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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第三章 X《クロス》
  告白


スバル宅内のリビング。
そこで恭介が、先ほど起こったことを簡単に説明していた。


ブロッサムアンデットの襲撃。
相手が狙っていたもの。
そして、そこから助けたこと。



それが終わると次に、ルネッサが前に出てきて、テーブルの上にある一つの小さな端末を置いて話を始めた。



「数か月前、私の部屋にこれが送られてきました」

「・・・これは?」


「マリアージュの制御装置・・・・のようです」

「!!?」



ルネッサの言葉。
しかし、それにはなんだか確証がないようだ。


順を追って話そう。



数か月前、彼女の部屋にある小包が届いた。
入っていたのは、「これは貴女の父が残したものだ。貴女の為すべきことを為せ」という小さなメモと、一緒に送られてきた端末。

彼女は最初、それがなんなのか知らなかった。
起動させようにもしないのだ。



そして、それと時を同じくして発生した今回のマリアージュ事件。



それを追っていくうちに、彼女は気づいたのだ。
これはマリアージュが発生し、事件が起こるたびに反応している、と。


しかし、最初は全く気付かなかった。
そもそも、マリアージュは普通に人間だと思っていたのだ。


無理もない。あの外見で「人間ではなく兵器」だと思う方が難しい。



だが、ティアナの「彼女らは兵器である」という結論。
それによって、事件を追ううちに抱いてきていた疑惑が、確証に変わった。

そこからマリアージュを「兵器」として今晩調べようと思っていたのだが・・・まあその前にこちらの運ばれてきたという次第だ。



彼女の確証。
それによって、彼女は「彼女の親」の言葉を思い出していた。


「世界に痛みを。今この平和がどれだけ脆く儚いものなのかを思い知らせなければならない」


そういっていた彼の名前は、トレヴィア・グラーゼ。
陰惨な内戦地域でルネッサが出会った老人であり、その地での唯一の救いだった人間だ。

いま彼女が此処にいるのは、トレヴィアのおかげと言っても過言でもないほどに。
彼は彼女の父となりえていた。


しかし、そんな彼も数年前に死んでしまう。



ならば・・・・彼の思想を受け継ぐのは自分だけしかいない。
小包にあったメモ、そして、「父」の残したこの端末。


そういった経緯で自分のもとに来たかは知らない。


受け取った時はなんだかまったくわからなかった。


しかし、今はわかる。これの使い道が。


それが彼女を、誘惑した。
自分の為すべきこと。それは、これを使って・・・・・


マリアージュを自分が手引きして、世界により効果的な痛みを・・・・


そう、思っていた。
今日の事件が終わり、ホテルでティアナからの連絡を受けるまで。


しかし、その思いも今はない。
それははっきりと、ブロッサムアンデットに言ってやった。



あの化け物曰く、これらの真相を知った自分にマリアージュを操らせ、あるものを探させるつもりだったらしい。



しかし、最終的に彼女はこれを使うことをやめた。
その原因となったのは・・・・




「ありがとうございました。みなさん」


そういって、ルネッサが頭を下げる。
その相手は、この部屋にいる全員だ。



世界は決して、平和であることに堕落などしていない。

そう、思わせてくれた人たちだ。



もし・・・・
もう何年か後だったら、彼女は踏みとどまれなかったかもしれない。

もし、もう何年か検死官をし、途絶えることのない、事件に巻き込まれたいくつもの死体を見ていたら・・・・彼女はこの世界の愚かさを嘆いてしまったかもしれない。
世界に牙をむいてしまっていたかもしれない。



「それでも、私は世界はまだ素晴らしくあれると思えました。本当にありがとうございます」



そういって、また頭を下げるルネッサ。
そして同時に、ティアナに向かって両手を差し出していた。


「なに?ルネ」

「私は・・・これを持っていました。何かわからなかったとはいえ、事件を止められたかもしれないモノを。しかも、これから使おうとも思ってしまっていた。だから・・・」

「馬鹿ね」

「え?」



ティアナがルネッサのその手をおろし、しっかりと目の前に立ってこう言った。



「貴女は最初、これがなんなのか知らなかった。ここに来てやっと、マリアージュ制御のプログラムだとわかった。それを使おうとも一瞬思ったが、踏みとどまってマリアージュの活動を全停止させようとした。そういうことでしょ?」

