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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第2話

その後……リウイ達はセオビット達が捕えたアルティナと共に大使館に戻る事となり……リィンとセレーネ、トヴァルとルシア夫人はリウイ達の見送りをしようとしていた。



~ユミル・転移魔法陣の間~



「リウイ陛下、ペテレーネ神官長。父さんの治療の事といい、先程のゴーレムの退治や母さんを結社の魔の手から守って頂いた事といい、今日は本当にお世話になりました……」

「陛下達より受けた御恩、一生忘れません……」

「―――礼は不要だ。俺達はメンフィル皇家として当然の事をしたまでだ。」

リィンとルシア夫人に頭を下げられたリウイは静かな表情で制して答えた。

「兄様……本当に私はユミルに残らなくていいのですか?私もユミルの領主の娘として領主代理を務める兄様を支えるべき立場ですのに……」

「エリゼはリフィア皇女殿下の専属侍女長という重要な役目があるだろう?それに”蒼の深淵”がエリゼを諦めるとはとても思えない。結社に狙われている身であるエリゼはむしろリフィア殿下達の傍にいた方が安全だと思えるから、俺も安心して心置きなくユミルを守る事に専念できると思うんだ。」

「兄様…………―――わかりました。ユミルの事はお願いします。セレーネ、私の分も兄様を支えてあげてね。」

「はい!エリゼお姉様もお勤め、頑張って下さい……!」

「――――明日にはセントアークからユミル防衛の為の臨時の防衛部隊が到着するように手配しておく。それと本格的な防衛部隊の方も可能な限り早く到着するように急がせておく。」

「わかりました。郷の防衛部隊の手配、どうかよろしくお願いします。」

リウイの説明に頷いたリィンはリウイに会釈をした。



「えっと……リウイ陛下。そちらの方―――アルティナさんはどうされるおつもりなのですか?」

その時アルティナの事が気になったセレーネは水の結界によって囚われているアルティナに視線を向けて訊ね

「まずはその小娘が持つ情報を全て話してもらう。正直に嘘偽りなく答えたのならば、危害を加えるつもりはなく、エレボニアの内戦が終結した際には解放するつもりの上、その小娘自身が望むのならばメンフィルで保護し、16歳になるまでは”癒しの女神(イーリュン)教”が運営している孤児院にでも預け、16歳に成長すれば仕事も用意してやるつもりだ。話に聞く所その小娘自身はユミル襲撃には関わっていないし、ルシア夫人の誘拐も”未遂”の為現状その小娘の罪はそれ程重くない。」

「……………」

「そうですか………」

リウイの話を聞いたアルティナは黙り込み、ルシア夫人は自分を誘拐しようとしたとはいえ、15歳のエリゼよりも幼い少女がメンフィルによって罰せられる可能性はない事に安堵の表情で溜息を吐いた。

「……ちなみに頑なに口を閉ざして、情報を話さなかったらどうするおつもりですか?」

一方ある事が気になったトヴァルは真剣な表情でリウイに訊ねた。

「その時は自白剤を投与して、話してもらうだけだ。」

「なっ!?恐れながら意見をさせてもらいますが、さすがにそれは非人道的なやり方ではありませんか!?先程陛下も仰ったようにそちらの少女の罪はそれ程重くないのに、自白剤まで投与するなんて幾ら相手が犯罪者と言えど、やり過ぎかと思われます……!」

そしてリウイの答えを聞くと血相を変え、厳しい表情で指摘した。



「え、えっと……薬物を投与する危険性を考えて意見をされていると思いますが、リウイ様が仰っている自白剤は私自身が調合する自白剤ですから、毒や副作用とかは一切ありませんよ?」

「それに自白剤の投与は捕えた”敵勢力”に所属する者に対してする”処置”としては一番人道的な”処置”だ。」

「自白剤の投与が一番人道的な”処置”って、酷い”処置”だとどんな内容になるんだよ……」

トヴァルの意見に対してペテレーネがリウイの代わりに答え、リウイの話を聞いたトヴァルは疲れた表情で溜息を吐いて独り言を呟き

「「「……………」」」

メンフィルは時には”拷問”や”拷問すらも生温いと思うような非人道的な処置”を躊躇う事なくする事をメンフィルの皇族や軍属の関係者から教えられているリィンやエリゼ、セレーネはそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「……リウイ陛下。恐れながらそちらの少女の件とは別に、”遊撃士協会”として一つだけお訊ねしたい事があるのですが……」

