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Blue Rose

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第四十四話 あえて罠にその四

 そしてだ、こう言ったのだった。
「朝御飯を沢山食べて」
「力もつけて」
「佐世保に行きましょうね」
「電車で行きますよね」
「そうよ」
「この長崎から」
「同じ県なのに遠いけれどね」 
 それでもとだ、優子はこのことは少し苦笑いをして言った。
「行くわよ」
「同じ県には思えないですね」
「それを言ったら兵庫もでしょ」
「あっ、瀬戸内側と日本海側で」
「かなり離れているでしょ」
「行き来が大変ですね」
「考えてみればそうなのよね」
 彼等が住んでいるその県でもだ。
「奈良県だって南北で全然違うし」
「何かそうらしいですね」
「ええ、もうね」
「学校の先輩、女の人で奈良県の南から来てる人いますけれど」
「その娘も言ってたでしょ」
「奈良県で栄えているのは北で」
 あくまでだ。
「南はもう山ばかりで人も少ないって」
「秘境とかね」
「もうそんなレベルだって」
「あそこは凄いのよ」
「実際にですか」
「山ばかりでね」
 高い場所から見れば見渡す限りである。
「幾つも連なってて」
「人が住める場所は少ないんですね」
「ええ、平家も隠れ里もあった位だから」
 そこまで逃げて隠れていたのだ。
「そうした場所だから」
「また特別なんですね」
「そうなの」
「奈良県っていいますと古都で」
「人も多いってイメージあるわよね」
「そう思ってました」
「確かに人は少なくはないわ」
 優子自身もこう言う。
「けれどそれは北部だけのことよ」
「あくまでそうなんですね」
「吉野から南はね」
「山ばかりで人もなんですね」
「少ないの、南部全部合わせても」
 その人口をだ。
「奈良市よりも少ない位よ」
「そんなに少ないんですね」
「奈良県はそうよ」
「そんなに南部って凄いんですね」
「その先輩も言ってたでしょ」
「はい、とにかく南部は人が少なくて何もないって」
 実際にこう聞いていた、龍馬も。
「そして不便だって」
「私は吉野に行ったことがあるけれど」
「そこから南は」
「だから吉野で入口なのよ」
「そこからさらに入っていくんですね」
「もう和歌山との境位になると」
「秘境ですか」
「本当に人もいなくて」
 山ばかりだ、まさにその中に村がぽつぽつとあるといった具合だ。
「凄いから」
「テレビとかはありますよね」
「それ位はもうね」
「流石にそうですよね」
「それでその娘は何て言ってるの?」
「何てっていいますと」
「戻ることが大変とか言ってない?」
 このことを聞くのだった。
「それこそ」
「はい、言ってました」
 実際にとだ、龍馬も答えた。
「もう戻るので五時間以上普通にかかるって」
「同じ関西にあってもね」
「しかも実際生活にかなり不便で」
「戻りたくないって言ってるのね」
「夏休みも寮におられるそうです」
 八条学園高等部のだ、全国そして全世界から人が集まる学園なので寮も充実しているのだ。 
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