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レーヴァティン

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第一話 夢幻の世界へその三

「人が神隠しに遭ってな」
「それで急にいなくなってか」
「また急に出て来てな」
 そうしてというのだ。
「全然知らない世界に行っていたとかな」
「ああ、桃源郷に迷い込んでいた」
「ああ、そういう話あっただろ」
「古典とかでもあったな」
「そうした話が昔からあるしな」
「今もか」
「あるだろうな、世界と世界の隔たりなんてな」
 パラレルワールドの世界を隔てる壁、それはというのだ。
「案外薄くて穴もあってな」
「俺達が迷い込んだり出たりか」
「そういうこともあるんだろうな」
「そういうものか」
「抜け道っていうかな」
「他の世界へ行く道はか」
「結構あちこちにあるのかもな」
 こう言うのだった。
「そして俺達もな」
「そうした異世界にか」
「本当に迷い込むのかもな」
「それで戦ったりか」
「あるのかもな」
「チートみたいに強くなったりか?」
「ははは、あれは幾ら何でも都合がよ過ぎだろ」
 物語の中でよくある様な展開はというのだ。
「自分が強くて敵はやたら弱いとかな」
「そういうのはないか」
「ないない、人間なんて大体同じでな」
 それでというのだ。
「世界が違っても何か違いがあってもな」
「それでもか」
「人間は大体だよ」
 それこそというのだ。
「同じなんだよ」
「世界は違っててもか」
「大なり小なりな」
「同じでか」
「俺達も若し違う世界に入ってもな」
 そうなってもとういうのだ、例え。
「その世界の人達も強いか同じ様に入って来た奴がいたりしてな」
「相手も強いか」
「そんなとこだろ、結局は」
「そんなものか」
「その世界を救える力があっても」 
 やはり物語でよくある設定が備わっていてもというのだ。
「同じだけ強い敵がいたりするだ」
「自分だけ無敵ってことはないか」
「世の中そんな甘くはないさ」 
 笑っての言葉だった。
「相手も強いんだよ」
「自分も強いと」
「同じ抜け道から入ったか別の抜け道から入ったか」
「そうして入った他の奴も強い」
「そんなものさ、世の中は」
 シニカルで冷めた声だった、まるでまさにそれこそが世界の摂理そのものであるかの様な。
「都合良くはならないものさ」
「そうだろうな、結局は」
「世界を救う力があればな」
「世界を滅ぼす力もか」
「あるものだろ」
 救済と破壊を対比的にであるが同列のものとして考えた言葉だった、両者は結局同じものだというのだ。
「やっぱり」
「まあそうだな」
「だからな」
「相手もってことか」
「一人だけ無双なんてものは有り得ないさ」
「どんな場所でもか」
「例えそれが一時だけ出来ても」 
 それでもというのだ。
「衰えたり同じだけ強い奴出て来る」
「そうして無双は終わるか」
「ボーナスタイムは永遠には続かないさ」
 またしてもシニカルで冷めた声だった。 
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