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風魔の小次郎 風魔血風録

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122部分:第十一話 武蔵の力その七


第十一話 武蔵の力その七

「まずは私を倒すのだな。行くぞ」
「来たか」
 壬生の背中から何かが出て来た。それは氷の翼だった。彼は己が操る氷を翼の形にして出してきたのである。
「氷かよ」
「受けよ」
 その氷が散った。そして無数の氷の刃となり小次郎に襲い掛かる。
「夜叉氷翼殺」
 それがこの技の名前であった。今それを小次郎に対して告げる。
「この壬生の最大の技の一つだ」
「それで俺を貫くってわけだな」
「この技を受けて無事だった者はいない」
 無数の氷が迫る。正面から小次郎に襲い掛かる。氷の輝きが場を支配していた。
 だが小次郎はそれを前にしても退きはしない。見据えているだけであった。
「そう来るか。ならば」
「風か」
「ああ、そうさ!」
 小次郎もまた己の背に見せてきた。風を。
「風魔烈風陣!」
「むっ!?」
「俺だってな、剣だけじゃないんだ!」 
 叫ぶその瞬間に烈風を巻き起こす。それで壬生の氷を押し返しにかかったのだった。
「私の氷をか」
「そっちが氷ならこっちは風だ!」 
 小次郎はまた叫ぶ。
「受けやがれ、この小次郎の風をな!」
「くっ、させん!」
 壬生はさらに氷の力を出した。氷は風を押そうとする。だが小次郎も引かない。風と氷が拮抗する。二人はそれを見て次の動きに移った。
「どうやら術では互角か」
「そうらしいな。じゃあよ!」
「参る!」
「行くぜ!」
 二人は同時に跳んだ。そして今度は空中でその聖剣でもって斬り合うのだった。
「この風林火山を受けたら無事では済まないぜ!」
「それはこちらとて同じこと」
 小次郎は風林火山を思いきり振りかぶる。壬生はそれに対して横から振るおうとする。今そこで両者の剣が打ち合った。
 一撃で終わりではなかった。互いにニ撃三撃と剣を出す。空中で何十合も打ち合いそのうえで着地する。既に氷も風も消え去っていた。だがそれでも二人の闘いは続いていた。
「まだだ!」
「無論!」
 着地してすぐにまた斬り合う。二つの剣がまたもや打ち合う。二人の闘いは熾烈なものになっていた。
 兜丸は一人森にいた。一人だが警戒は解いてはいなかった。そして森のある場所を剣呑な目で見つつ声を出したのだった。
「来たな」
「わかったのだな」
「わからない筈がないだろ」
 言葉はいつもの調子だがそこには緊張があった。
「それだけの気を出していたらな」
「気配は消したつもりだったがな」
 兜丸の前に一人の男が姿を現わしてきた。彼は。
「流石は風魔九忍の一人というわけか」
「飛鳥武蔵」
 兜丸は彼の名を呼んだ。
「ここで貴様を倒してやる。覚悟するんだな」
「残念だがそれは無理な話だ」
 武蔵はその手に持っている長剣をその紫の袋から出しつつ応えた。
「この武蔵、負けるわけにはいかないのだからな」
「負けるわけにはいかないか」
「そうだ」
 強い決意を隠しての言葉だった。
「何があろうともな」
「それはこちらも同じこと」
 兜丸もまた木刀を出してきていた。そのうえで構えている。
「貴様を倒せば夜叉は最強の戦士を失うことになる。だからこそ」
「俺を倒すというのだな」
「そうだ。行くぞ」
「うむ」
 武蔵もまた構える。そのうえで両者は対峙するのだった。
 
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