するとその時ある事をリウイに訊ねる事を忘れていた事を思い出したトヴァルは複雑そうな表情でリウイを見つめて訊ねた。

「何が聞きたい。」

「………メンフィル帝国は今回の件―――ユミル襲撃によって発生してしまったエレボニア帝国との外交問題について、”どういう解決方法”を取るおつもりですか?まさかとは思いますがユミル襲撃の”報復”としてエレボニアとの戦争に踏み切るおつもりですか……?」

「あ…………」

トヴァルの質問の内容を聞き、最悪の場合エレボニアとメンフィルが戦争状態に陥る事を悟り、不安そうな表情をした。

「―――それはエレボニアの態度次第だ。メンフィルは”ハーメル”の件を黙認させられたリベールとは違う。今回のユミルの件を”ハーメル”の件のように誤魔化す事は絶対に許さん。そして……メンフィルの民達に手を出した愚か者達やその愚か者達に同調する者達には”報い”を必ず受けさせる。例え”どのような形”になろうとな。―――行くぞ。」

そしてトヴァルの質問に全身に覇気を纏って答えたリウイは外套を翻してペテレーネ達を促し、転移魔方陣へと入ってメンフィル大使館へと転移し、ユミルから去っていった。



その後……リィンはシュバルツァー男爵の代わりにユミルの領主代理として働き、セレーネは領主代理として忙しく働いているリィンを補佐した。翌日セントアークからユミルの防衛部隊が到着し……防衛部隊の到着を確認したトヴァルはアルフィン皇女の救出や内戦で苦しんでいるエレボニアの民達を”遊撃士”として自分ができる事をして助ける為にリィン達に別れを告げ、ユミルから去っていった。



一方リウイはメンフィル大使館に帰還後、帰還したその日にリベール王国の王都、グランセルに存在するエレボニア帝国の大使館を訪問、ユミル襲撃の詳しい経緯をエレボニア帝国の大使であるダヴィル・クライナッハ男爵に説明し、襲撃の”謝罪”に対する様々な事を要求した。ユミル襲撃の詳しい経緯を聞かされたダヴィル大使はメンフィルとエレボニアの間にいつ戦争が勃発してもおかしくない事を即座に悟り、今にも倒れそうなほど表情を青褪めさせたが、リウイ達―――メンフィル帝国の要求―――『ユミル襲撃に対する慰謝料、並びに賠償金の支払い、襲撃をした張本人である”北の猟兵”達並びに猟兵達の雇い主であるヘルムート・アルバレア公爵とアルバレア公爵の正妻、そしてアルバレア公爵の長男であるルーファス・アルバレア、エリゼやルシア夫人の誘拐を企てた貴族連合の”裏の協力者”である”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダの身柄の引き渡し』に必ず全て応えるとその場で確約した。



しかし――――貴族連合側はリウイ達が求めてた慰謝料と賠償金の10分の一にあたる金額だけ支払い、他の要求については色々と理由をつけて行わなかった。そして自分達の要求に応えない様子のエレボニア帝国の態度に業を煮やしたメンフィル帝国は既に同盟関係となったディーター・クロイス政権を崩壊させ、新たなるクロスベルを建国する”六銃士”達の代表者である”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダーと”微笑みの剣妃”ルイーネ・サーキュリーに”クロスベル帝国”にいくつかの条件を見返りを贈与する代わりに”クロスベル帝国”建国前に先にエレボニアにだけメンフィルが戦争を仕掛ける同意をしてもらい、エレボニア帝国に戦争を仕掛ける事を決定した。



