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風魔の小次郎 風魔血風録

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49部分:第五話 メッセージその七


第五話 メッセージその七

「よお項羽」
「ああ」
 挨拶をしながら席に座る。あえて小龍の横に座り箸を取る。その時だった。
「!?」
「項羽、御前」
「珍しいこともあるものだ」
 林彪と劉鵬が項羽を見、竜魔が言ってきた。
「御前が右手で食うとはな」
「むっ」
(しまった、また)
 これは白虎の知らないことだった。項羽の利き腕までは。
「一体何の修行だ、それは」
「ああ、あれか」
 ここで劉鵬が気付いたような顔になる。
「脳を鍛えてるのか」
「脳を!?」
「ほら、あれだよあれ」
 兜丸に対して話す。
「手を動かすと頭にいっていうだろ」
「そういえばそうだな」
「それでだ。左手だと右脳で右だと左脳な」
「じゃあ項羽、御前は今」
「そうだ」
 ここでは芝居をする。汗をかいてはいるが。
「それをやっているのだ」
「成程な。いつもながらよくやってるな」
 林彪は白虎のその言葉を聞いて感心したように微笑む。
「俺はどうも剣ばかりだからな。そうしたところも修行しなくてはな」
「御前はそれでいいだろ」
 劉鵬がその林彪に対して言う。
「考えて動いてくれるからな」
「そうか」
「問題はやっぱりあいつだよ」
「あいつか」
「ああ、あの馬鹿」
 誰かはもう言うまでもなかった。
「何時まで寝てるんだよ。毎回毎回一番に寝て一番遅く起きてくるからな」
「里から全然変わらねえなあいつは」
 兜丸も玉子焼きに醤油をかけながら言う。
「何処でもあんなのだからな」
「小次郎の馬鹿と図太さは折り紙つきだ」
 小龍が口を開いた。
「毎度毎度な」
「グッモーーーニン、風魔のイケメン諸君」
 その馬鹿が来た。今日は学ランだった。
「何か朝から俺の話してる?」
「ああ、してたよ」
 劉鵬がその小次郎に対して言う。
「早く食え。片付けがからな」
 後ろから蘭子が出て来た。見れば和服の寝巻きだ。薄紫の地で花柄だ。
「全く。何時まで寝ているんだ」
「そういう御前も何で寝巻きなんだよ」
「ああ、今日は少し寝過ごしたんだ」
 あまり小次郎のことは言えないようである。
「それでこのまま食事を作った。普段は割烹着を着るが」
「御前って和風なんだな」
「悪いか?」
「いや、それはいいさ」
 小次郎はそれは気にかけなかった。
「ただよ」
「ただ。何だ?」
「やっぱり姫様もなのか?」
 結局のところ話はそこに行き着くのだった。
「やっぱりよ」
「姫様も休まれる時や普段は和服だが」
「そうか、やっぱり撫子だよなあ」
「それがどうかしたのか?」
「いや、やっぱり和服の時は下着は」
「馬鹿っ、やっぱり御前はそれかっ」
「あつっ」
 またしても蘭子に頭をはたかれる。
「ちゃんと穿いておられる。私もだ」
「そ、そうだったのか」
 何気にとんでもないことを白状する蘭子だった。
「じゃあ御前は股引とかトランクスで」
「いい加減にしないと木から吊るすぞ」
 この言葉は本気だった。
「全く。朝から馬鹿全開だな」
「俺は馬鹿じゃねえよ」
「御前が馬鹿でなくて何だ」
 劉鵬や兜丸と同じことを言う。
「私は着替えてくるからな。後片付けは頼むぞ」
「ああ、わかったよ」
「まあ小次郎座れよ」
 話が一段落つき蘭子が着替えに行ったところで林彪が小次郎に声をかけた。
「早く食え。美味いぞ」
「ああ。じゃあよ・・・・・・ってよ」
 いきなり小龍のメザシを一つ取ってからその隣に座る。
「項羽、メザシ一つ貰うぜ」
「俺は項羽ではないっ!」
「ああ、小龍か」
 むっとした彼に気付いた。
 
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