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風魔の小次郎 風魔血風録

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24部分:第三話 忍の掟その二


第三話 忍の掟その二

「では。中々楽しめそうだな」
「武蔵、不知火は単独行動か」
「そうだ」
 武蔵は今度は壬生の問いに答えた。
「奴はその方が得意だったな」
「うむ」
 忍といえどそれぞれのタイプがあるのだ。それは今ここにいる他の八将軍達を見てもわかることだった。そして彼等もそれをよくわかっていた。武蔵もまた。
「一応は同志達が既にボーリングに配されているがな」
「面白い」
 雷電はそこまで話を聞いてあらためて好戦的な笑みを口の左端に浮かべさせた。
「ではそこが風魔の墓場になるのだな」
「武蔵」
「はい」
 彼等の話が一段落ついたところで夜叉姫が武蔵に声をかける。武蔵もそれに応える。
「では今回のボーリングは不知火に任せるのですね」
「不知火ならば安心できると思いますが」
「確かに」
 夜叉姫も彼のその言葉に頷く。彼女も己の配下の中で最強の一人である彼の実力はよく知っていたのだ。だから頷くことができたのだ。
「では今回はそのように」
「それだけではありません」
 武蔵の言葉は続く。
「それだけではない」
「これからも試合において白凰との対決が続きます」
「はい」
 夜叉姫は誠士館の総長でもある。だから試合のことも全て把握しているのだ。これから先彼等との試合が多く重なることもだ。
「その都度八将軍を投入します」
「八将軍をか」
「必ず風魔も来ています」
 彼はそれを読んでいた。
「ですからこちらも八将軍を送りその都度倒していきます」
「それで戦いを進めていくのですね」
「それで如何でしょうか」
「いいでしょう」
 夜叉姫も武蔵のその言葉を受けて頷いた。
「指揮官は貴方です」
 次にこう述べた。
「だからこそ任せます。いいですね」
「はい、それでは」
 こうして方針も決まった。まずはボーリングの試合だった。既に不知火は同志達とのかかり合いのトレーニングを終えていた。額に汗をかく彼は満足そうに微笑んでいた。
「これでよし」
 その汗を感じての笑みだった。
「後は風魔の奴等を倒すだけだ」
「不知火」
 ここで彼に声をかける者がいた。見れば壬生だった。
「壬生か」
「今から行くのだな」
「そうだ」
 不敵に笑って壬生に応える。
「まずは一人だ。期待していろ」
「わかった。しかしだ」
 ここで壬生は不知火に対して忠告した。
「どうした?」
「わかっていると思うが風魔は手強い」
「そのことか」
「そうだ。侮ることのないようにな」
「安心しろ。この不知火決して相手を侮ることはない」
 その壬生に対して返した言葉だった。
「安心しているがいい。ではな」
「うむ」
 不知火の周りに幾つかの人魂を思わせる黄色に近い色の炎が生じた。彼はそれを漂わせたまま何処かに姿を消した。後には壬生だけが残っていた。
 朝。風魔一族の面々は畳の部屋において卓を囲んでいた。そのうえで朝食を食べていた。
 メニューは白い飯に若布と豆腐の味噌汁、鰺の開きに納豆と海苔、それに漬物だった。そうしたものを食べながら話をしていた。
「これ美味いな」
「そうだな」
 兜丸が劉鵬の言葉に頷く。兜丸の横では項羽が左手で箸を持って味噌汁を飲んでいる。二人は漬物を食べていた。青菜の漬物だ。
「蘭子さんが着けたのかな」
「そうじゃないのか?」
 劉鵬は兜丸にこう応えた。
「この梅干も」
「そうか。蘭子さんっていい奥さんになれるよな」
「この納豆もそうですかね」
 麗羅はにこにこと笑いながら納豆を御飯にかけていた。
「自家製で」
「おそらくそうだな」
 その麗羅の隣にいた霧風が応える。
「この味は間違いない」
「いいものだ」
 項羽はやはり味噌汁を飲んでいる。
「ダシもいい具合に取っている。関西風にな」
「味はやはり関西か」
 竜魔もまた味噌汁を飲んでいた。
「関東は。どうもな」
「そうだな。やはり関西風が一番だよな」
「そうそう」
 彼の言葉に劉鵬と兜丸が頷く。
「飯が進む」
「劉鵬、御前またおかわりか」
 項羽は劉鵬が御飯を入れるのを見て苦笑いを浮かべる。
「また今日もよく食うな」
「そうか?」
「そうだよ。まあ俺も人のことは言えないけれどな」
 見れば項羽もおかわりをしていた。左手にしゃもじを持って入れている。
 
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