エレボニア帝国との戦争を決定したメンフィル帝国は内戦で国内が混乱している事を利用して多くの諜報部隊をエレボニア帝国へと解き放ち、更に様々な”才”に長けているメンフィル皇女の一人であり、プリネの義妹でもあるレン・ヘイワース・マーシルンは導力端末のハッキングで貴族連合の新兵器である”機甲兵”の設計を始めとした様々な情報を盗み、それらの情報を様々な形で利用した。



メンフィル帝国がエレボニア帝国との戦争に向けて本格的に準備を行っている中、リウイ達がユミルから去って数日後シュバルツァー男爵は目を覚ました。シュバルツァー男爵の目覚めに喜んだリィン達は病み上がりのシュバルツァー男爵を補佐し続けた。そんなある日、シュバルツァー男爵が目覚めた事を知ったエリゼはリフィアの親衛隊の副将軍―――シグルーン・カドール中将と共にシュバルツァー男爵の見舞いやリィン達にメンフィル帝国が正式にエレボニア帝国と戦争する事になった事を伝える為にシュバルツァー家を訊ねた。

12月1日―――――



~シュバルツァー男爵家・執務室~



「――――父様ッ!」

「エリゼ……!?どうしてここに……仕事の方は大丈夫なのか?」

血相を変えて現れたエリゼの登場に驚いたリィンは目を丸くしてエリゼに訊ねた。

「リフィアが一時的な帰省を許してくれた事もそうですが、メンフィル帝国より兄様達に伝える重要な事もありましたので、急遽帰還したんです。それより無事で何よりです、父様……!」

「エリゼ……お前にも心配をかけてすまなかったな。それにリフィア殿下にも気を遣わせてしまったな…………」

エリゼに話しかけられたシュバルツァー男爵が苦笑したその時

「フフ、リフィア殿下は民だけでなく家臣達にもとてもお優しい方ですから、どうかお気になさらないで下さい。」

シグルーンが執務室に入って来た。

「ふ、副長!?どうして副長までエリゼと一緒にユミルに……」

「ふふ、1週間ぶりですわね、リィンさん。領主代理の務め、お疲れ様です。」

自分の登場に驚いているリィンに対してシグルーンは可憐な微笑みを浮かべて答えた。



「リィン?そちらの女性は一体……?」

「は、はい。そちらの女性は俺が所属しているリフィア皇女殿下の親衛隊の上司の一人―――――”副将軍”を務めておられるシグルーン・カドール中将閣下です。」

「―――お初にお目にかかります。(わたくし)はリフィア皇女殿下親衛隊副長にしてカドール伯爵の妻、シグルーン・カドール中将と申します。以後お見知り置きを。」

シュバルツァー男爵に訊ねられたリィンはシグルーンの事を説明し、シグルーン会釈をして可憐な微笑みを浮かべた。

「リフィア皇女殿下の………お初にお目にかかります。シュバルツァー男爵家の当主、テオ・シュバルツァーと申します。いつも息子の面倒を見て頂き、誠にありがとうございます。」

「フフ、こちらこそご子息にもそうですがご息女のエリゼには殿下共々お世話になっていますから、お互い様ですわ。」

「お気遣いありがとうございます。それよりもエリゼ、先程メンフィル帝国より私達に伝える重要な事があると言っていたが、シグルーン中将閣下がご一緒されている事と関係あるのか?」

シグルーンの答えに謙遜した様子で答えたシュバルツァー男爵はある事を思い出し、エリゼに訊ねた。

「それは…………」

「………―――その件に関しましては私の方からご説明させて頂きますので、大変お手数で申し訳ありませんがこの場にはいないルシア夫人やセレーネ嬢もお呼びしてください。シュバルツァー卿の伴侶であられるルシア夫人もそうですが、ルクセンベール卿の妹君であられるセレーネ嬢も知るべき事だと思われますので。」

エリゼが複雑そうな表情で答えを濁しているとシグルーンが一歩前に出てシュバルツァー男爵達に説明し

「………わかりました。ここは狭いので、ご足労ですが応接間まで移動して頂き、そちらの方でご説明をお願いします。」

シグルーンの話を聞き、尋常ではない事を知らされる事を悟ったシュバルツァー男爵は落ち着いた様子で答えた。その後ルシア夫人とセレーネも加えてリィン達は応接間でシグルーンからの説明を聞き始めた。



