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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  救急


「EARTH」襲撃や、ティアナ達の留置場訪問より、時間は少しだけ巻き戻って





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「さて・・・・ティア達は事件の調査に行っちゃったし、こっちは見事に暇だね~」

「そうですね~」

「よっしゃ!!こういう時は筋トレしようぜ!!」

「うっさい筋肉」

「はは、おいおい。それぁ褒め言葉か?照れるぜ」



スバルの部屋で、彼らが目を覚ました時にはすでにティアナと理樹、ルネッサはいなかった。
おそらく、スカリエッティのもとに向かい、話を聞きに行ったのだろう。

それなりに離れた世界にあるから、仕方がない。



「どうします?」

「う~~ん・・・じゃあさ、ミッドのこと知らない鈴ちゃんや恭介さんたちに、ミッドっ子の私が観光スポットを紹介しちゃいましょう!!」

「おぉーーー!」



そう言われて、よしそうとなれば、と即座に身支度を済ませる。

やはりなんだかんだで、外出は楽しいのだ。




それから数分後には全員が準備を済ませて玄関に立っていた。


無論、もしも緊急出動が掛けられた時に対応できるだけの準備も済ませてある。



「えっと・・・このボタンを押せばいーんだな?」

「そうだ。それを押せばもしもの時には即座に「瞬風」に転送されるから、そこから援護を頼むぞ」

「りょうかーい!」



そういって、リトルバスターズ女子メンバーはポケットに端末を入れてこれで良し、と靴を履きかえた。



「じゃあいくよー」

「どこに行くんですか?」


「むっふふう。ミッドに来たなら、まず見なきゃいけない場所!マリンガーデンだよ!!」




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ミッドチルダの海辺
湾岸部に設置された臨海都市を丸々ひとつアミューズメントパークにしたような場所だ。

少し前までここは発掘場だったのだが、それも終わってしまったために、再利用された土地なのだ。


海の眺めはいいし、地下に潜れば海の中も一望でき、場所にもよるが海中と海上の狭間を見ることだってできる。
さらには昔の発掘上だった場所も見学でき、博物館のようでもあるのだ。


