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決して折れない絆の悪魔

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家族

「ようお疲れさん」
「お眼鏡に適ったかな、団長」
「バッチリだ。よくやった」

ピット内へと戻ったアスタロトのチェックをしている一夏にオルガは話しかける、鉄華団の仕事は終わった。正直後は帰るだけで今はサムスを待っている。しかし本当に蹂躙だった、悪魔の名を冠するIS二機、エミザーダが自信満々にしていたので本当かどうか見極めようと思っていたが本当だったようだ。

「しっかし、エミザーダの姉貴の話じゃソードメイスなんてなかったがな。代わりにナイフっていうにはでかい"デモリッションナイフ"っつうのがあった筈だが」
「嗚呼それ?こいつの事だよ」

そう言って先程のソードメイスを指さすが如何にもそうには見えない、と持ち手の部分を引き抜くとそこには話にあったナイフがあった。

「メイス内に仕込まれてるのか」
「ああ。っというか俺、メイスの方が使い易かったんだ。だから大剣仕様のメイスを付けて貰ったんだ、それにほら、ミカとお揃いだろメイスって」

成程とオルガは納得する。大剣は剣というカテゴリーにあるがどちらかと言えばメイスのような鈍器に近い、どちらかと言えばメイスの方が使いやすいのか一夏もメイスを希望した結果、エミザーダがデモリッションナイフを覆うようにしたソードメイスに改良された。

「いざって時は引き抜いてナイフとして使うって感じさ、奥の手って奴」
「お前昔っからそういうギミック好きだよな」
「楽しいじゃん」

一夏は昔から妙に相手の意表を突く、というよりもビックリさせるようなギミックを好んでいた。オルガもビックリ箱やドッキリを仕掛けられた覚えがある、其の度に一夏はニコニコと笑っていた。ビックリするのは嫌だがあの笑顔を見るのは悪くない。アスタロトを解除するとオルガからドリンクとタオルが投げられる、受け取り礼を言う。

「んでこれから如何なるの?」
「さあな。俺から見てあのオルコットと織斑がまだ戦えるとは思えねえ、IS的にも精神的にもな」
「織斑は気絶してるしな」
『未来、聞こえるか』

ドリンクを啜っているとピット内に内線が響いてくる、声は千冬の物だ。

『残りの試合を行いたいと思っていたがオルコットの精神状態が悪く行えん、織斑も意識を失っている。加えてアリーナの使用限界時間が来ている、結果的に見ればお前たち二人が代表という事になるが』
「なら織斑先生、勝者としての権利で俺が副代表になりますよ、良いだろミカ」
「いいけど何で?」
「ちょっと面白かったからさ、試合してみるのが」

確かに怒りのままアスタロトを動かしていたが怒りだけによる興奮ではなかった、研究所でサムスに特訓を受けていたがあの時とは違いいざ戦ってみると機体の出力が上がっていくにつれ高揚感が増していった。またあの感覚を味わいたい。

「副代表、代表のサポートに徹するのか」
「いえ、あくまで代表が戦えなかった時の補欠です。それぐらいだったらやっても良いですよ」
『しかし……否解った、では勝者の権利として代表はオルコットか織斑にやらせる』
「そうしてください」

何かの事情で戦えなくなったなら代わりに出る程度ならいいが雑務などは真っ平だ。

「オルガ、そろそろ帰るぞ。此処にいる理由も無くなった」
「了解。んじゃミカに一夏、俺達行くぜ」
「途中まで送ってくよ」

サムスとオルガと並ぶようにピットから出る、途中女子達に遭遇したが先程の戦いが既に広まっているのかこちらを恐れるかのような視線で見ていた。ISの試合は基本的にスポーツとして認識が強い、だが先程のあれはスポーツなどという生易しい物ではない、戦闘に近い。一方的な蹂躙はISの力を如実に表した、それを使える男の力も同時に示した。

「私達は此処で良い、お前達は今日から寮生活だろ?」
「ああ。部屋の工事も終わったらしいからね」
「ミカ、ほれデーツだ」
「ああ、無くなり掛けてたから助かる」
「んじゃな。連絡確り寄越せよ」

そう言って二人は校舎を出た所で背を向けて去っていた、何処か寂しさを感じてしまう。これからは暫く未来院の皆と会えなくなる、だがそれも致し方ない事だ。何時までも料亭に泊まり込むわけにもいかないし両親にも迷惑が掛かる。

「ミカ、如何する?」
「部屋に行ってる、一夏は?」
「散歩してから帰る」
「解った」

拳をぶつけあってからミカと別れる一夏、少しの間空をぼぅっと見上げると校舎へと戻り適当に歩き始まる。考えれてみれば初日に途中で早退したから校舎内を全く把握していない、ある程度歩いて知っておかなければならないと歩いていると廊下の向こう側から千冬がやってくるのが見えた。何処かへ行こうかと思ったがこちらへと声を掛けて来たので諦めてその場にとどまる。

「未来……すまなかった私の弟が…」
「俺の事を兄貴だのなんだのって言った事はもう気にしてませんよ。但し……未来院の事を今後侮辱したら……あいつの命の保証はしませんがね」
「解っている、私から厳しく言っておく」
「一つ聞いても、織斑 一夏って何ですか?」

その質問に千冬は如何答えて良いものか迷った。自分の弟だというだけなら容易い、事実だ、が……それが本当に正しいのか迷った。自分にとって一夏という存在は何のか、大切な家族……それは間違いないが、それだけでは足りない気がした。

「……」
「織斑先生」
「すまない、一夏は……。私と百春の大切な家族だ……私が守り切れなかった……私は咎人だ」

拳を強く握り込む、それこそ手から血がが滲むほどに……。

「私が守らなければいけなかったのに……情けない話だ」
「そうですか、ですが俺とは関係のない話だ」

千冬は思わず怒りを覚えそうになるがそれを抑えた、正しいからだ。どのような事情があったにしろ自分は弟ではない、勝手にそちらが勘違いしている被害者なのだからと。

「もう一度言います、未来院に対する侮辱をした場合……俺は誰であろうと……」
「ああ、解った……」

念入りに確認すると一夏は去って行った、割り当てられた部屋へと向かったのだ。その後ろ姿はやはり一夏に似ているが全く違うように見える。千冬は泣きそうな瞳を擦ると窓の外へと視線をずらした。

「ぁぁっ……一夏、お前は、私を恨んでいるか……?」 
 

 
後書き
次回予告

セシリア「恐ろしい……唯それだけしか言葉が見当たりません……。

私はなぜこんな目に……?彼らを侮辱したから……?

えっ……わ、私が……!?

そ、そんな、そんなっ……!!!

次回、決して折れない絆の悪魔、第11話

罪と罰

如何しても、許して貰えないのですか!!!?」 
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