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ハイスクールD×D 黒龍伝説

作者:ユキアン
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  2話

火災報知機の反応が携帯に届いたオレは急いで消火器を確保して現場に向かう。向かう先はオカルト研究会の部室。来客名簿には一人だけ記入があったが、明らかに感じる魔力は一人多い。あと、シャレにならない位強いのが一人居る。オレの生存本能がビンビンと反応している。

それとは別に感じた事がない魔力が一人居る。たぶん、そいつが火を出しやがったな。オレはオカルト研究会の部室の扉を蹴り開けると同時に魔力で強化した消火器を原因に放射する。

「こらっ!!校舎内で結界も張らずに火を使ってるんじゃねぇ!!火災報知器が反応しただろうが!!」

「いきなりやってきたと思ったら最初の言葉がそれ!?」

グレモリー先輩から苦情を貰うが関係ない。

「最近管理する範囲が増えたんですよ。外部からの対応も任されていますんで。それで、そこの不法侵入者はなんなんですか?火まで使って」

消化剤まみれになっている悪魔を指差す。こっそりと見えないラインを繋げるのも忘れずに警戒だけはしておく。

「き、貴様!!たかが人間ごときが!!」

魔力の高まりを感じて即座に廊下においてあった消火器をラインで引っぱり、目の前の悪魔から魔力を奪いながら、その魔力で限界まで強化した消火器をもう一度顔面に向けて放射する。それでもしつこく炎を出そうとするので空になっている一本目の消火器をラインで掴んで頭に叩き込む。

ついでに見えるラインを30本程繋げて一気に魔力を奪っていく。消化剤がなくなりかければラインを伸ばして旧校舎にある消火器をかき集めて継続的に放射し続ける。3本目を使い始めた所でグレモリー先輩達は避難しているので容赦なく消化剤の放射と魔力の強奪と頭部への攻撃を続ける。

5本目を使い終えた頃にようやく抵抗がなくなったので消火器の放射を止めて、不法侵入の悪魔を窓から学園の外に向かって投げ捨てる。

その後、部室内の掃除とあの悪魔が燃やした部分を魔力で修繕し終える頃にグレモリー先輩達が部室に戻ってくる。

「匙、ライザーはどうしたの?」

「あの悪魔ならムダに抵抗を続けたんで魔力をごっそり抜き取って消火器で殴りまくって気絶させた後に窓から投げ捨てましたよ」

「「「「投げ捨てた!?」」」」

グレモリー先輩達と来客名簿にグレイフィア・ルキフグスと書かれている銀髪の女性が驚いているが何かおかしかっただろうか?

「学園への不法侵入に器物破損、殺人未遂ということを考えれば甘い対応だと思いますが?」

「それは、そうかもしれないけど」

「それもありますが、ライザー様を気絶させたと言うのは本当でしょうか?」

ルキフグスさんがオレに尋ねてくる。はて、一体どういうことだ?

「何か問題が?」

「いえ、ライザー様はフェニックスですので、周りに被害も出さずに気絶させたと言うのが腑に落ちない物で」

「たぶん、魔力を吸い上げ過ぎた所為かと。はぐれ悪魔もよくそれで気絶しますから」

「はぐれならともかく上級悪魔でフェニックスのライザー様がその程度で気絶をする物なのでしょうか?」

「そう言われましても、ああ、なら実演してみましょうか?吸い上げた魔力もすぐにお返し出来ますので」

ラインを軽く伸ばして見せてみる。

「そうですね。では、お願いしてみましょうか」

許可を貰ったのでライザーと呼ばれている悪魔の時と同じ様に30本のラインをルキフグスさんに繋げる。そして、繋げた時点で完全に悟る。絶対に敵に回してはいけないと。

「それでは5秒だけやらせて頂きます」

「っ、なるほど」

宣言通り5秒だけ魔力を吸い上げる。無論全力でだ。吸い上げられる感覚が初めてなのか最初だけは顔を顰めていたが、普通に納得されるだけに終わった。まあ5秒だけだし、ラインも30本だけだし。

