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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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外伝~仔猫の宅急便~後篇

同日、20:00――――



~アルゼイド子爵邸・食堂~



「―――それで?聞きたい質問は決まったかしら?」

「はいっ!えっと……まず一つ目ですがメンフィル帝国はユーシス君とアルフィン皇女殿下を含めたエレボニア皇家の方々に対してどのような処遇をされるのですか?」

トワはⅦ組を代表してレンに質問をした。

「へえ?ユーシスお兄さんの件を聞いてくる事は予想していたけど、まさかそこに加えてアルフィン皇女どころか、他のエレボニア皇族も含める”実質一つの質問で三つの質問の答えがわかる”質問の仕方をするなんて、中々欲張りさんね♪―――ま、いいわ。まずユーシスお兄さんの処遇だけど……メンフィルとエレボニアの戦争終結まではバリアハートの元アルバレア公爵城館にて軟禁、当然ユーシスお兄さんへの危害は厳禁とし、戦争終結後は”アルバレア公爵家”の財産の4分の1を現金にして渡して解放する事になっているわ。」

「えっと……と言う事はメンフィル帝国はユーシスを処刑したりしないのでしょうか?」

レンの答えを聞いたエリオットはレンに確認し

「当たり前よ。ユーシスお兄さんが貴族連合に所属していない事は諜報部隊の調べで最初からわかっていたし、第一幾らメンフィルにとって憎きアルバレア公の息子とはいえ、まだ10代の若い命を摘み取るような”人でなし”な事はしないわよ。」

「その割には貴族連合に加担しているという理由だけで貴族達を処刑して”晒し首”にしたみたいだけど~?」

「口を謹んで下さい、ミリアムちゃん!」

レンの説明に対して指摘したミリアムにクレア大尉は注意をした。



「そちらも知っている通り処刑したのは貴族連合に加担した貴族の”当主達のみ”よ。大体レン達の世界――――ディル=リフィーナでは戦争相手の重要人物や国家の反逆者並びにその関係者は”一家郎党処刑”―――つまり両親や妻、子供を含めた”家族全員処刑”が常識なんだから、むしろレン達はまだ優しい処罰をしたくらいよ?」

「い、”一家郎党処刑”が常識って………!」

「異世界はどれだけ物騒な世界なんだよ……」

「……なるほどね。”晒し首”の件と言い、異世界ではゼムリア大陸では既に廃れた古臭い慣習がまだ残っているのね。」

レンの答えを聞いたアリサは信じられない表情をし、トヴァルは疲れた表情で呟き、セリーヌは呆れた表情で呟き

「それにどの道エレボニアでもメンフィルが介入していなくても、貴族連合に勝利した際、内戦の元凶となった貴族達を纏めて処刑するのだから、そんなに驚くような事じゃないと思うわよ。むしろエレボニアの手間を省いてあげたのだから、エレボニアはメンフィルに感謝すべきじゃないかしら♪」

「……確かに内戦を引き起こし、多くの民達を傷つけ、苦しめ、そして国を疲弊させた彼らにも罪はありますが、釈明の機会も与えずに処刑するなんて余りにも非道ではないでしょうか……!?それに我が国ではそんな簡単に”極刑”の判決は出ません!」

レンの説明を聞いたラウラは厳しい表情で反論した。

「うふふ、それは”エレボニア帝国の常識”の話であって、”メンフィル帝国の常識”ではないわ。戦争している相手の国家の常識に合わせてあげるなんて、普通に考えてありえないでしょう?」

「……ッ……!」

「ラウラさん………」

「……………レン皇女殿下。メンフィル帝国が生かす事を決めたアルバレア公の次男―――ユーシスはバリアハートの各貴族達の元を訪問しているとの情報が入っているのですが、それは何の為でしょうか?」

レンの暴論ともいえる正論を聞いて唇を噛みしめているラウラをエマが心配そうな表情で見つめている中、重々しい様子を纏って黙り込んでいたアルゼイド子爵はレンに質問した。



「ああ、それはユーシスお兄さん自身の申し出よ。」

「へ………」

「ユーシスは一体メンフィル帝国に何を申し出たのだろうか?」

レンの予想外の答えにマキアスが呆けている中ガイウスはレンに質問した。

「メンフィル帝国とエレボニア帝国との戦争勃発の元凶の家族として、せめてもの償いにメンフィルに当主達を処刑された貴族の家族に対する慰問と謝罪、そして中立の貴族達を含めたバリアハートの貴族達にメンフィルの指示に決して逆らわないで欲しいという嘆願の為の訪問よ。ちなみにユーシスお兄さんがその件を実行する代わりにメンフィル帝国は今後クロイツェン州の他の領土を占領しても、貴族連合に加担した貴族達は当主を含めて危害を加えない事、クロイツェン領邦軍への降伏勧告を行う事並びに降伏してきたクロイツェン領邦軍の兵士達の身の安全の保証の約束をしたわ。」

「ユーシス君がそのような事を………」

「ユーシス………」

「………………ユーシスに同行しているメンフィル軍の兵士達は監視や逃亡防止に加えてユーシスの説得に耳を貸さずに逆上してユーシスに襲い掛かるかもしれない貴族達からユーシスを守る為かしら?」

レンの説明を聞いたジョルジュは複雑そうな表情をし、エリオットは辛そうな表情でユーシスの顔を思い浮かべ、ある事に気づいたサラはレンに訊ねた。



「ええ。―――さてと、ユーシスお兄さんの件は話し終えた事だし、次はアルフィン皇女を含めたエレボニア皇族達の件ね。結論から言うとアルフィン皇女を含めたエレボニア皇族達の処遇についてだけど、まだ明確な結論は出ていないわ。だけど少なくても”処刑”のような厳しい処罰にならない事は現時点で決定しているわ。」

