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風魔の小次郎 風魔血風録

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11部分:第一話 小次郎出陣その十一


第一話 小次郎出陣その十一

「壬生は。強い」
 彼が小次郎に伝えることはそれだった。
「夜叉においても最強の忍の一人だ。それを忘れるな」
「本人からも聞いたぜ。それに」
 構えを取り壬生を見据えながら言う。その顔に緊張が走っている。
「この気配。只者じゃねえってことを教えてくれているぜ」
「姉上の為にも」
 壬生は夜叉姫のことを思った。今度は。
「君にはここで倒れてもらう。覚悟するんだな」
「へっ、こっちだってな」
 小次郎も負けてはいない。その手に持っている木刀に風が宿ったように見えた。
「姫様の為にな。御前にはやられてもらうぜ!」 
 この言葉のやり取りをはじまりとして二人の闘いがはじまった。まず動いたのは壬生だった。
 すすす、と音もなく間合いを詰めて小次郎に迫る。最初に繰り出したのは突きであった。
「おっ!?」
「今のをかわしたか」
 壬生は小次郎が自分の突きを右に身体を捻ってかわしたのを見て言った。
「やはり。あの三人を退けただけはある」
「・・・・・・速い」
 小次郎も小次郎で今の壬生の突きを見て言う。
「こいつ・・・・・・やっぱり只者じゃねえ」
「しかしだ。これで終わりではない」
 壬生の動きは続く。
「今度は。これだ」
 突きを続けて繰り出す。先程のものよりも浅く、それで連続して出す。しかし小次郎は今度はその突きを手に持っている木刀で受けていた。
 防戦である。しかし一歩も退いてはいない。壬生の疾風の様な攻めを受け止めていたのだ。
 自分の攻撃を受け止めているのを見て。壬生はまた言ってきた。小次郎に攻撃を仕掛けながら。
「これも受けるというのだな」
「ちっ、こいつ」
 小次郎は壬生のその動きを受け止めながら舌打ちするのだった。
「強いなんてもんじゃねえぜ。洒落にならねえ」
「これだけで終わりとは思わないことだ」
「何!?」
「私も忍なのだ」
 次に彼が言うのはそれであった。
「それがどうしたっていうんだ?今更よ」
「術も使えるということだ。君が風を使うのと同じようにな」
「術!?剣技だけじゃねえのかよ」
「そうだ。君はかなりの使い手」
 今度は右に左に振るうがそれもまた受け止めている小次郎に対して告げた。
「ならばそれ相応の術で相手をしなくてはな」
「ちっ!」
 小次郎はそれを聞いて無意識のうちに後ろに跳び間合いを離した。これは護り故であったがこれこそが壬生の思う壺であった。
「よし、今だ!」
「何っ、ここでかよ!」
「参る。壬生攻介最大の技」
 剣を構えなおしながら叫ぶのだった。
「霧氷剣!」
 技の名を叫びながら木刀を右斜め下から左斜め上に一閃させた。するとその木刀から青い水が放たれた。それは小次郎に対して一直線に向かって来た。
「やばい!」
 小次郎はそれを見て咄嗟に上に跳んだ。それでその青い水をかわした。水は遥か後ろの壁に当たった。するとその壁が青く凍り付き割れてしまった。
「なっ、コンクリートがかよ」
「これが霧氷剣」
 また木刀を構えなおしながら言う。
「ただ。かわしたのは君がはじめてだ」
「それは嬉しいことで」
「しかしだ。この壬生攻介同じ間違いはしない」
 再び攻撃に入ろうとしていた。
「今度は・・・・・・これならば!」
 上にある配水管を突いた。そこから水蒸気を出す。
「!?水蒸気を」
「霧氷剣は水の技」
 また構えに戻りながらの言葉だった。
「だからだ。受けよ!」
「くっ、また来たか!」
「今度は逃がさん!」
 言いながら木刀を水蒸気を前にして右に左に振り回す。その度にあの青い水が今度は氷となって放たれ小次郎に迫るのだった。
 氷達が小次郎に迫る。彼はそれを前にしてもまだ身構えている。しかし危機が迫ってきていることは誰よりも感じていた。
「まずいな。このままじゃよ」
 その数と速さは彼の動きをしてもかわしきれないものだった。それを悟っていた。
 悟りながらもどうすればいいのか判断がつきかねていた。どうすればいいのか。しかし決めなければならなかった。そうでなければ倒されるのは彼だった。
 そしてここで。彼が出した答えは実に彼らしいものだった。
「うだうだ悩んでも仕方ねえ!」
 叫びながら木刀を構えなおした。そして彼からも攻撃を出した。その技は。
「喰らえ風魔」
「むっ!?」
 風魔と聞いて武蔵が声をあげた。
「風魔の技だと。ここでか」
「烈風剣!」
 技の名前を叫びながら木刀を上から下に一閃させた。渾身の力で技を繰り出したのだった。
 それは風だった。一陣の風を放つ。それは霧氷剣の青い氷を放ち打ち消す。まずはそれで危機を脱したのだった。
「何だと!?霧氷剣をか」
「危ないところだったぜ」
 己の技を消され驚く壬生に対して告げた。
「しかしよ。俺にだって技があるんだ。だから!」
「くっ!」
「今度は俺の番だぜ!」
 驚く壬生に一瞬の隙が生じた。そして小次郎はその隙を見逃さなかった。その姿を消したのだ。
「何処だ!?」
「ここだぜ!」
 前から声がした。
「前だと」
「そうさ。受けな!」
 小次郎が出た。既にその木刀を振りだしていた。
「これで・・・・・・俺の勝ちだ!」
「うぐっ!」
「壬生っ!」
 武蔵も叫んだ。壬生もその木刀を出し守ろうとする。しかし間に合わない。小次郎の木刀は横に一閃された。それで壬生の腹を打ったのだった。
「ぬかった・・・・・・」
「それでも。やるもんだぜ」
 木刀を一閃させた小次郎が前に倒れていく壬生の背を肩越しに見ながら言った。
「咄嗟に急所外したな。そうでなきゃこの程度じゃ済まなかったぞ」
「だが。この私を倒すとは」
 壬生は倒れながらその小次郎に対して言う。
 
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