~応接間~



「それでシグルーン様。メンフィル帝国からの重要な知らせとは一体………?」

「―――遠回しな言い方は止めて、単刀直入に答えさせて頂きます。昨日メンフィル帝国はエレボニア帝国に対して戦争を仕掛ける事を正式に決定し、帝都ミルスの民達にも発表致しました。今頃はゼムリア大陸に存在するメンフィル帝国の領土も含めたメンフィル帝国全土に知らせが渡っています。また、本日の正午にはリベール王国の王都にあるエレボニア帝国の大使館にも宣戦布告が届くように手配してあります。」

セレーネの質問に対してシグルーンは静かな表情で答え

「……ッ。予想はしていましたけど、やはり最悪の事態に陥ってしまったのですか……」

「そ、そんな………」

「…………シグルーン中将閣下。戦争勃発の原因はやはり先日アルバレア公爵によって雇われた猟兵達によるユミルの襲撃ですか?」

シグルーンの答えを聞いたリィンは息を呑んだ後複雑そうな表情をし、ルシア夫人は悲痛そうな表情をし、シュバルツァー男爵は複雑そうな表情でシグルーンに訊ねた。

「はい。他国の貴族……それも皇家に次ぐ権力を持つ大貴族の指示によって猟兵達が我が国の領土を襲撃して民達の命を脅かし、更には領主夫妻にまで危害を加えたという狼藉はメンフィル帝国として絶対に許し難い所業です。」

「そ、それは……で、でもあの襲撃でシュバルツァー卿も含めて誰も命を落としていないのですから、幾らなんでも戦争に踏み切るのは早計なのではないでしょうか……?」

シグルーンの説明を聞いて悲痛そうな表情をしたセレーネだったが、すぐに気を取り直して意見を口にした。



「犠牲者の有無は関係ありません。それにメンフィル帝国は戦争に踏み切る前に大使館を通してエレボニア帝国に対してユミル襲撃の”謝罪”として、常識的に考えて当然の要求をしましたが、エレボニア帝国はその要求に対して一切答えませんでした。ユミル襲撃の件もそうですが、エレボニアの対応に対してメンフィル帝国政府や軍関係者は当然ですが、リフィア皇女殿下やシルヴァン皇帝陛下を含めたメンフィル皇家の多くの方々もお怒りになられた為、エレボニアに対して戦争を仕掛ける事になりました。」

「そんな………」

「………アルフィン皇女殿下やユーゲント皇帝陛下達に何とお詫びすれば………」

「父様……母様………」

セレーネの意見に対して答えたシグルーンの説明を聞き、それぞれ悲痛そうな表情をしているルシア夫人とシュバルツァー男爵をエリゼは辛そうな表情で見つめていた。

「…………副長。父さんが目覚めている以上、俺もメンフィル軍に戻って今回の戦争に従軍しなければならないのでしょうか?」

「あ…………」

リィンの質問を聞いたセレーネは不安そうな表情をした。

「いえ、今回の戦争はリィンさん―――”シュバルツァー家”の方々に関しましては特別に従軍の免除がされていますから、シュバルツァー卿が目覚めたからと言って今すぐメンフィル軍に戻れと言うつもりはありません。襲撃された領土の回復や治安維持の為にシュバルツァー卿の補佐をする事も領主の息子として立派な役目ですから、従軍を断っても誰も責める方はいらっしゃらないと思いますわ。当然私やゼルギウスも貴方を責めるつもりは一切ございません。勿論リィンさんと”パートナードラゴン”として主従契約を結んでいるセレーネさんも免除されています。」