「はい・・・・」

「だったら、あなたは罪に問われない。故意がない以上、私にはそこに手錠をかける権利を持ってないわよ?」

「しかし、何かしらの・・・!!」

「うーーーん・・・じゃあこの場合、「EARTH」的にはどうなるんでしょうね?理樹」


素直に「わかりました」といわない・・・・というか、言えないルネッサ。
それに対し、ティアナはじゃあどうしようか、と理樹に聞いてみる。


「そうだなぁ・・・・上司であるティアナに報告しなかったことへの始末書かな?」

「そ・・・そんなことで?」

「それとも筋肉に関して原稿用紙300枚のレポートでも書くか?」

「いえ・・・遠慮します」


と、そこに口を挟んできた真人。
こういう空気の時、彼のバカは素晴らしい効果を発揮する。

愛すべきバカとはこういうことを言うのだろう。


それを以って、ティアナがパンパンと手を叩いて話にピリオドを打とうとした。


「だったら!これでこの問題はおしまい!さ、明日は忙しくなるわよ。そういえば、その端末は使えるの?」

「あ、それは・・・さっき見たら、あいつの砲撃で発生した衝撃で細部が故障したみたいで・・・・うまく起動しません」

「そう・・・・」


テーブルの上にある端末。
それは見た目こそ無傷でも、中のチップやら何やらは破損してしまっているようで、もう使える状態ではないようだ。


「ま、明日はスカリエッティのところに行くわよ。マリアージュ、トレヴィア、冥王・・・・聞きたいことはたくさんあるから」





そういって、各人布団に入って翌日に備えた。


一人の少女を救った夜は、こうして朝に向かって輝いていく。





余談だが、翌朝になって簀巻きにされている来ヶ谷が発見された。
ルネッサの布団にもぐりこもうとして、反撃されたようだ。





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深夜





地方都市、冬木市





その郊外の森に、大きな大きな屋敷・・というよりも、すでに城と呼べるような建物がある。
と、いうかその建物の名称は「アインツベルン城」だ。

呼べるような、どころか立派な城だった。



その城の高い場所にある一室。



その部屋の中で、一人の少女がベッドの中でじたばたと暴れていてメイドを困らせていた。




「やーだー!!士郎の家に泊ーまーるー!!」

「アインツベルンの淑女がはしたないことするんじゃありません!!リゼも見てないで手伝ってください!!」

「えー?私もあっちのほーがいい―」

「クラぁ!!!」



部屋から出て行こうとする、イリヤ。
その服をつかみながらもずるずると引きずられる、セラ。
それを眺めながらお泊りの荷物を抱える、リゼことリーゼリット。



どうやらイリヤは士郎のいる衛宮邸に泊まりたがり、淑女たれというセラはそれをよしとしなかったのだろう。



「私だって狙われてるかもしれないのに、ここに一人にしてていーの?さ、お兄ちゃんのところに・・・・」

「バーサーカーがいますよ!それともバーサーカーよりも衛宮士郎の方が強いと!?」

「う・・・・でも・・・」


確かに、バーサーカーは限りなく強い。
その体をもってすれば、勝てない相手はそうそういないだろう。


その宝具「十二の試練(ゴッドハンド)」はその命の上限を十二に上げるものだ。
一時期は七つしかなかったのだが、ある事件でやられ、復活した際にすべて戻っている。


万全といえば万全だ。



「いついかなる時もアインツベルンの淑女はしとやかにですね・・・・」


だからこそ、こうして大人しく城の中にいるようにセラは言っているのだ。
今から衛宮邸に行くのは逆に危険なことである。


しかし・・・・・



「くどくどくどくど・・・・・ってあぁ!?そこ!!窓から逃げない!!!」

「やばっ!!見つかった!?バーサーカー!!受ーけ止ーめてーーーー!!」


スッピョーン



まるでそんな音が聞こえるかのように窓から飛び降りたイリヤ。
それを止めようと窓へとダッシュしたセラだが、時すでに遅し。

逆に窓から落ちそうになったのをリーゼリットに助けてもらってすらいた。


「こらーーーー!!お嬢様ーーーーーー!!!」

「あははーーー!じゃあ行っちゃえバーサーカー!!!」

「■■■■■■■■■■■■!!!」



ダゴンッ!!!




