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風魔の小次郎 風魔血風録

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111部分:第十話 小次郎と姫子その九


第十話 小次郎と姫子その九

「恥ずかしいです」
「いやいや、本当に」
 しかも小次郎は本気だった。
「すげえなんてものじゃ。まるでアイドル、いやそれ以上」
 完全にベタボレであった。そのベタボレの小次郎は当の相手と共に遊園地に入り汽車に乗ったりジェットコースターに乗ったりカップに乗ったりお菓子を食べたりして遊び。一通り動き回ったところで二人並んでベンチに座り仲良く話をしていた。それぞれの手にはソフトクリームがある。二人共バニラを食べている。
「楽しいですね」
「うん」
 笑顔で姫子の言葉に頷く小次郎だった。
「もう最高、こんな楽しいことはじめてだよ」
「私もそうです。・・・・・・って」
 だがここで。姫子の笑顔が消えた。そうして急に俯き曇った顔になるのだった。
「無理して明るくしても疲れるだけですね」
「いや、それは」
「小次郎さん」
 真剣な面持ちで姫子は小次郎に声をかけてきた。
「私、考えてるんですけれど」
「何を?」
「今の風魔と夜叉のことです」
 彼女が言うのはこのことだった。やはり彼女も当事者であるのだ。
「私は最初は白凰の復興を考えていただけですが」
「それが俺達の戦いになったことを」
「それで私」
 姫子はさらに言葉を続けていく。
「この戦いを終わらせたいんです」
「この戦いを?」
「はい」
 小次郎の言葉に対してこくりと頷いたのだった。
「誠士館に行って夜叉姫とお話して」
「それは無理だな」
 小次郎は正面を向いて述べた。目は少し上を見ていた。しかし上に広がる空を見てはいない。別のものを見つつ姫子に語っていたのだった。
「絶対にな」
「無理って」
「姫様も北条家の人間ならわかってるよな」
 ここで姫子が北条家の者であることを語った。
「俺達風魔と夜叉、北条家と上杉家のことを」
「ええ、それは」
 沈んだ顔になり小次郎の言葉に小さく頷く。
「北条家と上杉家はそれこそ戦国時代から」
「そうだよ。風魔と夜叉もだよ」
 小次郎は言う。
「戦国時代だけじゃない。江戸時代も明治も大正も昭和も」
「互いに争ってきたのですか」
「この前だってな。小競り合いがあった」
 このことを姫子に対して告げた。
「うちの雷炎と十蔵が八将軍の一人陽炎とやり合ってな。二人共危うく死ぬところだった」
「死ぬって・・・・・・」
「忍の戦いは生きるか死ぬか」
 小次郎はこのことも姫子に対して告げる。
「死ぬことだって珍しくはねえさ。今度の戦いだって項羽と林彪は下手したら死んでいたさ」
「項羽さんと林彪さんが」
「向こうだって八将軍がそうさ。俺も壬生を一度破っている」
「殺し合いですか」
「そうおいそれとは終わらねえ。俺達の戦いはそうなんだよ」
「けれどもう」
 それでも姫子は言った。
「こんな戦いは」
「例え俺達が引いても夜叉は引かない」
 小次郎はまた言う。
「特にあいつ、飛鳥武蔵はな」
「飛鳥武蔵、あの傭兵の方ですね」
「そうさ、あいつだ」
 小次郎の顔が険しいものになる。
「あいつは。特別なんだよ」
「特別ですか」
「強いなんてものじゃねえ」
 そう姫子に述べる。
「それに。何か引くに引けない理由があるのかもな」
「引くに引けない理由?」
「ほら、夜叉はあれじゃねえか」
 まずは夜叉について言及してきた。
「上杉家から頭領になった夜叉姫の下にいるだろ」
「はい」
「上杉家は代々夜叉の主」
 これに関しては北条家と風魔の関係と全く同じである。
「血の絆だからその繋がり強いんだよ。俺達風魔と同じでな」
「けれどあの人は」
「そう、傭兵の筈なんだ」
 ここまで話したうえで武蔵の話に戻る。
「それがどうしてな。あそこまで」
「傭兵は本来違うのですか」
「俺達風魔は傭兵は雇わない方針だからよくわからねえところはあるが」
「これは北条家も同じです」
 北条家では風魔を使うということである。やはりのその主従関係は強い。
「ですから私も傭兵のことは」
「だから詳しいことはお互いわからねえけれど」
 それでも小次郎は言ってみせた。
「傭兵はやばくなったら逃げる」
「逃げますか」
「それか報酬分働いたらな。それで終わりだ」
「あの武蔵という人は」
「もうかなり誠士館にいるんだろう?」
「そうみたいです」
 こう小次郎に述べる。
 
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