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風魔の小次郎 風魔血風録

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100部分:第九話 夜叉の窮地その十


第九話 夜叉の窮地その十

 屋敷では項羽の思わぬ帰還と勝利で沸き返っていた。風林火山を振っていた小次郎もそれは同じだ。
「項羽の兄ちゃんはそろそろだって思っていたけれどよ」
「俺が勝ったことがそんなに珍しいか?」
「いや、勝ったのもわかるさ」
 項羽の実力もわかっているからこその言葉だ。
「それでもよ。驚いたぜ」
「驚いた。何にだ」
「項羽の兄貴が妖水をやっつけたってことだよ」
「危ないところだったがな」
 これは項羽も認めるところだった。
「最後の羽根まで出したしな」
「最後までかよ」
「闇羽をな。出した」
「それでも倒したんだよな」
 小次郎はそこを言う。
「だったら凄えよ。これで夜叉は全滅だ」
「しかしだ。小次郎」
 その項羽からの言葉だ。
「妖水は急所をかわしている。すぐに復帰してくるぞ」
「すぐにかよ」
「そうだ」
 こう述べるのだった。
「すぐにだ。戻って来る」
「そうか。すぐにかよ」
「向こうも今まで戦線離脱した連中が戻って来る」
 今度は霧風が言ってきた。
「そうなればいよいよこちらもな。総力戦だ」
「総力戦か。遂に」
「しかし。あれだな」
 兜丸はすっと笑って竜魔に顔を向けたのだった。
「参謀の陽炎が重傷なのは大きいな。あいつは当分出て来れないだろう」
「さて、それはどうかな」
 しかし竜魔は兜丸のその言葉に懐疑的に言葉を返したのだった。
「あの男のことだ。それはわからんぞ」
「わからんぞって御前が倒したんじゃないのか?」
「手応えはあった」
 今度は林彪に対して答える。
「しかしだ。その手応えが妙だった」
「妙!?どういうことだ」
「人を斬ったものではない感覚がした」
 竜魔は言う。
「それはどういうことか」
「あの男。また何かしたか」
 劉鵬の顔が真剣なものになっていた。
「いつもの様に」
「だとすると無事か」
 小龍もこう考えだした。
「御前との勝負の後でも」
「そうかもな」
「だとしたら今後は総力戦ですね」
 麗羅もこの言葉を口にした。
「どっちかが敵の本拠地に乗り込んで」
「じゃあ願ったり適ったりだぜ」
 小次郎は風林火山を大きく振った。
「この風林火山でな、奴等纏めてぶっ潰してやるぜ」
「おいおい小次郎」
「そんなに重いの振り回して腰は大丈夫なのか」
 兜丸と項羽が笑って小次郎に突っ込みを入れる。
「まあそれでも使いこなせてきているがな」
「練習の成果か」
「そうかもな」
 小次郎は今度は林彪と劉鵬に対して答えた。
「こっちだってな。武蔵と壬生を倒さないといけないんだよ」
「飛鳥武蔵か」
 霧風がその名に反応した。
「あの男をどうするかだが」
「やっぱり最大の脅威ですね」
 小龍と麗羅が述べた。
「俺がやる」
 竜魔はその中で静かに一同に告げた。
「何があろうともな」
「おいよ、竜魔の兄ちゃん」
 その竜魔にまた小次郎が言ってきた。
「俺の風林火山で奴等二人共ガーーーーーーンって成敗してやっから兄ちゃんの出番はないぜ」
「ふっ、そうだったな」
 何故か今の小次郎の言葉には右目を閉じて微笑むのだった。
「ならば期待させてもらうぞ」
「ああ、俺はやってやるぜ」
 今度は風林火山を右肩に担いだ。
「この風林火山でな」
 そのことを誓う小次郎だった。彼もまた忍になろうとしていたのだった。
 
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