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風魔の小次郎 風魔血風録

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47部分:第五話 メッセージその五


第五話 メッセージその五

「赤外線に犬共も大したことはない」
 屋敷に入ってまた呟く。
「どうということはないな。さて」
 今度は庭に入りいざという時の脱出路を探しだした。しかし暫く庭を探っていると屋敷の方から声がした。
「誰かいるのか」
「!?この声は」
「答えろ。誰だ」
 聞き覚えのある声だった。風魔九忍の筆頭である竜魔の声だった。
「俺だ」
「御前は」
 白虎は芝居をすることにした。何気なくを装って庭から姿を現わす。竜魔は彼の姿を見てまずは警戒を緩めさせた。彼は屋敷の廊下のところに立っていた。
「項羽か。戻ったのか」
「ああ」
 項羽に化けたまま答える。
「勝って来たぞ」
「おっ、勝ったのか」
「流石だな」
 ここで屋敷に残っている風魔の面々も出て来た。劉鵬に兜丸、林彪の面々だった。白虎は霧風がいないことをいぶかしみながら芝居を続けた。
「それでどうなったんだ?」
「麗羅は?」
「とりあえあず白虎は俺が倒した」
 こう風魔の面々に告げる。庭の木々のないところに出ての言葉だ。
「ほう、白虎を」
「あれでは当分動けない」
「これで残り八人だな」
 林彪は白虎が倒れたと聞いて笑みを浮かべていた。それが白虎には面白いことであった。
「それで紫炎はどうなった?」
「今麗羅が追っている」
 こういうことにしたのだった。
「俺はあいつにダメージを受けたがそれでもな。麗羅が助けに来てくれてな」
「そうか、麗羅もやってるんだな」
「それは何よりだ」
「項羽、何はともあれ御苦労だった」
 竜魔はあらためて項羽を労う。
「後はゆっくり休んでくれ」
「ああ」
「しかしだ」
 屋敷の廊下にあがってきた白虎が自分の横に来たところでポツリと言ってきた。
「一つ聞きたいことがある」
「何だ?」
「戻って来たのは御前一人か」
 竜魔が問うのはそれだった。そう問われて内心冷や汗を隠せなかった。
「御前一人で戻って来たのだな」
「ああ、そうだが」
 内心の冷や汗と動揺を隠しながら竜魔に答える。
「それがどうかしたのか?」
「いや、御前が出るまで庭には」
「庭には」
「殺気が充満していた。俺の気のせいだったか」
「闘いの後だからな」
 白虎はこう言い繕うことにした。
「そのせいだろう。俺の殺気だ」
「そうか。では俺の取り越し苦労だな」
「そうだ。では休ませてもらうぞ」
「ああ」
 これで白虎は屋敷の中に入る。だがここで兜丸が項羽と思って彼に声をかけてきた。
「おい、項羽」
「どうした?」
 その兜丸に顔を向けて問う。
「小次郎起こしてくれないか」
「小次郎をか?」
「ああ。あの馬鹿学校から戻るなりいきなり寝やがってな」
「困った奴だ」
 劉鵬もぼやく。
「それで叩き起こしてくれ。いいな」
「ああ、わかった」
「何なら蹴っ飛ばしてくれ」
 林彪も何気に無茶を言う。
「それでいいからな」
「うむ」
 彼等の言葉に応えながら小次郎がいるというその部屋に向かう。一人で廊下に進むと殺意に満ちた顔になる。夜叉としての顔だった。
「一人。倒すか」
 彼の狙いはそれだった。
「一人倒して去る。それで行くべきだな」
 忍としての考えだった。長居しては麗羅が戻って来る。その前に仕事を果たすつもりだったのだ。
 それで小次郎の部屋に入った。見れば布団を蹴飛ばし膝までのジャージ姿で気持ちよさそうに寝ている。おまけに寝言まで言っていた。
 
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