「それは本当かい?特に今回の戦争勃発にアルフィンも原因の一端を担っているから、アルバレア公爵同様アルフィンにも相当厳しい処罰を与える事を予想していたのだが。」

レンの答えを聞いたオリヴァルト皇子は目を丸くした後辛そうな表情でレンに問いかけた。

「まあ、完全な”加害者”であるアルバレア公爵と違って”被害者”でもあるアルフィン皇女に厳しい処罰―――例えば”処刑”とかしたら、他国―――いえ、ゼムリア大陸のメンフィル帝国に対するイメージが残虐な国家と見られて、その事によってメンフィル帝国が掲げている理想―――『全ての種族との共存』の弊害にもなるもの。ただでさえ今回の戦争で”ゼムリア大陸の国家にとっては残虐な行為"―――例えば”晒し首”とかしているのだから、必要最低限以上の”ゼムリア大陸にとっての残虐行為”をするつもりはないわよ。」

「……ちなみに異世界では国家間同士による戦争で和解や降伏等で敵国の皇族が戦争相手の国家に引き渡され、相手の国家に処遇される事になった場合、どのような処遇が常識なのでしょうか?」

レンの説明を聞いてある事が気になったシャロンはレンに質問した。

「そうねぇ……男性の皇族は処刑並びに”晒し首”が常識だけど、女性の皇族の場合”処刑すらも生温い”と思えるような処罰方法が常識よ。」

「”処刑すらも生温い”って……一体どんな処罰方法なんですか……?」

レンの話を聞いたジョルジュは不安そうな表情でレンに問いかけた。



「うふふ、”娼婦”って知っているかしら?」

「しょ、”娼婦”ですか……?」

「初めて聞く言葉だな……」

意味ありげな笑みを浮かべているレンの問いかけにその場にいる全員が不思議そうな表情で首を傾げている中マキアスは戸惑いの表情で呟き、ガイウスは考え込み

「……”娼婦”って言ったら、”身体を売る事を生業としている女性”―――今の時代で言うと売春行為をする女性の事よ。」

「ええっ!?」

「ば、”売春行為をする女性”って、ま、ままままままま、まさか……!?」

「ふふっ、お嬢様には少々早すぎる話でしたわね。」

「え、えっと……それって、もしかして…………」

厳しい表情をしているセリーヌの話を聞いたエマは驚き、アリサは顔を真っ赤にして混乱し、アリサの様子を見たシャロンは苦笑し、トワは表情を引き攣らせ

「男が女を抱きたくなった時にお金と引き換えに男に抱かせる女の事でしょ?わたしがいた団の男連中も法をかいくぐって裏でコッソリやっているそういう施設に行ったみたいな話をしているのを聞いた事があるし。」

「うふふ、レン達の世界ではそういう施設を”娼館”と言う名前で呼んでいてね。ちなみにゼムリア大陸の国家は売春行為による商売を違法行為扱いしているみたいだけど、メンフィル帝国では売春行為による商売は違法じゃないわよ?何せディル=リフィーナでは”娼館”も立派な公共施設扱いされていて、メンフィルだけでなくどの国にもあって当然の”公共施設”だもの。」

「ば、売春行為の商売をする施設が”公共施設”って……!」

「そう言えばメンフィルは売春行為の商売をする施設を違法扱いせずに公に認めていたね~。その事で七耀教会や遊撃士協会が抗議しても異世界では認められている事を理由に抗議を無視しているって話を”情報局”でも掴んでいたけど、あれってホントの話だったんだ~。」

ジト目のフィーの後に答えたレンの説明を聞いたマキアスは信じられない表情をし、ミリアムは興味ありげな表情でレンを見つめて呟いた。



「悲しい事に娼館について文句を言っている人達は異世界の文化の違いを理解できていないのよね。」

「異世界の文化の違い………」

「……仰っている事は理解できるのですが………」

「だからと言ってそんな違法施設を国家が公に認めているなんて、色々な問題があると思われます。」

若干呆れた様子で答えたレンの答えを聞いたガイウスは呆け、ラウラとジョルジュは複雑そうな表情をし

「”娼館如き”を問題にしていたら、キリがないわよ?異世界ではそこの黒猫さんが言っていたようにゼムリア大陸では廃れた文化やありえない事がたくさんあるし、第一”娼館”は国家にお金以外の利益をもたらせる施設よ?」

「え……”娼館”が国家に”お金以外の利益”をもたらす……ですか?」

「……一体どのような利益なのでしょうか?」

レンの説明を聞いてある事が気になったエマは不思議そうな表情をし、シャロンはレンに問いかけた。



「―――”情報”よ。」

「え……じょ、”情報”……ですか?そんな施設で”情報”をどうやって手に入れるのですか?」

「”娼館”なんだから勿論”娼婦”に決まっているじゃない。―――”娼館”は貴賤問わず様々な国家の様々な立場だった女性が”娼婦”になって集まる施設。更に”娼婦”に情報収集を命じておいたら、その娼婦を抱く男性が女を抱いた事による満足感や征服感で得意げになって娼婦に色んな情報をポロッと口にする事もあるのよ♪」

「はわわわわわっ!?そ、そんな方法で情報収集をするなんて……!」

「な、なななななな……っ!?と言うかレン皇女殿下は私達よりも年下の女の子なのに何でそんなとんでもない事を平気で口にできるんですか!?」

「ハハ、レン君は普通の女の子と比べると相当マセているからね。」

「ハア……生徒達の情操教育に悪いから、これ以上娼館について話す事を止めてくれないかしら?」

ジョルジュの質問に答えたレンの答えを聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中顔を真っ赤にして混乱しているトワとアリサにオリヴァルト皇子が苦笑しながら答え、サラは疲れた表情で溜息を吐き

