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風魔の小次郎 風魔血風録

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46部分:第五話 メッセージその四


第五話 メッセージその四

 白凰。そこの美術部のアトリエで姫子は部員達の絵画とその描くのを見守っている。蘭子と小次郎も一緒だ。
「白凰ってスポーツだけじゃなったんだな」
「そうだ、我が校は文武両道だ」
 蘭子が小次郎に対して言う。
「スポーツだけではないのだ」
「御前ひょっとしてそっちの方の指南もしているのか?」
「いや、それはしていない」
 こう小次郎に述べる。
「どちらかというと姫子様の方がだ」
「まあ御前こうした絵は苦手そうだからな」
「別にそういうわけではないが」  
 バツの悪い顔で小次郎に言葉を返す。
「どちらかというと書道や水墨画が得意だ」
「和風だな、やっぱり」
「まあそうだな。料理も」
「とりあえず弓道も勝ててよかったですが」
 姫子は二人の話をよそに部員達が熱心に絵を描いているのを見守りながら呟く。
「今度のコンクールでも是非賞を」
「ひょっとして夜叉も出てるのか?」
「そうだあそこの姫もこういったことが好きでな」
「あの夜叉姫がか」
「かなり力を入れている」
 蘭子は小次郎に対して語る。
「だからだ。気を抜けない」
「へえ成程ね。しかし」
「今度は何だ?」
「また随分と色々な本があるものだな」
 ふと本棚を見る。そこの図鑑を手に取って中を一気に読んでいる。その動きはかなり速い。
「ルノアールにマグリットにピカソ。こっちはレンブラントか」
「全部覚えてるのか?」
「ああ、これでも記憶力には自信があるんだ」
 誇らしげに笑って蘭子に答える。
「一度見たらもう覚えられるさ」
「記憶力と頭の出来は関係ないのだな」
「おい、ここで言うのかよ」
 今の蘭子の言葉にはすぐに憤慨を見せた。
「意外ととかそういう言葉はねえのかよ」
「実際にそうだろうが」
 しかし蘭子の方が一枚上だった。
「全く。怪我をしても暴れるし」
「もう治ったよ」
「早いな」
「怪我の回復が遅くて忍が務まるわけねえだろ」
 今度はこう言う小次郎だった。
「そう簡単にはくたばらねえし傷の回復もかなり早いんだよ」
「では夜叉の連中もだな」
「ああ、下手したらすぐに戦線復帰してくるぜ」
 林彪との闘いでダメージを受けた不知火のことだ。
「それはお互い様だけれどな」
「今度のコンクールにも夜叉がいるが」
「まあそっちは項羽の兄貴と麗羅がいるからな」
「それでその二人は何処だ?」
 蘭子はそれを小次郎に尋ねた。
「姿を見ないが」
「ああ、出陣してそのままだ」
 小次郎は麗羅が自分を咎めた時のことを思い出しながら答えた。少し複雑な気持ちになる。
「まああの二人なら大丈夫さ」
「そうか」
「それでその間はこの小次郎様が姫様をお守りしてだな」
「まあ、小次郎さんたら」
「だから調子に乗るな」 
 姫子はくすりと笑うが蘭子は小次郎の頭をはたいた。背が高いだけに威力もかなりのものだった。
「いってえなあ、ったくよお」
「少しは頭をよくしろ」
 その頭を押さえる小次郎に対してまた言う。
「全く。何度同じことを繰り返すつもりだ」
 そんなやり取りをしていううちに時間が過ぎていく。学園は平和であったが蘭子の屋敷には。今項羽に変装した白虎が来ていた。
 見れば学ランも風魔の長ランにしている。既に外見は完全に項羽になっていた。その姿で屋敷に近付きまずは携帯を取り出す。だがすぐに顔を顰めさせることになった。
「くっ、妨害電波か」
 携帯が通じなかった。忌々しげに携帯をしまう。次に門のところにある監視カメラに気付いた。その前では何気なく髪型をなおしてみせてから中に入った。庭の赤外線も何なく潜り抜けドーベルマン達にも項羽であると信じ込ませていた。白虎はここまで完璧に通り抜けていた。
 
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