「そうですか………」

「………あの、ツーヤお姉様は今回の戦争に参戦なさるのでしょうか……?」

リィン達の従軍の免除がされている事を知ったルシア夫人は安堵の表情で溜息を吐いたが、ある事が気になったセレーネは不安そうな表情でシグルーンに訊ねた。



「ええ、今回の戦争にプリネ皇女殿下も参戦されますから殿下の専属侍女長と親衛隊長を兼任されているルクセンベール卿も当然参戦しますわ。」

「温厚な性格であられるあのプリネ様が………」

シグルーンの話を聞いたセレーネは信じられない表情をし

「……セレーネさん。ルクセンベール卿の妹君であられるセレーネさんならばプリネ皇女殿下が”とある人物”の転生した方である事もご存知でしたよね?」

「え、ええ。お姉様から話には聞いていますけどそれが何か………――――あ。」

シグルーンの問いかけに頷いた後ある事に気づいたセレーネは呆けた声を出し

「恐らくプリネ皇女殿下も今回の件でエレボニアに対して何か思う所があり、戦争に参戦なさることを決意されたと思われますわ。」

「………………」

そしてシグルーンの推測を聞くと複雑そうな表情で黙り込んだ。



「それで話を戻しますが、今回の戦争、リィンさんはどうなさいますか?ちなみにエリゼは今回の戦争に従軍するとの事ですが。」

「え………」

「な――――」

「!?エリゼ、副長の仰っていた事は本当なのか!?」

エリゼがエレボニアとの戦争に従軍する事を知ったルシア夫人は呆け、シュバルツァー男爵は絶句し、リィンは血相を変えてエリゼを見つめて訊ねた。

「―――はい。今回の件でメンフィル帝国より多大なる恩を受けましたから、その恩を少しでもお返しする為という理由もそうですが、私はリフィア皇女殿下の専属侍女長。大恩あるメンフィル帝国から受けた恩に報いる為……そしてリフィアの専属侍女長としてリフィアを支える為にも今回の戦争に従軍します。」

「エリゼお姉様………」

「エリゼ………(本当は父さん達はエリゼが戦争に参戦――ましてや自分達の娘がかつて仕えていたエレボニア皇家に対して剣を向ける事やメンフィルが元祖国であるエレボニアに戦争を仕掛ける事に複雑な思いを抱えているはずだ……何とかメンフィルとエレボニアが和解できるような方法はないのか……?)」

(リィン様………)

(リィン………)

(…………)

エリゼの決意を知ったセレーネが静かな表情でエリゼを見つめている中リィンは複雑そうな表情で考え込み、リィンが無意識に伝えて来たリィンの考えを知ったメサイアやアイドスは辛そうな表情をし、リザイラは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

(………正直難しいと思うけど、方法はあるわ。)

(!?本当か、ベルフェゴール!一体どうすれば和解へと持っていけるんだ……!?)

するとその時ベルフェゴールがリィンに念話を送り、ベルフェゴールからメンフィルとエレボニアが和解できる可能性がある方法を伝えられたリィンはベルフェゴールに訊ねた。

(ご主人様も戦争に参戦して手柄をたてるのよ。―――それもメンフィルが驚いたり感心するような大手柄をね。)

(何で戦争で手柄をたてる事が和解へと持っていける話になるんだ……?)

(古来より戦争で大手柄をたてた者達は貢献した国より様々な”褒賞”を与えてもらえるわ。富、地位、そして栄誉。ご主人様が今回の戦争で大手柄を立てれば皇族達も直接ご主人様を表彰するのじゃないかしら?しかもご主人様はリフィア皇女のお気に入りのエリゼの兄だから、多分ご主人様が大手柄をあげれば皇族―――運がよければリフィア皇女自身が表彰するかもしれないわよ?)

(!その時に”褒賞”の代わりにエレボニアとの和解を希望する事を言うのか……!)

(そ。しかも幸いにもメンフィルは高貴な血を気にする面倒な”血統主義”と違って”実力主義”。実力があって人柄も問題なければ、間違いなくご主人様も出世できる……というか既に私達―――”魔神”に”精霊王女”、そして”古神”と契約した事を評されて将来ご主人様の実家の爵位が上がる事が決定している件や帝位第一位継承者の専属侍女長を務めている事からメンフィルの上層部達に高評価されているエリゼの件も考えたら、ご主人様の希望に応じてくれる可能性は結構高いと思うわよ?)