「なるほどね~。まさかそんな方法で情報収集をするなんて、盲点だったね。オジサンが生きていて、”娼館”の事を知ったら実行するかもね~。」

「ミリアムちゃん……さすがの宰相閣下でも”娼館”が国家にとって益になると判断したとしても実行する事はないと思います……実行するにはゼムリア大陸では様々な問題がありますし、さすがに売春行為を行う商売施設を公に認めるなんて、知事閣下どころか陛下も猛反対するでしょうからどう考えてもエレボニアで”娼館制度”を実現する事は不可能ですよ。」

一方ミリアムの推測を聞いたクレア大尉は困った表情で指摘した。



「話を続けるけど”娼館”には様々な理由で”娼婦”になった人達がいるわ。様々な理由によってお金を稼ぐ為……快楽を得る為……そして戦争に敗北した国の皇女や皇妃が”娼婦”として”娼館”に売られたりとかね。ここまで言えばアルフィン皇女は最悪の場合だった時どんな処遇にされる事になるか、予想できるでしょう?」

「!まさか……!」

「アルフィンが”娼婦”としてメンフィル帝国内の”娼館”に売られてしまう……と言う事かい?」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの問いかけを聞いてある事を察したサラは厳しい表情でレンを睨み、オリヴァルト皇子は辛そうな表情でレンに問いかけた。

「大正解♪娼婦として使い物にならなくなるまで不特定多数の男性に犯される―――つまり女性としての尊厳が最大限に汚され続けるから、”処刑の方が生温い”って思えるでしょう?」

「………………」

レンの話を聞いたその場にいる全員は重苦しい雰囲気を纏って黙り込んだり悲痛そうな表情をしていた。

「うふふ、そんな暗い顔をする必要はないわよ。さっきも言ったようにアルフィン皇女を含めたエレボニア皇族達に厳しい処罰を与えない事は既に決定しているし、”幻燐戦争”の件も含めるとアルフィン皇女がそうなる事は絶対にありえないから安心していいわよ。」

「”幻燐戦争”……?それは異世界で起こった戦争なのでしょうか?」

レンの口から出たある言葉が気になったラウラはレンに問いかけた。

「簡単に言ってしまえばそうなるわね。”幻燐戦争”で勝利したメンフィルは広大な領土を得たけど、支配下に置いた国家の皇族は殺さずに支配した植民地を”王公領”として統治させていたし、皇女に関しては全員パパ―――前メンフィル皇帝であるリウイ・マーシルンの側室として嫁いで、それぞれの皇女が生んだ子供達が皇女達の”実家”――――各皇家の跡を継いでそれぞれの”王公領”の領主として務めているもの。」

「……と言う事は仮にメンフィル帝国がエレボニア帝国を占領した場合、エレボニア帝国の皇族であるユーゲント皇帝陛下を含めた”アルノール家”にエレボニアの統治権を委任し、アルフィン皇女殿下に関しましては現メンフィル皇帝であられるシルヴァン皇帝陛下の側室として嫁ぎ、アルフィン殿下が御産みになった御子がメンフィルの植民地となったエレボニアの領土の領主になる可能性があるという事でしょうか?」

レンの話を聞いてメンフィルの考えを冷静に分析したクレア大尉はレンに確認した。



「半分正解で半分間違いね。アルフィン皇女が嫁ぐ相手で何人か候補が挙がっているけど、その中にシルヴァンお兄様はいないわ。」

「その口ぶりだとアルフィンへの処罰はメンフィル帝国の皇族や政府、或いは軍や貴族関係の誰かと政略結婚させる事に傾いているのかい?」

レンの答えを聞いてある事に気づいたオリヴァルト皇子はレンに訊ねた。

「ええ。―――”帝国の至宝”と称えられているアルフィン皇女の責任の取り方が思ったよりも軽くなりそうで安心したでしょう?」

「………………」

「まあ、ある意味安心はしたけど……メンフィルと和解するにせよ、降伏するにせよ、”帝国の至宝”の片翼が失われる事が決まっている事だけは今の話でよく理解できたよ……」

「殿下………」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの問いかけに対してアリサ達がそれぞれ複雑や辛そうな表情で黙り込んでいる中疲れた表情で溜息を吐いて呟いたオリヴァルト皇子の様子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめていた。

「――――これで一つ目の質問に対する答えは全て答えたわ。二つ目の質問は何かしら?」

「二つ目の質問はメンフィル帝国はこの戦争で正規軍と貴族連合軍、それぞれに対してどのような対応を取るのか具体的な内容をお教え下さい。」

「あら?確かケルディックでレーヴェがクレアお姉さんに正規軍に対する忠告を行ったのよね?なのに、内容が重複するその質問で本当にいいのかしら?」

二つ目の質問が意外な質問である事に目を丸くしたレンは質問をしたクレア大尉に確認した。

「”剣帝”は我々に対する忠告を『好きに捉えろ』と口にし、明確な答えや内容を口にしませんでした。我々の推測による不確かな情報よりもレン皇女殿下が持つ確実な情報が欲しいのです。」

「そう。―――まず正規軍だけど、レーヴェも言っていたように正規軍からメンフィル軍に戦闘を仕掛けて来ない限りメンフィル軍は正規軍に一切戦闘を仕掛けるつもりはなく、更に全軍にも正規軍から戦闘を仕掛けて来ない限り正規軍への手出しが厳禁である事も厳命してあるわ。エレボニアを占領した時、正規軍が必要な事くらいはさっきのメンフィルがエレボニアを占領した時の話を聞いているんだから、大体理解できるでしょう?」

