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風魔の小次郎 風魔血風録

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132部分:第十二話 聖剣の真実その六


第十二話 聖剣の真実その六

「いよいよですね、最後の戦いです」
「場所は誠士館だ」
 蘭子も彼女の横で彼等に話す。
「頼むぞ。今回の剣道で雌雄を決する」
「白凰と誠士館」
 まずは竜魔が応えた。
「それに風魔と夜叉のだ。数百年来の戦いの中の一環だ」
「へっ、今回はもらうぜ」
 小次郎は不敵な言葉と共に風林火山を右肩に担いで前に出て来た。
「この俺の風林火山でな」
「小次郎さん」
 姫子は不安に満ちた目で小次郎を見ていた。その目で彼に言ってきた。
「あまり無茶はしないで下さいね」
「わかってるさ、姫さん」
 そうは言ってもいつもの小次郎だった。
「そこはな。だから安心しな」
「あまり、いや全然そうは思えないのだがな」
 そんな小次郎に蘭子が突っ込みを入れた。
「御前は結局最初から最後まで無鉄砲だったな」
「何か俺ボロクソに言われてるな」
 小次郎も今の蘭子の言葉には少し怯んだようだった。口を尖らせ眉を顰めさせていた。
「御前にはずっとな」
「言われるだけのことをしているからだ」
 蘭子も蘭子で容赦がない。
「うちの弟より遥かに手間がかかるぞ、全く」
「俺は弟かよっ」
「少なくとも年下だったと思うが」
 実はそうなのだった。なお蘭子は姫子から見ても年上であり彼女にとっては姉と言っていい存在なのだ。兄はいても彼女は姉気質なのである。
「まあ歳は関係ないがな。御前が馬鹿なことは変わらないしな」
「俺、ずっと馬鹿だって言われてるな」
 小次郎は白凰に来てからのことをここで思い出していた。
「確かに勉強は苦手だけれどよ」
「ああ、そういえば御前」
 ここで蘭子はあることを思い出した。
「テスト全部赤点だったな。しかも一桁か零点ばかりだったな」
「おい、そりゃ幾ら何でも酷過ぎるだろ」
「せめて最低限の勉強はしろ」
 劉鵬と兜丸がそれを聞いて呆れた顔になっていた。
「大体御前は里でも遊んでばかりで」
「馬鹿でもそれなりに勉強しろっていつも言ってるだろうが」
「けれどよ、白凰ってよ」
 これは小次郎の言い訳だった。
「スポーツ校って聞いていたのに勉強難しいんだよ。どうなってるんだよ」
「我が校は文武両道ですよ」
 他ならぬ総長代理の姫子の言葉だ。
「ですから学業の方もおろそかにはしていないのです」
「げっ、そうだったのかよ」
「こんなことはもう最初でわかっている筈だがな」
「御前、全然調べていなかったのか」 
 項羽と小龍の双子もまた小次郎に突っ込みを入れた。
「全く。本物の馬鹿だな」
「少しは学習しろ、いい加減えらいことになるぞ」
「何だよ、どいつもこいつも」
 皆から言われて小次郎もたまりかねて声をあげた。
「俺が馬鹿でもいいじゃねえかよ、別によ」
「駄目に決まっている」
「小次郎君、今の論理は通じないよ」
 今度は霧風と麗羅に言われた。
「最後の戦い位は普通の馬鹿でいろ」
「そうだよ。決戦なんだから」
「決戦か」
 小次郎は決戦と聞いて今まで騒がしくさせていた顔を引き締めさせた。
「そうだよな。いよいよだ」
「とにかく飯を食ってからだ」
「いいな、それからだ」
 林彪と竜魔の言葉だった。
「もう蘭子さんは準備にかかっているぞ」
「姫子様もな」
「あれっ、何時の間に」
 見ればその通りだった。確かに姫子も蘭子ももうその場所にはいなかった。
「台所に行ったのかよ」
「そうだ。では我々はだ」
「芋の皮を剥くぞ」
 竜魔と劉鵬はいつもと変わらなかった。
「最後の最後まで芋やら玉葱やら剥いてねえか?」
「当たり前だ。戦いは俺達の日常だ」
 竜魔の言葉だった。
「だからだ。いつも通りに皮を剥くぞ。いいな」
「わかったよ。それじゃあよ」
 こうして彼等はまずは戦いの前の一仕事と食事にかかるのだった。その頃病院では絵里奈がベッドから身体を起こして一人で携帯に連絡をかけていた。
「絵里奈ちゃん、駄目よ」
 すぐに看護婦が部屋に入って来て彼女を止めた。
「病室でそんなの使ったら」
「お兄ちゃん出ないの」
 だが絵里奈は携帯を止めずそれを覗き込みながら言うのだった。
 
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