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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  194 三年目の終わり


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

「はぁ平和だ」

【日刊予言者新聞】を折り畳みながらひと心地をつく。気分としては定年したサラリーマンの如しといったところ。アニーの「だからおじさん臭いってば…」なんて呟きは丁重にスルーさせてもらった。

あの日、シリウスがどうなったかは[シリウス・ブラック冤罪、ピーター・ペティグリューのマーリン勲章剥奪]とな〝予言者〟の一面を見れば一目瞭然だろう。

あの夜あの後、シリウスの処遇を決めかねたマクゴナガル先生はダンブルドア校長にぶん投げて、それからダンブルドア校長がシリウスをアズカバンから釈放した。

……シリウスを確保してから釈放までにかかった期間は二日かそこらだったので、きっとダンブルドア校長もかの──12人のマグル皆殺し事件についてはいろいろと証拠を集めていたのかもしれない。

俺の出番はシリウスをマクゴナガル先生の部屋へと連れていった時点で半ば終了していたので詳しくは知らないが、一連のの主犯ピーター・ペティグリューを態々(わざわざ)(ケージ)〟に入れてまで確保していたのでダンブルドア校長の手腕(コネ)を以てしたら無実なシリウスを解放するのは難しくなかったようだ。

……その証拠にシリウスが〝動物もどき(アニメーガス)〟なれる事について、13年前の時点で手続きを終えていた──と云う事になり、これでシリウスは大手を振って外を歩けるようになった。


―ありがとう、ロン。これでアニーと一緒には暮らせないが──外で羽を伸ばせる様になった。君のおかげだ―


なんてシリウスには礼を言われたが、俺はそんなシリウスからの謝礼も複雑な気分で受けとることしか出来なかった。原因はピーターの事だ。

ピーター・ペティグリューはアズカバン行きと云う──何のひねりも無いところで話が落ち着いた。

シリウスは冤罪として無実の罪で服役させられていたゆえに魔法省から膨大な慰謝料を受け取ったらしいので、シリウスやルーピン先生も微妙な顔をしていたが二人とも納得した様相が見てとれた。

……しかし、俺が〝それ〟にたいして何の仕掛けを施さないわけがない。……“アンドバリの指輪”で〝6月6日になったらアズカバンを脱獄してね〟と命令(おねがい)してあるのだ。

(……まぁ、考えうるかぎりでは最高の着地点か)

そんな事を染々と考えながらコーヒーを啜っていたら、またもやアニーから「だからおじさん臭いってば…」と云う呟きが寄せられてしまった。またスルーしては〝今年の事〟を考える。

割りと予想していなかったくらいの早さで〝アズカバンの囚人〟を釈放してしまった今、今年に急務としてやっておくべき、ほとんどの事が無くなってしまい、気分としては八月に入る前に夏休みの宿題を槿(あさがお)の観察日記以外を終わらせて暇をもて余している小学生みたいな心境か。

……一種の燃え尽き症候群みたいなものと云っても良い。

「はぁ~」

そんなこんなで、暇を持て余している──2月もすぐ近くに差し迫っているとある朝の事だった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

アニー・リリー・ポッター。ハーマイオニー・ジーン・グレンジャー。ネビル・フランク・ロングボトム。そして、俺──ロナルド・ランスロー・ウィーズリーを含めた四人は眼前に見える13個の、指三本で摘まめるくらいの直方体を睨み付けていた。……有り体に言えば麻雀だった。

現在地は〝あったりなかったり部屋〟で──ネビルの基礎がある程度固まった今、たまに四人で卓を囲んでいる。卓は昔手慰みに買った麻雀セットに魔法を掛けていろいろとカスタマイズしたものだ。

手間としては、点棒を自動でやり取り出来る様にしたり──はたまた役を自動で判断するために幾つか簡単な魔法を掛けてあるだけなのでそこまで手間は掛かっていない。

ちなみに麻雀でお馴染み(?)として付随する、〝イカサマ防止〟の魔法は掛かっていない。何故ならイカサマは一種の救済要素で、技術(アナログ)的な側面があるからだ。

……それでも、イカサマがバレた時は告発者に満貫分の点数を払うと云う設定になっているが…。

閑話休題。

……更にちなみに、この麻雀セット、〝店〟にも──当然取り扱い説明書付きで卸していて、価格にして7ガリオン9シックル8クヌートで、売れ行きはまぁまぁである。

また閑話休題。

そして俺は役満を〝のみ手〟レベルで連発している──訳でもなく。

「ロン」

「ひぇっ!?」

「チャンタ、三色、東、ドラ1──満貫」

東と萬子(まんず)の789は晒してあって、索子(そーず)筒子(ぴんず)も分かりやすいくらいに〝河〟へと出ていると云うのにネビルが不用意に切り出した7の筒子をきっちり撃ち取る。

……お金を賭けていれば、〝のみ手〟レベルの頻度で──それこそどこぞの人鬼みたいに〝御無礼(やくまん)〟が出るが、逆説的にはお金を賭けていなければさっきの局みたいに〝多少運が良い〟レベルくらいまでに落ち着く。

皆の打ち筋としては、俺が特殊なアナログ派でアニーが防御型のアナログ派、ハーマイオニーが生粋のデジタル派でネビルは派閥云々の前に初心者だ。

しかし、初心者と云えど今みたいな不注意な打牌は撃ち取る様にアニーとハーマイオニーにも通達してある。……この麻雀は、遊戯の側面も確かにあるがそれ以上に三人の洞察力を鍛えると云う鍛錬的な側面もあるから。