「それはメンフィルの植民地と化したエレボニアの政治だけでなく、治安維持も正規軍―――いえ、エレボニアに委任して頂けるという事でしょうか?」

レンに問いかけられたクレア大尉はレンの話を冷静に分析してレンに確認した。



「ま、おおむね正解だけど治安維持に関しては完全に正規軍に任せず、メンフィル軍も駐屯するわよ。で、貴族連合に関してだけど……貴族連合は上層部を含めた貴族達に関しては”皆殺し”の予定よ。」

「な――――」

「み、”皆殺し”って……!」

残虐な笑みを浮かべたレンの言葉を聞き、仲間達と共に血相を変えたトヴァルは絶句し、エリオットは表情を青褪めさせ

「当然一人残らず殺す事に決まっているじゃない♪カイエン公を含めた残りの”四大名門”の当主や貴族連合に加担している貴族の当主達、そして結社を始めとした貴族連合に協力しているおバカさん達をみ~んな、一人残らず殺す予定よ♪クスクス、”革新派”にとってはラッキーよね?何せ”革新派”にとっての邪魔者をみんな纏めてメンフィルが始末してくれるんだから♪暗殺された”鉄血宰相”もあの世で喜んでいるのじゃないかしら♪」

「……確かに革新派(われわれ)は貴族派と争っている関係ではありますが、そのような余りにも痛ましい結果は宰相閣下も含めて誰も望んでいません……」

「第一四大名門の当主どころか、貴族の当主達まで皆殺しにしたら、エレボニアの政治体制に大きな混乱が起こるんだから、さすがのオジサンもそこまでは考えていなかったと思うよ~。」

残虐な笑みを浮かべたレンに問いかけられたクレア大尉は複雑そうな表情で答え、ミリアムは疲れた表情で答えた。

「ちょ、ちょっと待ってください……!残りの”四大名門”の当主達も殺害するという事はアンちゃんのお父さん――――ログナー侯爵もですか……!?」

「当然殺すに決まっているじゃない。”四大名門”は貴族連合の最高幹部と言ってもおかしくないんだから、例えメンフィルが手を下さなくてもエレボニアでも”処刑”の判決が出て当然でしょう?内乱を引き起こした張本人達なんだから。」

「そ、そんな………」

「アン………」

「……確かにレン君の言う通りだが、幾ら何でも”四大名門”に加えて貴族連合に加担していた貴族の当主達を全て処刑するなんて、様々な問題が浮上するから、エレボニアではそんな思い切った事はできないよ……」

自分の質問に答えたレンの答えを聞いたトワはジョルジュと共に悲痛そうな表情をし、オリヴァルト皇子は重々しい様子を纏って答えた。



「あ、あの……レン皇女殿下は先程”結社を含めた貴族連合に協力している人達”を全て殺害すると仰いましたが、まさか姉さん――――ヴィータ・クロチルダ姉さんも殺すおつもりなのですか……?」

「クスクス、勿論殺すつもりよ♪ましてや”蒼の深淵”は”結社”の最高幹部なんだから、結社に大打撃を与える意味でも”蒼の深淵”の殺害は決定事項よ?あ、でもレーヴェみたいにメンフィルに寝返るのだったら、生かして存分に”蒼の深淵”や”蒼の歌姫(ディーバ)”としての力を利用してあげてもいいわよ?」

「そ、そんな………」

「エマ……」

「……あのプライドが高いヴィータが命欲しさにメンフィルに寝返るなんて、どう考えてもありえないわね。」

「この内戦に結社の誰が参加しているのかわかりませんが、”執行者”の誰かは確実に参加していると思われますからその”執行者”に加えて”蛇の使徒”まで失えば、結社にとってかなりの痛手になりますわね……かの”リベールの異変”でも”執行者”を2名―――”痩せ狼”と”剣帝”、レン皇女殿下達メンフィル帝国が奪い取った”パテル=マテル”と”紅の方舟グロリアス”、そして”蛇の使徒”の”白面”の損失という痛手を被ったのですから。」

自分にとって親しい人物であるクロチルダまで殺害対象に入っている事に表情を青褪めさせて身体を震わせているエマをアリサは心配そうな表情で見つめ、セリーヌは複雑そうな表情で呟き、シャロンは静かな表情で呟いた。

「クスクス、それと肝心な事を忘れていない?レン達メンフィルの殲滅対象にⅦ組のクラスメイトも含まれている事に。」

「ぼ、僕達Ⅶ組のクラスメイトって……!」

「………メンフィルはクロウも殺すつもりなのだろうか?」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの指摘を聞いてアリサ達と共に血相を変えたエリオットは表情を青褪めさせ、ガイウスは辛そうな表情でレンに問いかけた。



「ガイウスお兄さんったら、何を当たり前の事を聞いているのかしら♪レンが言っているメンフィルに殺される予定のお兄さん達のクラスメイト――――クロウ・アームブラストの正体を考えたら、メンフィルどころかエレボニアでも殺されて当然の存在でしょう?」

「そ、それは………」

「……確かに”帝国解放戦線”――――テロリストのリーダーであるクロウの罪は重く、”極刑”の判決が降ってもおかしくはありませんが……」

「”帝国解放戦線”は”西ゼムリア通商会議”であんたを含めたメンフィルのVIP達も”鉄血宰相”ごと葬ろうとしていたから、この戦争でついでにクロウ達も葬るつもりなのね……!」

レンの正論に反論できないトワとジョルジュはそれぞれ辛そうな表情をし、サラは唇を噛みしめてレンを睨んだ。

「クスクス、皇族の命を狙った不届き者は殺して当然の存在でしょう?―――――それよりも貴族連合の協力者関連で一つ思い出したわ。”西風の妖精(シルフィード)”さん、”サービス”で良い事を教えてあげる。」

