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剣聖がダンジョンに挑むのは間違っているだろうか

作者:沙羅双樹
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第9話(剣聖side)・改訂版

 
前書き
こんばんは、沙羅双樹です。

やはり突貫執筆だったこともあって、色々と抜けている所があったので投稿し直しました。

ちなみに改訂前との違いはアトゥイが参戦しているかどうかです。

改訂前同様、誤字や表現方法に違和感などございましたらご報告頂けると幸いです。 

 



【視点:テレシア】



摩天楼(バベル)内にあるヘファイストス・ファミリアの本拠地(ホーム)でヘスティア様と別れてから早2時間。現在、私は怪物祭(モンスターフィリア)のメインイベントが行われている闘技場に同眷属(かぞく)のアトゥイ=シャッホロとルルティエ=クジュウリの2人と共に向かっています。

ちなみに、ヘスティア様と別れてからの約1時間はヘファイストス様に担保として渡した『鞘伏』の保管方法や手入れの仕方等の説明をしていました。

『鞘伏』は直接攻撃系斬魄刀で、その能力は刃の切れ味にあります。刃毀れもせず、血脂すら付着しない良過ぎる切れ味と滑らかな刃。

刀身の厚みも一般的な刀と同じ位なので、かなり強い力で横撃しない限りは折れることもない。ぶっちゃけ、刃物としては最高位のものといえます。しかし、そんな『鞘伏』には問題がありました。

封印処置の施せない常時開放型斬魄刀であることが『鞘伏』最大の問題だったんです。封印処置が施せない以上、その究極ともいえる切れ味が常に維持されるということ。それは刀身を鞘に納められないということでもあります。

名は体を現すとは言いますが、刀身を鞘に納められない以上、武器としては失敗作です。一応、ジェル状の溶液の入った水槽に刀身部分だけを入れて持ち運ぶことはできますが、その持ち運び方法はかなり格好悪いです。

まぁ、そんな危険極まりない刀剣なので保管方法の説明をする必要があったんです。一部のヘファイストス・ファミリアの眷属とか、ヘファイストス様の工房から持ち出したりしそうですし。特に某ハーフドワーフとか。

手入れの仕方については、ジェル溶液に入れっぱなしだと刀身がグラつくのでその直し方ですね。ぶっちゃけ、それ以外にする手入れがありません。

ヘファイストス様への説明を終えた後はヘスティア・ファミリアの本拠地(ホーム)へと一度戻りました。理由は『――』を鍛ち直すのに自前の鍛冶道具一式を持って来ていたからです。

自前の鍛冶道具一式を本拠地(ホーム)へと持ち帰った後は、地下の勉強部屋にある癒し温泉で汗まみれの体を清め、服を着替えてから東のメインストリートへと向かいました。

そして、約20分前に東のメインストリートで偶然にもアトゥイとルルティエの2人と鉢合わせて、そのまま一緒に闘技場へと向かうことになり、現在に至ったという訳です。

あっ!念の為言って置くと、アトゥイとルルティエの今の服装は「うたわれるもの」に登場するアトゥイ姫とルルティエ姫の着ていたもので、アトゥイはチャイナ服もどき、ルルティエは和服とアミプ・ホシ・テクンペを足して割った様な服装です。

あと、アトゥイの愛刀である『捩花』と片手杖(ワンド)サイズまで縮小された『破邪の尖角(ラヴィアス)』は刀帯から吊るされていて、ルルティエの愛刀と愛剣である『袖白雪』と『降魔の斬輝(アリファール)』も下緒を帯に結び付けられる形で帯刀されています。

ルルティエに関しては服装的に『袖白雪』は合っているんですが、『降魔の斬輝(アリファール)』は西洋剣型なのでぶっちゃけ見た目的には似合っていません。

……まぁ、私も黄緑のエプロンドレスに二振りの大刀を吊るす様な形で帯刀しているので、人のことは言えないんですが………。っと、そんな説明をしている内にメインイベントの会場である闘技場がもう目と鼻の先です。


「テレシア様、アトゥイ様。闘技場の方が何か騒がしくありませんか?」
「本当やぇ。何や、忙しないな~」
「何かあったんでしょうか?行ってみましょう。アトゥイ、ルルティエ」
「はい」


