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提督はBarにいる・外伝

作者:ごません
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提督はBarにいる×zero-45編・その2

 さて、その話題の特務二課から正式な視察の要請が来た。訪れるのは課長である吉野三郎と秘書艦である時雨の二人。施設内を見学したいとの話は無く、食事を楽しみたいだけだとの通達だった。念の為に警備班には警戒を促し、待機している艦娘達にも何時でも戦闘に移れるようにしておけ、と指示を出した。

 そして訪問当日、鎮守府出入り口に現れたのは時雨を伴った痩せぎすの男だった。見た目的には大した事の無さそうに見える男だが、暗殺や誘拐等を生業とする者達は得てして、見た目は普通の事が多い。俺のようにあからさまに力が有りそうに見える者は視界に入るだけでも警戒される。しかし暗殺者というのは周囲に溶け込んで相手の不意を突く事も時として必要とされる。その見た目が地味だというのも、暗殺者としてはある種の才能であるワケだ。そしてこの男の漂わせる雰囲気。その周囲からは血が薫る。幾ら洗い流そうとも、『人を殺す事が日常』であった者が漂わせる、独特の雰囲気をこの男は纏っていた。

「お会い出来て光栄です、金城大将」

 吉野が右手を差し出して来る。堅苦しい敬礼ではなく握手で済ませよう、という事か。

「こちらこそだ、吉野中佐。まさか『影法師』の本物に出会える、なんて機会はねぇからな」

 普段の会話と見せかけて置いてのいきなりの奇襲。並の奴ならここで多少なりとも狼狽える者だが、吉野の顔に揺らぎはない。……が、時雨の方は顔に明らかな警戒の色が出てしまっている。秘書艦の教育が足らんようだな、と僅かに安心する。

「……なんの事です?」

 この男、完全にすっとぼける気でいやがる。まぁ『影法師』の存在は皆知っていて知らない、言わば公然の秘密って奴に属する類いの話だ。別にすっとぼけられても痛くも痒くもない。寧ろここで狼狽えてくれるなら、そこまでの男だった……それで終わる話だ。

「いや、気にせんでくれ。こっちの独り言だ……さてと、立ち話も何だから早速店に向かおうか?」

「そうですね、噂に名高い金城大将の料理、期待してますよ」

 ニコリと笑って吉野は、俺の横に付いて歩き出した。




 店に着くまでは別段変わった会話もなく、スムーズに辿り着いた。ドアを開けて客人二人を招き入れると、

「へ~、こりゃまた立派な……」

「特務二課の秘密基地も、負けず劣らず趣味に凝ってるけどね」

 と中々のリアクション。

「さぁさぁ、立ちんぼになってねぇでカウンターに着いてくれ」

 俺がそう促すと、二人は動じる事もなくスタスタと歩いていって席に着いた。

「さて、と。改めて我が鎮守府にようこそ、吉野中佐。食事会を始める前に2~3聞きたい事があるんだが良いかな?」

 俺の不信感丸出しの威圧に、肩を竦める吉野中佐。

「時雨くぅ~ん、なんか俺大将に警戒されちゃってるみたいなんどけど?」

「仕方無いよ、提督。僕から見ても怪しい風体してるもの」

「え、いや、ちょっと、時雨君?そこは普通秘書艦としては『提督は怪しくないよ~』とかフォローしてくれるトコじゃないかい?」

「だって、相手は大将だよ?提督よりも立場が上の人に嘘は吐けないよ」

「いやいやいやいや!酷くない!?それ普段から多少俺の事が怪しい風体してるって言ってるようなモンだよね!?」

「多少、じゃないよ。かなりだよ」

「まさかの追撃!?」

 ……質問しようと思ったら夫婦漫才が始まったんだが。どうすりゃいいんだコレ?割り込んで止めるべき所なのか?

