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ハイスクールD×D~黒衣の神皇帝~ 再編集版

作者:黒鐡
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陽だまりのダークナイト
  ツェペシュ側×陽だまりのなか

僕、木場祐斗は現在ルーマニア奥地にある吸血鬼達ツェペシュ派の領域に入国を果たす。アザゼル先生みたいに蒼い翼本社代表と一緒ではなく、主のリアス・グレモリーと二人でヴラディ家の居城に通された。今居る所は居住スペースの一室、外は雪が降っていて積雪がどれ程か分からないぐらい。真っ白な雪と吸血鬼の城下町、ギャスパー君の故郷だけど教会側から見たら発狂しそうだな。

『何せここは教会側が長年探索していた場所だからな』

「うんそうだけど・・・・まさか通信機が正常だとは驚きだよ一真君」

『朝まで町は霧に包まれてたらしいが、やはり雪が降ると霧が止んだそうだな』

「濃霧は日光を遮る為に吸血鬼側が発生させてるけど、一真君側に居るゲオルグの絶霧みたい」

『ま、俺ならこの濃霧でも無くす事出来る。天候さえ操る事も出来るし、日光以外なら濃霧を出す必要性を感じない』

通信機が正常に動いているが、こちら側に居る吸血鬼でさえ通信機を没収しないのには驚いたよ。まるで見えてないような感じだし、この霧はヌメリ気のあるから僕の好みではない。アザゼル先生と蒼太さんも言ってたが、霧に関してはしょうがないと諦め気味。僕達はすぐにヴラディ家の拠点へ入城許可されて、ギャスパー君のお父様と面会を果たした部長はいくつかの会談後、しばらく滞在許可も貰った。

『やはりリアスもまだ調査したいと思ったのだろうよ。だがヴラディ家が簡単に帰す奴らではない』

「まあね。あの巨大建造物がツェペシュ派の大元となる真祖ツェペシュ家の居城を見られるとは」

『吸血鬼は純血種だから大元の領域に居を構えるし、城下町の端々には名家の城や屋敷があるのだろ』

「アザゼル先生も同じ事を言ってたけど、中にはあの領域から離れた奥の奥にある領地へひっそりと暮らしている純血種も居るとか」

一真君からの情報提供により現代社会に馴染めない異端者も居ると聞いたし、案外そちらの吸血鬼の方は僕達悪魔と気が合うのかもしれない。吸血鬼と言うのは、貴族が放つ高潔さは純血種以外には尊べる物ではない。一真君と通信していると扉からノック音が聞こえた事で、通信機をオフにした。

『祐斗、入っていいかしら?』

「部長でしたか。入ってもいいですよ」

入室許可した事で入ってきた部長、扉を閉めてから机に通信機をオンにすると先程まで喋っていたと話していた祐斗。部長は主に朱乃らと現状報告をしていたようだが、何せ僕と同じく退屈に過ごしているからだ。

会談が途中でストップになってしまい、城内の変化があったのは先日。見た目や雰囲気から察すると何かが起きたのは間違いないし、一真君との日頃の鍛錬により些細な空気で何かが起こる事を感じろと言っていた。

『ようリアス。こっちは祐斗と話していたが、これ程分かりやすい出来事が起こるとはな』

「そっちも元気そうね。アザゼルも暇潰しに色々と行ってるそうだけど、こっちにも治安維持部隊が展開してるそうよ」

『リアスの意見をあれ程耳を傾けていたヴラディ家現当主、ギャスパーの父親は急な面談延期となってるらしいな。現在もツェペシュ家の城に行ってると思うぜ』

「僕達の滞在と面談を引き続き望んでるからか、こうして暇潰しを与えてもらってるけど。部長が出来る事は用意された部屋を行き来するのと、この通信機で朱乃さん達と連絡してるぐらい」

それ以外はタブーとされてるが、現在あちらでは学校の時間だろうと定時通信が出来るようメールのやり取りから極秘電話となって今みたいに喋っている。僕らが喋ってる間は、部屋内に結界を張ってるので吸血鬼達にバレずに済む。つい最近だと別外史へ行ける駒が完成し、最早技術力はアザゼル先生以上だ。現に通信機と言う端末は、メールからインターネットまで繋がるようだ。

『俺達の技術を舐めるなよ。こんな濃霧でも通信可能にしたのも蒼い翼とCBが合同でな』

「別に舐めてないわ。単に驚いてるだけよ、しかも部屋全体を防音結界により外から何も聞こえない状態までなるなんて」

『そちらが軟禁状態であってもこちらは待機と言ってるだけだしな。そちらの風景見て思い出したが、あの時もこんな雪の日だったよな。リアスに祐斗』

「僕も同じ事を考えていたよ。まさかあの時の人が一真君だと言うのは、今でも印象に残ってるよ」

「そうね。私と一緒に行くと言われた時は疑問に思ってたけど、あの出会いは今だと予知されてたと思いたいわ」

俺とリアスはこのような雪の日に祐斗と出会った。アイツは生きたいと森の雪に埋もれるような状態、雪の中で命の炎が消えかけたように気がしたんだ。ここからは祐斗視点で言うが、教会の計画で集められた子供達は被験者としてな。聖剣エクスカリバーを人工的に使える為の計画、少年少女は身よりも無いが特異能力・異能な力を持つ子供達の中に僕も居たんだ。

来る日も来る日も実験の毎日、例え辛くても耐え忍んで神に選抜される特別な存在になれると。そう教え込まれた僕や同志達は一切恐怖を抱く事も無く、だがある日の事を境に(ことわり)が破られたんだ。突如一箇所に集められたと思いきや、毒ガスを撒かれて処分しようとした研究者達。手足が痺れて動かなくなり、激しい痛みが全身に襲い掛かる。

「痛い!全身が痛い!」

「助けて神様!」

「フフフ、苦しみながら死んでくれ。お前らの役目は終わったのだ」

そう言う研究者らだが、涙も血もあらゆる体液が身体から溢れ出て死んでいく同志達。僕も運命なのかと諦めていたが、激痛を受けながら一人の同志が突き飛ばした事で脱出する隙が生まれた。一番状態的に良い同志が僕に言うと言うより叫ぶ。