闘技場前広場のざわつきに気付いたルルティエに対して、私は何も知らない様に装いながら今回の事件に介入すべく、闘技場へと向かう歩を早めた。そして、闘技場前広場に着いた私達が――――


「随分と騒がしいですね」
「こんなザワついてたら、一般人が不安になるぇ」
「何かあったのですか、エイナ様?」
「っ!?ア、アストレア氏!シャッホロ氏!!クジュウリ氏!!!」


最初に見つけたギルド職員であるエイナに声を掛けると、エイナだけでなく周囲に居たギルド職員にまで驚かれてしまいました。

まぁ、驚く理由も大体は分かります。多分、怪物祭(モンスターフィリア)のモンスターが脱走してから大して時間も経ってないんでしょう。そんなタイミングでLV.10の私やLV.5のアトゥイ、LV.3のルルティエが現れたら驚きもしますよね。


「申し訳ないのですが、御三方の力を貸して頂けないでしょうか?」
「えっと、それは一体どういう……?」
「現在、ガネーシャ・ファミリアの捕獲していたモンスターの一部―――19体が檻から脱走し、東部周辺に散らばってしまっています」
「じゅ、19体!?」
「だ、脱走し過ぎやぇ~」


原作では9体だった筈。何で10体も増えてるんでしょう?もしかして、ヘスティア・ファミリアを強化した影響でしょうか?


「はい。現在、ガネーシャ・ファミリアの団員とギルド職員が連携して市民の避難誘導を行い、ロキ・ファミリアの団員にモンスターの討伐協力をして頂いているのですが―――」
「脱走したモンスターの数が数だから人手が欲しいという訳ですね?」
「はい。お願いできないでしょうか?」
「分かりました。アトゥイ、ルルティエ」
「分かってるぇ~」
「はい!」


私がアトゥイとルルティエに声を掛けるとアトゥイは気の抜けた返事を、ルルティエは気合の入った返事を返し、私達は同時に瞬歩を使って近場の建物の屋根へと移動します。

そして、私とアトゥイ、ルルティエは脱走したモンスターを捕捉する為、(ホロウ)化して探査回路(ペスキス)によるモンスターの索敵を開始。

普通の霊圧ならぬ魔力知覚でもモンスターや冒険者の捕捉はできるんですが、広範囲捕捉となると探査回路(ペスキス)の方が早く捕捉できたりします。

ちなみに(ホロウ)化している時の私の仮面は「BLEACH」のネリエルの様な羊風のもので、アトゥイは大虚(メノス)ハリベルの様な鮫――というかシャチ風のもの、ルルティエは楼十郎(ローズ)の様な鳥風のものです。ただし、嘴部分が短いのでココポっぽいです。

探査回路(ペスキス)での捕捉を終えると(ホロウ)化を解き、私とアトゥイ、ルルティエは瞬歩を使って別行動でモンスター討伐を始めます。

探査回路(ペスキス)を使った時、既にモンスターの数が15体まで減っていたので、ロキ・ファミリアが4体のモンスターを討伐したのでしょう。私達も負けてはいられません。

私はモンスターを目視する度に間合いを詰め、その体を一刀両断して行き、5体目を切り捨てた時には地表に残っているモンスターの魔力は1体だけとなっていました。

最後の1体は神フレイヤからベル君への最初の試練。私が介入して良いものか否か。そんなことを悩んでいると、私の居る所から少し離れた場所で爆発が起こりました。

いいえ。正確には爆発ではなく、地下から何かが地面を吹き飛ばして出てきたみたいです。そういえば、外伝の話で新種か強化種っぽい植物モンスターが出ていた気がします。


「あや~、地面から何か出てきたぇ」
「テレシア様、アレは何でしょう?」


私と同じく闘技場から逃亡していたモンスターを討伐していたアトゥイとルルティエが私の横に現れ、そう尋ねてきます。それに対して私は―――


「新種か強化種かは分かりかねますが、取り敢えずモンスターであるのは間違いなさそうですね」
「アレもガネーシャ・ファミリアが……?」
「それは無いと思うぇ、ルルやん」
「そうですね。地面から飛び出して来た様ですし、何より―――」


