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ブレイブソード×ブレイズソウル~災禍の罪人~

作者:村雲恭夜
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一話

「いい加減起きろッ!このクソ主ッ!!」

何時もの朝。何時もの衝撃がサイカを襲った。

「グホッ!?」

痛みに悶え、ベッドから転げ落ちると腹を押さえてサイカは叫ぶ。

「いい加減にしろよ禍津!?俺じゃなかったら完全に気を失うレベルのダメージだぞ!?」

「知らないわよそんなこと。何処かの主が時間を気にせず寝てるからでしょ?」

ドヤ顔で言う禍津にサイカは怒鳴ろうとすると、一人の少女がドアから現れた。

「お姉ちゃん......!ご免なさいマスター様、毎朝毎朝お姉ちゃんがご迷惑を......!」

ひたすら謝る彼女の名前は狼炎。禍津の妹であり、禍津狼炎で双子の魔剣なのだ。しかし、それぞれランクが違い、それにも歴とした理由はあるのだがそれはまたの機会に。
ともあれ、ひたすらに謝る狼炎に対し、サイカは頭を掻きながら言う。

「これもう何度目のやり取りだ?禍津が殺しに来て俺が切れて狼炎が謝る......全てお前のせいだぞ、禍津」

「知らないわね」

悪びれもなく言い切る禍津に、サイカは青筋を立てるが、繰り返しになると思い直し息を吐く。
そこに、白い服を着た少女が現れる。今朝は珍しく和服姿ではなく他の人間達が着ているような衣服を纏うカグツチだ。

「主......はいつも通りと言うことか。仲が良いのは結構だが、あまり騒がしくするな迷惑だ」

「カグツチまで何だ?今日は珍しいな、もしかして手にはいったのか?例の魔剣、『神葬』の情報が」

サイカは立ち上がり、煤を叩くとカグツチは首を縦にする。

「あやつからの情報だ。司書王ロルリアンレットから手紙が届いておったぞ」

カグツチはその手紙をサイカに渡すと、早速サイカは封書を開いた。

『調査書:神葬について
ロルリアンレット図書館にて、報告を説明する。
昼十二時に図書館に来られたし
司書王ロルリアンレット印』

それを見たサイカはすぐに近くに掛けてある黒いコートを羽織り、棚に置いてある魔導バイクの鍵を手に取る。

「ようやくか......。ようやく手掛かりを見付けたぜ、俺の魔剣......!」

「それを言うなら主ではなく主の父、セイガの魔剣だが......。正直受け継いだ後は主の魔剣だし、差し支えはないが」

カグツチも言いながら近くにある太刀を腰につける。

「神葬?何だっけ?」

「......お姉ちゃん。『神葬』って言うのはマスター様のお父様、即ちセイガ様の元相棒兼魔剣って話だったでしょ?確か、マスター様が過去に失ったって話をしたと思うけど......?」

狼炎は姉の禍津に説明しながら二人の準備を待っていた。禍津はベッドで転がりながらその説明を聞いている。

「まぁ、『失った』は正確じゃなくて、本当は俺のせいで俺のそばから消えたんだけどな」

サイカはそう言うと部屋の扉を開ける。

「さて、行くぞ。とっとと魔剣になれ、禍津に狼炎」

「仕方無いわねぇ......」

「お姉ちゃん!」

禍津は渋々、狼炎は禍津を怒りながら魔剣状態へとロックされた。それを拾って背中に装備すると階段を下りて酒場へと移動する。
酒場はいつもみたく賑わっており、昼でも夜でも活気が絶えないいい酒場だった。
そんな酒場の出入り口を開けようとすると、ビュンッ!と音をたててなにかが飛んでくる。

「忘れもんだよ!」

「おわっと!?」

投げたのは酒場のおばちゃん。どうやら今日はパンが食事らしい。

「気を付けて行きな!帰ってこなかったらぶっ飛ばすからね!!」

「分かってるよー。行ってくる」

サイカは手をあげて言うと、出入り口を開け、外に出る。
そして、割と近くに止めてあるサイドカー付きの魔導バイクに乗り込むと、カグツチはサイドカーに乗り込む。

「主、ロルリアンレットには警戒した方が良いぞ。前の事もあるからな」

カグツチは今にも魔剣状態になりたいと思う顔をしながら言う。
以前、仕事でロルリアンレット世界図書館に行ったことは有るものの、その全てがロルリアンレットの主、《司書王》ロルリアンレットによって仕組まれたものが大半であるため、カグツチは苦手意識を植え付けられている。
とは言え、今回は個人的な頼みなので、我慢しているのだろう。