「逃げて!貴方だけでも!」

「すまない!同志達の事は永遠に忘れない!」

「行け!そして俺達は一生お前を見てるぜ!」

「逃げたぞ!追え、追うのだ!」

同志達のお陰で部屋を脱出、心の中では死にたくないと思いながらその一心で研究所から脱出を果たした。同志達の無念を無駄にしないと思いながら、信者達は僕達に対して最後まで信じているから逃げる者などいないと言い切っていた。

後ろから追っ手が迫って来るが、ここは森の中で雪が降り続いていても執拗に追い回す。逃げ続けながら僕と共に特別になろうと誓ったはず、共に食事をし共に歌い共に笑ったを思い出しながら背中が軽く感じた。

「僕はこのままでは死ねない、同志達が死んで行った者達を背にして聖剣エクスカリバーを破壊したい」

『ふむ、俺の予知によって来た理由はコイツか?』

『だから私を連れて来た訳ね』

聖剣エクスカリバーに強烈な復讐心を宿し始め、あの計画を立てた者やエクスカリバーを忘れない。僕の人生は何だったんだと疑問を持ち始めても既に遅しで、体力は限界を迎えて静かに倒れ込む。死は確実だと思いながら彼らの無駄死をしたくない僕は、生きて同志達の仇を討たなければ何の為に脱出したのか意味が無い。だから少しでも前へ進もうとする。

「このままでは僕の望みが・・・・」

「貴方は何を望むの?」

「それよりも応急処置しないと死ぬぞコイツは」

意識が消失して行く中で、僕の視界に紅と黒が映り込んでから顔を上げるとそこに居たのは黒髪の男性と紅髪をした彼女が僕に言ってた気がした。僕を抱えた男性は応急処置をしようと抱えて問いの答えを言う前に意識は無くなった。

それが我が主リアス・グレモリーと織斑一真との出会いだった。今から四年前、死の運命から脱出したかのように目を覚ますと知らない天井が見えた。部屋内にある監視カメラにて、目覚めた事を知った俺は画面を見る。

「お、やっとあの坊主は目覚めたようだな」

「今回の未来予知はグレモリー眷属の『騎士』になる者でしたか」

「そう言う事だ朱璃。俺は様子見として下に降りる、ちょっとの間だけ頼む」

「はい。お任せ下さいませ」

現在居る場所は蒼い翼本社があるビル、地下からオフィスエリアでその上から住居エリアとなっている。社長室は最上階にあるし、何かあれば監視班から連絡が来るようにしてる。リアス達もしばらくここを拠点にするらしいが、果たして眷属入りに納得するかはアイツ次第かな。今の状況を見るに吹雪の中で死んだとされてたが、感触は生きてる証となる。俺視点と祐斗視点が混ざるがまあいい。

「ここは一体?あの時僕は毒ガスを吸い込んで死を迎えた気がする」

同志達のお陰で脱出したは良かったが、森の中を彷徨い男性と僕ぐらいの少女に出会った事までは覚えている。ベッドに寝ていたようだが、どう考えても研究所施設でない事だけは分かる。何せここに置いてある家具や埃一つ無い、もし戻されても死んでいるだけと言うオチが待っていた気がした。すると部屋のドアが開いて出て来たのは、洗面器を持つ小柄な少女で頭部にネコミミがあった。

「・・・・君は誰?」

「・・・・ッ!」

僕が起きてる所に気付くと同時に話しかけるが、少女は洗面器を持ったまま部屋を出た。俺は社長室から住居エリアに向かい、IDカードをタッチして開けるとリアスと朱乃が居たので挨拶した。

「アイツが目覚めたそうだ」

「これは織斑社長」

「アイツとは寝室に居る少年ですか?」

で、洗面器を持ったままの小猫が来た事により俺ら四人はソイツが居る部屋へ入ろうとする。朱乃の声が聞こえたのなら警戒するだろうし、心眼で見るとベッドを抜け出して外の様子見してるな。僕が居た場所を改めて確認すると広い室内、リビングなのかテーブルや椅子と言った家具が置かれている。

黒髪少女と先程の少女を見ても敵とは思えないので、僕は姿を現すと気配に気付く獣耳の少女は全身を強張って物陰に隠れてしまった。

「・・・・」

「(この子から感じるのは何なのかは後々知る事になる。開け放たれたドアからヒトではないのが居る気がしてならない)」

無言で僕をじっと見ているが、しばらくすると黒髪の少女と紅髪の少女と黒髪の男性を引き連れてきた。紅髪と黒髪の少女は僕と歳はそう変わらないが、男性の方はスーツを着ていて大人だな。紅髪の少女が出てくると背に隠れてたが、随分と彼女に懐いてる様子だな。

「この子を苛めないであげてね。人見知りが激しいんだけど、この子は小猫と言うのよろしくね。黒髪の子は朱乃で私の隣に居るのは織斑一真様、蒼い翼本社社長をしているわ」

「誰も苛めんと思うが、確かに小猫はまだまだ人見知りだからしょうがないか」

「織斑社長、仕事はよろしかったので?」

「ちゃんと朱璃に一言告げたから大丈夫さ。何かあれば上に行けばいいんだし」

紅髪の少女が獣耳の少女を撫でると男性の方に隠れるが、小猫ちゃんと織斑社長と呼ばれていたが後程聞いても驚くと言うよりやはりと言う感じ。その頃の小猫ちゃんはリアス部長に引き取られて精神的に参ってた所、リハビリのお陰で警戒心は強いけど僕は身に纏うオーラを研究所での実験で感じた事があった。

織斑社長と呼ばれた者は人間だけど後程聞くと創造神黒鐵様、後ろに居る三人は悪魔のオーラをしていて咄嗟にテーブルの上に置いてあるハサミを手に取る。

「・・・・ここは何処だ?何故僕がこのような所に居る!?アンタ達は誰だ!?」

「ここは俺の出身である日本だからそう警戒するなよ坊主。ここに居る少女達からだと極東の島国と言われ、世界で最も治安が良いと言われている国さ。君の顔立ちが日本人みたいだったから、蒼い翼本社から上にある住居エリアの一室だよ。紅髪の少女の仮住まいにしようと思ったが、もし脱走されたら困るのは俺や少女達だから。最もここは最上階の一個下だし、外見れば分かるだろ」