「(確かにその方法なら……!)――――副長。今回の戦争……俺は特別に従軍義務を免除されていますが、本日より軍に戻り、今回の戦争に従軍、並びに参戦させて頂いてもよろしいでしょうか?」

ベルフェゴールの説明を聞いてある決意をしたリィンは決意の表情でシグルーンに問いかけた。



「な――――」

「え…………」

「お、お兄様!?」

「兄様………」

リィンの意志を知ったシュバルツァー男爵夫妻は再び絶句したり、呆けたりし、セレーネは驚き、エリゼは目を丸くした。

「………理由を伺っても構いませんか?」

一方シグルーンは一瞬呆けたがすぐに気を取り直し、リィンが戦争に参戦する理由を訊ねた。

「メンフィルとエレボニアの戦争を和解へと持っていく為です。」

「え………」

「ええっ!?何故お兄様が戦争に参戦する事でメンフィルとエレボニアの戦争を和解へと持っていく事になるのですか……?」

リィンの答えを聞いたエリゼは呆け、セレーネは驚いてリィンに訊ねた。そしてリィンはベルフェゴールの説明をエリゼ達に説明した。



「た、確かにその方法ならば戦争を和解へと持っていける事も可能かもしれませんわね………」

「兄様…………」

説明を聞き終えたセレーネとエリゼは驚きの表情でリィンを見つめ

「………リィン。まさかエレボニアとメンフィルが戦争状態に陥ってしまった事を責任を感じている私達の為に戦争に参戦する事を決めたのか?」

「あ………」

シュバルツァー男爵は真剣な表情でリィンを見つめて訊ね、シュバルツァー男爵の話を聞いたルシア夫人は呆けた声を出した。

「その理由もありますが俺はリフィア皇女殿下の親衛隊に所属するメンフィル帝国の”軍人”です。侍女のエリゼが参戦するのに、エリゼの兄であり、軍人でもある俺が参戦の拒否をする訳には行きませんし、今回の件でシュバルツァー家はメンフィル帝国から多大な恩を受けました。その恩を返す為にも今回の戦争に参戦するつもりです。」

「お兄様………」

「………なるほど。さすがは”七大罪”の”魔神”の一柱の助言だけあって、普通に考えればありえないと思う方法ですが現実的に可能な方法ですわね。確かベルフェゴール殿の仰った方法でしたら、少なくてもメンフィルなら可能性はありますわね。」

リィンの説明を聞いたセレーネは静かな表情でリィンを見つめ、シグルーンは納得した様子で頷いて呟いた。



「ほ、本当ですか……!?」

「ええ。リィンさんも存じている通り戦場で手柄を立てた事からリフィア殿下の親衛隊の隊長や副長になれた私や夫、メンフィルにとって最悪の裏切り者であるケルヴァン・ソリードの血を引きながらも戦争での功績や政治家としての実力を評価され、メンフィル帝国軍の”総参謀”兼メンフィル帝国政府の”宰相”へと昇りつめたリグレ侯爵家の初代当主にして前当主でもあられるパント卿等様々な”実例”があるのですから。」

「そうですか……!」

ベルフェゴールの説明通りメンフィルとエレボニアを和解へと持って行く事が可能な事をシグルーンが肯定するとリィンは明るい表情をしたが

「―――ですが、戦争を止めるとなると並大抵の手柄では無理だと思いますわよ?国家の決定を変える事になるのですから。まあ、ベルフェゴール殿達と契約しているリィンさんでしたら”不可能”とは言えませんが。」

「……それは理解しています。ベルフェゴール達がいるとはいえ、俺自身は未熟者の身です。それでもその可能性に賭けてみたいのです……!」

シグルーンの忠告を聞くと静かな表情で頷き、そして決意の表情をした。

「「(お)兄様……」」

「ふふ……二人ともいつの間にか大きくなりましたね。」

「うむ……我が子達の成長、喜ぶべきだろう。―――リィン、エリゼ。郷の事は私達に任せ、お前達は自分達が決めた”道”を歩みなさい。お前達が目指す道の先にある目的が叶う事、陰ながら応援しているよ。」