私は弓兵の発展アビリティの効果で強化された視力で植物モンスターの現れた場所を見ながら言葉を続けます。


「第一級冒険者として名高いロキ・ファミリアの【怒蛇(ヨルムガンド)】と【大切断(アマゾン)】の打撃に耐えられるモンスターをガネーシャ・ファミリアが捕獲できるとは思えません」
「ッ!LV.5の打撃に耐えられているのですか?」
「それは面白そうな相手やぇ~」
「まぁ、実際は耐えているというより、打撃そのものが効いていないみたいです。あそこまで効果が無いということは、相手は動物型ではなく植物型なのでしょう。
っと、エルフの少女がモンスターの攻撃を受けました。吐血していますし、骨が何本かイッてるかもしれません。助けに行きましょう。アトゥイ、ルルティエ」
「はいな」
「は、はい!」


私はそう告げると、アトゥイとルルティエの2人と共にモンスターのいる所へ瞬歩を使って向かいました。



【視点:レフィーヤ】



お腹に叩き込まれた一撃の衝撃と痛みで体を動かせずにいる私に、口から粘液を滴り落としている食人花が迫って来ていた。

ティオネさん達が駆け付け様としてくれているけど、食人花の触手に行く手を阻まれている。周辺にはティオネさん達以外私を助け出せそうなLVの冒険者が居ない。

周囲からは逃げ遅れて青褪めた市民の悲鳴が響き、LV.2以下と思しき冒険者とギルド職員が避難誘導を行っている。

私はこんな所でモンスターに捕食されて人生を終えるの?嫌だ、絶対に嫌だ。冒険者になって何かを成し遂げた訳でも無いのに、こんな所で死ぬのは絶対に嫌だ。

そう思いながら、少しでも食人花から離れようともがいていると―――


「縛道の六十一【六杖光牢】」


つい数日前に聞いた覚えのある声がその場に響き、私へと迫っていた食人花の頭が6つの帯状の光によって空中で拘束されていた。そして、私とモンスターとの間にオラリオ最強の魔導騎士が降り立った。


「………テレシア=ヴァン=アストレア」
「アトゥイ、ルルティエ!手早く済ませたいので斬魄刀を解放しますよ!!」
「了解やぇ!……水天逆巻け――」
「はい!……舞え――」
「…霜天に坐せ――」
「『捩花』!!」
「『袖白雪』!!」
「『氷輪丸』!!」


アストレアさんと後から現れた2人の獣人の少女が叫ぶと、3人の持っていた武器が一瞬の内に形状を変えていた。あれがオラリオでアストレアさんにしか作り出せないとされている自己修復属性(アヴァロン)の魔剣――斬魄刀。

製作者であるアストレアさんの意向で他派閥への販売が一切行われておらず、神の眷属で斬魄刀を所有することが許されているのはヘスティア・ファミリアの眷属のみとされている。

また、その数少ない所有者が斬魄刀の力を基本的に深層でしか解放しないことから、斬魄刀の魔剣としての力の詳細を知る冒険者も少なかったりする。

数年前、中層でアストレアさんが斬魄刀の力を解放している所が目撃され、その絶大な能力から斬魄刀の噂が神々とその眷属の間で一気に広まったけど、それ以降中層より上の階層でその力が解放された所は目撃されていない。

だから、その力が解放される所を見ることができるのは迷宮(ダンジョン)の深層に挑む第一級冒険者だけとも言われていて、こんな状況でもなければこの場にいる冒険者の何人かは小躍りしていたかもしれない。

『氷輪丸』という斬魄刀を解放したアストレアさんは私の目の前から動くことなく、迫りくる食人花の頭と触手に対して『氷輪丸』を振るい、生み出した水と氷で氷漬けにしていく。他の獣人の少女達は―――


「アハハ、アハハハハ」
「次の舞・【白蓮】!」


オレンジ色の服を着た獣人の少女は狂った様な笑い声を挙げ、『捩花』と呼んでいた三叉槍の斬魄刀を右手で回転させながら振るってその穂先から水を刃の様に放ち、いつの間にか左手に持っていた『捩花』とは別の三叉槍では斬り裂いた触手などを氷漬けにしていた。