そんな音がして、イリヤを抱えあげていたバーサーカーが一気に跳躍、森の中に消えていった。



「オオおオオオオお嬢様ァッ!?」

「イリヤ、すごーい」

「リゼ!!こんな一大事に何をのんきな!!」

「? バーサーカが一緒なら大丈夫。それに、今は森の方が安全かも」

「え?」


・・・ズッ・・・・ズン・・・・・




「!?」

「誰か入ってきてる。敵」

「そ、そんな・・・ここは魔術的な処置が施されたアインツベルンの隠れ城ですよ!?」

「それでも来てる。それが現実。セラはここに隠れてて」



そう言って、リーゼリットがどこから取り出したのか身の丈以上のハルバードを抱えあげ、ムン、と仁王立ちしていた。

確かに、セラには戦闘能力どころか、運動能力すら皆無だ。
今戦えるのはリーゼリットだけだと言うことになる。


しかし・・・


「ひ、一人ではあなたが!!」

「大丈夫だよ。私は、みんなを守るためにここにいる。私も、みんなといたいから」



そう言って、リーゼリットは部屋を出て行ってしまうセラ。
こうなっては、自分はここに隠れるしかない。


一緒に行って邪魔になることはわかりきっているのだ。自分はそういった目的に作られたホムンクルスではない。
しかし、彼女は自分の姉妹のようなものなのだ。みすみす見殺しになどできるはずもない。


と、そこでセラはあることを思い出す。
否、そもそもなぜ思い出さなかったのか。


まあ、今までずっと、この家の問題は彼女らで解決してきたからかもしれないが・・・・



「早く出て・・・あ!!はい、あの・・・え?向かってる?お願いします、セラを・・・・死なせないでください!!」



内通電話で、ある人物へと連絡するセラ。
相手の人物は、すでに動いていた。



その人物のうちの一人は、三国に無双を轟かせた武将である。






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屋敷のメインホール。
そこには多くのアンデットがひしめいていた。


その数、ざっと二十はいようか。
気配から察するに、この周囲も囲っているようだ。それを含めると五十体以上いるかもしれない。



「さて・・・お掃除お掃除・・・」



そう言って、そのアンデットを前に大階段の上に立つセラ。
その表情にはまるで焦りは見えないものの、ほほを一筋の汗がつたって行っている。


「よし・・・」

「《REA・D・Y》魑魅魍魎の跋扈するこの世界・・・・」

「行くよ!キバット!!」



が、そうしていざ挑みに行こうとする彼女を両脇に、二人の青年が立った。
彼らこそ、護衛としてこの城にやってきていた、二人のライダー。


紅渡と名護啓介だ。
まさに今変身しようと、キバットとイクサナックルを手にしている。

それに対し、セラは・・・


「あ、そういえばいた」


と、まるで・・・というか、本気で忘れていたらしい声を出していた。
それにがくりとコケる渡に、突っ込むキバット。

名護だけは何か前口上を延々と言っている。

だが名護のそれもなんやかんやで終わったらしく、意気揚々と宣言した。


「では行くぞ渡君、セラ君!!」

「はい!!」

「はーい」


「死なぬというあなたたちのその命、それでも神に返しなさい・・・!!変身!!《FI・S・T O・N》」

「「ガブッ!」変身!!」

「張り切って行きまーす(ズンッ!!)」



そうして構える三人。


向かうは目測五十のアンデット。


相手にとって不足はない。



「そういえばイリヤが森の中に・・・」

「大丈夫です。まだ護衛はいますから」






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「なんなのよもーーー!!ほんとに出てくるなんて!!」

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!」



森の中。


肩にイリヤを乗せたバーサーカーが森の中を疾走している。
それを追う一つの影、ドーベルマンアンデット。

それの放つ銃弾は、イリヤに当たっても死なない個所に向かって無数に放たれていた。
が、無論それを防げぬバーサーカーではない。

しかし、こうも追われながらでは分が悪すぎる。


彼の本文は圧倒的破壊力による蹂躙だ。
こうして逃げ回るのは得意ではない。



「逃げてんじゃねぇよ!!疲れるだけですのでねぇ・・・・」

「だったらそれ撃つのやめてよ!!あとキャラを安定させてよね!!気持ち悪くなる!!」

「それはできない相談。そして、定まってくれればいいんだけどね、っと!!!」


そう言って、ドーベルマンアンデットが一気に跳躍、木々を足場にして三角飛びし、バーサーカーの目の前に躍り出てきた。
正確に言うと、バーサーカーの走っている右脇の木をけり、地面と平行に移動するようにして前に躍り出たのだ。


「もらったァッ!!」

「ッッ!!??」


その位置から一気に反転し、ドーベルマンアンデットがイリヤへと飛ぶ。
それを剛腕で叩き落とそうとするバーサーカーだが、空中にもかかわらずひらりと身の返しで回避され、イリヤへの障害物がなくなってしまう。



「ふむ・・・・いただいたってばよ!!」



ガァンッッ!!!ザザッ!!!



