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河童

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第四章

「お口嘴みたいに尖ってて指と指の間水かきみたいになってて」
「指の先も尖ってる感じでな」
「しかもあの髪型や」
「ここでしか言えんけどな」
 相手がお客さんだからだ。
「あの禿げ方はな」
「あれやな」
「河童や」
 その感じだというのだ。
「まんまや」
「ってことはな」
「まさかと思うけど」
「あのお客さん実はか」
「河童ちゃうか?」
 こう妹に言った。
「リアルで」
「それはないやろ」
 夢は兄の言葉を笑って否定した。
「幾ら何でも」
「いや、わしが通ってた高校の近くの図書館にその高校時代行ったことがあったんや」
「えっ、兄ちゃんが図書館行ったんかいか」 
 ゆめはそのことに驚きだった。
「そんなことしてたんか」
「ちょっと宿題やる為にな」
「それで入ったんかいな」
「ああ、そこで宿題やる前に妖怪の本たまたま読んだんや」
「何でそんな本読んでん」
「たまたま気が向いてや」
 それでというのだ。
「宿題そのままするのもあれやしな」
「勉強嫌いやしな、兄ちゃん」
「寿司屋はどれだけええ寿司握れてお店やれるかや」
 この二つが重要だというのだ。
「そやからや」
「それもええんか」
「そや」
 こうあっさりと言うのだった。
「高校までは出なあかんって思って卒業したけどな」
「元々勉強嫌いでか」
「実際に今こうしてお寿司握ってるんや」
「腕がええのは認めるで」
 いつも兄の腕を舌で確かめているからこそ言えることだった。
「ええ感じや」
「それでええんや、寿司屋は」
「お店の商いの勉強もしてな」
「そうしてくわ、これからも」
「そういうことやな」
「ああ、それで話を戻すけどな」
 図書館のそれにというのだ。
「妖怪の本読んだけど」
「そこに河童のこと書いてたんかいな」
「そうや、何でも人間に化けられる河童もおるらしい」
「ほんまかいな」
「ああ、これがな」
 実際にというのだ。
「いるらしいな」
「ほんまかいな」
「河童が実在してるかまでは知らんけどな」
「妖怪がほんまにおったらか」
「人間に化けることもあるらしい」
「ほなあのお客さんは」
 ゆめは鉄火巻を食べ終えてから健一に言った。 
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