天然の水族館や、上の方には遊園地。
大規模なショッピングモールもある。


丸一日では到底まわりきれないような、とても大きな場所だ。



海辺で、しかもそれだけの設備が備わっていればそこに人気が出なくなるわけもなく、毎日のように多くの人がやってきて賑わっている。




まあそんな場所だから、もちろん朝一番から入らなければ見れない場所もある。
そのためにメンバーは開店時間よりも少し早めにつくように家を出てきたのだが・・・・・


「あちゃー、これじゃ全部回れないかもねー」

「そもそも一日で見れないんだから、焦ったってしょうがないだろ?また明日もあるさ」

「明日はルネッサさんもいっしょがいいなー」

「あっちは捜査があるから無理だろ」



そういって電車(と言ってもイメージとしてはモノレールと言った方がいいかもしれない)に乗ってマリンガーデンに向かう一向。



車はないし、だからと言って「瞬風」で行くのもどうかというから、まあ必然的に電車しかない。



「まず何見る?」

「お洋服とかー、お菓子とかー♪」

「あはは、だったらすっごくおいしいお菓子屋さんありますよ!」

「ほんと~!?スバちゃんありがと~」


ピピピピ

《相棒。防災課から連絡です》



と、そこにスバルのマッハキャリバーに防災課からの連絡が入る。
彼女は今、連続放火事件担当のティアナに協力として貸し出されている状態だ。


その彼女に、防災課から連絡が入るとなると・・・・



「ん、繋いで」

《OK》




『スバル!!お前今どこにいる!?』



マッハキャリバーが通信をつなぐと、その相手はスバルの上司、ヴォルツだった。
相手の剣幕に少しびっくりしたスバルだったが、聞かれたことに対して正確に答える。


「えっと・・・電車の中です。せっかくだからみんなでマリンガーデンに向かってるんですよ」

『ホントか!!そいつぁついてる・・・・おい!そっからマリンガーデンは見えるか!?』

「え?」


『マリンガーデンで大規模火災発生!!しかも火元は地下だ。いずれ全部焼け落ちるぞ!!』

「!?」

「みなさん、ちょっとすみません!!」

「「EARTH」です!!ちょっと窓の外を見せてください!!」



スバルの通信を聞いていたエリオや謙吾が、とっさに窓際に駈け寄って外を見る。

はじめてくる彼らはマリンガーデンがどこにあるか知らなかったが、黒い煙というはっきりとした目印が目に飛び込んできた。


「スバル!!」

「確認しました!!中に人は!?」

『開園前だったからな。客はいないし、従業員もすぐに脱出したらしい。だが万が一ってこともある』

「わかりました!!じゃあ先行して現場(げんじょう)に向かいます!」


『すまん!!こっちも向ってるんだが、お前らの方が早い!!「EARTH」の兄ちゃんたちも、頼んだぜ!!』

「ああ。任せておけ!!」



そうして、通信が切れてちょうど電車が止まる。
そして、そこの駅で全員が降りて、即座に恭介が声を張り上げた。



「全員いったん「瞬風」に!!そこから一気に向かう!!端末持ってるやつにつかまってくれ!!」



恭介の指示通り、スバルやエリオが女子メンバーにつかまって、そのまま瞬風に転送される。



戦艦が停泊しているのは海中だ。
こっちからのほうが絶対に速い。



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「状況は!?」

「地下から燃え上ってきた炎がビル内部の七割を焼いていますっ!」

「職員やスタッフは全員の無事が確認されています」

「そう・・・」

「!!ビル内にマリアージュの反応あり・・・!?さ、さらに生体反応をキャッチ!!生存者です!!!!」


「なに!?」


『じゃあ私の出番だね』

《OK》




そういって、ビルの入り口だった場所に、スバル・ナカジマがセットアップをして立っていた。
目の前には、燃え上がるビル。


背後・・・地上では脱出してきた人たちの救助が行われており、けがの治療が行われていた。



「行くのか?」

「はい」

「だったら俺たちも行くぜ」

「スバルさん一人は危険すぎますし、マリアージュだっていますから」


「わかった。お願いね!!」

「おう!」「はい!!」




そういって、真人とエリオを後ろに、スバルが挑みかかるかのように一歩、ビルに向かって近づいた。



「今度こそ助けて見せる・・・もうだれも、死なせない!!」

《その通りです、相棒!!》

「バリアジャケット、アンチハザードモード、着装!!」

《OK!!》



そうして、マッハキャリバーがスバルの体にあらゆる災害のためのバリアジャケットを着せる。

より高温に耐え、より水圧に耐え、災害から人の命を救うために、彼女は持てるすべてを出し切る!!



「人の命は地球の未来。燃えるレスキュー魂・・・・そう、言ってたもんね!!!」

《子ども時代のヒーローですか?》

「うん・・・・私だって、ヒーローにあこがれるもん!!行くよ!!二人とも!!」





待っていて。



生きていて。






絶対そこに、たどり着くから!!






「誰よりも、どこであろうとも、一直線に最短距離で!!!」






そうして、スバルがウィングロードを展開して、生体反応のある場所に向かって一直線に向かっていく。


相手はマリアージュなどではない。
そんなもの障害でもなんでもない。



「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」



ドォン!!




