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真・龍神†無双

作者:ユキアン
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第3話



お姉様から招待を受けて袁紹軍の兵士にお姉様の天幕へと案内される。

「お久しぶりですね、お姉様」

「やっほ~、久しぶり。元気にしてた?」

「暇で死にそうですが、元気にしてますよ。お姉さまの方は?」

「元気にしてるよ。あと1年も内政だけをやってて良いのなら経済的に中華を余裕で治められれるかな?蘭ちゃんとも提携すれば怖いものなしだね。黄河の半分以上はもう蘭ちゃんの運送業者の物で中華一番の水軍を築き上げてるから」

「……昔の元士郎みたいじゃないですか。何をやってるんですか二人共」

「いやぁ~、流石に民の暮らしが酷すぎて見捨てられなかったんだ。袁紹ちゃんは根は良い子だから、そこをついて色々頑張ってるんだよ。だからこれだけの兵力を普通に運用できるんだから」

「それがこの丸一日中の投石機による飽和攻撃ですか」

現在も天幕の外では袁紹軍の30機の投石機による飽和攻撃が行われている。民の命をお金で買ったのだと思えば安いものだろう。

「向こうが白旗を振るなら丸一日にはならないけどね。これで今回の討伐は袁紹ちゃんの功績一位。横取りしようものなら顰蹙を買うからね。まあ、投石をやめるつもりはないから巻き込まれても自己責任だけどね」

「おかげで曹操は苛ついているみたいですけどね。完全に脇に追いやられてしまいましたから。これ以上は戦果の上げ様がありません」

「ふむ、ヘイトが溜まるのはあまりよろしくないし作戦を切り上げますか。郭図」

手を二度打ち鳴らしながら郭図を呼ぶと天幕の入り口に影がよぎる。

「ここに」

「油玉と炎玉を用意させて。後は相手が飛び出してくる可能性もあるから弓兵と弩兵の準備。近づける前に粗方削りなさい。降伏は両手を上げて何も持っていないのが条件よ。それ以外は全て打ち取りなさい。あと、袁紹ちゃんに派手に行くからって言って観戦させなさい。黙ってたらうるさいわよ」

「へい、すぐに。諸侯へはどうされます」

「最初に言ってるでしょ。後ろに下がっていなさいって。向こうはそれを了承したんだから、前に出れば矢を撃ち掛けなさい。一回は威嚇でね。それ以降は黄巾賊に襲いかかっている所にまとめてやってしまいなさい。私が全部処理するから思う存分やってしまいなさい」

「はっ」

それから数時間後、黄巾賊は壊滅した。郭図が調整したのか門周辺が特に炎の勢いが強く、殆どの者が業火の中へと消えていった。








「円卓の騎士か。もう驚くのも飽きたな。不倫で内部崩壊する前に貴様ら全員エクスカリバーとアロンダイトのサビにしてくれるわ!!」







「簪、私と麗羽、袁紹の差は何?」

「えっ、お金の差でしょ?」

「そんなものに私は負けるのね」

「そんなものと思っている時点で袁紹を裏で操っているお姉様には絶対に勝てませんよ。お金っていうのは凄いものなんですから。お金は力です。お金さえあれば一握りの物以外はなんでも買えます。それを効率良く使い、どんどん増やしていますからね。2年でお金によってこの中華は袁紹のものになります。そして、それに逆らうってことは民のためという大義名分は絶対に使えません。向こうの民のほうが裕福で幸福に生きていますから」

「……どうすれば勝てるかしら」

「その考えが間違ってますね。貴方は何のために戦っていますか?自分が上に立ちたいのなら宦官共と変わりませんよ。民のためなら、袁紹に下ればいい。そこで政を一手に振るえばいい。袁紹の性格は分かっているでしょう?乗せて好きにさせればいい。筆頭軍師のお姉様も夫と合流すれば袁紹の元から離れますしね。行けばわかりますけど、お金が大量にあるって色々楽ですよ。というわけで、はい、経済書です。これを読めばお金の偉大さが分かります」

後漢時代に合わせた内容に編集した経済書を手渡す。まあ、無駄になる可能性が高い。本当にオーフィスをどうしよう。それと配下の我狼団。スコル、ハティ、クロスを筆頭とする五千頭の魔狼の群れ。龍の肉で腹を満たしているのは間違いではなかったらしく、配下の、家族の狼達にも食べさせているのか普通の狼とは比べ物にならない強さを誇る。1頭を相手にしても曹操の親衛隊が5人は必要になるだろう。群れを相手にすると更に人数が必要になる。筆頭の3頭は言わずもがな。

