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風魔の小次郎 風魔血風録

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154部分:第十三話 暖かい風その十三


第十三話 暖かい風その十三

「その後はだ」
「ぱーーーーっと騒ぐか」
「朝飯に決まってるだろうが」
 小次郎に今度は兜丸が突っ込みを入れた。
「終わると朝だろうが」
「あっ、そうか」
「そうだ。朝だ」
 項羽もそこを言う。
「朝飯を皆で食うぞ」
「あのドブスの家でかよ」
「飯を作るのは姫様だぞ」
 林彪がそっと小次郎に囁く。
「それでも嫌か?」
「あっ、いや」
 それを言われるとやはり顔が急に緩む小次郎であった。
「それならまあな」
「わかりやすい奴だ」
 霧風はそんな小次郎の言葉を聞いて言う。
「だが。それはそれでいい」
「いいのかよ」
「小次郎」
 竜魔がここで小次郎に声をかけてきた。
「んっ、今度は何だよ」
「これが終わり屋敷での食事の後で里に戻る」
「ああ」
「怪我はするな」
 このことを念押しするのだった。
「そこはな。注意しろよ」
「ああ、総帥の兄ちゃんが待ってるしな」
「兄弟達もだ」
 言わずと知れた風魔の兄弟達である。
「皆待ってるぞ」
「あの蜂の巣もあるんだよな」
「あれをどうするつもりだ?」
「そりゃよ」
 楽しそうに笑いながら竜魔に述べる。
「蜂の子と蜂蜜をだな」
「食うのか」
「兄ちゃんはいらねえのか?」
「いや、欲しい」
 微かに笑って小次郎に答える。
「蜂蜜・・・・・・あれはいいものだ」
「兄ちゃんも案外お茶目なんだな」
「お茶目か」
「っていうか結構ユーモアあるよな」
 竜魔に顔を向けての言葉だった。
「最近まで気付かなかったけれどよ」
「そうだったか」
「ああ。さてよ」
 ここで小次郎の顔が引き締まった。
「向こうも来たぜ」
「ああ」
「来たな、風魔」
 向こう側には八将軍がいた。そして壬生も。壬生は八将軍の中央に立っている。
「待っていたぞ」
「壬生、傷はもういいのかよ」
「安心しろ。無事完治した」
 不敵に笑って小次郎に言葉を返してみせてきた。
「姉上や同志達の力でな」
「そうかい。じゃあ手加減する必要はねえな」
「生憎だがそれは私の言葉だ」
 木刀を前に突き出して述べた言葉だ。
「小次郎、今度こそ貴様を地に伏しさせてみせる」
「おいおい、随分また自信があるな」
「貴様こそ大丈夫なのだろうな」
 彼の方から小次郎に問い返してきた。
「風林火山もなく」
 見れば彼が今持っているのは普通の木刀であった。風林火山の様に巨大では会ったがそれは紛れもなくごく普通の木刀であった。
「この私に勝てるか」
「おめえの方こそ大丈夫なのかよ」
 小次郎もまたやはり不敵に笑ってみせた。
「黄金剣なくてよ」
「あれは武蔵のもの」
 顔から笑みを消して答える。
「私のものではない」
「だからいいんだな」
「そうだ。私には私の剣がある」
 もうそれを悟っていた壬生であった。
「それで貴様を倒す。それだけだ」
「武蔵か」
「そうだ。武蔵のものだ」
「あいつは今どうしてるんだ?」
「さてな」
 小次郎のその問いにははっきりしない返事を返した壬生だった。
「姿を消してそれからはだ」
「見ねえってわけか」
「おそらく今は一人で静かに生きている」
 妹を失くし傭兵でなくなった彼は。もう闘う理由がないからだ。
「だからだ。もう」
「そうか。ならいいさ」
「貴様もいいのか」
「俺達もな」
 小次郎は笑って壬生に告げた。
「戦いが終わればそれでいいんだよ。それでな」
「風だからか」
「そうさ、風さ」
 言いながら構えに入る。
 
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