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ドン=キホーテ異伝

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第六章

「そうさせて頂きます」
「それではな、僧侶殿も弟子殿も達者で」
 キホーテは彼等にも声をかけた。
 そのうえで部屋を去り聖杯城に向かった、彼は満面の笑顔であった。
 キホーテが去ってからだ、僧侶は弟子に言った。
「まさかです」
「聖杯城の王をお呼びするとはですね」
「思いませんでした」
「思い出したのです」
「あの城、そして王のことを」
「そうでした」
「あの城に行けるのは完全に清らかな者のみ」
 このことをだ、僧侶は言った。
「それでは」
「はい、私は幸いです」
「清らかであった」
「ですからあの城に行けたのです」
「だから私にも言ったのですね」
「そのことを思い出して」
 まさにそれでというのだ。
「あの城に行くことが出来ていて」
「行った」
「そしてキホーテさんを迎えに来てもらったのです」
「そうでしたか、それは何よりです」
 僧侶もここまで聞いてだ、微笑んで述べた。
「全ては貴方のお陰です」
「いえ、全ては神のご加護です」
「そう言われますか」
「はい、そうでした」
 まさにというのだ。
「あの方が聖杯の城に導かれることも」
「全ては神のですね」
「そして聖杯の城の王のです」
 パルジファル、彼のだ。
「お力故にです」
「全てはそうなった」
「そう思います」
「何はともあれよかったです」
 パンサは微笑んで言った、自身の主のことを。
「旦那様はこれからも騎士として生きられますね」
「はい、聖杯の城で」
 弟子はパンサに笑顔で答えた。
「そうされます」
「やっぱりあの方は騎士であられるべきです」
「それが為に」
「よかったです、本当に有り難うございます」
 パンサは弟子に心からの感謝の言葉を述べた、そうしてだった。僧侶と三人でキホーテの新しい門出を祝った。聖杯の騎士となった彼のそれを。


ドン=キホーテ異伝   完


                        2016・11・21 
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