「さて、そろそろ許褚と典韋の勉強の時間ですね。これで失礼させていただきます」

「ええ、よろしく頼むわ」

曹操の執務室から退出して二人の勉強を見ている部屋に向かいます。教材を揃えて黒板とチョークも用意しました。便利だということで曹操と荀彧も同じものを作らせています。しばらく待っていると許褚と典韋がやってきました。

「「今日もよろしくおねがいしま~す」」

「はい、頑張りましょうね。それじゃあ、この前の宿題の確認ね。戦っていうのは最後の手段であり、愚かな行為である。なぜそうなるのか、二人はどんな答えを出したのかしら?」

「ええっと、戦になると男の人が兵士として出て行って、畑の手入れとかが大変になります」

「猟も難しくて、子供たちがお腹を空かせて、場合によっては死んじゃいます」

「お年寄りも似たような感じです。それに戦場が近くだと略奪とか、そうでなくても畑が荒らされて収穫が厳しくなります」

「それに税が増えたりもして、でも、村を捨てれなくて」

「戦が終わっても、帰ってこない人も多くて」

「だから、戦は最後の手段だと思います」

「ええ、その通りよ。よく考えてきましたね。それも答えの一部です」

「「一部ですか?」」

「そうよ。今、二人が言ったのは下の、民達から見た戦の悪い点ね。それじゃあ、次は曹操の、統治者から見た悪い点を見ていきましょうか」

「「は~い」」

荀彧では自分の知識を押し付けるだけで典韋はともかく許褚は理解し切ることが出来ない。統治に関しては絶対的な正解なんてものは存在しないのだから教え子が納得できる答えと、考え続けることが大事なのだというのを教えてあげれば良いのだ。だからこうやって二人で考えて話し合って答えを探し出させていく教え方が適しているのだ。読み書き計算は別ですけど。あれは半分以上が慣れですから。

「はい。今日の所はこんなものでしょう。次の時は計算の勉強ですね。この前渡した算盤を忘れないようにね」

「「ありがとうございました」」

私にとっては可愛い生徒ですが、オーフィスと対峙すれば一瞬でその命を散らしてしまうでしょう。元士郎が間に合うかどうかが全てを決めるでしょうね。







「ゴルァ!!何、禁輸品に手を出してんだ!!舐めたマネしてんじゃないわよ!!」

民族性から理解していたが、多少の余裕ができるとすぐに腐敗が進むのが漢民族だ。今も古参の船長たちが禁輸品に手を出していたのが判明したので沈めにきたのだが、私の船の船員も私に武器を向ける。当然、全員見せしめに首を刎ねて並べて罪状を分かりやすく書いた看板と共に船を放流する。

「別に一人でも操船可能だけど面倒を起こして。全く面倒な民族ね」

流れに乗せながら舵を操作して拠点に戻る。拠点の村に戻ると他にも仲間がいたのか私に襲い掛かってきたので蹴り殺す。

「これが貴方達の答えね。ならいいわ、後は好きにしなさい。私は私で好きにする。船も販路も運転資金も残しておいてあげる。好きにしなさい。私はもう手を貸さないから」

恩を忘れるのが漢民族だ。さてと、とりあえずはクラリッサの所に行こうかしら。向こうなら仕事はいくらでもあるでしょうし。








「個対軍はもう慣れたぞ、こら!!最果ての海にたどり着くこと無く滅びやがれ!!」










「大変だったみたいね、蘭ちゃん」

「ええ、もう、本当に。折角7割は征したのに。全部水の泡ですよ。当分、黄河は荒れますから放っておいたほうが良いですよ。陸路を整えて道の駅を作って、今度は陸運王でも目指そうかと」

「ああ、うん、予算とかはすぐに用意するからお願いできるかな?」

「円状と碁盤状、どっちにしておきます?」

「円状かな。これからのことを考えるならそっちのほうが良いでしょ」

「了解。ローマ兵に負けないぐらいに立派な石畳の道路を作ってくるわ」

「ウチの兵士は進軍しながら石畳の道を作っていく工兵なのか歩兵なのか分かりにくいチート兵と比べたら雲泥の差だけどね。まあ、不正をしたら普通に首を切っていいよ。物理的に。ちゃんと国の兵士として十分な給金も与えてるからね。訓練兵時代に叩き込んでるけどそれでも不正をするようなのは邪魔だから。逆に私達の目をかいくぐるほどの悪党なら、それはそれで使い道があるからね」