「うぉ~い、夫婦漫才やってねぇでこっちの質問に答えてもらいたいんだが?」

 俺がそういうと二人の動きがピタッと止まり、時雨の顔がニヘラっと笑み崩れる。どうやら夫婦と呼ばれたのが嬉しかったらしい。

「いやあの、夫婦じゃないんですけど……」

「ならイチャついてねぇで、こっちの質問に答えてくれねぇか?」

「アッハイ、スイマセン」

 そんな独特のノリの二人に溜め息を吐きながら、俺は質問を始めた。

「まず1つ目、今回の来訪の目的は?」

「……え、普通に飯食いに来ただけですよ?」

「ホントか?」

「ホントホント、テイトクウソツカナイ」

 何で片言だよ、ものっそい胡散臭ぇが目が笑ってない所を見ると嘘は吐いていないらしい。

「そうか…なら2つ目、俺がお前さんの直属の上司と対立してるってのは理解してるよな?」

「え、それこそ愚問じゃないっすか。海軍は海軍でしょ」

 成る程、徹頭徹尾『軍の狗』だって話はマジらしいな。軍という組織を生き残らせる為に躊躇なく取捨選択を出来る男にとっちゃあ、派閥闘争なんてのは興味が無いって所か。

「そりゃあ悪かったな。……なら最後の質問、お前さんと俺は以前どこかで会ってねぇか?」

 実はこれが一番聞きたかった事だ。先程顔を合わせた時に疑念はほぼ確信に変わった。この男と俺は以前どこかで会っている。

「……え、大本営ですれ違ったとかじゃないっすか?」

「それくらいなら印象に残らない可能性が高い。だが、俺の勘が告げてんだよ……お前さんとはどこかで会ってるってな」

「でも、俺は大将と会った事なんて覚えてませんよ?」

 俺の杞憂だったのだろうか?これだけ強く否定されると俺も自信が無くなってくる。……ともあれ、目の前の吉野中佐と時雨がウチの鎮守府を害する可能性は限り無くゼロになったワケだ。

『さて、ただの客だと判ったなら後は全力でもてなすだけだな』

「疑って悪かったな、仕切り直しといこう。ウチは見ての通りのBarだが、酒以外の物も出している。料理はメニューが無ぇけど、ある材料でなら何でも作るってのが俺のポリシーだ……さてさてお二方、ご注文は?」

「じゃあ、飲み物は……ドクターペッパーを」

「僕はサスケがいいな」

 青葉の下調べ通りの注文だが、さて困った。個人的にドクターペッパーは好物なので仕入れてはいるのだが、流石に生産を中止しているサスケは仕入れようが無い。

「ドクペはあるがサスケがなぁ……」

「あ、大丈夫だよ。持ってきてるから」

 そう言いながら時雨はスカートに付いていたポケットに手を突っ込むと、ズルリと引きずり出したのは昔懐かしいサスケの缶。ポケットの構造についてはどこぞの青狸が脳裏をよぎったが、それは今はどうでもいい。問題は生産中止したハズのサスケが何故ここにあるか?だ。聞けば特務二課と関わりが深い明石が個人的に生産しているらしい。色々とツッコミを入れたい所だが、放っておこう。

「さてと……吉野中佐、パスタは好きかな?」

「え?えぇまぁ。簡単だし後片付けも楽なんで」

 ビンゴ。これも青葉の下調べ通り。吉野中佐は天涯孤独の身であり、自炊生活も長い。必然的にご飯物よりも麺類の方が手軽なので好んで食べているとの情報に狂いは無かった。

「実はな……こっちの手違いでパスタを仕入れ過ぎちまってよ。消費するのを手伝ってくれると有り難いんだが?」

「まぁ、別段嫌いでも無いからいいですよ。…なぁ時雨?」

「うん、僕も構わないよ」

「そうかそうか、そりゃ助かる」

 さてと、じゃあ早速作っていこうかね。




 まずは定番のナポリタン……をちょっとアレンジ。某戦車アニメの劇場版にも登場した名古屋メシ、『鉄板ナポリタン』を作ってみようと思う。

《アンツィオもビックリ?鉄板ナポリタン》※分量2人前

・ウィンナー:4本

・玉ねぎ:1個

・ピーマン:2個

・マッシュルーム:6個

・パスタ(スパゲッティでもショートパスタでも)

・卵:4個

・牛乳:大さじ1/2

・塩、胡椒:適量

・ケチャップ:適量(たっぷりの方が美味いぞ!)

・めんつゆ:大さじ1~2



 さて、作っていこう。ウィンナーは好きな厚みになるように斜め切り、玉ねぎとマッシュルームはスライス、ピーマンは半分に割って種とワタを取り除いて横向きにカット。パスタは具材に合わせて茹で時間を計算して茹で始めよう。

 まずはフライパンに油を軽く引き、ウィンナーを炒める。ウィンナーに焼き目が付いて脂も程よく抜けたら、一旦取り出して野菜を炒める。野菜がしんなりしてきたら軽く塩、胡椒で味を整え、ウィンナーを戻す。炒め合わせたらケチャップを入れ、隠し味のめんつゆを鍋肌を沿わせるように投入。瞬間に香り立つ、焦がし醤油と合わせだしの香り。く~っ、たまらんねぇ。

 おっと、ケチャップはここで投入する量を全部入れるなよ?後で味の調整が利かなくなるからな。ケチャップを入れて炒め、香ばしい香りがしてきたら具材をボウルに取り出し、茹で上がったパスタと和える。ここで一度味見して、追いケチャップを加える。味の目安は、普通のナポリタンより少し濃い目がベスト。仕上げに卵とじにするからな。

 ここまで来たら卵を溶く。一人に2個使うぞ。味付けには牛乳と塩少々。溶き卵が出来たら小さめのフライパン(あるならステーキ用の鉄板)を熱してナポリタンを中心に盛り付け、仕上げに上から卵でとじる。卵が半熟に固まったら完成だ。 
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