「何故ヨーロッパの森で倒れて日本に居る?と言う顔をしてますわリアス」

「私より織斑社長からの説明なら納得すると思ったからよ。朱乃の一件に感謝してるのは事実だから」

日本?治安?訳の分からない状況だが一つだけ分かるキーワードは蒼い翼だけ。その名を聞いて知らない者は居ないと言われている名、巨大グループを取り纏めている織斑社長と言う事もだ。が、僕が思った事を口にした少女達により混乱が未だに止まらない。

織斑社長が少し離れると少女達一斉に背中から翼を展開させる。悪魔の翼だけど、何故悪魔と一緒に居るのだろうと疑問だらけ。彼女は悪魔らしくもない優しげな表情でこう述べた。

「私はリアス・グレモリー。上級悪魔グレモリー家の次期当主よ。そして貴方も・・・・」

リアスと名乗った少女が指先を僕の背後に向ける、すると背中から何かが飛び出す感覚を得た。首を向けるとそこには少女達と同じ漆黒の翼が生えていた。

「貴方はね、一度死んだの。だから私が悪魔として転生させたのよ」

「で、ここまで運んできたのが俺って訳よ。理解出来たかな?坊主」

彼女と織斑社長のセリフを理解出来たのは数分後、僕はあの森で死んだはずが目覚めると悪魔に転生した。そして日本まで運ばれたと言う事実は、僕の価値観を大きく崩壊させた。当時はね。

「・・・・」

「・・・・私は何もしないわよ」

部屋で対峙する僕とリアス・グレモリー。目覚めてからの僕は、最大限の警戒心を抱いて彼女達と過ごした。唯一警戒心を解いて普通に会話出来る程の人物は織斑社長のみだし、その人の言う通り蒼い翼本社内の住居エリア。

窓から外を見ると高層ビルが建っていて、とてもじゃないが窓を割って脱出不可能な高さ。一応監視カメラを設置してあって、上で見ているらしい。織斑社長と話せるようになってから僕は一振りの剣を創り出した事で考え事をしてたな。

「まだリアス達に強い疑心暗鬼なのか?」

「・・・・研究所で悪魔は邪悪な存在で信徒の敵だと教え込まれましたから」

「それならしょうがねえな。だが教会の計画で殺処分されそうになったのだろ?」

「それは確かに事実ですが、僕は洗脳に近い事をされましたし」

織斑社長と同じように親しんで優しく接して来ようが、疑心を強くさせる行為だと知ると今度はどう接するか考えてたようだ。悪魔が優しいなど有り得ないし、僕を悪魔にしたのも利用価値があったから何だと思う。悪魔は人間を惑わし転生させる、僕があの研究所で被験者だったとの情報で転生させたのでは?と聞いてみても違うと言ってたから違うのだろう。

「何故私には警戒心剥き出しなのに織斑社長にはゼロなのかしら?」

『そりゃそうだろうよ。敵意無しで近付けば自然と喋れるのだから、それより朱乃が呼んでたぞ』

「朱乃から?」

『それにだ坊主。復讐する為に悪魔を利用とか考えるなよ?友の無念を晴らす為とは言え、悪魔に魂を売ると言う憎悪と疑念の狭間で思考巡らせても無駄だ』

「何故僕の思考が分かるのですか?『お前さんの心の声を聞いただけだ』織斑社長には筒抜けって事なのか」

そう言って諦めたようにトレイに載せた食事をテーブルに置いて、僕が居る部屋から去ったけど近くに居るようだ。警戒心マックスは疲れるし、一緒に食事したい悪魔など聞いた事がない。だから珍しい悪魔だと思い、眷属にした下僕と一緒にご飯食べたい長が居るのだろうか?

彼女が去った後、入ってきた織斑社長は恐らく上から降りて来たのだろう。メイドを引き連れて温め直した食事を運び、一緒に食事をした事により警戒心無しで過ごすのはこの人が居る時だけだ。

「仕事は大丈夫なのですか?」

「気にするな。俺も今から食事なのさ」

「ご主人様は積極的ですしね」

「それにだ、例え脱出可能だと考えるなよ。翼があったとしてもな」

口に運びながら外を見るとその通りで、最上階の一個下だとしても普通に飛び降りる事は出来ない。強固な結界が張られているのか、玄関ドアまで行けたがドアは開かないようにしてある。僕は軟禁状態だったとしても、今思えば当然の配慮と考えてしまう。

『はぐれ悪魔』となり討伐されてしまうし、当時の僕は一瞬織斑社長や小猫と言う少女を盾にしようと思ったが普通に接して来る人に刃など向けるはずもなく。

「ちょっとずつでもいいし、坊主が創り出す一振りの剣は一体何の為にあるのか考えればいい」

「織斑社長も何か武道でもやってるのですか?」

「社長をやってるがこれでも剣術や体術を得意でね。怯えた少女に刃や銃を向けると自然に罪悪感が生まれるだろ?」

「・・・・はい」

と言う感じで悪魔の少女達とは心を開かず、織斑社長とメイドらだけ心を開けて生活し始めて一ヶ月が過ぎた。何時ものように来る織斑社長と話し相手をしていて、ずっとここに居るのも飽きると考えたのかボードゲームやトランプを持ってきて遊ぶ時間が多かった。

何時も通り遊んでいるとこの部屋に一人の男性が入ってきた事で、織斑社長も顔を上げると知り合いなのか手を挙げて挨拶した。だが僕が感じ取った羽織を着た男性が悪魔、それを知ってて僕に紹介するよう言ってた。織斑社長は相変わらずだが、隣に居る男性は静かに笑みを浮かべリアス・グレモリーに問う。

