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風魔の小次郎 風魔血風録

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38部分:第四話 白い羽根の男その七


第四話 白い羽根の男その七

「それではそのように」
「承知致しました」
「よろしい。では武蔵」
「はい」
 あらためて夜叉姫の言葉に頷く。
「まずは白虎と紫炎の作戦を円滑に成功させ」
「はっ」
 まずはそれであった。
「それから次の作戦のことを計画しなさい」
「次の作戦ですか」
「そうです」
 それを武蔵に言う。
「確かシンクロナイズドスイミングでしたね」
「その通りです」
 武蔵は既に次の試合、競技のことも頭に入れていた。そこは抜かりがなかった。
「すぐに作戦の計画にもかかりなさい。わかりましたね」
「御意」
「ふんっ」
「まあいい」
 黒獅子も雷電も憮然としながらもこの場を後にするのだった。
「では見せてやろう」
「我等の力を風魔にな」
「そうだな」
 闇鬼は静かに二人の言葉に頷く。
「ここはな。それでいいな」
「・・・・・・気付いているか」
 部屋の扉の陰には陽炎がいた。実は話を盗み聞きしていたのだ。
「やはり闇鬼の耳は誤魔化せぬか。それでは」
「ではこれで」
 陽炎も姿を消し三人も姿を消した。夜叉のくすぶりはまだ続いていた。
 小次郎は相変わらず木に縛られていた。項羽がその彼の相手をしている。
「少しは反省したか」
「うぐっ、むうっ」
 猿轡をされている。しかしそれでも何かを呻いていた。
「やっぱりしていないか。まあいい」
「うぐぐっ」
「暫くそのままでいろ。戦いは俺に任せてな」
「任せるのはいいとしてだ」
 ここで蘭子の声が聞こえてきた。
「おい」
「おっ、蘭子さん」
 項羽は蘭子に顔を向けた。
「学校は終わったのかい?」
「まあな。それで姫様も来られている」
「むぐっ!?」
 姫と聞いて小次郎の様子が変わった。
「うぐっ」
 まずは項羽に顔を向けて叫ぶ。しかし猿轡を噛ませられているので言葉は出ない。
「うぐぐっ、うぐっ」
「小次郎さん」
 そしてここでその姫子が来たのだった。手には何か大層な四角い風呂敷に包まれたものを持っている。そこからは美味そうな香りさえ漂っている。
「どうされたのですか、一体」
「いや、これはですね」
 項羽が何が何なのかわかりかねている姫子に説明する。
「風魔の修行なのですよ」
「修行なのですか」
「はいっ」
 嘘を突き通すのだった。
「こうして縛って動けなくさせてあえて精神力を高める」
「極限の中に置いてですね」
「そういうことです。小次郎は今その修行中なのです」
「成程」
 そして姫子もそれを信じるのだった。素直に微笑みで頷く。
「小次郎さんも頑張っておられるんですね」
「うぐむうっ」
 しかし小次郎は姫子のその言葉に首を横に振るのだった。当然ながら違うのだ。
「頑張って下さいね。けれど」
「けれど。どうしたんですか?」
「折角お弁当を作って来たのですが」 
 残念そうにその四角いものを前に出すのだった。
「これを」
「おお、お弁当ですか」
「はい。お握りに玉子焼きに竹の子とフキの煮込みに」
 何気に和食が多い。
「それと唐揚げと。お漬物にデザートも」
「また美味しそうですね」
「姫様は料理が得意なのだ」
 蘭子がこう説明する。
「幼い頃から作ってこられているしな」
「蘭子さんと二人でか」
「ま、まあな」
 項羽の今の言葉には顔を少し赤らめさせる蘭子だった。
「食事いつも作ってくれているしな」
「女なら当然のことだ」
 このことを理由とするのだった。
「料理ができなければ。話にもならない」
「あと洗濯とかもしてるよな」
「私も女だぞ」
 やはり恥ずかしそうに言う。
「それ位できなくてどうするんだ」
「意外といい奥さんになりそうだな」
「そうですよ。蘭子さんって何でもできるんですよ」
 またここで姫子が話に入るのだった。
「お裁縫なんかも得意ですし」
「成程な」
「あとはお掃除も」
「あの、姫様」
 蘭子がやはり恥ずかしそうに姫子に声をかける。
「何ですか、蘭子さん」
「それ以上は」
「お話しては駄目なのですか?」
「あまり。それは」
 やはり恥ずかしそうである。白い顔が赤くなっているのが証拠だ。
 
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