「二人とも必ず無事に戻って来て下さいね。」

リィンの様子をエリゼとセレーネがそれぞれ見つめている中微笑ましく見守っていたシュバルツァー男爵夫妻は子供達に応援の言葉をかけた。



「父様……母様……はい……!」

「必ず二人揃って無事に戻って来ます。そういう訳だからセレーネはユミルに残って父さんたちの――――」

両親の言葉を聞いたエリゼと共に答えたリィンはセレーネにユミルに残るように伝えようとしたが

「いいえ、わたくしもお兄様とご一緒しますわ。わたくしはお兄様の”パートナードラゴン”なのですから。」

「……戦争に参加する俺達についていけば多くのエレボニア帝国の人達を殺す事になるんだぞ?」

セレーネもリィンについて行く決意を口にし、セレーネの決意を知ったリィンは複雑そうな表情でセレーネに問いかけた。

「勿論理解しております。ですがわたくしもメンフィル帝国の貴族の一員ですからいつかは経験する事ですし……それにわたくしにとって”パートナー”であるお兄様が戦争でその手を多くの血で汚すおつもりなのですから、わたくしも戦争から逃げる訳にはまいりませんわ。どうかわたくしにもお兄様を支えさせてください。」

「セレーネ…………ありがとう。」

セレーネの決意を知ったリィンは呆けたがすぐに気を取り直して頷き、そしてシグルーンを見つめて姿勢を正し、シグルーンに敬礼をして宣言した。

「――――シグルーン・カドール中将閣下。これより、リィン・シュバルツァー、リフィア皇女殿下の親衛隊に復帰させて頂きます……!」

「………11:30(ひとひとさんまる)。リフィア皇女殿下親衛隊所属リィン・シュバルツァーの復帰並びにルクセンベール伯爵の妹君、セレーネ・アルフヘイム・ルクセンベール嬢の参戦の意志をリフィア皇女殿下親衛隊副将軍シグルーン・カドールが確認致しました。……お二人の参戦はありがたいですが、功を焦って命を落とすような事はしないでくださいね?お二人ともメンフィル帝国にとって大切な存在なのですから。」

リィンの宣言に対してシグルーンも姿勢を正してリィンに敬礼をして答えた後優し気な微笑みを浮かべてリィンとセレーネに忠告し

「「はい……!」」

シグルーンの忠告に二人とも力強く頷いた。



こうして………メンフィル・エレボニア戦争にセレーネと共に参戦する事を決めたリィンは両親に見送られてシグルーン達と共にユミルを離れ、メンフィル帝国軍に復帰した。



そして2日後、メンフィル帝国軍は最初にユミル襲撃の主犯であるアルバレア公爵の首を取ってクロイツェン州の公都にしてアルバレア公爵家の城館がある”翡翠の公都”バリアハート市を占領する為に、まずはバリアハートと隣接しているケルディック地方とオーロックス地方を抑える事にし……”交易町ケルディック”とクロイツェン州領邦軍の拠点である”オーロックス砦”を同時に襲撃していた……!




 
 

 
後書き
今回の話のリィンの考えを知ってホントにカオスルートか!?という突っ込みがあるかもしれませんが、念の為に言っておきます。この話は光ルートや中立(またの名を正史)ルートでもなくカオスルートです……多分。カオスルートっぽくなるのは貴族連合側に中立ルート(運命が改変された少年、本編)以上の多くの死者が出たり、エピローグの際、一部の人物達がその後どうなったになると思います(冷や汗)ちなみに今更な話ですが光ルートは戦争回避成功ルートでした。後、この話は光と闇の軌跡の方なのでオズボーンは生きています。まあ、カオスルートですから閃Ⅱでのオズボーンが出てくるタイミングを考えたら、最終的にどんな末路になるかある程度推測できる方がいるかもしれませんねwwなお、リィンが戦争に参戦する事を決意したあたりからのBGMは閃Ⅰの”世の礎たるために”、閃Ⅱの”目覚める意志”、幻燐2の”荒野を渡りて”、空3rdか3rdEVOの”最後の選択”のどれかだと思ってください♪ 
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