよな」
「ふん、手まで隠さなかったのが失敗だったか」
 白虎もここで開き直ったのか項羽の顔で不敵に笑ってみせた。
「そうよ。俺は夜叉八将軍の一人」
 ここで素顔に戻ってみせた。服も元に戻る。
「白虎だ」
「やはりな」
 小龍がそれを見て言う。
「夜叉で最も変装を得意とする男。ならばこれも当然か」
「おかしいとは思っていたが」
 竜魔が立ち上がって言ってきた。
「そういうことだったか」
「よくもまあ俺達風魔をここまで騙してくれたものだな」
「林彪の仇か」
 兜丸とその林彪を布団まで持って行った劉鵬が言う。
「それで項羽と麗羅はどうなったんだ!?」
「安心しろ、生きている」
 白虎は小次郎に対して告げた。
「項羽は紫炎との闘いで傷を受け麗羅に里に連れられたのだ」
「そうか、里にか」
「大丈夫なのか」
 皆まずはそれを聞いて安心した。
「俺もこのまま去るつもりだったが。そうはさせてくれんようだな」
「皆下がっていてくれ」
 小龍が一同に対して言うのだった。その手には木刀がある。
「こいつは俺が倒す」
「貴様が相手か」
「俺では不服か?」
「いや」
 白虎はその不敵な笑みで小龍に応える。
「項羽でないのがいささか残念だが貴様も風魔九忍の一人」
 こう言うのだった。
「倒すだけのことはある。貴様を倒しここで」
「できるものならな」
 既に小龍の周りには白い羽根が舞ってきていた。
「兄項羽の白羽陣を破れなかったようだが。それでこの小龍に勝てるつもりか」
「白羽陣か」
 しかし今の白虎はそれを聞いても不敵な笑みを崩しはしない。
「確かに見事だ。だが」
「だが。何だ?」
「この白虎が得意なのは変装に姿を消すだけではない」
 その不敵な笑みは崩れない。
「一度見た技を覚えることができるのだ」
「何だと!?まさか」
「そう、そのまさかだ」 
 小次郎の驚きの声に応える形となった。その時に。
「見よ。白虎白羽陣!」
「むっ!」
 白虎の周りに無数の白羽が姿を現わした。それが何か、今この場にいる誰もがわかった。
 
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