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力なんていらない

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第八章

「ちゃんとね」
「それは何よりね」
「お母さん日本生まれだけれど」
「日本と比べてもなの」
「アメリカは皆太り過ぎよ」
「日本でも太ってる人いるわね」
「いることはいるけれど」
 それでもというのだ。
「あんなに太った人滅多にいないから」
「あんなにっていうと」
「よくいるでしょ、この街にも」
 ロサンゼルスにもというのだ、アメリカ西海岸でも一二を争うこの街でも。
「お腹が膝まできそうな人」
「普通にね」
「あんな太ってる人滅多にいないわよ」
「そうなの」
「それも割合もね」
 太っている人のそれもというのだ。
「ずっと少ないっていうか日本の肥満はね」
「アメリカでは肥満じゃないの」
「そうよ」
 到底というのだ。
「あそこまではね」
「そうなのね」
「そうよ、アメリカはまた特別よ」
 肥満している人間の数もその肥満の度合いもというのだ。
「多いし酷いわ」
「それで私は」
「太らない体質よ」
「そのことを一番有り難く思うわ」
 マーガレットは母に真顔で答えた。
「心の底からね」
「それでも気をつけてね」
「過ぎたら体質も越えるから」
「そう、太り過ぎになりたくなかったら」
「そのこともわかったわ」
 マーガレットが一番感謝したのはこのことだった、太らないそのことこそがだった、彼女が最も有り難いと思った力であった。太らないというそのことこそが。


力なんていらない   完


                           2016・7・15 
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