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風魔の小次郎 風魔血風録

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17部分:第二話 夜叉八将軍その五


第二話 夜叉八将軍その五

「その我等に指示を出し動員してその間に」
「我が夜叉を乗っ取るのか?」
「今の間の八つの地域に手を回すなりしてな」
「丁度本陣と夜叉姫様を御守りする壬生も負傷しているしな」
「俺がそんな小細工を弄すると思うのか?」
「思っているから言うのだ」
 八将軍も引くことはない。
「風魔九忍衆がいるのもわかっている。だがな」
「何かを企んでいるならば。貴様はここで」
「ならばだ」
 ここまで言われては武蔵も引けなかった。
「それを今確かめてみるか」
「面白い」
 八将軍は多いの紐を取りそこから長剣を出そうとする武蔵に対して一斉に身構えてきた。
「誰の手にかかって死にたい?」
「その程度は選ばせてやるぞ」
「貴様等・・・・・・」
 対峙が続く。しかしこの時だった。
「貴様等何をしている!」
「壬生!」
 壬生がやって来た。松葉杖をついてはいるがそれでも急いで彼等の間に入るのだった。
「同じ夜叉同士で争って何になるのだ。それこそ風魔に付け込まれるぞ」
「夜叉同士か」
 だが八将軍はその言葉に顔を強張らせるだけだった。
「我等はそうは思っていないがな」
「何っ!?」
「壬生、貴様もこの男のことは知っている筈だ」
 陽炎が壬生に対して言う。
「傭兵に過ぎず妹の入院費と手術費の為に戦っている」
「そう、それにだ」
 黒獅子がそれに続く。
「そもそも忍ですらない。かといっても普通の人の世界でも生きられぬ化け物」
「化け物だから何だというのだ」
 しかし壬生は武蔵を庇うようにして彼等に言うのだった。
「その力を見込んで夜叉姫様は武蔵を雇ったのだぞ」
「夜叉姫様が」
 その名を聞いて八将軍の動きが止まった。表情も強張り場が違った意味で緊張しだした。
「そうだ。我等は夜叉姫様に絶対の忠誠を誓っているな」
「う、うむ」
「確かに」
 また夜叉姫の名を聞いて彼等はさらに強張る。
「その通りだ。それは」
「それではだ」
 壬生は彼等が応えたのを見てまた述べる。
「武蔵はその夜叉姫が直々に任命されたのだ。それに従え」
「・・・・・・くっ」
「わかった」
 苦い顔だったが壬生の今の言葉に頷くのだった。
「夜叉姫様の御言葉として聞こう」
「しかしだ、武蔵」
 それでも彼等は言うのだった。
「これで話が終わったわけではない」
「武蔵よ。今の野球の試合にはあの風魔の忍も来ている」
 そのことを彼等に告げる。
「どうするのだ。奴は」
「このまま見過ごすのか?」
「無論そのつもりはない」
 それは否定するのだった。その間に剣を抜いている。長い、とてつもなく長い木刀だった。
「この剣にかけてな」
「そうか。それならば」
「見せてもらおう」
「あの山猿・・・・・・」 
 今の言葉と共に目が光った。黄色い光だった。
「この飛鳥武蔵の名にかけても倒す」
 その言葉と共に武蔵は姿を消した。壬生と八将軍もそれに続く。この時小次郎は観客席で姫子と一緒に試合を見ていた。その時誠士館側の得点でボードがひっくり返ったがその時にそこに人影が見えた。小次郎は同時にそこから彼等の気配も感じ取ったのであった。
 
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