現在の状況は南二局で俺がトップで、離れてハーマイオニー、ハーマイオニーからやや離れてアニー。最後に先程の満貫の放銃で後がないネビルとなっていて、その様相はアニーとハーマイオニーの二位争いだった。

「……さて、俺の親番だが──点棒の貯蔵は充分か?」

その後ネビルがトんだのは言うまでもないだろう。

………。

……。

…。

麻雀セットをネビルに片付けさせ、今度こそ普通に──テーブルにクッキーを並べながら談笑していると不意にハーマイオニーがこんな事を口にしてきた。

「そういえば、来年の〝闇の魔術に対する防衛術〟の教師ってどうなるのかしら」

「……ルーピン先生には瑕疵(かし)らしい瑕疵は無いけどね」

ハーマイオニーの言葉にアニーはそう返すものの、ハーマイオニーの言いたいことはルーピン先生が人狼であると云うスキャンダルについてだろう。……恐らくだが、ハーマイオニーはルーピン先生についての事が公表されないかが心配なのだ。

やはりと云うべきか、俺は除くとして──一番にルーピン先生の異変に気付いたのはハーマイオニーだった。この四人の中でそのスキャンダルを知らないのはネビルだけなので、ハーマイオニーは言葉を選んだ様だ。

……そしてそんな前提はネビルによって壊される。

「ルーピン先生、バレないといいね」

「……ネビル?」

予想外の人物──ネビルから予想外の言葉。ネビルのその言葉には〝疑念〟やらの意図はちっとも含まれていない事は直ぐに判った。カマを掛けようとしているわけでは無い──それは(すなわ)ちネビルがルーピン先生のスキャンダルについて知っていると云うことだ。

思わず呆気に取られている俺達を無視してネビルは続ける。

「……大丈夫だよ。僕、気付いてるから──ルーピン先生が狼人間だって」

「……何時から?」

「……一週間前、ルーピン先生の服から〝とりかぶと〟の臭いがしたんだ。……ほら、とりかぶとって〝脱狼薬〟の材料だよね?」

「……ああ」

「それにスネイプ先生からの宿題もあったから…」

「………」「………」「………」

ネビルの弁解に絶句する俺、アニー、ハーマイオニー。

確かにネビルにはネビルの得意科目を更に伸ばす為にも〝在ったり無かったり部屋〟で、様々な草木に関する本を皆で一緒に読んでいたが──正味な話、意外だった。ネビルを侮っていたのだと痛感させられた。

(……人の成長って良いもんだなぁ…)

やはりジジ臭くそんな事を考えてしまう、3月のとある夜だった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE アニー・リリー・ポッター

それはいきなりの事だった。いつぞやのハーマイオニーの杞憂(きゆう)が実現した──ルーピン先生の件がホグワーツでまことしやかに噂される様になったのだ。

「ええっ!? ルーピン先生がクビにっ?」

「でもどうして…」

「どうにも目ばたが利くレイブンクロー生の仕業みたいだな──多分だが、好奇心やらで要らん地雷を踏んじまったみたいだな」

ハーマイオニーの驚愕にボクがやるせなく被せ、そのボクの呟きにロンが簡潔に返す。……朝食を食べながらレイブンクローの机の方をちらり、と盗み見る。

すると何人かがボクのそんな視線に気付き、さっ、と目を逸らす。……ロンの言葉と、今みたいなレイブンクロー生の反応から察するなら、(わざ)とではないみたいだ。

……そしてロンは「それよりも悪い話がある」と【日刊予言者新聞】のとある一面が見える様にテーブルに置いた。嫌な予感を感じながら〝予言者〟に目を通せば、書面には驚くべきことが記されていた。

「……何々──[ピーター・ペティグリュー脱獄!!]…?」

「失態だよな。……しかも気付いてるか?」

「……?」「……?」「……?」

事も無さげに管理体制をぶった切るロン。そしてロンからの問い掛けにボク、ハーマイオニー、ネビルは頭にクエスチョンマークを踊らせる。

「あー、悪い。ネビルは無関係だった」

「酷いやっ!?」

「すまんすまん。ネビルは〝その場〟には居なかったんだよ」

(ん…?)

ハブられたと思ったらしいネビルは轟沈する。……ロンは──真人君は人の機微に聡い。けれでも失言が無いわけではないので、今みたいに失言の後には直ぐにフォローが入る。……それは良い。

……ボクが気になったのはロンが口にした〝その場〟と云う表現だ。

ネビルがボクたちの輪に入ってきたのは厳密には去年度の暮れだが──今年度からだ。ネビルとツルむ前の事なら〝その時〟と表現する方がスッキリくる。

何とも喉奥に小骨が引っ掛かった気分と格闘していると、ロンが得意げにヒントを出してきた。

「ヒントは今日の日付だ」

「ん? 今日の日付…? ……今日は6月7日だけど──っ」

口にしていて、直ぐに判った。今日が6月7日なら昨日は6月6日な訳で…

「トレローニー先生の予言…っ!」

「だな」

トレローニー先生の予言を要約すれば、ヴォルデモートが強くなって復活する──みたいな内容だったはずだ。

「って事は…」

「来るぞ」

短いロンの言葉と共に雨足が強くなった様な気がした。

SIDE END 
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