「……何?」

意味ありげな笑みを浮かべたレンに視線を向けられたフィーは警戒の表情でレンを見つめた。

「貴族連合の協力者に”西風の旅団”所属の猟兵達もいるわよ♪」

「何だと!?」

「”西風の旅団”って確か……!」

「フィーがいた猟兵団か……」

レンの答えを聞いたトヴァルは驚きの表情で声を上げ、マキアスは信じられない表情をし、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた。



「…………”西風”の誰が雇われているの?」

「連隊長の”罠使い(トラップマスター)”と”破壊獣(ベヒモス)”よ。」

「………そう………ゼノとレオが雇われていて、そしてゼノ達もメンフィルの殲滅対象に入っているんだ。」

「フィー………」

自分にとっての家族が貴族連合に雇われており、更にメンフィルに命を狙われている事を知っても一切動じずに僅かに複雑そうな表情をしているフィーをラウラは心配そうな表情で見つめていた。

「……話を戻させてもらうが………レン皇女殿下。殿下もご存知のようにエレボニアは広大な領地をそれぞれの領地を担当する貴族達によって治められています。その貴族達まで排除してしまえば、メンフィルの植民地となるエレボニアの領地経営にも大きな支障が出ると思われますが、その事に対する対策はどうお考えなのですか?」

「うふふ、そんなのメンフィル帝国政府やメンフィル皇族並びに貴族から手の空いている人達を派遣すればいいだけよ。レンやプリネお姉様もその一人だし。」

「ええっ!?そ、その……失礼を承知で伺いますけど、レン皇女殿下はその若さで領地経営をした事があるのでしょうか……?」

アルゼイド子爵の質問に答えたレンの答えを聞いて驚いたアリサはレンに訊ね

「領地経営はした事はないけど、帝王学の一部として領地経営の教育はレンを含めたメンフィル皇族は幼い頃から全員受けていて、いつでも領地経営ができるように常に定期的に勉強しているわよ。第一領地経営なんて、そんなに難しくないわよ?民達の生活に若干余裕ができるくらいの適切な税を決めて、領内の経済の流れと治安維持にしっかり目を光らせていたら問題なんて滅多に起こらないし、民達も豊かで平和に暮らしていけるようにしてくれる領主だったら、貴族だろうが平民だろうが気にせず、その領主の事を慕うでしょう?その証拠に貴族制度が廃されているリベール王国はグランセルを除いた各市を治めている市長達は”貴族”じゃなく、”平民”だし、カルバードも同様で各都市を治めている有力者達は貴族じゃないじゃない。」

「それは…………」

「ハハ……貴族制度が根強く残っているエレボニアにとっては耳が痛い話だね。」

「………………」

レンの正論を聞いたラウラは複雑そうな表情をし、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、アルゼイド子爵は重々しい様子を纏って黙り込んでいた。



「これで二つ目の質問は終わり。―――最後の質問は一体どんな質問かしら?」

「最後の質問は………エレボニア帝国が和解を申し出た場合、メンフィル帝国は和解の為の交渉に応じて戦争を止めてくれるかだ。」

「うふふ……”やっぱり”聞いてきたわね。ま、結論から言うと可能性は”ゼロ”じゃない事は断言できるけど……オリビエお兄さんじゃ、エレボニア帝国を代表してメンフィル帝国に和解の申し出をしてもできないわよ?」

質問内容を聞いたレンは最後の質問を口にしたオリヴァルト皇子を意味ありげな笑みを浮かべて見つめて指摘した。

「ええっ!?ど、どうしてですか!?」

「オリヴァルト皇子殿下は貴族連合に唯一囚われていないエレボニア皇家の方なのに、何故和解の申し出をしても和解に応じてくれないのだ?」

レンの答えを聞いたエリオットは驚き、ガイウスは真剣な表情でレンに訊ねた。

「そもそもオリビエお兄さん―――オリヴァルト皇子には”エレボニア帝国の代表になれる資格がない”から、和解の申し出をしても応じる事ができないもの。」

「へ……オリヴァルト殿下に”エレボニア帝国の代表になれる資格がない”……?」

「それは一体どういう事なのでしょうか?」

「………………」

レンの指摘が理解できていないマキアスは呆け、ラウラは真剣な表情でレンに問いかけ、レンの指摘の意味を理解していたオリヴァルト皇子は複雑そうな表情をした。

「……あっ!も、もしかして……!」

「トワ?何か気づいたのかい?」

ある事に気づいて声を上げたトワに気づいたジョルジュは不思議そうな表情でトワに問いかけた。



「うん……多分レン皇女殿下はオリヴァルト皇子殿下にはセドリック皇太子殿下やアルフィン皇女殿下と違って帝位継承権がないから、”エレボニア帝国の代表になれる資格がない”って言っているんだと思う……」

「あ……っ!」

「大正解♪”エレボニア帝国の代表になれる資格”―――つまり”エレボニア皇帝か帝位継承権を持つエレボニアの皇族以外のエレボニアの皇族”であるオリビエお兄さんが和解の為にメンフィルが要求する色々な条件を呑んだ所で、エレボニア帝国がこの和解条件は無効で条件内容を変えてくれって後から主張できるでしょうから、”庶子”の為帝位継承権が存在しないオリヴァルト皇子には和解の為の交渉はできても、肝心の戦争終結の調印はできないのよ。」

