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風魔の小次郎 風魔血風録

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35部分:第四話 白い羽根の男その四


第四話 白い羽根の男その四

「それはな。確かに」
「それもあって行く。少しここを離れる」
「ああ、待て」
 劉鵬がここで霧風を呼び止めた。
「俺も行こう」
「劉鵬さんがですか」
「ああ。霧風一人じゃな」
 こう麗羅に言葉を返す。
「だから行って来る」
「そうなんですか」
「それでいいな、霧風」
「俺は何も言っていないが」
「じゃあいいっていうことだな」
 わざと勝手な解釈をしてみせる劉鵬だった。笑って」
「それでな」
「勝手にしろ」
「じゃあ勝手にさせてもらう。一人より二人の方が仕事もはかどる」
 笑っての言葉だった。
「そういうことでいいな、竜魔」
「留守は任せろ」
「頼むな」
「劉鵬さんが偵察ですか」
「似合わないな」
 麗羅と林彪は笑って劉鵬に言う。
「何だよ、俺じゃ駄目だっていうのかよ」
「駄目っていうか劉鵬さん里で僕達の指導とか守りってイメージがありますから」
「偵察ってはじめてじゃないのか?」
「馬鹿言え、いつもやってるぞ」
 口が少し尖っていた。
「出陣した時はな、いつもな」
「そうなんですか?」
「俺が嘘を言ったことがあるか?」
「いや、ない」
「それはな」
 林彪と兜丸がそれは否定する。
「御前不器用だからな」
「だから嘘はつけないし偵察もな」
「また御前等も随分言ってくれるな、おい」
 また苦笑いになってしまっていた。
「何か俺言われっぱなしじゃないか」
「まあまあ」
 その言い出しっぺん麗羅が明るい笑顔でフォローを入れる。
「気にしたら負けですよ」
「御前が最初に言ったんだろ。まあいい」
 何はともあれ霧風に問うことにした。
「それで霧風」
「ああ」
「一緒に行っていいな」
「勝手にしろ」
 霧風もそれを受けるのだった。
「それで御前の気が済むのならな」
「悪いな、それではな」
「ただ。劉鵬」
 竜魔がここで劉鵬に声をかける。
「何だ?」
「御前はできるだけ早いうちに戻ってくれ」
 こう彼に言うのだった。
「守りとしてな」
「ああ、わかった」
 竜魔の言葉に真面目な顔で頷く。
「霧風、御前もな」
「それは霧に聞いてくれ」
 しかし霧風はつれない返事だった。
「御前にも近いうちに出陣してもらうことになるしな」
「その言葉は覚えておく」
「じゃあな。竜魔」
 二人は門を出た。こうして何処かへと向かうのだった。
 誠士館。その柔道場で彼等は稽古をしている。
 柔道の畳の上で壬生と陽炎が木刀で打ち込みをしている。武蔵がそれを横で見ており妖水は壁に背をもたれかけさせてヨーヨーを弄んでいる。彼は稽古をしてはいない。
 壬生が陽炎に突きを入れる。陽炎はそれを左手で持つ木刀で受け止め右手の扇子を投げる。しかしそれは壬生が首を右に捻ることでかわされた。壬生はすかさず木刀をさらに突き出す。それを陽炎の喉元に置いて彼の動きを止めたのだった。
「それまで」
 武蔵がそこで二人を止めた。
「壬生、随分と動きが戻ったな」
「そうだ、武蔵」
 壬生は武蔵に顔を向けて彼に言う。
「私はもう大丈夫だ。だから今度の作戦は」
「いや、まだだ」
 だが武蔵は彼の言葉を退けて首を横に振った。
「御前はまだ傷を癒せ」
「何故だ、もうここまで動けるというのに」
「陽炎」
 武蔵は壬生の言葉には答えずに陽炎に顔を向けた。
「何故術を使わなかった」
「稽古ではないか」
 陽炎は武蔵の問いに涼しい顔をしていた。
「わざわざこの陽炎の術を使うまでもない」
「手を抜いたということか」
「それは違う」
 こう嘯いて返す。
「だから言っているだろう?術を使う場ではないということだ」
「術なぞ問題ではないではないか」 
 壬生は焦りを隠さずに武蔵に言い詰める。
「この通りだ。だから私は」
「そうか」
 武蔵は今の壬生の言葉を聞いて一瞬目を伏せた。それから。
 己の持つ剣を突き出してきた。壬生は咄嗟にそれを後ろにかわす。だがそこで態勢を崩し一回転して着地したのだった。片膝さえついている。
 
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