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風魔の小次郎 風魔血風録

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131部分:第十二話 聖剣の真実その五


第十二話 聖剣の真実その五

「だがこれで我々の考えは決まったな」
「そうだな。では姫様」
「はい。全ては決まりました」
 この言葉と共に今席を立って武蔵達に告げた。
「全員出陣しなさい。そして夜叉の者達は総てこの誠士館に集結させるのです。制圧地域は今は全て放棄するものとします」
「わかりました」
「これが風魔との最後に戦いになります」
 これはもう夜叉姫もわかっているのだった。
「勝つ為に。今」
「はい。そしてです」
 また陽炎が言ってきた。
「まだ何かありますか」
「間も無く聖剣に関する書が姫様のところに届きます」
「聖剣に関する書がですか」
「遠く中国の地にあったものです」
 何故かここで中国の名前が出て来たのだった。
「四川の奥にあったものを何とか手に入れました」
「それが聖剣に関するものですか」
「残念ですが私では読むことができませんでした」
 申し訳なく頭を垂れた。
「文字は。忍文字でもなく特別な文字でありまして」
「どの様な文字ですか?」
「古代、そう夏王朝の文字です」
 中国最古の王朝であるとされている。その存在は伝説のものとされていて実在したのかどうかは疑問視されてもいる。
「その国の文字ですが」
「夏王朝の文字ですか」
 それを聞いて夜叉姫の目の色が変わった。
「それでしたら私が読むことができます」
「暇様がですか」
「そうです。私は上杉家において様々な書に触れてきました」
 流石に夜叉の首領であり彼等を統率しているわけではないということである。
「その私が解読しておきましょう」
「御願いできますか」
「貴方達で無理ならば」
 自分が引き受けるというのであった。伊達に彼女も首領を務めているわけではないというわけだった。
「私が受けましょう。それで宜しいですね」
「はっ、それでは」
「御願いします」
「それではです」
 書については自分が受けることにしてまた夜叉の戦士達に対して告げるのだった。
「今すぐに出陣しなさい。いいですね」
「はっ、それでは」
「風魔の者達の首、ここに持って参りましょう」
 彼等は全員片膝をつき夜叉姫に対して述べた。今彼等も最後の戦いに向かうのだった。
 柳生邸でもまた。風魔の戦士達が今出陣の準備を整えていた。
「木刀は全員持ったな」
「ああ」
 竜魔の言葉に劉鵬が応える。
「これでいい。後は」
「出陣するだけだな」
 霧風ももうそこにいた。彼等は屋敷の庭に集まりそこで険しい顔を見せていた。
「俺達は七人、夜叉は十人」
「相手にとって不足はない」
 項羽と小龍はその手にそれぞれ羽根も持っている。
「さて、では行くぞ」
 林彪が仲間達に声をかける。だがその時だった。
「待って下さいよ」
「大切な人間を忘れちゃいないか?」
「なっ、御前等」
 小次郎が彼等の姿を見て思わず声をあげた。
「麗羅、それに兜丸」
「御前等大丈夫なのか?」
 劉鵬もまた怪訝な顔で問うのだった。何と二人は微笑んで彼等の前に立っているのだ。
「大丈夫も何もこの程度の怪我でな」
「大事な時に休んでいられませんよ」
 だが二人は微笑んでまた言うのである。
「安心しろ、安心」
「足手纏いにはなりませんから」
「竜魔」
 霧風は二人を見て眉を僅かに顰めさせつつ竜魔に声をかけた。
「いいのか?」
「心が戦いに向いているのならな」 
 竜魔は霧風のその言葉に左目を閉じて答えた。
「構わん。だが無理はするな」
「無理だなんてそんな」
「俺達忍は元々無茶をするもんだろうが」
 二人の笑みと言葉は変わらない。
「だからな。いいんだよ」
「そういうことで御願いしますね」
「覚悟はできてるってわけか」
 劉鵬は彼等の真意がわかった。その明るく軽い笑みの裏側が。
「御前等、止めても行くな」
「これで俺達は九人だ」
「大丈夫ですよ、戦力になりますから」
「よし、ならまずは食うぞ」
 何故か劉鵬はここで食事のことを言った。
「食って体力つけて行くぞ、いいな」
「そうだな。では蘭子さんに飯を炊いてもらうように御願いするか」
 項羽は少し笑って述べた。
「白い飯をたっぷりとな」
「おかずは卵焼きだな」
 これは小龍の趣味だった。
「それと鰯に納豆に漬物に若布と玉葱のお味噌汁だ」
「おいおい、結構豪勢だな」
 林彪はメニューを聞いて頬を緩ませていた。
「朝飯みたいだがな」
「じゃあ肉じゃがでもつけるか」
「あっ、いいですね」
 もう兜丸と麗羅も話に入っていた。
「デザートは抹茶アイスで」
「抹茶アイスか。姫ちゃんが作ってくれたのだったらいいんだけれどな」
「はい、ありますよ」
「わかった。じゃあすぐに用意をする」
 話をすれば何とやらだった。その姫子と蘭子が出て来たのだった。
「御飯の量もおかずも奮発するぞ」
「皆さん」
 姫子は真剣そのものの顔になって風魔の面々に正対した。そのうえで彼等に対して言うのだった。背筋が伸び姿勢もいいものになっている。
 
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