トワの答えを聞いたアリサは声を上げ、レンは小悪魔な笑みを浮かべて説明を続けた。

「そ、そんな……」

「……オリヴァルト殿下を”非常時によるエレボニア帝国の代表者”として認めて頂く事は不可能でしょうか?」

レンの説明を聞いたエリオットは悲痛そうな表情をし、クレア大尉は真剣な表情でレンに問いかけた。

「無理ね。ユーゲント皇帝達が全員死亡しているんだったら、さすがにオリビエお兄さんを”非常時によるエレボニア帝国の代表者”として認めるでしょうけど、全員生存している上世間では貴族連合に”保護”されている事になっているもの。まあ、オリビエお兄さんがメルキア皇帝になったかつてのヴァイスお兄さんみたいにエレボニア皇帝の地位を簒奪するつもりだったら、話は別だけどねぇ?」

「無茶言わないでくれ……私はヴァイスのようにそんな大それた野望を考えた事は無かったし、これからもそんな恐ろしい事をするつもりはない。第一帝位継承権を持たない私が父上からエレボニア皇帝の地位を簒奪してしまえば、エレボニアは更に混乱するよ……」

意味ありげな笑みを浮かべたレンに視線を向けられたオリヴァルト皇子は疲れた表情で答えた。



「うふふ、だったら何とか先程挙げた人物達の中で誰か一人でも貴族連合から奪還して和解交渉に挑むか、もしくは第三者――――七耀教会やリベールのような他国や国際的な立場を持つ他勢力に”非常時によるエレボニア帝国の代表”として超法規的措置として認めてもらうしかないわね。―――最も下手をしたら内政干渉になりかねない事に他勢力がオリヴァルト皇子を”非常時によるエレボニア帝国の代表”として認める事に力を貸してくれるとはとても思えないし、現状のそちらの戦力じゃ、誰も奪還できない所か返り討ちにあって、死ぬか捕まるかのどちらかでしょうけど。」

「……その口ぶりですと、まさかメンフィル帝国はユーゲント皇帝陛下達の幽閉場所を掴んでいるのでしょうか?」

レンの話を聞いてある事に気づいたクレア大尉はレンに問いかけた。

「ええ。ユーゲント皇帝、プリシラ皇妃、セドリック皇太子、そしてアルフィン皇女の幽閉場所は全員掴んでいるし、それ所か現在行方不明の”ラインフォルトグループ”会長のイリーナ・ラインフォルト会長や貴族連合に逮捕された帝都知事のカール・レーグニッツ知事の居場所も掴んでいるわよ?」

「!」

「ええっ!?か、母様の居場所まで知っているんですか!?」

「父さん達はどこにいるんですか!?」

意味ありげな笑みを浮かべたレンはアリサとマキアスに視線を向け、レンの話を聞いたシャロンは目を見開き、アリサと共に驚いたマキアスはレンに訊ねた。

「それを教える訳にはいかないわねぇ?レンが答える最後の質問内容は和解交渉の件についてなのだから、和解の件とは関係のない話を教える訳がないでしょう?」

「そ、そんな……」

「……ッ……!」

「……………」

しかしレンの口から出た非情な答えを聞いたマキアスは辛そうな表情をし、アリサは唇を噛みしめて顔を俯かせ、シャロンは真剣な表情でレンを見つめていた。



「あ、和解の件で一つ伝え忘れていたわ。実はユーゲント皇帝達を救出せずに、メンフィル帝国との和解へと持っていける方法が一つだけあるわよ。」

「ふえええっ!?」

「それは一体どんな方法なんでしょうか?」

レンの口から出た驚愕の事実にアリサ達と共に血相を変えたトワは思わず驚きの声を上げ、ジョルジュは信じられない表情でレンに訊ねた。

「うふふ、実はメンフィル軍の中で今回の戦争―――メンフィル・エレボニア戦争を和解へと持って行く為にこの戦争に参戦している人がいるのよ。」

「何ですって!?」

「ほえええ~!?というか戦争を和解へと持って行く為に何でその人は戦争に参戦してエレボニアと戦っているの??」

レンの答えを聞いたその場にいる全員が血相を変えている中驚きのあまりサラと共に声を上げたミリアムはレンに訊ねた。

「メンフィル帝国は高貴な血を気にするおバカな”血統主義”と違って”実力主義”。実力があって人柄も問題なく、かつ功績があれば、当然レン達―――メンフィル皇族直々に表彰されて、様々な”褒賞”―――それこそその人が望む内容を”どんな内容であろうと可能な限り”応えるわ。2年前に起こったプリネお姉様達―――メンフィル帝国の重要人物達も巻き込まれたロレントの事件解決の件でエステル達に感謝したメンフィル帝国から褒美の代わりに”それぞれの希望を叶えてもらった本人の一人である”オリビエお兄さんなら、レンの言っている事も真実である事もわかるでしょう?」

「2年前に起こったメンフィル帝国の重要人物達も巻き込まれたロレントでの事件……?」

「”ロレント”って確かリベール王国の地方の一つだよな……?」

「あの件か………その”褒美”は今回起こってしまったメンフィルとエレボニアの戦争を和解へと持っていく事も可能なのかい?」

レンの話にガイウスとマキアスが不思議そうな表情で首を傾げている中、心当たりがあるオリヴァルト皇子は静かな表情で呟いた後レンに問いかけた。



「勿論可能よ。―――最も”国の決定”を変える事になるのだから、並大抵の功績じゃ無理でしょうし、和解するにせよメンフィル側からの様々な要求―――例えばエレボニアの領地をメンフィルに差し出すとか、そう言った条件を強制的にエレボニアに呑ませる形になるけどね。」

「あの……そもそもその方は何故、今回の戦争を和解へと持って行こうと思われたのでしょう?メンフィル軍の中にいるという事はその方もメンフィル軍に所属している方ですよね……?」

「クスクス、それを言ってしまえばその人が誰なのかわかってしまうネタバレも同然で後で知った時の驚きが半減するから、答えられないわね♪」

「ネ、”ネタバレ”って………」

「そんな事の為だけに答えないなんて、性格悪すぎ。」

エマの質問に小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサとフィーはジト目でレンを見つめ

「ちなみにその人はさっきの話にあったアルフィン皇女の嫁ぎ相手の最有力候補よ♪しかもレンの予想になるけど、もうその人に決定していると思うわよ?既に今回の戦争でとてつもない功績を残したし。」