「まぁその時は悪いが手伝ってくれカグツチ。勿論お前らもな、禍津狼炎?」

『いや』

『お姉ちゃん!!』

もうめんどくなってきたと思いながらも、魔導バイクのイグニッションキーを回して起動させ、ロルリアンレット世界図書館に移動を開始した。















《ロルリアンレット世界図書館》
魔剣のデータや魔界の全てのデータが保管されている司書王の管理区域。
ここには封印指定の物から太古の書物が揃っており、何かを調べるにはうってつけの場所だったりする。
因みに、ここではギルドと呼ばれる魔剣使いの集まりの手伝いなどもしており、全ての魔剣使いは例外なくここを訪れる。たまに司書王直々の依頼も在るため、下位の魔剣使いやE.D.E.Nの一部の魔剣使いは寄り付かない。まぁ、理由は二つあり、一つは司書王ロルリアンレットの威圧感。そしてもう一つは......。

「お待ちしておりました、サイカ様」

目の前のメイド、ププッピマリーが原因だ。彼女はメイドでありながら、魔剣使いである俺たちの身体能力を越えた動きをする。初対面であっても司書王の命であれば、魔剣使いだろうと何だろうと殺せる。

「出やがったな司書王の護衛メイド......」

「その名前で呼ぶのはお止めくださいとなんで申せばお分かりいただけますか?《魔呪一族》の現当主、サイカ・アカツキ様?」

「なら俺もその名で呼ぶのは止めてもらおうか、ププッピマリー。今の俺は個人のサイカで来ている。当主の状態なら文句は言わんが、魔剣使いである俺にはその名で呼ぶのは止めろ」

サイカは真顔で背中のロックされた禍津狼炎に触れると、ピピップマリーは一歩下がる。

「......これは失礼いたしました。では奥へご案内いたします、どうぞこちらへ」

ププッピマリーは反転すると、奥の方へと歩を進める。

「......俺らもいくぞ、カグツチ。警戒は怠るなよ」

「分かっておるわ、主こそしくじるなよ」

サイカとカグツチは警戒しながら、ププッピマリーの後ろを歩く。
歩を進めてから三分くらいだろうか、目的の場所に辿り着く。

「あら、良く来たわね魔剣使いサイカ」

椅子に優雅に座るこの少女こそが、かの王の称号を持つもの。
《司書王》ロルリアンレット。
サイカは警戒を解きながら、ロルリアンレットの対面の椅子に座りながら禍津と狼炎をアンロックした。

「......で、見付けたのか」

単刀直入にサイカは話を切り出す。
ロルリアンレットはププッピマリーに新しく出された紅茶を飲むと、その口を開いた。

「......ええ。少し骨が折れた、程度じゃすまされないけれどね」

ロルリアンレットはサイカを睨む。
サイカは睨み返すと、ロルリアンレットは話を続けた。

「出現場所、位置、状態は全てこの報告書に書いてあるわ。目を通しておきなさい魔剣使い」

ププッピマリーがロルリアンレットの代わりに神葬の報告書を差し出してくる。
それを受けとると、サイカはパラパラと早捲りしながら目を通す。

「......やはりユグドラシルか」

「やはり......ということはある程度目星は付けていたようね」

「当然だ、彼奴の行きそうな場所は幾つか心当たりはある。それに、彼奴の妹はユグドラシルに居るからな」

すると、ロルリアンレットは不思議そうな顔をする。

「姉妹魔剣......ってことかしら?でも私達はおろか、魔剣機関にも伝わってないのだけど」

「当たり前だ。......あいつらはその能力性能が高過ぎるせいで封印指定された実験魔剣だからな」

サイカは言うと、熱々の紅茶をイッキ飲みすると席を立つ。

「ごっそさん。報告は事後処理で頼む、いつもで悪いけどな」

「今更何を言うのかしら。共犯者に近いと言うのに」

ロルリアンレットは意地悪い笑みを浮かべると、サイカは少し笑っただけでその場を離れた。
















ロルリアンレット世界図書館を出たサイカは、再びその報告書を目に通す。

「全く......あのバカ、貯蔵魔力尽き掛けてるくせに良くやるぜ。誰に似たんだが」

『バカ主』

『話を聞く限り......マスター様ですよね?』

「主だろうな?」

魔剣三人からの言葉が同時に刺さる。

「......お前らもう少しオブラートに包めコラ」

「まぁそれはいいとして、これから向かうのは魔鍵都市ユグドラシルか?」

カグツチは苦笑しながらもサイカに質問するが、サイカは首を振ると魔導バイクのイグニッションキーを捻る。

「いや、最初は別んとこいく。もしかしたらそこかも知れねぇし」

「その別の場所とは?」

カグツチが聞くと、サイカは少し躊躇すると、口を開いた。

「親父の墓だ」










同時刻:魔鍵都市ユグドラシル近辺

そこは雨が降っていた。

ユグドラシルは快晴の筈だが、彼女が其処に現れた途端豪雨が降り注ぐ。

彼女の足取りは重く、身体は傷だらけ。

けれどなお歩き続け、ある所で止まる。

「......主」

彼女はそれに触れると、決意の目でユグドラシルのある方を睨む。

「......待ってて、ニル。必ず助けてあげるから......」

雨は降り続ける。まるで彼女の心境を示すように。

彼女の名は《神葬》。そして主に与えられた名は。


《グングニル·ニルヴァーナ》 
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