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風魔の小次郎 風魔血風録

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138部分:第十二話 聖剣の真実その十二


第十二話 聖剣の真実その十二

「貴方に。この戦いの全てを託します」
「夜叉と風魔の戦いの全てをですか」
「その通りです。黄金剣と風林火山」
 二つの聖剣の名もまた告げられた。
「二つの剣での戦いでもあります。それを決しなさい」
「わかりました。それでは」
 夜叉姫の言葉を受けて彼に一礼してから述べた。
「只今より。最後の戦いを」
「頼みましたよ」
「小次郎」
 小次郎に顔を向けてきた。
「それでいいな。俺と御前の闘いで全てを決める」
「ああ、望むところだぜ」
 毅然と武蔵を見据えて言葉を返した。
「幾らでもやってやらあ。手前は俺が倒す!」
「小次郎」
 その彼の後ろから竜魔が声をかけてきた。
「何だ?兄ちゃん」
「御前に託した」
 彼もまた同じであった。小次郎に全てを託すつもりだったのだ。
「この戦いの全てを。頼んだぞ」
「ああ、やってやるぜ」
 一歩前に出た。そのうえで武蔵と対峙しだす。夜叉姫はここでまた二人に対して告げたのだった。
「闘いの場は」
「ここでいいだろうがよ」
 小次郎はすぐに夜叉姫にこう言葉を返した。
「そんなのよ。武蔵、ここが手前の墓場だぜ」
「いえ、場所を変えましょう」
 しかし夜叉姫は強い声でこう言ったのだった。
「最後の決戦に相応しい場所があります」
「何処だよ、そこは」
「我が誠士館の心臓部」
 厳かに小次郎と武蔵に告げた。
「夜叉一族の棟梁の部屋において」
「何っ、姫様それは」
「幾ら何でも」
 八将軍達は今の夜叉姫の言葉を聞いて血相を変えて彼女に言った。
「そこでの闘いは」
「姫様にも危険です」
「若し闘いに巻き込まれたならそれまでのこと」
 夜叉姫は彼等の制止を振り切って述べた。
「それに闘いには本来立会人が必要な筈」
「それはそうですが」
「ですがそれなら我等が」
「戦いの最後を見届けるのも棟梁の役目」
 夜叉姫はあくまで夜叉の主としての心を胸に宿していたのだった。
「ならば。私が見届けるのも道理でしょう」
「それはそうですが」
「しかい。やはり」
「この件に関して意見は無用」
 完全に言葉を切ってしまった。
「よいですね。貴方達はここで控えていなさい」
「ですが」
「意見は許さないと言った筈」
 本当に言わせなかった。
「これ以上の意見は八将軍といえど許しません。宜しいですね」
「・・・・・・はっ」
「それでは」
 さしもの彼等もこれで沈黙するしかなかった。まだ不安を顔に浮かべていたがそれでもであった。また風魔の間でも姫子が出て来たのであった。
「では私もまた」
「姫様、まさか」
「そう、そのまさかです」
 強い顔と言葉で蘭子に返した。
「参らせて頂きます」
「ですがそれは」
「私も北条家の者」
 何時になく毅然とした声の姫子であった。
「ならば。風魔と夜叉の戦いの最後に立ち会うのは義務です」
「義務ですか」
「蘭子さん」
 その強い声で蘭子の名を呼んだ。
「ここで待っていて下さい」
「それはあまりにも危険です」
 流石にそれは拒む蘭子であった。彼女には姫子を守るという責務があるからだ。そしてこれは責務だけではなかった。彼女と姫子の絆であったのだ。
「それだけは」
「構いません」
 すると夜叉姫の方から蘭子の同行を認めたのであった。
「柳生蘭子ですね。柳生家の娘の」
「そうだ」
 夜叉姫を見据えて答える。
「それがどうかしたのか」
「話には聞いています。北条姫子の第一の側近にして親友であると」
 このことはもう夜叉にも知れ渡っているのであった。
「白凰学園の武道指南役でもあり」
「全て知っているのなら言うまでもないと思うが」
「貴女の同行を許します」
 あらためていいと告げるのだった。
 
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