「ええっ!?」

「アルフィン皇女殿下の………」

「い、一体どんな人物なんだ……?」

レンの口から出た更なる驚愕の事実にエリオットは思わず声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、マキアスは信じられない表情でレンの口から出た謎の人物の事について考え込んでいた。



「その人物は”既に今回の戦争でとてつもない功績を残した”と言う事は、もしかしてメンフィル帝国は近日中にその人物の功績を表彰をして、その人物の希望―――メンフィル帝国とエレボニア帝国の和解に応えるおつもりなのでしょうか?既にメンフィル皇族の一人であられるレン皇女殿下もその人物が今回の戦争に参戦した理由をご存知のようですし。」

「クスクス、”次の作戦”でとてつもない功績を残せばその人物の希望に応えて、確実に和解に向けて動くと思うわよ?”次の作戦”はレンやプリネお姉様達どころか、今回の戦争の”総指揮官”であるパパも直々に出陣するし。」

「な――――”英雄王”が直々に出陣するですって!?」

「しかも他のメンフィル皇族達まで出陣するなんて、どんなとんでもない作戦なんだ……!?」

「ハハ……レン君達に加えてあのリウイ陛下まで大暴れする時点で、貴族連合はとんでもない被害を受ける事間違いなしじゃないか……」

クレア大尉の質問に答えたレンの答えを聞いたサラとトヴァルは驚き、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き

「ちなみにその”次の作戦”とやらで戦争を和解へと持って行く為に参戦している人物がどんな功績を残せば、メンフィルはエレボニアとの和解に向けて動くのかしら?アンタの口ぶりからすると、その人物も”次の作戦”とやらに参加するのよね?」

「うふふ、そのくらいだったら答えてあげてもいいけど、”交換条件”として黒猫さんとエマお姉さん――――”魔女”の一族に聞きたい事があるから、それを先に答えてくれるかしら?」

セリーヌの疑問に対してレンは意味ありげな笑みを浮かべて答えてエマとセリーヌを見つめ

「え……わ、私達にですか?」

「……一体何が聞きたいのよ。」

レンに話を振られたエマは戸惑い、セリーヌは警戒の表情でレンを見つめた。



「確か”騎神”、だったかしら。その”騎神”を動かせるのは”起動者(ライザー)”という存在だけで、更に”騎神”を手に入れる為にも”起動者(ライザー)”が必要なのかしら?」

「は、はい……ただ”騎神”を手に入れる為には”魔女”である私達の”導き”も必要とされていますが。」

「そんな事を訊ねるって事はメンフィルは”騎神”も手に入れようとしているのかしら?」

レンの問いかけにエマは戸惑いの表情で答え、セリーヌは真剣な表情でレンを見つめて問いかけた。

「クスクス、それは秘密よ♪それで話を戻すけど、メンフィルとエレボニアを和解させる為に(くだん)の人物に”次の作戦”で求められている功績は貴族連合軍の重要人物の殺害もしくは捕縛よ。」

「貴族連合軍の重要人物…………」

「貴族連合軍の重要人物ですぐに思い浮かべるとしたら”主宰”のカイエン公か”総参謀”のユーシスのお兄さんだろうね~。」

「二人は貴族連合のトップとナンバー2だものな……」

「もしくはオーレリアかウォレス准将かもしれないな。」

「御二方とも領邦軍きっての英雄と言われている武将ですからね……」

レンの答えを聞いたガイウスは考え込み、静かな表情で呟いたミリアムの推測にマキアスが複雑そうな表情で答え、考え込みながら呟いたアルゼイド子爵の推測を聞いたラウラは複雑そうな表情で答えた。



「……レン君。私達がその”次の作戦”に参加してその人物に協力する事は不可能だろうか?メンフィルとの和解はこちらも望む所だし、できれば貴族連合軍の重要人物を命を奪わずに生かして捕えたいんだ。」

「うふふ、それは無理な相談ね。戦争している相手の国家に所属している士官学院生どころか皇族や貴族、軍人、後は中立の立場である遊撃士なんてどう考えても”不確定要素”じゃない。こちらの重要作戦を台無しにしかねない”不確定要素”に加勢させる訳にはいかないし、そもそも”次の作戦”は明日だからオリビエお兄さん達の協力に関しての相談をしている時間もないもの。」

「明日ですって!?」

「い、一体どんな作戦なんだろう……」

「まあ~、どう考えても貴族連合側にとって痛手となるような作戦だろうね~。」

「はい……先程の話から推測するとその作戦で貴族連合側の重要人物を殺害もしくは捕縛する事も目的の一つのようですし……」

オリヴァルト皇子の嘆願を小悪魔な笑みを浮かべて断ったレンの話を聞いたサラは血相を変え、エリオットは不安そうな表情をし、真剣な表情でレンを見つめて呟いたミリアムの推測にクレア大尉は静かな表情で頷いた。



「―――さてと。最後の質問も答えたし、レンはそろそろお暇させてもらうわ。」

「わかりました。玄関までお見送りいたします。」

その後アリサ達はレンを見送る為にレンと共に玄関へと向かった。


同日、21:30―――

~玄関~



「今夜はとっても楽しい夜になったわ♪敵国の皇族であるレンをこんなにおもてなしてくれた”アルゼイド家”には感謝しているわ。」

「……身に余るお言葉。それにレン皇女殿下には我が家の家宝を返還して頂いた恩もあるのですから、その恩を返す為に我々は当然の事をしたまでです。」

「それに私達―――エレボニア帝国はメンフィ帝国を”敵国”と思っておりません。貴族連合の愚かな行為によって戦争にはなってしまいましたが、オリヴァルト皇子殿下や私達を含めたエレボニアの多くの人々は貴国との戦争を望んでおりません。」

