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お留守番

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第四章

「出してあげるから」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「何か漫画ばかり読んでるな」
「だってこの漫画面白いから」
 茉莉花は太介を見ずにその漫画を読みつつ答えた。
「アニメも二期までやってるしね」
「へえ、そうなのか」
「アニメの方も面白かったわ、主演の声優さんも美人だったし」
「そんなに?」
「三森すずこさんって人よ」
「ああ、その人なら僕も知ってるよ」
 柿の種を手に取って食べつつだ、太介は言った。
「アニメでもゲームでもよく出演してるよ」
「有名な人よね」
「あの人確かに美人だね」
「そうでしょ」
「あんな凄い美人さんそうそういないね」
「私には負けるけれどね」
 しれっとだ、茉莉花は漫画を読みつつ無表情で言った。
「凄い美人さんよね」
「今何て言ったのかな」
「だから私には負けるって言ったのよ」
 またしれっとして言った。
「三森さんもね」
「それ本気で言ってるのかな」
「私嘘は言わない主義だから」
「完全に本気なんだ」
「そうよ、悪い?」
「幾ら何でもあの人より美人って」
「私はそう思ってるのよ」 
 あくまでこう言うのだった。
「別にいいでしょ」
「思う分にはね」
「そう、じゃあいいわね」
「凄いこと言うね」
「お兄ちゃんにしか言ってないから大丈夫よ」
 相変わらずしれっとしたまま言う茉莉花だった、そして。
 昼になるとだ、茉莉花はすっと立ち上がって台所の方に行ってだった。暫くしてお盆の上に二つの丼を持ってやって来た。そのうえで太介に言ってきた。
「お昼出来たわよ」
「あれっ、作ったんだ」
「十二時になったから」 
 だからだというのだ。
「作ったのよ」
「言ったら作るのに」
「いいのよ、十二時だから」
 茉莉花は太介の傍に丼の一つを置きつつ言った、見ればサッポロ一番の塩ラーメンでその中には人参や葱、玉葱にもやし等が入っていてだった。卵も入っていたがその卵は半分煮えていて白身がほぼ固まっていた。
 それは茉莉花の傍に置かれた丼も同じでだ、他にもだった。御飯もあった。
「御飯もあったから」
「そっちもなんだ」
「持って来たから」
「お箸まであるし」
「お箸ないと食べられないでしょ」
 ラーメンは御飯はというのだ。
「沢山食べてね、おかわりあるわよ」
「何から何まで」
「だからお昼だから」
 当然といった返事だった。
「いいのよ」
「何か悪いね」
「いいのよ、一緒にお留守番してるしね」
「それじゃあ」
「うん、今からね」
「食べましょう」 
 二人で卓に向かい合って座ってだった、いただきますをしてだった。太介と茉莉花はラーメンと御飯を食べた。そして。
 太介がおかわりに出ようとするとだ、茉莉花は左手を彼に差し出して言って来た。
「じゃあ」
「それじゃあって?」
「おかわり入れて来るから」
「自分で入れて来るよ」
「いいから」 
 無表情のまま言う。 
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