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風魔の小次郎 風魔血風録

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142部分:第十三話 暖かい風その一


第十三話 暖かい風その一

                    暖かい風
 対峙する小次郎と武蔵。まず最初に仕掛けて来たのは武蔵だった。
「行くぞ」
「むっ!?」
「これが黄金剣の力だ」
 言いつつ剣を思いきり振り被り振り下ろしてきた。そこから放ったのは巨大な津波だった。それを小次郎に向けて放ってきたのである。
「何っ、津波だと!!」
「そんな、こんな場所で」
「しかしこれは」
 姫子と蘭子にもその巨大な津波ははっきりと見えていた。つまり幻想では到底なかったのだ。
「間違いありません、津波です」
「そんな、こんなことが」
「それが黄金剣の力ってわけかよ」
「おそらくはな」
 津波を放ちながら小次郎に答える。
「この武蔵と黄金剣の力が合わされば最早敵はない」
「無敵ってわけかよ!」
「さあ小次郎よ」
 津波を放った後もまだ構えを取っていた。
「この津波に飲まれるか黄金剣に斬られるか。どちらかを選べ」
「小次郎さん!」
「小次郎!」
 姫子と蘭子が叫ぶ。だが今の小次郎にはその声は届いていなかった。あくまで目の前に立っている武蔵だけを見据えていたのである。
 この時絵里奈は。病院の外で携帯を触っていた。寝巻きのままだ。
「ちょっと、絵里奈ちゃん」
 その彼女のところに看護婦が来て慌てて声をかける。
「こんな寒い所にいたら駄目じゃない」
「あっ、看護婦さん」
「あっじゃないわよ」
 こう絵里奈に答える。
「風邪でもひいたらどうするのよ」
「だって。病室じゃ携帯使えないから」
 本人は全く気にしていない様子で看護婦に答えるのだった。
「だから」
「だからじゃないわよ。早く戻りましょう」
「小次郎にメールしてるんだけれど」
「小次郎!?」
 看護婦の知らない名前だった。実は彼女は彼の名前は聞いていないのだ。
「誰なの、それ。お兄さんじゃないわよね」
「違うよ、友達の」
「友達!?ああ」
 こう言われればわかるのだった。
「あの長ランのね。前のボタンがない」
「そうだよ。あれが小次郎なんだよ」
「そうだったの、あの子が」
「携帯に電源入れていないみたい」
 それがわかって少し寂しい顔になる。
「何でだろ」
「それは後でいいから」
 何とかここは絵里奈を部屋に戻そうとするのだった。
「お部屋に戻りましょう、いいわね」
「うん」
 何とか絵里奈を部屋に戻すのだった。その間にもその小次郎と武蔵の闘いはなおも続いていた。波が今まさに小次郎を飲み込もうとしていた。
「さあ小次郎、これで最後だな」
 構えたまま武蔵は言う。
「この闘いこの武蔵の、そして夜叉の勝利だな」
「これで決まりですね」
「はい」
 夜叉姫の言葉に魔矢が頷く。彼女は主の傍に立っている。
「我々の勝利です」
「風魔にはこの度も苦しめられましたがこれで」
「終わりです」
 彼女達は夜叉の勝利を確信していた。波はもう逃れられないと思われた。ところがだった。
「こんな程度でな!」
「何っ!?」
「俺だってな、聖剣を持ってるんだ!」 
 叫びながら風林火山を振り被ってきた。
「そんなもの、叩き斬ってやるぜ!」
「何ィ!!」
 風林火山を思いきり振り下ろす。するとそれで津波を完全に両断してしまったのであった。小次郎と風林火山の渾身の力技であった。
「斬っただと、波を」
「今度は俺の番だ!」
 小次郎は風林火山を手に武蔵に向かって来た。
「速きこと風の如し」
「くっ!」
「静かなること林の如し」
 攻撃を繰り出しながら言葉を続ける。
「侵略すること火の如し」
 攻撃が激しくなってきた。武蔵ですら防戦になっている。
「動かざること山の如し。これが風林火山だ!」
「それが風林火山の力か」
「ただの剛刀だけと思うな!」
 さらに小次郎の攻撃が続く。
「この小次郎の剣技、見せてやる!」
「剣だと」
 剣と聞いて武蔵の目が光った。
「剣ならば負けはしない」
「何だとっ!?」
「この武蔵、剣ならばだ」
 小次郎の攻撃を的確に受け止めだしていた。最早それは小次郎の技をも凌駕しだしていた。
「誰にも負けはしない。行くぞ」
「ちいっ!」
 武蔵の攻撃がさらに激しくなる。斬るだけでなく突きを繰り出してきたのだ。その突きは流星の様であり小次郎はかわすので精一杯になってきていた。
「風林火山は斬るものだな」
「風林火山に斬れねえものは存在しねえ!」
 小次郎はそれには自信があった。
「それをまた見せてやる!」
「ならばこの黄金剣は」
 構えを取ってきた。
「貫けぬものは存在しない。受けてみろ」
「来たか!」
 小次郎は咄嗟に後ろに跳んだ。それで今の武蔵の突きをかわした。だが左腕をかすめそれはまさに間一髪であった。
「危なかったなんてものじゃねえな」
「今の攻撃をかわしたか」
 武蔵にとってはそれは思わぬことであった。表情こそ崩してはいないがそれでも声には警戒するものがはっきりと表われていた。
「腕をあげているのは事実だな」
「くっ、どういうことなんだ」
 小次郎は間合いを放したうえで武蔵を見据えて言った。
 
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