「よう総司。お前がここに来るとは聞いてたが今日だったとはね」

「お久しぶりです一真さん。姫、この子が例の『騎士』ですね」

「ええ、名前は・・・・無いようだけど」

「被験者としての仮名はあったそうだが、今それを名乗る訳にはいかないんだとよ。それより坊主、ちょっとコイツに向かって試してみないか」

リアス・グレモリーの言う通り僕に名前がないし、被験者としての仮名があったけどそれを名乗る事もない。その名は捨てたし僕はもうアイツらの実験体じゃないが、織斑社長が言うように僕は一振りの剣を構える。オーラの質から織斑社長より下だけど実力を持つ人物、僕と悪魔の男性の間に入って見守っていた。

「いきなり一真さんからの指名が入りましたけど、試したい事と言うのはこの事だったのですね」

「まあな。剣を創れると言う事は神器所有者だと気付いたし、剣の構えは俺が基礎の基礎を教えただけ」

「なるほど。確かに構え方は下の下ですが、私を一瞬で実力を朧気ながらに把握できるのは剣術に関する才能を感じます」

織斑社長が笑いながら話している時も僕に一歩一歩距離を縮めて来るが、笑みはそのままとなって相手の出方が分からない状況となる。構えは教えてもらったけど、正直言って道場に通った事もないから自ら飛び出す格好となってしまう。

僕は剣を振るうが、相手の足払いを食らい体勢を崩す結果。空振りとなった剣は手から飛んで行ったが、織斑社長の手にあったから天井に刺さる事を想定してたのだろうな。

「ふむ。構えまでは良かったがやはりか」

「素人にしては素質がありますし、私が貴方を今日から鍛える事にしましょうか。私の名は沖田総司と言って一真さんの弟子ですが」

「俺は基本的に忙しい身だしな。ここに居るより総司に鍛えてもらった方がマシになると思うぞ坊主。と言う事で話は決まったがリアス、コイツはここに居させるよりも別の場所で鍛錬させた方が良いと言っておく」

「ここも良い鍛錬場所もありますが、静かな場所で精神から鍛えた方が良いでしょう。『騎士』であるなら尚更ですが、剣の腕も磨くついでに心も強くしないといけませんから。姫、しばらく私に貸して下さいませんか?」

まさか織斑社長の弟子だと知らずに剣を振ってしまい、床に倒れ込んだ僕を見下ろしながら言ってた気がした。織斑社長と男性の言ってる意味は何となく分かった気がしたけど、ここよりも良い場所があるのか?僕を鍛える?

リアス・グレモリーはしばし困惑気味だったが、二人の男性からの指示を聞くような顔をして許可を出した。こうして僕は織斑社長の弟子で、僕の師匠と言える沖田総司に出会った。

「一真さん、鍛錬場所は何処にしますか?」

「うーんそうだな。なるべく『はぐれ悪魔』が寄らない場所がいいとすると・・・・あそこへ行くか。坊主と総司、準備が出来るまでここに居ろ」

そう言われて待ってるとメイドさんが来た事により、僕らが居た部屋の最上階に来てた。そこにはヘリポートもあって大型ヘリの中に居た織斑社長、転移魔法陣で行くのかと思いきやヘリに乗って一時間で到着した。着陸場所は山奥にある小さな小屋から離れてたけど、ここは蒼い翼が管理していて場所的に精神や剣術を鍛えるには良い場所と言ってた。

「ここが坊主と総司の住まいとなる。ここは蒼い翼の管理下にある場所でな、俺もたまに来ては有給使ってる別荘の一つさ。何かあればコレで連絡しろ」

「鍛錬場所の提供から連絡手段、何から何まですいませんね一真さん。これは通信端末ですか?」

「現代社会に必須アイテムで、電話やメールにネットも使えると言うお手頃なスマホだ。本来この場所は電波が届かない圏外だが、無線LANや特殊電波により使える代物だから耐水や耐塵である。坊主もこの前やった端末を使い熟してみせろ、今度来るまでの宿題とする」

「ありがとうございます織斑社長『プライベートでは名前で呼べ坊主』じゃあ一真さん」

沖田総司に小屋を案内して僕には端末の使い方についてコンプせよと言う宿題が出た。そう言ってからヘリに乗り行ってしまったが、もしかすると蒼い翼本社内以外だと名前で呼んでもいいのかな?ここら周辺一帯は木々ばかりで、さっきまで居たような文明すら見えない。別荘の横に道場があり、そこに入ると使われた跡があるから一真さんもここに来て剣術でもしてたのか。

「やはり一真さんも来るからかピカピカのようだ。剣術の心得がなくともそう感じますか?」

「・・・・僕の恩人はあくまで一真さんだけど、貴方は一真さんの弟子ならば僕もそう思います」

「素直で宜しい。ではこれを持って打ち込んで来なさい」

彼は道場の壁に掛けられた木刀を二振り取り、片方を僕に投げ放ちキャッチした僕を見て沖田総司は木刀を構える。僕の立場として何故ここに連れて来られたのか聞くけど、一真さんが強烈な憎悪と復讐心抱いたまま外に出す訳にはいかんと。

「一真さんが何故ここに連れて来た意味は分かったけど、貴方が師匠として言える程の実力を持っているのか?」

「私は一真さんの弟子ではありますが、現状の貴方ではすぐに倒してしまうぐらいの実力しか持っていません。それに一真さんが何者かについては追々分かる事だと私の長から言われましたし、ここに来て仕事を忘れて楽しむ場所と聞いてますからね。復讐がまだあるなら腕前を磨いて返り討ちに遭わない程度まで教え込むつもりです。悪魔に転生もリアス姫の事も忘れて、まずは強くならないと復讐も何も出来ません」

「なるほどね。一真さんのお墨付きなら、僕自身の心も見抜いてた訳か。と言う事で行かせてもらうよ・・・・はぁぁぁぁっ!」

碌な構えにもなっていない雑な吶喊、剣の持ち方すら覚えがなかったけど沖田総司、師匠は僕の一撃一撃を真正面から受けてくれた。あの森で死んでから心と体に染み付いたのを木刀の一撃により、放たれる感覚を得てただ夢中に木刀を振り続けていた。