レンの感謝の言葉に対してラウラは謙遜した様子で答え、アルゼイド子爵はその場にいる全員の気持ちをレンに伝えた。

「うふふ、その言葉、覚えておくわ。―――ああ、そうそう。三つ伝え忘れていたわ。まずクレアお姉さん、バリアハートに潜入している”4人の部下”さん達に伝えておいてね?”早まった真似”―――例えば市内の貴族や住民達を扇動して暴動を起こす等そう言った破壊工作とかをしたら、敵対行為とみなして”早まった真似”をした張本人達を”殲滅”並びに戦後の正規軍の立場が悪くなるから気を付けてねって。」

「よ、”4人の部下”って……」

「……こっちの事はとっくにバレていて、しかも潜入している人数まで把握されていたようね。」

レンのクレア大尉への忠告を聞いてある事に気づいたトワは不安そうな表情をし、サラは呆れた表情で呟いてクレア大尉を見つめていた。

「……ッ!わかりました。元々これ以上メンフィル帝国の逆鱗に触れるような愚かな事をさせるつもりはありませんでしたが、御身のご忠告、後で部下達に伝え、決してこちらの命令を無視して”早まった真似”をしないように徹底させておきます。」

一方クレア大尉は息を呑んだ後気を取り直して答えた。



「次に今後も戦争が終結するまでメンフィル帝国はエレボニア領土の侵略を続けるけど、このレグラムを含めた貴族連合に加担せず、中立の立場を取り続けているエレボニアの領土に関しては侵略するつもりは一切なく、”メンフィルとの戦争に関しては”このレグラムも安全地帯だから、安心していいわよ。」

「……わかりました。メンフィル帝国のお慈悲に心から感謝致します。」

「貴国と戦争状態になったにも関わらず、我が領を含めた中立の立場を取り続けている貴族達に対するお心遣い、ありがとうございます。」

レンの助言にアルゼイド子爵とラウラはそれぞれ会釈をして答え

「そして最後にメンフィル帝国との和解交渉の為にオリビエお兄さん達がメンフィルが占領しているエレボニアの領土に訊ねてきたら、危害を加えたりせず、ちゃんとレン達メンフィル皇族の誰かが会って交渉のテーブルについてあげるけど、今日は当然として、明日以降も数日間エレボニア帝国との戦争に参加しているメンフィル皇族はみんな予定があるから、12月9日以降に訊ねてね。」

「そう言う言い方をするって事は明日は当然として、明後日以降もメンフィルは貴族連合に対して何か大掛かりな作戦をするんだよね~?」

「口を謹んで下さい、ミリアムちゃん!」

レンの説明を聞いて意味ありげな表情でレンを見つめて問いかけたミリアムにクレア大尉が注意した。

「……了解した。ちなみに12月9日以降どこを訊ねればメンフィル皇族の方が確実にいるのかな?」

「今日占領したバリアハートよ。元アルバレア公爵家の城館を総督府として利用しているわ。」

そしてオリヴァルト皇子の質問にレンが答えたその時機関音が聞こえてきた。

「この音は一体……?」

「!まさか……!」

突然聞こえてきた音にアリサ達が不思議そうな表情をしているガイウスは眉を顰めて呟き、心当たりがあるシャロンは目を見開いた。するとレンが操る大型の人形兵器―――”パテル=マテル”が闇夜の空から現れてレンの背後を滞空していた。



「ふえええええええっ!?」

「な、何なんだ、あの人形は……!?」

「”機甲兵”ではないみたいだけど……」

パテル=マテルの登場にトワとマキアスは驚きのあまり声を上げ、ジョルジュは困惑の表情でパテル=マテルを見つめた。

「――――かつて”リベールの異変”にてメンフィル帝国に奪われたゴルディアス級戦略人形、”パテル=マテル”……!やはりレグラムに潜んでいましたか……!」

「まさかあんなとんでもない代物でレグラムに来ていたとはね……万が一あたし達があんたに危害を加えようとしたら、あの人形兵器であたし達ごとレグラムを壊滅させるつもりだったのかしら?」

シャロンは真剣な表情でパテル=マテルの正体を口にし、サラは厳しい表情でレンに問いかけた。

「や~ね、レンはお姫様なんだから罪もない民達まで巻き込むような事はしないわよ。第一メンフィルとの戦争を望まないオリビエお兄さんやサラお姉さん達がレンに危害を加えるなんて”絶対にありえないもの。”もしそんな事をすれば、和解は絶対に不可能になるし、そもそもレンが本気になれば”その程度の戦力”だったら、撤退する事くらい”あらゆる手段”を用いれば確実に可能よ。」

サラの問いかけに対して笑顔で答えたレンの物騒な答えにアリサ達は表情を引き攣らせた。そしてレンはパテル=マテルの片腕に飛び乗った。

「―――それでは皆様……今宵の”お茶会”に出席して頂き、まことにありがとうございました。」

パテル=マテルの片腕に飛び乗ったレンはスカートを両手で摘みあげてオリヴァルト皇子達に上品な会釈をし、レンが会釈を終えるとレンを乗せたパテル=マテルはレグラムから飛び去って行った。



翌日、メンフィル帝国軍による貴族連合軍の旗艦を制圧し、貴族連合軍に協力している”結社”の使い手達を含めた”裏の協力者達”の殲滅、そしてアルフィン皇女を捕縛する為の作戦――――”パンダグリュエル制圧作戦”が開始されていた――――!










 
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