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力なんていらない

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第五章

「忍者なのよ」
「そのことも忍者なの」
「そう、忍者は夜も働いていたでしょ」
「忍んで」
「そうしていたから寝る時は短くてもなのよ」
「しっかりと寝ていたの」
「すぐに寝てすぐに起きられる」
 母は微笑み娘に話した。
「それもね」
「忍者なのね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「それで貴女もよ」
「忍者のサラブレッドだから」
「そうしたことが出来るのよ」
「すぐに深く寝られてすぐに起きられる」
「それが出来るのよ」
「この体質まで忍者なの」
 ここまで聞いてだ、マーガレットは嫌な顔になって母に応えた。ジャムをたっぷりと塗ったトーストを食べつつそうなった。
「嫌になるわね」
「便利な体質でしょ」
「だから忍者になるつもりないから」
「それでっていうのね」
「この能力もよ」
 それこそというのだ。
「いらないわよ」
「とにかく忍者が嫌なのね」
「だからいらないから」
 忍者の能力はというのだ。
「何度も言うわよ」
「やれやれね」
「やれやれじゃなくて」
「便利でもなの」
「何で興味のない分野の能力があるのよ」
 こう言って溜息をつくのだった。
「本当に」
「それが人生よ」
「神様が決めたこと?」
「私は仏教徒だけれどね」
「お父さんもな」
 父も笑って言ってきた。
「そうだけれどな」
「そういえば私も、じゃあ御仏が決めたことね」
「そうなるな」
 ここでも笑って言う父だった。
「御前のそのことは」
「忍者のサラブレッドであることは」
「寝ることについてもね」
 母がここでまた娘に言う。
「有り難い体質じゃない」
「だから私はね」
「そうした能力は望んでいないのね」
「ウェブ小説書く能力は欲しいけれど」
 そして社会で生きられる能力をだ。
「オリンピック選手にも軍人にもアクションスターにもなりたくないから」
「どれも成功したら大きいわよ」
「普通に生きたいの」
 つまりアメリカンドリームは望んでいないというのだ、そうした種類でのそれは。
「成功するのならね」
「小説家っていうのね」
「忍者は小説に関係ないでしょ」
「まあそうよね」
「全く、日系人で忍術使えるとかになったら」
 それこそとだ、マーガレットはぼやく顔で述べた。
「そのまんまじゃない」
「日系人のイメージね」
「そうでしょ、ベタじゃない」
「それもかなりね」
「どうせそこで忍者道場開いたらとでも言うんでしょ」
「伊賀からお祖父ちゃんも呼んで一緒にどう?」
 マーガレットの祖父、そして母の実の父だ。
「伊賀流忍術の免許皆伝よ」
「本物なの」
「お母さんの一番上のお兄さんでもいいわよ」
「日本にいる仗助おじさんね」
「普段は探偵やってるけれど」
「だから忍者には興味ないから」
 やはりむっとした顔で言うマーガレットだった。 
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