「これからは一真さんの鍛錬プランによって指示は変わりますが、今貴方が必要なのは筋力よりも相手の隙を見つけて突くか。パワーよりもテクニックを鍛えた方がいいと書いてますが」

「僕もそれで構わない。一真さんの指示なら」

「随分と一真さんには懐かれてるようですが、何かあったのですか?」

「・・・・最初に心を開けたのが一真さんだけさ」

師匠は納得するような顔をしながらだったが、木刀を振るう僕に真摯になって手解きをしてくれた。師匠自身の天然理心流や一真さんの我流も教えてもらえず、僕に合った剣術を見出してくれた。僕が師匠から剣術を習ったのは、その精神と心構えに戦闘への姿勢のみ。自己判断で剣を振るうよう仕込まれて、剣を習い始めて一月程経過してるが決して僕が山を抜けようと思った事はない。

「お前さんの腕を鍛えるには、今は知らなくとも後々分かればいいんだよ坊主」

「師匠や一真さんが使う剣術より僕に合う剣術なのは何故?」

「そりゃ俺や総司が使う流派は独特だし、俺のはほぼ我流に近いからな。人に教え込むのは精々無駄を無くすぐらいだ。それよりこの前の宿題は出来たか?」

「もちろんです。この端末を使い熟せた事で、現状についても色々と知るようになりました」

そう言うように一真さんも二週間に一度顔見せで来ては、僕の話し相手や宿題に関して聞いて来る。自分自身が強くなるのが生きる糧でもあるけど、一真さん曰く強くなければ復讐も出来ないとはこの事だと気付かされた。

一真さんの次に心を開いたのが、僕の師匠だけど悪魔に開いたのもどうかと思った。上の者への言葉遣いも端末により教え込まれて、宿題の答えを見るのが最近の楽しみだと言ってた。まるで保護者のような感じかな。

「おや一真さん。お仕事は宜しいのですか?」

「いいんだよ。一応コイツの保護者だからな、戸籍も取ってあるし大丈夫だろ。それよりこれから釣りに行くのか?」

「これから川に行って釣りにと思ったのですが・・・・道具も持っているようですから問題ありませんね」

「インドア派よりアウトドア派だしな」

三人で川に行き釣りを始めるが、一真さんの服装はスーツではなく普段着を着ていて外の世界に興味持ち始めてた気がした。二人は悪魔が嫌いか?を聞いて来るので、僕は教え込まれた事を信じてきただけだ。悪魔は人間の敵で滅ぼす存在、でも二人を見ているとそんな事は無いのでは?と思うような気がした。研究所で習った知識が外れなのか、強く刷り込まれた事。

「ま、確かに天界・教会から見れば悪魔は敵対勢力だが全てと言う訳じゃないんだぜ」

「悪魔は人間の味方?」

「一真さんのように悪魔や天使相手と仕事してきたからそう言えるのですよ。私達悪魔にとって人間は無くてはならない存在ですし、古の時代から契約の対価を貰う事で悪魔は存在してきました」

「要はギブアンドテイクって事よ。悪魔の基本原理と言えるが、人間を騙す悪魔も居るが逆に人間も悪魔を騙して利益を得る輩も居る。俺ら蒼い翼に所属してるのは何も人間のみの種族だけじゃない、天使や悪魔に堕天使と色々種族が存在してるが社員達一同は敵勢力相手に外交しようとして来た実績を持っている。悪魔は人間の弱みに付け込む邪悪な存在だと教えられたそうだが、世界はそんなの通じないし例えそんなのが居ても俺らが変革してやればいい事よ」

邪悪と言う言葉に師匠も同じ事を頷きながら僕も少しずつ判り合えるかもしれない。この前一真さんが言ってたけど、本当の邪悪とは一言で言うとキチガイな輩で頭のネジが緩んでる存在。二人が一匹ずつ釣った事で、僕は釣りに集中してると一匹釣れた事により頭を撫でられるが嫌ではなかった。

ここに居る一真さんも師匠も人間と悪魔にも関わらず、普通に会話してるから悪魔は人間を滅ぼす存在だと思わなくなってきた。

「少年、ここに居る一真さんは人間で私は悪魔ですが滅ぼす理由はありますか?」

「現時点で僕が言うのも何だけど、今信じられる事は普通に会話している時点で滅ぼす理由何てないと思ってきた。でもまだ僕が悪魔を信じられるかはまだ・・・・」

「それだけでも良いさ。リアスはたまに様子見として来てるし、お前さんの事が心配で来てるが坊主が面会拒否を解かない限り会わせないようにしてる。それと俺らの管轄なのに『はぐれ』が来るから要注意な」

今の時点だと僕とリアス・グレモリーと会わせても嫌がるのだろうと察してくれたみたいだ。その頃の僕は彼女の行動に疑念を抱いていた為、面会出来るには精神を落ち着かせてからだと常々言ってた気がする。でも心の奥だと紅髪の少女は悪い悪魔ではない、と僕や他の者に向ける笑みは悪意も他意も微塵も感じ取れなかった。一真さんや師匠が言うには、その時の僕でも理解してた気がしてならない。

「世界は広いがお前さんも色々なもんを見て考えとけ。坊主には選択肢と言う分岐点に居る事を忘れずに」

「そうですね。少なくともそれは素敵な事であり、考える事も与えられない者がこの世にどれだけ存在してるか」

そう言って釣りを再開したが、それから一真さんは長期休暇を取ってまで僕との生活を楽しんでるように思えた。様々な楽しみ方を教えてくれたし、釣りだけでなく料理・手芸・カルタに独楽や短歌など。

日本の文字も一真さんと師匠が一緒になって教えてくれたし、日本で使われてるノートを使って練習した。今の僕を作り出したのは一真さんと師匠の二人、喧嘩はしなかったけど何時も教えてくれた時は陽光の下で。