「では、お返しします」

吸い上げた分はオレにまで吸収せずにそのままライン内に蓄えてあるので、それをそのまま返す。

「確かに。申し遅れましたが、私はグレモリー家のメイドを勤めておりますグレイフィア・ルキフグスと申します」

「駒王学園2年生徒会庶務の匙元士郎です」

「生徒会?ですが、人間の様ですが」

「会長には無理を言って人間のままで見学などをさせて頂いております」

転生悪魔になるにはかまわない。だけどギリギリまでは人間としていたい。それは感情面の事でもあるが、実利的な面も含まれる。死体が綺麗に残せるのなら、命すらも戦いの道具に出来るのだから。







「すみません会長、ご迷惑をおかけして」

「まあ、やり過ぎとまでは言いませんがベストでもベターでもありませんでしたからね」

先日訪れていた悪魔ライザー・フェニックスはグレモリー先輩の婚約者であるのだが、グレモリー先輩がその軟派な性格を嫌い完全に拒絶しているのだがそれを考えない頭の軽い存在らしい。また、結婚に関してもグレモリー先輩が大学を卒業するまでは行われないはずだったのだが、それを強行してきていた為に話が面倒な方向に流れ始めた所でオレが乱入したらしい。

元々の予定ではルキフグスさんがグレモリー家とフェニックス家の方で決まったレーティングゲームの結果によって話をつける事になったと説明するはずだったそうだ。

で、結局レーティングゲームが行われる事になったのだがライザー・フェニックスのご指名でオレもグレモリー先輩側で参加する事になってしまったのだ。虚仮にされたからだろうな。

そして会長の方にも話が通っていたのか生徒会室に入った途端に溜息をつかれ、冒頭に戻る。

「まあそんな事情がありまして明日から十日程学園の方を休む事になります。グレモリー先輩達が合宿を行うのでそれに参加する様にとルキフグスさんからも言われていますので」

「ええ、リアスから聞いています。無理だけはしない様に」

「了解です」

「ああ、それと当日は私達も観戦に招待されていますので」

「ますます下手な場面を見せれませんね」








リザインを宣言しようとするグレモリー先輩の口をラインを使って塞ぐ。

「勝手にリザインされては困るんですよ、グレモリー先輩」

拾ってきた消火器の安全ピンを抜きながら屋上に足を踏み入れる。

「ほう、ようやくのお出ましか。ビビって逃げたのかと思ったぞ」

「はっ、誰が逃げるかよ。文句も言えない位に圧勝する為の準備をしてきただけだよ」

「人間風情がいつまでもデカイ口が叩けると思うなよ!!」

「その人間風情に消化剤まみれで気絶させられて投げ捨てられたのは何処のどいつだったっけな?」

オレの挑発にライザーの顔が真っ赤になり、掴んでいた兵藤を投げ捨てる。

「まあ、待てよ。お前に圧勝する為に準備をしてきたと言っただろう。何もしないからアレを見てみろよ」

そう言って校庭を指差す。無論、何もしないはずもなく透明なラインを少しずつライザーに接続していく。

「なっ!?」

ライザーの視線の先にはまだリタイアしていないライザーの眷属がラインの柱に張り付けにされている。

「貴様、オレの眷属に何をした!!」

「ほい、隙あり」

振り向いたライザーの顔面に魔力で強化した消火器を放射する。今回は中身が無くなるまで放射する様な事はなく、ちょっとだけ怯ませる為に放射する。

「何もしないと言っておいてだまし討ちか!!」

「失礼な。見ている間は手を出していないだろうが。それに今はゲーム中だ。話術も詐術も立派な戦術であり武器だ。無論、消火器も。ああ、そうそうお前の眷属だけどな、リタイアにならないギリギリのラインで生命力や魔力を吸い上げ続けさせてもらってる。オレは人間だから魔力を持ってないからな」

説明をしながらも見えるラインを校舎を一周させてライザーの背後から接続する。ライザーの視線は消火器に釘付けになっており、オレの影から新たに伸びるラインに気付く様子はない。

「人間風情がオレの眷属を魔力タンクにするだと!!」

「人間だからこそだ!!」

オレの大声にライザーとグレモリー先輩が驚く。

「オレは人間だ。弱い、弱い人間だ。下級の転生悪魔と比べても劣る力と耐久力、魔力なども持たない。だがな、そんな弱い人間がこの世界において生物の頂点に立っているんだよ。爪も牙も持たない人間は、まず道具を産み出した。道具を使って罠を作り、群れを増やして数の暴力を、それを覆す為に他の動物を調教して配下に、そしてどうすれば自分たちの被害を減らして多くの敵を倒せるかと戦術を編み出してきた」

