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風魔の小次郎 風魔血風録

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3部分:第一話 小次郎出陣その三


第一話 小次郎出陣その三

「そうですか。また」
「はい」
 黒髪を奇麗にストレートに伸ばした小柄な少女が豪勢な木の机のところで立ちながらスーツの初老の男の言葉を聞いていた。服は白い上と黒いスカートのセーラー服だ。その服装からも清楚な印象を受ける。楚々とした感じがさらに強くなっていた。
「何とか命に別状はありませんが」
「それはいいことです」
「しかし」
 言葉はこれで終わりではなかった。その苦渋もまた。
「もう選手生命は」
「わかりました。これで六人目ですね」
「そうなります」
 男は少女の言葉に頷いた。
「誠士館の引き抜きを断って事故にあった選手は」
「このままでは我が白凰学園は」
「総長、その件ですが」
 ここで話が変わった。
「理事会から新入生のクラスの削減案が出ております」
「それはわかっています」
 少女はその言葉に沈痛な顔で頷いた。頷くと共に後ろの壁にかけてある巨大な肖像画を見上げた。厳しい威厳のある白く長い髭を生やした和服の老人であった。
「我がお爺様が愛されたこの学園を。守っていきたいのですが」
「その件で柳生蘭子さんが動いているそうで」
「はい、そうです」
 男の言葉に頷く。
「今日戻られるとのことです」
「左様ですか」
「蘭子さんが連れて来られる風魔の方」
 少女は己の祖父の肖像画を見上げたまま呟く。まるでその彼に祈るかのように。
「その方が。救って頂ければよいのですが」
「全くです」
 男もその言葉に頷く。だがその時だった。
「総長!」
「何ですか!?」
 部屋に飛び込んで来たのはスーツの若い女だった。この学園の女教師か事務員のようだ。
「校門で。女子生徒達が他校の学生達に絡まれています」
「他校!?」
「はい、それで」
「わかりました」
 少女はすぐにその女の言葉に頷いた。場が一変し暗鬱としたものから緊迫したものになる。少女の顔もまたそれと同じであった。
「すぐに行きます」
「は、はい」
 こうして少女は部屋を出てそのまま校門に向かった。学園の中はかなり広くスポーツ関係の設備が整っているのが見える。その中を駆けながら校門のところまで来たのであった。
 そこには三人の超長ランのガラの悪い学生達と数人の少女達がいた。少女達は白凰の制服を着ているが超長ランの方は完全に他校の生徒だ。言うまでもなく少女達が絡まれているのである。
「いいじゃねえかよ、お茶位」
「付き合えよ」
「誰があんた達なんかとっ」
「そうよ」
 少女達は露骨に嫌悪感をその顔にも態度にも見せて彼等の誘いの手を振り払う。随分と木の強い娘達であるようだ。
 しかしその気の強さも無意味なものだった。三人組はそんな彼女達を見ても余裕の態度を崩さず逆に彼女達を取り囲んでしまった。そうしてまた言うのだった。
「俺達誠士館はイケメン揃いだぜ」
「だからよ。うちの学校に来てな」
「あんた達の学校に誰が行くもんですかっ」
「さっさと帰りなさいよ」
「またこれは随分と」
 彼等はそんな少女達の言葉を聞いてまずは肩をすくめてみせた。しかし余裕たっぷりの態度は変わらない。からかったものさえそこにはある。
「気が強いねえ」
「どうしたものだか」
「どうしたもこうしたもないわよ」
「帰れって言ってるでしょ」
「その通りです」
 そしてここに。先程の少女が姿を現わしたのであった。整った顔にキッとしたものを浮かべて三人組を見据えている。
「ここは名門白凰学園の校門。勝手なことは許しません」
「名門っていうけれどよ」
「随分と今じゃ落ちぶれてるよな」
 だが三人はそんな少女の言葉を聞いても態度を変えない。それどころかさらにふざけたものを見せる有様であった。
「かなりな」
「今じゃ俺達誠士館の天下だぜ」
「くっ・・・・・・」
「おっ、そういえば」
 彼等は少女が怯んだところでその顔を見てあることに気付いた。
「よく見ればこれはこれは」
「白凰の総長代理であられる北条姫子様じゃありませんか」
 それが彼女の名前と地位であった。この学園の学生であると共に総長代理なのである。そうした複雑かつ困難な立場であるのだ。
「どうやら総長様自ら俺達の相手をして下さるようで」
「では早速」
「下がりなさい」
 姫子は気丈さを取り戻して彼等に向かう。自分ににじり寄ってくる彼等に対して。
「それ以上近寄れば」
「どうだってんだよ」
「何かあるのか?」
 攻防が続く。そこにまた二人。今度は姫子の後ろから来た。
 
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