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恋女房

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第五章

「自分の漫才の相手はふぐさんだけやって」
「あいつも言うてたか」
「はい、そう」
「そうなんやな」
「ふぐさんだけやって」
「漫才って相性もあるからな」
 ふぐは真面目な顔でその後輩に答えた。
「やっぱりな」
「相性がええからええ漫才も出来る」
「そや」
 何といってもというのだ。
「やすきよかってそやったやろ」
「ああ、あの人達も」
「どっちかだけやとああは出来んしや」
 それにというのだった。
「二人揃っての面白さやった」
「それでふぐさんとあんこうさんもですか」
「あいつと高校で会わんかったらここまでなってなかった」
 絶対にというのだ。
「漫才もしてなかった」
「そこまで、ですか」
「女の人等やと今いくよくるよさんや」
 ふぐはこの二人の名前も出した。
「あの人等も高校で会ってやろ」
「ソフト部もキャプテンとマネージャーで」
「巡り合ってや」
「ずっとやってきたんでしたよね」
「あの人達もや」
 まさにというのだ。
「会えたからや」
「あそこまでなりましたか」
「そや、わし等はやすきよにもいくよくるよさんにもまだまだ及ばん」
 しかしというのだ。
「けれどあいつと会えたからな」
「漫才師になれた」
「そや、本当にな」
「そうですか」
「あいつとは夫婦以上や」
 互いにもう家庭は持っていてもというのだ。
「そやからあいつとしか漫才は出来んわ」
「それで待ってるんですか」
「ずっと」
「漫才の仕事はしないで」
「そや、待ってるんや。それでその待ち時間もや」
 一年あったそれもというのだ。
「あと二ヶ月、待つで」
「まだ二ヶ月ありますね」
「それだけありますね」
「ずっと一日千秋やったけどまだや」
 その一日がまだというのだ。
「二ヶ月もある、そやけどな」
「その二ヶ月をですか」
「まだ待つ」
「そうされますか」
「そうするわ」
 こう言って食事は摂る、だが。
 周りは彼の食事を見てだ、こうも言ったのだった。
「あの、お酒は」
「お酒飲まれてないですけれど」
「ふぐさんお酒好きですよね」
「特にビールが、ですよね」
「ああ、酒は今は止めてるんや」
 禁酒をしているというのだ。
「あいつが退院したらな」
「一緒に飲む」
「そうされてますか」
「そや、あいつも飲めへん」
 サナトリウムに入って療養しているからだ、だから飲めないのは当然である。
「そやからな」
「ここは、ですか」
「飲まれないですか」
「あんこうさんが退院されてから」
「それからですか」
「そや、漫才の舞台の後でや」
 まさにその時はというのだ。
「飲むんや」
「そうしますか」
「だから今はお酒を止めてですか」
「そしてそのうえで」
「漫才の後で飲みますか」
「二人でな、その時も楽しみや」
 まさにというのだ。 
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