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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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second contact
  ep.039 demerit burst

 
前書き
今回のタイトルはあるキャラクターの新しい技です。
名前からもどんな技か予想してみてください。 

 
悠持は玄関ホールから続く通路の1つを走る。
道はたまに天井に明かりが付いているだけで目を凝らしても通路がどこに繋がっているのかは分からない。
唯一分かっているのは、この先に敵がいることだ。
しかし、後ろには仁が走っている。
そのおかげで悠持は不安を感じずにいた。

しばらく走っていると何やら広場に近い部屋に着く。
周辺には何もなく、規則正しく並ぶコンクリート製の柱が何処までも続いている。
すると、奥からカツカツと何かが歩く音がする。
その音は次第に悠持達に迫り、やがてその足音を出す張本人とご対面する。

「なるほどな。」

悠持と仁が緊張状態に入る。
ここから先は少しも気を抜けない。

「お前とは決着をつけたいと思っていた。」

それは数日前に佳奈を誘拐した際にstudentの基地を襲撃して来た二人のうちの一人だった。
悠持は腰に付けたキューブの1つを手に取り、そのキューブが変形して槍になる。

相手はそんな悠持を見て、以前とは違う背中に背負った大きな太刀を引き抜く。
ほんのりと暗い部屋でその長い刀身は薄っすらと光る。

「前は満足が行くような得物じゃなくてな....俺本来の立ち回りとしてはこちらの方がしっくりくる。」

ジリジリと互いの殺気が辺りを満たしていく。
仁は少しでも動こうものならあの太刀でたちまち両断されてしまうだろうと感じた。
するとここで相手が一言こぼす。

「俺の1つ先の部屋には叶瀬がいる。 先日連れ去った人質もそこで待っているぞ。」

仁はそれを聞いて理性が飛びそうになった。
しかし、それは悠持が抑制する。

「落ち着け......野郎の相手は俺がやる。 お前は俺が抑えてるうちに駆け抜けろ。」

悠持の言葉に仁は感謝しながらそのタイミングを逃さないように集中する。
一相手はこちらを見て馬鹿にしたように鼻で笑う。

「敵の目の前で作戦会議とか正気か? 俺が素直にその作戦に協力してやるとでも?」

その煽りを聞きながら悠持はその上から相手を煽る。

「お前、俺と決着つけたいんじゃなかったのか? それにお前が相手なら行けそうな気がしてな。」

その煽りが効いたのか相手の殺気がたちまち湧き上がって行く。
そして地を蹴り、太刀を振りかぶって迫って来る。

「俺の名前は神宮寺 庵鬼(じんぐうじ あんき)。 神薙悠持、お前を叩き斬る男だ。」

口ではそう言いつつも庵鬼の第一の狙いは仁だ。
悠持の間合いからギリギリ外側を通過し、仁にその刃を振るう。
仁からすればその出来事はほぼ一瞬に等しかった。

「弱者はさっさと朽ち果てろ!」

庵鬼が振りかぶった太刀を仁に振りかざす。
しかし、それは仁ではなく悠持によって防がれる。
流れるような無駄のない動きだったものがしっかりと止められる。

「お前の相手は俺がやるって言ったろ。 そんなに余所見されると淋しくなっちまうだろうが。」

互いの力が拮抗しているからか、どちらも押し負けず押し勝てない。
しかし、仁はこのタイミングだと判断し、太刀の間合いから少し離れた距離を真っ直ぐ、自身の出せる最高の速度で駆け抜けていく。

だが庵鬼の目はモノアイのようにギロリと動いて仁を完全にロックすると、競り合う状態を上手く離し、仁の数倍の速度で追い掛ける。
あっという間に仁との距離が1mほどに迫り、太刀を振りかぶり、横に両断しようと振るった。

「だからっよ!!」

悠持は少しのモーションから槍を投擲(とうてき)し、投げられた槍は地面に勢い良く突き立つ。
それは横に振られた太刀の刀身を見事に受け止める。
庵鬼は鬼の形相でその刀身を見つめた。
その後庵鬼の表情は静かになり、ぐるりと悠持の方を向いた。
仁はその隙に次の部屋へと突き進んで行った。

「そんなに余所見されると淋しいだろうが。」

悠持は作戦が成功したからかその表情は少しばかり笑っているように見えた。
庵鬼はすぅーっと息を吸って吐くと、地に突き立った悠持の得物を引き抜き、緩やかな曲線を描くように悠持に放り投げる。
悠持はそれを片手で受け取り、刃を地に向けるように慣れた手つきで持ち変えた。

「まさか得物を返してくれるなんてな。」

悠持が不思議そうに話す。
庵鬼からすれば生身と武器持ちでは戦闘力に差が出てしまい、それで勝負が決まっては非常に面白くないと思っているからだ。

「当たり前だ。 両者が等しい条件の元で戦わなければ勝負としての意味がないだろう。」

悠持も先程の庵鬼の仁に対する行為は、殺そうとしたのではなく、今から戦闘が行われるフィールドから邪魔者を退けようとした行為だとすぐに察知していた。
つまり、庵鬼は最初から仁を自分の獲物として見ていなかったということだ。

「外野を退けるのに時間が掛かって悪かったな。」

庵鬼は一応、悠持に謝罪する。
悠持としてもそれはもう考えなくても良いことだった。
ただ『目の前の強者を負かすこと』これが二人が今考えるべきことだ。

両者が戦闘態勢に入り、同時に地を蹴る。
等速に近い二人は再び競り合いになる。
相殺し合う箇所が擦れ合う度に火花が散る。
両者とも口を開こうとしない。
戦闘中に余計なことを考えるのは相手に失礼だ。
それ故に静かな空間からはそれとは反対に熱線とも言うべき相殺音が響く。

悠持は庵鬼の太刀を捌きながら、僅かに見え隠れする隙を狙おうとする。
一方の庵鬼は悠持に太刀を捌かせながら、わざと隙を見せ、悠持が狙ってくるタイミングで斬るつもりだ。

『コイツ.....誘ってやがるのか。』

『狙ってきな....一瞬のうちに真っ二つにしてやる。』

この膠着状態に近い状態は数分間続いた。 
 

 
後書き
今回はここまでです。
戦闘描写にはなかなかこだわりました。
でもタイトルの技はまだ出てませんよ。
次回もお楽しみに。 
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