壁を崩し、内部に突入。
直後、マリアージュが一気に五体ほど飛び掛かってくるが、それを流れるような連撃で次々に殴り、蹴り飛ばしていく。

右拳、左拳、そこから腰を返して右の回し蹴りにそのまま回転して左の後ろ回し蹴り、そして最後に再び右拳で、それぞれを一撃で吹き飛ばしていった。


彼女らが壁に叩きつけられ、どろりと溶けて発火していくが、あとから到着したエリオと真人が消火剤を使ってそれを消していく。


「スバルっちは早く行け!!!」

「ここは僕たちが引き受けます!!」

「わかった!!絶対に・・・」

「無茶しない。それはスバルさんも!!」


「あはは!!!それじゃ!!」



そういって、スバルがマッハキャリバーをフル稼働させて深部へと突っ込んでいく。



途中の瓦礫などにマリアージュがはばまれていて邪魔だったが、彼女らを消し飛ばしてなおも奥へ。




通路にぎっしりと、マリアージュがひしめいているエリアもあった。


しかし、そこでブレーキをかけることなどない。



スバルがそこを通過する前に「瞬風」からの冷凍砲撃によって軒並み瞬間冷却させられ、氷の塊となったそれを粉砕していくからだ。


「行って来い!!」

瞬風の上に立つ恭介が、彼女を後押しする。


恐れるものなどもうない。

助けるべき命まで、隔てる壁はもうあと一枚!!!



そして・・・・・・




「見つけた!!」



スバルがその視界に、彼女を捉えた。
少女はおどおどするわけでもなく、この状況に対し比較的落ち着いた状態で佇んでいた。




「あなたは・・・・」

「スバル・ナカジマ防災師長です!!あなたを助けに来ました!!」

「助・・・けに?」

「あなたの名前は?・・・・・」



スバルが少女の肩を掴んで、怪我がないかどうかを確かめる。


どうやら、怪我の類どころか、火傷ひとつもないようだ。


「とにかく良かった・・・これから、外に出ます!私につかまって!!」

「・・・だめです。私から離れてください!私は、災厄を呼ぶもの・・・私と一緒にいては、あなたが!!」


しかし、それを拒絶してしまう少女。


この瞳を、スバルは知っている。
自分は兵器だと、いてはならないと悟った少女。


だからこそ、スバルはどうしても救いたかった。




しかしそうはさせないと、その場に新たな参入者が。



《見つけました。イクス、我々とともに来ていただきます》



「マリアージュ!!!」



そこにマリアージュが襲来、彼女を寄越せと言ってきた。
もちろん、それに対して「はい」と言えるわけもない。




「断る!!」

「逆らってはダメです!!あいつは師団長クラス・・・・あなたの知っているマリアージュとは違います!!」

「え?」




なぜこの少女―――イクスというらしい―――がそんなことを知っているのかは解らない。
しかし、それでもこの言葉は本当であることがスバルにはしっかりとわかっていた。



こいつは、今までのとは違う!!



「大丈夫・・・こう見えても私、強いから!!」



グ・・・・ダンッッ!!!



「世界最強の人から教えをもらっているんだもん・・・・負けるはずなんて、あるわけない!!」

《挑みますか・・・・》



腰を落とし、右拳を腰に、左腕を立てて前にだして型を構えるスバル。
それに対しマリアージュは無造作に剣を取りだして突きのように構えた。


構えるという動作そのものが、このマリアージュにはなかったことだ。
この動きだけで、今までのとは違うということが分かった。


しかし、スバルの心に、「負け」という単語はどうしても浮かんでこなかった。



地面を踏みしめ、拳を構える。


それは到底「兵器」ではなしえない構え。
「人間」にのみ到達できる境地。


鋼の体に、金属の骨格。



しかしてそれを動かす原動力は、どんなものを使って燃えることのできない膨大な熱を持ったもの。



その原動力、物体に非ず。

確かに(ここ)にありながら、決して燃え尽きぬ不屈の炎!!!




「来い!!」


ダウッ!!