「・・・・よし」

「なかなかの墓標となってきたな。にしても剣を創りだす神器を使った墓標とは」

「これが今の僕が出来る事ですから、それに一つずつ形が違う剣なのは、僕自身だけ分かる事だから名前を刻まなくともね」

「十字にしない理由も分かるが、まあいいか」

僕は数日に一回決まってやる事があり、一真さんが近くに居る事を条件にこうして山中の開けた場所に同志達の墓標を作っていた。一真さんにはお見通しだけど、自らの能力による剣を盛った土に突き立てて墓標にする事。

十字の墓標などしないで、誰の墓かは僕がきちんと認識してる。墓標の前に立てば同志達の顔が目に浮かぶ。あと十本創れば完了だけど、自分の墓標については一真さんから止めとけと言われた。

「お前さんは人間として死んで今は悪魔となった。人間として死んだとしても一体誰が喜ぶんだ?復讐する為に悪魔へ転生し、まだ滅んでないだろ。・・・・ちょいここを動くなよ、どうやら『はぐれ』が迷い込んだようだから駆除して来る。リアスと総司も呼んだが来るか分からん」

「了解しましたが、もしここに『はぐれ』が来たらどうすればいいんですか?」

「その時はお前の力を見せればいい。今まで力を付けてきたのはその為だろうし」

そう言って神速のように見えなくなった一真さんだが、少し遠くから誰かの叫び声が聞こえる。でも一瞬だけだから『はぐれ』が駆除されたのかもしれない。それに故郷に彼らの墓を作ってあげられなかったのが悔やまれる。

でもここで建てれば良いのかもしれないが、日本は平和な国で蒼い翼が管理していると聞いてるから荒らされる必要はない。一真さんから渡された花束を皆の墓に置いて瞑目後、この場を去ろうとすると。

『ほうほう、剣を創り出す悪魔か。これは希有だなぁ』

「な!まさかここに現れる何て!」

一真さんが駆除対象と言う『はぐれ』なのだろう。虎の巨大な獣人で身の丈五メートルある巨体、体に漂わせるオーラは時折見せてくれた魔力に違いない。『はぐれ』が現れると駆除に向かう事が最近多く、師匠と一緒に刈る時もあるらしいが果たして僕にも出来るのかな。『はぐれ』の事を知っていたから瞬時に怪物の正体を把握し、一振りの剣を構えると化け物は墓標の剣を一つ摘まむ。

『魔剣か?いや、魔剣擬きだな。まだ形にすらなってないが・・・・珍しい能力だ』

「その剣を離せ。それは墓標だ!」

『墓標?これがか?まあいい。そんな事よりもだ。坊主、俺と一緒に来い。お前は高く売れそうだ。どうせ、俺と同じ「はぐれ」だろう?悪いようにしないぜ?』

「ふざけるな!僕はお前と行かないし、ここが蒼い翼の管理下だから駆除されるのはお前だぞ!」

『やはりか。俺の仲間が居たけど、ここら一帯に入ってから俺以外の者は殺された。お前の仲間だと言うのなら盾にして人質に取ってやる』

僕の能力に興味を持った化け物だが、一真さんの事を告げると怒り狂ったかのように向かってきた。例え欲しくなったとしても僕はコイツに用は無いし、コイツみたいな事をしなくとも強くなれると。復讐するのか?

と疑問よりもコイツを倒す事が先決、それに『強くなれないと何も守れない、復讐も出来ん』とはこの事だと。僕が今守れるのは同志達の墓標、二人と競い合って上達した時は褒めてくれたし僕自身が喜ぶ僕が居た事を。

「僕が今守れる事は同志達の墓標を守る事だ!」

『まあいいか。とりあえず痛めつけて動けなくすれば静かになるしな』

獣人が全身から敵意を放ち始めた。攻撃を仕掛けるつもりだったので、僕はジグザグに動き回って相手の死角に剣を放った。脇腹を取ったと思ったら、獣人が瞬時に姿を消す。速いッ!そう思ったら突貫されて激しく一撃が浴びた。いつの間に背中に居たのやら。僕は何とか着地する。

『いい動きだ。その歳のガキにしては速い。が、まだ俺の敵じゃねぇな。これでもとある主の元で「騎士」をやっていたんでね。ま、碌に剣は使えなかったけどよ。坊主も見た所「騎士」か?パワーは無さそうだな』

『騎士』と聞いて悪魔は駒によって特性を与えられると聞いたが、僕に与えられた駒は『騎士』と言う事は速度が抜群に早いと言う事か。リアスと名乗った少女も言ってたが、今はどうでもいいしコイツを倒す事だけを集中しなければ。

『ふん。人間の転生者は脆い。このクソ見てぇな墓標に拘ってるようだがよ!お前同様墓標も脆いなっ!』

「くそっ!」

獣人は大振りに蹴りを放ち、僕の立てた剣の墓標が尽く粉砕された!その光景に僕は溜まらず憤怒の形相を作り出して飛び出していくが、相手の動きは僕以上であり剣を振るっても尽く反撃を受けてしまう。攻撃を躱されてカウンターを喰らっても何度も立ち向った。実戦経験無しの子供では歯が立たない相手だとしても、諦めるなと何度も言われた。

「(僕は強くなる為に・・・・いや僕は誰の為に?自分の為か同志達の為か、それともエクスカリバーに復讐?)」

『やっと大人しくなったか』

虎の獣人が地に伏す僕を捕えようとすると銃声が聞こえた。それは僕を捕まえようとした腕に当たったと同時に懐かしい声が聞こえた。

「それ以上その子に近寄らないで頂戴」

「それ以上近付くのであれば、貴様の命、狩らせてもらう!」

二人の声であり聞き覚えの声が一つ。もう一つはよく聞く声。リアス・グレモリーと銃を構えた一真さんで、先程離れた瞬間に駆除して行ったけど反応がこっちにもあった事により急いで戻ってきた様子。こちらの状況把握するや激怒し睨む少女と狙撃銃で狙い撃ちする大人。

