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風魔の小次郎 風魔血風録

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105部分:第十話 小次郎と姫子その三


第十話 小次郎と姫子その三

「おろっ!?」
「小次郎さん」
 小次郎に顔を向ける。そのうえでの言葉だった。
「今度のお休みですけれど」
「ああ、土曜か日曜!?」
「日曜です」
 曜日も指定してきた。しかも姫子の方から。
「風魔の皆さんはまた全員揃われたんですよね」
「ああ、まあな」
「それに夜叉との戦いも一段落ついたとか」
「一応だけれどな」
 これについては難しい顔をする小次郎であった。
「八将軍は今のところ全員戦線離脱だけれどな」
「はい」
「で、それが一体」
「戦いは一段落ついているのは間違いないですよね」
 姫子はそこをまた問うてきたのだった。
「ですから今度の日曜に」
「おう、日曜に」
「遊園地に行きませんか」
「遊園地っていうと」
「テーマパークです」
 こう言い換えてきた。
「二人で。どうでしょうか」
「っていうとそれって」
 小次郎は話を聞いていて何となくわかってきた。どうにも頭の回転が今一つの感じである。というよりかは姫子が何を言っているのかよく把握できなかった。
「まさか」
「はい、そのまさかです」
 表情は変わらないが小次郎に対して言ってきた。
「デートを。如何でしょうか」
「デートォ!?」
 ここでようやく話を理解して思わず声をあげるのだった。
「それってまさか」
「はい。戦いは一段落していますよね」
 またこのことを小次郎に対して言ってみせる。
「ですから。一度骨休めにと」
「デ・・・・・・デートって」
 どちらかというと小次郎の方がドギマギしている。それに対して姫子は比較的落ち着いている。実に好対象な状況になっている。
「夢みてえだ。何か」
「夢ではありませんよ。ですから御二人で」
「あ、ああ」
 小次郎が断る筈もなかった。これで話は決まりだった。
 ところがだ。小次郎は悩んでいた。珍しく本屋に行ってそこでデートに関する本を手当たり次第に買う。それを貪るようにして読んでいた。
「小次郎は何しに来たの?」
「おっ!?」
 絵里奈に応える。実は彼女の病室でベッドに隣り合って座りながら本を読んでいたのである。
「いや、ちょっとな」
「デートなんでしょ」
 絵里奈の方から言ってきた。
「今度の日曜辺り?」
「鋭いな」
 その通りだった。小次郎は絵里奈の鋭さに驚くばかりである。
「そうだよ。わかるんだな」
「わかるわよ。今の小次郎見ていたらね」
「ううむ」
「それで小次郎」
 絵里奈はまた小次郎に対して声をかけてきた。
「何だ?」
「デートしたことないでしょ」
「それもわかるんだな」
「だってそんだけ本を何冊も必死に読んでいるから」
 絵里奈はそこを指摘してきた。
「わかるわ。必死にね」
「まあそうだよ。デートだからな」
 小次郎自身もそれを言う。もう隠せなかった。
「どうなるか。なあ絵里奈」
「何?」
「デートってどうするんだ?俺全然わからねえんだよ」
 忍である小次郎がその様なことを知っている筈もなかった。そういうわけだった。
「風魔の兄ちゃん達はそんなこと誰も知らないしよ」
「そうなの」
「全然。どいつもこいつも朴念仁ばっかだよ。特に劉鵬」
 名前が出たのは彼だった。
「背が高くて顔も結構いけるんだけれどよ。あんなのだから風魔の姉ちゃん達に声かけられても気付かねえ。まあ他の兄ちゃん達だって同じなんだけれどよ」
「小次郎の周りって女ッ気ないの」
「姉ちゃん達は皆おっかねえしよ」
 小次郎にとってはだ。風魔の姉達は末っ子的存在である彼にとっては皆怖い存在なのだ。だからそうした感情を抱いたことはないのである。
「蘭子は見ただけでそんなの疎いってわかるしよ」
「誰もいないの?」
「全然いねえ」
 またはっきりと答えてみせた。
 
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