そうして、マリアージュが剣を突き出して突進してきた。


しかも、無数の瓦礫を飛ばしながら、猛然と突っ込んできたのだ。


その速度は最初から最高速(トップスピード)
ただの人間ならこの一突きで終わる。


が、スバルはただの人間ではない。



飛んできた瓦礫のすべてを殴り、蹴り飛ばし排除した。

そして剣の切っ先がスバルへともう到達するといったところで、いまだ飛んでくる残りの瓦礫のすべては粉微塵となって消滅した。


《!?》



驚愕するマリアージュ。
しかし、その剣はもう止められない。


その剣筋を見切り、スバルは上体だけを右に少しずらして避ける。
と、同時に左腕を剣に絡ませ、脇に挟んで締め付けた。


するとその一瞬で剣が砕け折れ、反対に右拳のリボルバーナックルが蒸気と魔力粒子を噴き出して、空気を振動させて猛烈に回転し始めた!!!



「オオオオオオオオおおお!!!」

「この力・・・戦闘機人?」


イクスが呟くが、その声は誰にも届かない。
そのようなこと、些細な問題であると言わんばかりに!!


「振動拳ッッ!!」


《な・・・そんな・・・!?》



粉爆裂破(ふんばくれっぱ)ぁッッ!!!」



ビシリ!!ブワァァアアアアアア・・・・・ッッ!!!




その一撃、まさに必殺。

師団長クラスと言われたそのマリアージュは、粉々に砕けるどころか霧になって文字通り消滅してしまった。


しかも、あまりにも粉砕が細かく行われたために発火作用すらも失われている。



「ハァッ・・・ハッ・・・・ハァ――――・・・・・」


そうして、スバルが両拳を目の前でクロスし、息を吐きながらゆっくりと開いて降ろしていく。





残心





勝者たる彼女は、なおも悠然だった。




確かに、あのマリアージュは強かった。
師団長クラスといわれるだけのこともある。

だが、だからなんだというのだ。



ここには救うべき命がある。
兵器だとか、火事だとか、そんなもののため――――否、どんなことがあろうとも、失われていい命なんか、一つたりとも存在しない。




だから、彼女は勝利する。



理由なんて必要か?
大層な理想が必要か?



いいや、そんなことはない。



その場に助けたい人がいて、そこに手を伸ばす限り、人はどんな障害も乗り越えるのだから。




「あの・・・わたしは・・・」

「もう、助けなくていいなんて言わないでくださいね?」

「え?」



「助かりたくても、助からない人もいる。それなのに、まだ生きていられる貴女がそんなこと言っちゃだめです!!」

「あ・・・ぅ・・・」


そう言って、イクスの手を取ってその場を去ろうとするスバル。

その時、ティアナから連絡が入り――――――





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「何だお前は!?」

「アンティーク、って奴らか?」

「アンデットだ。何で間違えるかなぁ?もう」



そのビルの別の場所で、真人とエリオが一体のアンデットと遭遇していた。


まだ全快ではないのか、少し息苦しそうにしているものの、その体から感じる強さはそれでも彼らは圧迫するにふさわしいものだ。



「他のやつらは大人数かっさらいに行ったからなぁ・・・・ダメージ負ってる僕は、翼人が来る前にこっちの「冥王」をいただきに来たのさ!!」

「他の・・・・さらいに!?」

「そうかよ・・・お前がちっこい奴らをさらってる・・・・」



「おうよ!!俺はもう一人さらってるからよ。こうして一人で派遣されてきたんだよ?」

「!!・・・・じゃあ、お前が・・・・」



それを聞き、エリオがストラーダを構えて相手を睨みつける。


「お?やる?まあイクスヴェリアをいただくには、テメェ様方をぶっ倒してやらなきゃならないんでしょうけどなぁ!!!」



バツッ!!!



エリオの全身から、電流が迸る。




相手はドーベルマンアンデット。まだ回復しきっていない状態だ。
しかし手負いと言えども、上級アンデット。



決して油断の出来る相手ではない。





to be continued

 
 

 
後書き

イクスヴェリア救出!!
はい、今回は完璧にゴーゴーファイブでしたね!!

とにかく熱くいきました!!


そして、エリオとドーベルマンアンデットの戦い。


相手は手負いですが、それでもあいつですからねぇ・・・・



次回は「EARTH」での戦闘も交え、どんどん行きたいと思います!!


ではまた次回!!

 
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