が、しかし


そんな音がして、ドーベルマンアンデットの腕がイリヤへと届くことはなかった。


バーサーカーは疾走をやめ、イリヤを降ろして近くに隠れさせる。


一方ドーベルマンアンデットは腕を抑え、離れて着地している。
地面にぽたぽたと、アンデット特有の緑色の血を流しながら、自分の邪魔をしてきた一人の少女をにらみつけた。



「・・・誰なんだい?」

「・・・・・恋」



そう問われた少女は、自分の名前をぽつりと言った。



三國無双、呂布奉先。
武器たる巨大な方天画戟を肩に担いで、敵を淡々と見据えていた。



「は・・・上等・・・・」


一人は無口な者
一人は咆哮を上げる者
そして一人は安定しない口調でベラベラとしゃべる者。



三者は三様に、これだけの言葉で済ませ、無言のうちにぶつかりあった。






直後、この森のすべての木々が、衝撃に振動した。







to be continued

 
 

 
後書き


はいはーい!!
「告白」でしたよーーーー!!


っと、では、ここで分かりにくかったかもしれない事項をおさらいしておききますね。




数ヶ月前、ルネのもとに端末がメモと送られてくる。
この時点でルネは何の事だかわからない。

事件発生
いくつか事件が発生するうちに、同じころに端末が反応するので、もしかしてと疑問に思う。

そして、ティアナによる発言で、兵器だったというマリアージュ。
疑問が確信に変わる。

ならば自分はこれを使ってなすべきなのかもしれないと思う。
マリアージュを知るために、「兵器として」の情報を集めようとする。

と、思ったら筋肉隊にさらわれる

前話へ



という流れですね。


いったい誰が彼女にそれを送ったのか、というのはまだ謎ということで。



何故彼女は、この事件の真相を知らなかったのか。
マリアージュの事を知らなかったのか。


それは、この事件発生の時間に関係します。



本来の「サウンドステージX」よりも、この物語は一、二年早く発生してるんです。
彼女がオリジナルで知っていたトレヴィアやマリアージュ、そして冥王に関する情報は、この一、二年の間に調べたことだったんですよ。

だから知らなかった。
と、言うことでどうでしょうか?


蒔風
「そして紐解く次の手掛かりは、ルーテシアの残した言葉、ドクター・・・」


はい、スカリエッティですね。
そこに聞きに行くのが、彼らの次のミッションです。


蒔風
「でもそれより前に・・・」


イリヤの方の戦いですね。
いやぁ、一刀の方に戻すとかいっときながら、一刀出てきてないじゃん!!


さて、彼女はアンデットの眼鏡にかなうのか!?

蒔風
「かなわれても困るなぁ・・・・」


マジでリーゼロッテとセラが分からなくなる。
どっちが強くてどっちが弱いのか!!

いや、強い方が無口、礼節だの口うるさいのが弱い、というのはわかるんです。


蒔風
「後者に対する印象ひどいな、おい」


しかし・・・名前がどうしても結び付けられない・・・
ごっちゃになる。

もしかしたら間違えている個所があるかも・・・・・

蒔風
「もっと見ろよ・・・・」

見たよ!!
でももしかしたら・・・ってあるじゃん。


蒔風
「まぁな・・・さて、リゼの助っ人は渡(キバ)に名護さん(イクサ)」


そしてバーサーカーには呂布奉先こと恋!!
一瞬リゼとのハルバード(っぽい)コンビでも面白いかと思いましたが、こっちのバーサーカーコンビ(EXTRA的な意味)で行きました!!


蒔風
「次回、風雲イリヤ城!!そして、残りの選ばれた魂は誰だ!?」

ではまた次回



希少能力持ち少女リスト(現状)


古手梨花
古手羽入
御坂美琴
インデックス
アルルゥ
高町ヴィヴィオ
ルーテシア・アルピーノ
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン


残り二名

 
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