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酒呑童子

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第三章

「私は出来るけれど」
「相当強くないとですよね」
「出来ないわよ」
「そうですか」
「学生時代コンパでお水みたいに飲むって驚かれたし」
 これは由貴にとっては何でもない思い出だ、まさに何ともない。
「というか私お酒には興味ないから」
「寝酒意外にはですか」
「そうよ、飲まないのよ」
「じゃあ今から」
「もう寝るだけよ」
「そうですか」
「はじめてだからあまり飲まないようね」
 二人に一応こうした注意はした。
「ましてや焼酎でしょ」
「安かったから」
 小雪は母に答えた。
「それで買ったんだけれど」
「焼酎は強いわよ」
「そうなの」
「少し飲んだだけで効くから」 
 つまりアルコールが回るというのだ。
「気をつけてね」
「わかったわ」
「後片付けもしっかりね」
「お父さん何時帰って来るの?」
 娘として母にこのことも確認を取った。
「それで」
「もうちょっとしたら帰って来るでしょ」
「そうなの」
「居酒屋で職場の人と飲んでるらしいけれど」
「ビールね」
「多分それね、お父さんは好きだけれど」
 酒、それがというのだ。寝酒専門の自分とは違い。
「かなり酔って帰って来るからね」
「そういえば飲む時はそうよね」
「もう帰ってきたらお風呂入ってもらって」
「それでよね」
「すぐに寝てもらって」
「そう言っておくわね」
 母に答えた、尚小雪も桐子も既に入浴を済ませている。それですっきりとした気持ちで酒を飲もうとしているのだ。
「それじゃあ今からね」
「飲むのね」
「そうするわ」
「お酒はいいけれど煙草は駄目よ」
 由貴は次第に赤らんでいく顔で娘だけでなく桐子にも言った。
「あれは八条町でも二十歳からだから」
「そういえば校則でも書いてあったわ」
 八条学園高等部、二人が通っている学校のそれでもだ。
「喫煙は校則違反だって」
「そうでしょ、それに身体にもよくないし」
「お母さんも吸わないわね」
「吸うとよく寝れないって聞いたから」
 学生時代、寝ることが大好きな由貴にとってそれなら吸わないということだ。それで生まれてこのかた喫煙をしたことはないのだ。
「吸わないの」
「そうなのね」
「だから煙草は駄目よ」
「私そっちは興味ないから」
「私もです」
 小雪だけでなく桐子もだった。
「身体に悪いのは間違いないですし」
「背も伸びなくなるっていうし」
「そっちは興味ないです」
「全然ね」
「ならいいわ、とにかく煙草はね」
 それはとだ、由貴は二人にこちらのことは強く念押しした。 
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