「よくもその子を痛めつけてくれたわね。貴方『はぐれ』ね?よくこの山に入って来れたわね。無知って怖いものだわ」

「全く困ったもんだ。少し離れただけで、俺の弟子と墓標を破壊してくれる貴様を駆除してやる」

自分よりも何倍もの体格を有する者を相手にしても全く動じないリアス・グレモリー、狙撃態勢を崩さない一真さんだが相手が少女と人間だと知ると眉をつり上げる。

『・・・・紅い髪、グレモリーか?ほう、ではこのガキはグレモリー眷属と言う事になるな。面白れぇ。グレモリー眷属のガキなら更に高値が付きそうだ。あとそこの人間はどうして銃を持って俺と対等する?そんなちんけな弾撃たれても・・・・グアッ!何だこれは!』

「駆除対象に言っとくが、それがただの銃弾じゃない事を言っとくぜ。対悪魔専用弾、中に聖水やら十字架の力を倍加させてあるからな。それと勝手に俺らの私有地を荒らした事、お前には慈悲無しで駆除してやるよ。リアスの代わりに言っとくけどよ、高値ってのはリアスの眷属を売買する事自体が許されない行為だ」

下種な口ぶりはリアス・グレモリーにも一真さんにも向けられていた。彼女の紅髪が怒りのオーラで揺れてくが、一真さんに静止されて弾丸の説明後に怒りをぶつけてた。この虎の獣人に万死に値するとそう言った。それは僕の同志の墓標の為?僕は全身を襲う激痛に耐えて立ち上がる。

「僕が誰とか・・・・売るとか、どうとか・・・・それは今更どうでもいい・・・・ッ!お前なんかに負けていられないんだァァァァ・・・・ッ!僕は、生きる為に強くなるんだァァァ・・・・ッ!」

絶叫と共に何かが弾ける音が聞こえたと共に、僕の体から膨大な魔の力が湧き上がり周囲に広がっていく。次の瞬間、地面から多様な形状の剣が次々と出現する。その剣は炎を纏っていたり、氷を纏っていたりと様々な属性を付与されている。

全て魔剣。この時は知らなかったが今なら分かる。僕の神器は『魔剣創造』だと。僕は闇に支配される魔剣を一振り握るが、悪魔の僕らしい魔剣だし光を喰らう剣だからホーリーイレイザーと名付けよう。

「やっと覚醒したか。坊主の神器は『聖剣創造』か『魔剣創造』のどちらかだと思ってたが、悪魔に相応しい『魔剣創造』だ」

「だから一真さんはここに連れて来たのですか?」

「まあな~♪」

闇の魔剣を構えて獣人相手に飛び出していく。直線で向かう途中で一本の剣を握る、炎を纏った剣を獣人に放つ。激しい火炎を獣人が喰らうと同時に銃声が響く。足を貫いたのか、速さがガクッと落ちた獣人に対して僕は最大現の力を振って獣人に襲う事になる。一真さんからの後方支援のお陰で動きを止めて、足を氷の魔剣で完全に動きを止めた。師匠と一真さんの言葉が脳裏に浮かぶ。

『・・・・剣を振るうのに必要なのは筋力よりも、如何に的確に相手の隙を突くかです』

『パワーばかりも良いが、お前さんにとってテクニックで腕を磨いた方がよさそうだ。パワーバカになるよりはマシさ』

「・・・・パワーばかりじゃダメというのは、こう言う事だったのか。『騎士』で剣を使う者なら、テクニックだと思うけどね」

師匠と一真さんの言う通り、筋力が劣っていても技術で補って隙を突けば良いのだから。前の僕なら分からないけど今なら分かる。相手よりも技術が上なら勝てるという事を。

『くそったれ!もうてめぇ何てどうでもいいっ!ぶっ殺し確定だ!』

「だったら蒼い翼本社社長として、ここの管轄者としてテメエを抹殺させてやるぜ。ここに入り込んだ事を後悔させてやるよ!」

獣人は両手の爪を鋭く伸ばして僕に振り下ろそうとしてきたが、今の僕でスタミナが無くなった事で避けれない。すると僕の前に居て、何時の間にか剣を持って獣人を一刀両断して僕が見たのは剣を鞘に戻してる所。一真さんは狙撃から剣術により神速で切り刻んで、事実上の瞬殺ショーとなっていて動きと動作すら見えなかった僕が居る。

「遅れてすいません。一真さん」

「遅いぞ阿呆」

二人が会話している仲は師匠と弟子と言う間柄、獣人との戦いが終わり壊された墓標を直そうとしたら何時の間にか直っていて驚く僕ら三人。指を鳴らすとこまでは聞こえたが、粉砕された墓標が獣人に粉砕前までの時間が戻った感覚。墓標前で祈ってると師匠は静かに言うが、一真さんは他にも居るとの事で今は居ない。

「少年。貴方は以前に一真さんからこう問われましたよね。悪魔は人間に滅ぼす存在だと、私も人間から悪魔に転生したての頃は大変悩みました。人間を辞めて魔なる存在になった事、我が主であるサーゼクス・ルシファーはこう仰いました」

『自分で考えてほしい。私は君にチャンスを与えたに過ぎない。どう生きてどう過ごすのか、それはキミが決めるべきだ。ただ、たまには私の眷属として仕事を手伝ってくれないだろうか?その剣術が私にとって必要だと信じている。だがもしキミが人間の脅威になろうとするのなら、主の私か私の師匠が責任を持って消滅させてもらおう。キミを救ったのは、私だけじゃなく私の師匠が見つけてくれたのだから。あとはそうだね、これだけは覚えてほしい。悪魔も人間も天使も何もかも、滅んでいい種族等この世に一つもないのだよ』

あの時、釣りをしてる最中に僕はそのような事を言ってた。師匠は祈りながら新たな花を置き、続けて言うと師匠を助けたのは主のサーゼクス・ルシファーと主の師匠である一真さんだと。

「人間を滅ぼす悪魔になるかどうかは、自分次第と言う事です。無論、貴方も私もリアス姫もそして人間側である一真さんもそうではないでしょう?」

「お、やっと話は終わったようだな。コイツの主は俺の一番弟子だと言う事だが、俺が何者に関しては後々知る事になる」

その時の僕はそれがどういう意味かは分からなかった。ただ僕を見つけて万死に値するという事は、僕を仲間だと思っていたのかな?そう思ったらこの少女の事を少し信じてみようと思った。一真さんも帰ってきたが、何者に関してはホント後々に知る事になったからとても驚いたよ。狩りを終わらせたのか一緒に山道を共に歩いて行くが、途中で一真さんが言った。