「その前に、反董卓連合で全員クビを並べられそうなんだけど、私達以外」

「というか、食技と食没って私達身につけてないから、出力で勝てるかな?簪ちゃんはなんとか出来るかもしれないけど、三人がかりで何とか抑えられるかどうかってところだよね?」

「その間、狼の群れが完全にフリーになるから地獄絵図になるような」

「だよねぇ~、早いところ元ちゃんが戻ってきてくれると嬉しいな~。抱いてもらってなくて欲求不満だもん」

「ですよねぇ~」





「ブケファラスごと死ねええぇ!!48の殺人技+1、キン肉ドライバー!!」






「3班に分かれて行動するわよ。1つが天幕を移動させたりした後は休憩、残り2つが道を作っていくわよ。それを一定距離ごとに交代して作っていくわ。つまり、素早く働けばそれだけ休憩時間が増えるわよ。ガンガン道を作りなさい。完成した暁には袁紹様からお褒めの言葉とクラさんから特別手当が出るわ!!さあ、ガンガン道を作りなさい」

ああ、最低限以上の規律があるって素晴らしいよね。やっぱ漢民族の田舎の民を纏めるのが失敗だった。最低限のコミュニティだけで生きてる奴らをまとめれるわけがない。こうやってこの時代の都会の兵士だと大きなコミュニティで生きているし、実力主義があるから一度絞めれば従順に働いてくれる。ちゃんと餌もぶら下げてあるから不満も溜まりにくい。

指示を出した後は班長に任せて資材を乗せた荷駄隊と共に道路の敷設予定先に道の駅、少し大きめな宿屋みたいな物を作りに行く。賊はクラリッサが軍を出しまくって虱潰しにして治安を回復させているからこそ城壁もない場所に宿屋を作れるのだ。簡易的な馬小屋も作って商人が行き来しやすいようにする。無論、治安を良くするために巡回兵用の兵舎も立てる。お金があるって素晴らしいよね。資材も人材も好きなだけ投入できるのも楽。日本人みたいな職人が少なくて船の品質が一定にならなくてどれだけ苦労したことか。

あっ、ウチの組合員が各地で暴れ始めたみたいだけど弓で全滅だって。所詮はそんなものよね。調子に乗った報いよ。いくつかの組は今までと同じく荷運びで慎ましく生きているそうだ。まあ、新参だからあまり強くないのと追い詰められない程度に貧しい状態だからでしょうね。さらば我が艦隊。余裕があればまた他の世界とかで艦隊を作ろう。燃2弾4鋼11?知らない子ね。あの娘達が戦うより私達が直接戦ったほうが速いもの。







「懐かしい匂いがする。お母さん?でも、微妙に違う。お父さんがいたら分かるのに」

「どうかしたんか、恋?」

「懐かしい匂いがした。でも、気の所為」

「懐かしい?なんや、家族とちゃうんか?」

「もう会えないはずの家族の匂い。死んで、ちゃんと綺麗に埋めた。お父さんと一緒に」

「へぇ~、そんならけったいな話やな。にしても初めて狼以外の家族の話を聞いたな。恋のお父さんはどんな人なんや?」

「お父さん、私に何でも教えてくれた。料理も家事も、動物の世話も、読み書き計算も、武器の使い方も手入れの仕方も、何でも知ってて教えてくれた。私よりも弱いのに守ってくれた。私に家族のぬくもりを教えて、与えてくれた。とても、大切な人。だけど、もう会えない」

別れた時の私なら自分から別の世界まで探しに行けた。今の私じゃ、この世界の中しか探せない。スコルとハティとクロスに再び出会えたのだけは幸運だった。

「そっか。すまんな、こんなこと聞いてもうて」

「別に良い。大事な物は今も此処にあるから」

家族の皆がいた、あの大事な思い出は今も胸の中で輝いている。一人だった時、祭り上げられていた時とは違う、私が変わり始めた思い出。微妙に違うけど懐かしい匂いを嗅いでちょっとしんみりする。

「会いたいな。お父さん、お母さん」



 
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