和服(?)と呼ばれる極東の服を身に纏った獣人の少女は第一級冒険者――LV.4以上と思える様な剣舞で食人花の触手を斬り裂いていたかと思えば、魔剣の切先を地面に何度か刺し始め、そこを起点に強大な凍気を雪崩の様に発生させ、放射線状の触手などを氷漬けにしていた。


「ちょっ、周りのこと考えながら槍を振り回しなさいよ!危ないでしょう!!」
「ごめんな~、うちの周りのLV.5はこん位なら普通に避けれるから、周りのこと気にしながら戦うことに慣れてないんよ」
「あぶなっ!大技放つなら事前に言って!!」
「……私はLV.3なので魔剣を使った攻撃でもLV.5の方なら避けられると思っていました。申し訳ありません」


槍の攻撃に巻き込まれそうになったティオネさんと凍気の雪崩に巻き込まれそうになったティオナさんが文句を言うと、オレンジ服の獣人の少女は悪びれも無く、もう1人の獣人の少女は申し訳なさそうにそう告げてきた。

予想外の返答に私達は絶句せざるを得ませんでした。まさか、LV.4以上の剣舞を見せた和服(?)の少女が私と同じLV.3だとは思わなかったからです。そして―――


「一気に決着をつけましょう」


アストレアさんはそう言うや否や、手にしていた魔剣を天に向け始めました。すると空が急に曇り始め、雪が降り始めました。


「雪の様に儚く、華の様に散りなさい。――――【氷天百華葬】!!」


アストレアさんが術名らしきものを口にすると、雪に触れた食人花の箇所が華の様に凍りついていき、1分足らずで百輪の氷の華束が完成してしまいました。


「醜い姿ではなく美しい姿で散ることができれば植物として本望でしょう?」


アストレアさんはそう告げると同時に魔剣を最初の形状へと戻し、鞘へと納めた。獣人の少女達もいつの間にか魔剣の形状を戻していて、その刀身を鞘に納めている。

そして、アストレアさんと少女達が同時に魔剣を鞘に収めきり、チンッという音をその場に響かせると、氷の華束となっていた食人花は砕け散り、雪の様にその場で儚く舞い散ることとなった。


 
 

 
後書き
という訳で原作でいう外伝オラトリアside(改訂版)でした!!

一応言っておくと、本編内でのアトゥイの二槍流ですが、片方は『捩花』でもう片方は『破邪の尖角(ラヴィアス)』です。(笑)
(戦い方はディルムッド=オディナさんなのに、その気性(それとも感性?)が戦狂いなクー=フーリンさんとは、……一体どうしてこうなった?(笑))

あと、本作内でのモンスター討伐数も書いておきたいと思います。

テレシア=5体
アイズ=5体
アトゥイ=4体
ルルティエ=4体


………さて、ここで本作におけるレフィーヤの裏設定を公開します。実は本作のレフィーヤはアイズ以外にテレシアにも憧れています。
(ちなみに第1話でエイナさんが言っている勘違いでロキ・ファミリアに入団した冒険者はレフィーヤだったりします)

そんな訳でレフィーヤはテレシア関係で原作オラトリアの様にベルに突っかかっていくと思います。
(まぁ、テレシアとベルは同じファミリアなので、ファミリアを言い訳にできない分、完全に理不尽な嫉妬という形になると思いますが……(笑))


あっ、ついでに改訂前の後書きも書いておきます。

テレシアが最後に放った【氷天百華葬】は始解状態で使ってます。
(言ってしまえば、原作「BLEACH」の霊王宮で修行した朽木白哉ですね。始解で卍解の出力を出せる的な(笑)
『流刃若火』でも始解状態で旭日刃を使えたりするLVです(笑))

本文内で記載しているアミプ・ホシ・テクンペはアイヌの民族衣装の名前です。(笑)
(「うたわれるもの」のルルティエ姫の衣装の模様はアイヌっぽいですよね(笑))

本当はルルティエの兄弟姉妹であるシスやヤシュマも登場させたかったんですが、今回は止めておきました。
 
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