「そういえばリアスよ。この坊主の名前決まったのか?いつまでも坊主や少年じゃ、コイツにとっては名前で呼んでほしいと思うのだが」

「その通りですね。決まったのですかな?リアス姫」

「ええ、この子が気に入ってくれると良いのだけど・・・・木場祐斗、かなりフィーリングで考えてしまったのだけど、どうかしら?」

「はい、十分に良い名前だと思います」

一真さんと師匠がワクワクしてると僕を優しげに見つめる彼女が述べた新たな名前、そして告げられて気に入った事により早速一真さんが端末操作していた。どうやら戸籍に名前入力して、出身から今までの経緯を全て蒼い翼とグレモリー家に。僕の反応を見て師匠もリアス・グレモリーも微笑んでいた。一真さんだけ僕の頭を撫でるようにしてたが、これからは坊主ではなく名で呼んでやると。

「さてと、これからは日本で住む事が決定したが生きる場所を決めなければ。俺らも忙しくなるんで、しばらく会えないが笑って過ごす事が最後の宿題だ」

「はい!その前に四人で独楽でもしませんか?」

「いいね。祐斗から提案されるとは、人間と悪魔と一緒に遊ぶと言うのも悪くない話だ」

陽だまりの中、僕らは遊びだして一真さんとはそこから会えなくなった。だがすぐ近くに居た事には驚いたけど、まさか兵藤一誠として駒王学園に居た事は部長達も知らなかったらしいから衝撃的だったらしい。こうして僕は生まれ変わって今に至るけど、窓から見える雪の風景は変わらずでも僕と主は懐かしい話に花を咲かせていた。

「小猫はあの後、すぐに慣れてくれたから未だに疑問だったけど解決したわ」

「そうですよね。一真さんによって打ち解けれましたが、まさかあの時の一真さんがすぐ近くに居るとは思いませんでした」

「私もそう思うし、朱乃の一件と祐斗の一件に関しても蒼い翼のサポートをしてくれたお陰だわ」

「恐らく最初から知ってたんだと思います。何せ創造神黒鐵様で未来予知により、知らないフリをしていたらしいので」

僕は蒼い翼本社に戻ってきた後、すぐに打ち解けた理由は仙術によって落ち着いていたから。最初の印象が最悪であっても兄妹のように過ごしたし、あの後から一真さんと出会う事はなかった。長期休暇後、仕事ばかりしていて僕らに構ってる暇さえなかった。小猫ちゃんは妹として、リアス部長と朱乃さんは先輩であり僕にとって姉的な存在だった。

「それにしても一真さんの正体を知るまでは、普通に過ごしていたとは。それも僕らがグレモリー眷属として活動前から居た事に関して」

「あの時はお兄様に聞いても知らないの一点張り。黒神眷属として動いてた時期は、丁度一真がオカ研に入部してた頃からだし」

京都の修学旅行前、部長達が魔法少女の格好をしてのオーディション後は何故か結果を持ってきてくれた事に疑問となっていた。だけど朱乃さんもリアス部長も知らないままだったし、唯一知ってた人物はソーナ会長達婚約者達だろうね。師匠から一真さんの正体について聞いたが、織斑一真と兵藤一誠が同一人物だと先程サーゼクス様から知ったと言ってたな。

「私は未だに祐斗に『リアスお姉ちゃん』と呼んでもらえないか、機会を伺っているのだけれどね」

「それは無理な話ですよ。それに一真さんにとって僕達の事を子供と見ていて、今でも保護者扱いにされてるから」

『そりゃそうだろう。俺はお前らより生きているんだから、そちらが若手ならこちらは大御所だとな』

そう言えば通信機オンのままだったから、僕らの話を聞いていたようだけど流石に『リアスお姉ちゃん』辺りで笑っていた。師匠の事も尊敬しているし、僕の理想像となっていた。でも師匠やルシファー様の師匠である一真君も理想像の一つだよ。彼は銃火器や剣で戦う事ができるオールマイティーだから。

不意にドアがノックされたので、通信機をオフにして何事もなかったかのように入室許可を出した。ヴラディ家の者で、面影からしてギャスパー君の兄かなと思った。接客室ではなく直接こちらに来たのだから、何かあったのだろう。

「突然このような面会で申し訳ありません。リアス・グレモリー殿、失礼ながらお話を聞いてもらいたいのです」

「ええ・・・・貴方はヴラディ家の?」

青年は頷く。ツェペシュの城に向かったという現当主ではなく、この青年が突然訪ねて来たのだから事態は変化している。

「・・・・貴方方の知り合いである人間は旧魔王の血筋となる者を救ったり、悪神ロキ、英雄の子孫達を仲間にしたと聞き及んでいます」

「その人間は確かに知り合いだわ。正確に言えば彼は創造神よ・・・・一体何が起こっているの?」

部長の問いかけに青年は窓の向こう、ツェペシュの城の方に遠く視線を配らせる。

「・・・・あれは本当に『聖書の神』が与えた物なのでしょうか。我ら闇夜の血族がアレを得たのは何故なのか、それすら分からないのです。『聖杯』がなぜ我らの元に与えられたのか・・・・」

息を長く吐く青年は、余裕のない顔で告げる。

「リアス・グレモリー殿、貴殿をツェペシュ家現当主にしてツェペシュ派現統率者、ヴァレリー・ツェペシュ様の元にお連れせねばなりません」

「「・・・・ッ!?」」

僕と部長は同時に驚いた。現統率者・・・・ヴァレリー・ツェペシュ・・・・!?僕達が驚いている間に通信端末はこの情報を一真君のとこに自動送信されたと後々知った。一真君にギャスパー君、どうやら想像以上の出来事になりそうだ。まあ一真君達CBならきっと何とかしてくれるだろうと僕は思った。 
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