舞台の上に立つ役者の様に大きく身体を動かしながら注意を集める。足下では更に多くのラインを屋上周辺に配置する。準備を進める為にライザーからまともな思考を奪う為に嘲笑う。

「自分に足りない物を外部から賄う事の何処が悪い?そもそもお前達悪魔は危機感が薄い。特にお前はそうだよ、ライザー。不死という特性にあぐらを掻いて必死になった事などないんだろう。見てれば分かるんだよ、お前は不死と言う特性と上級悪魔の魔力以外は平凡な男だよ」

「このオレが平凡だと?」

「平凡だよ。いや、自分を磨こうともしない男などそれ以下か」

「そういう貴様はどうだというんだ?」

「オレは普通以下だよ。どれだけ自分を磨いた所で普通以上になる事はないし、なりたくもない。オレの目的は生きる事のみ。その為ならどんな汚い手でも使う!!泥を啜ってでも生き残る!!生きると言う意味を理解出来ない貴様に、オレは負けない!!」

同時に準備が終わったラインを一斉にライザーに向けて伸ばす。瞬時に炎でラインを焼き切ろうとするライザーから既に背中に接続しているラインから魔力を吸い上げて不発させ、束ねて強度を増したラインで身体を拘束、そのままエビぞりにしていく。それでもなんとかしようと身体から炎が上がるのを魔力で強化した消火器で消火しながら、空になればそれをラインに持たせて殴りつけ、学園中からかき集めた消火器を次々消費していく。そして、骨が折れる嫌な音が響き、ライザーの身体が消える。

『ライザー・フェニックス様のリタイアを確認。このゲーム、リアス・グレモリー様の勝利となります』






ゲーム終了後、オレは会長に呼ばれて生徒会室に向かう。ノックをすると中から声がかかるので扉を開ける。

「失礼します。何かありましたか?」

生徒会室には会長だけがいつも通りにイスに座っている。

「ゲーム中に少し気になる事があったので、それの確認をと思いまして」

「確認ですか?」

「ええ。その為に最初に謝らなければならない事があります」

「謝る事?っ、オレの過去の事ですか」

確信を持って尋ねると会長は申し訳なさそうに首を縦に振る。

「知っているのは私だけですし、そこまで詳しい事までは調べていません」

「何処まで、知っていますか」

「虐待を受けていた事と、妹さんを亡くされている事です。ゲーム終盤に言っていた生きる事が目的と言うのは」

「たぶん、大体は会長が予想している物です。オレから言えるのはそれだけです」

「いえ、思い出したくもない事を思い出させて、こちらの方こそごめんなさい。それで本題に入るのですが、本当に転生悪魔になっても良いのですか?」

「そこは問題ありません。生きる為に人間と言う種族を捨てた所でオレはオレと言う個人ですから。ただ、転生のメリットを存分に使おうかと思っています」

「……人間としての命すらも道具として扱う気なのですか」

「……会長、最近の駒王は明らかに異常です。はぐれの噂が多く聞こえてきていたり、先の堕天使の事件、何か嫌な予感がするんですよ」

「嫌な予感ですか?」

「オレの気のせいなら良いんですが、それでも保険が欲しい所なんです」

「それが自分の命ですか」

「実際、会長が観戦に来ていなかったのならゲームの方もライザーの前に姿を見せるなんて危険な事は一切するつもりはなかったんですよ。いくらリタイア転送機能があるとは言え、人間であるオレが耐えれるかどうかなんて分からないですから。それにあんな短時間でも軽い脱水症状になる位ですから」

「大丈夫なのですか?」

「ここに来るまでに水分と塩分はしっかりと取ってきましたので問題ありません」

フェニックスが相手と聞いた時点で炎対策よりも先に熱中症対策の用意をした位だからな。制服の下に水を入れたパックと塩を小分けにして袋に入れた物を持っていたから、ゲーム終了後にオカルト研究会の部室で摂取してきた。

「ゲーム中にも言いましたけど、人間は弱い生き物で、オレはそれを身近で理解してしまった。命をかける事で躊躇なんて出来ないですよ」

「……私が今更言うことではないかもしれませんが、無謀に命を捨てる様な行為はしないように」

「もちろんですよ」

「では、引き続き匙の分の駒は保留にしておきます。保険として使う事がない事を切に願います」
 
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