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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第1話

ユミルを出発したリィン達は途中に襲い掛かってくる魔獣達を撃退しながら目的地に到着した。



~ユミル渓谷道~



「あ……石碑ですわ……!」

「と言う事はこの周辺に先程の咆哮の持ち主である魔獣がいるのか……」

石碑を見つけたセレーネは声を上げ、トヴァルは警戒の表情で周囲を見回した。

「……僅かだがあの石碑から魔力を感じるな。」

「ええ……今は収まっているようですが……」

石碑から魔力を感じたリウイの言葉にペテレーネは静かな表情で頷き

「………8年前の事件の原因でもある場所……俺にとって、どうしても因縁を感じる場所だな。」

「兄様…………」

そしてエリゼがリィンを心配そうに見つめているとその場に地鳴りがすると共に咆哮が聞こえて来た!

「近い……!」

「―――来たか。」

敵の気配を感じたリィン達が振り向くと何と崖の上に巨大な人形―――”魔煌兵”イスラ=ザミエルが現れた!



「何だ、あれは……!?貴族連合の”機甲兵”と若干似ているようだが……」

「ユミルにあんな存在がいたなんて……!」

「まさか先代史文明のゴーレムのような存在でしょうか……?」

「恐らくそうだろうな。しかも相当な力を持っているな。」

未知なる敵の登場にトヴァルとエリゼが驚いている中ペテレーネの推測に頷いたリウイは真剣な表情でイスラ=ザミエルを見つめた。するとイスラ=ザミエルは跳躍し、リィン達の前に着地した。

「――――全員、構えろ!これより目の前のゴーレムを撃破する!」

「はい……!来い――――ベルフェゴール!!」

「行きます……!」

そしてリウイの号令に頷いたリィンはベルフェゴールを召喚し、戦闘を開始した!



「―――――――」

戦闘開始早々敵はリィン達目がけて4本の腕にそれぞれ持つ剣を振り下ろした。

「嵐の力よ!――――ウィンディング!!」

「!?」

しかし敵の攻撃に対してリウイは魔剣に暴風を纏わせた魔法剣技で真正面から対抗し、更にリウイの膨大な魔力や闘気が込められた魔法剣技はあまりにも威力が凄まじい為敵の攻撃を弾くだけでなく態勢をも崩させた。

「伍の型――――光鬼斬!!」

「そこですわ―――スパイラルピアス!!」

敵の態勢が崩れるとリィンとセレーネがそれぞれ左右から強烈な一撃を叩き込み

「アークス駆動――――エアリアル!!」

「エニグマ駆動――――カラミティエッジ!!」

「深淵の魔槍よ、我が敵を貫け―――死愛の魔槍!!」

「燃え尽きなさい―――メルカーナの轟炎!!」

二人に続くようにオーブメントの駆動や魔術の詠唱を終わらせたトヴァルとエリゼ、ペテレーネとベルフェゴールが次々とアーツや魔術を放って追撃をした。



「――――――!!」

「「「!!」」」

「ぐっ!?」

「「キャッ!?」」

「うおっ!?」

リィン達の攻撃を受けた敵は反撃に自身の広範囲の周囲に雷の雨を降り注がせる技―――轟雷で反撃し、敵の反撃に対して回避や結界での防御が間に合わなかったリィンやエリゼ、セレーネとトヴァルはダメージを受けた。

「フェヒテンケニヒ!!」

「すごい―――ねこパンチ!!」

「!?」

一方回避に成功していたリウイとベルフェゴールはそれぞれ左右から強烈な突きと打撃を叩き込んで敵を怯ませ

「癒しの闇よ――――闇の癒風!!」

ペテレーネは広範囲の味方を傷を回復する治癒魔術でリィン達の傷を回復した。



「ありがとうございます!秘技―――裏疾風!斬!!」

ペテレーネに治癒魔術をかけてもらったリィンは反撃に疾風のような速さで敵に斬り込んで敵の背後に回った後追撃に斬撃波を解き放って敵に叩き込み

「追撃します!神聖なる刃よ、舞いなさい!」

リィンに続くようにリィンと戦術リンクを結んでいるエリゼが連接剣に神聖魔術の魔力を込めて剣舞を放つクラフト―――神聖剣舞で追撃した。

「雷光よ、我が右腕に宿れ!――――サンダーストライク!!」

「アークス駆動―――ラグナヴォルテクス!!」

二人の攻撃が終わるとセレーネは右腕に宿らせた雷光のエネルギーを解き放ち、トヴァルは高火力の雷を直線上に走らせる雷のアーツを解き放って敵にダメージを与えた。



「―――――――!!」

ダメージを受け続けた敵は自身の傷を回復すると共に身体能力を強化するクラフト――――超力招来を発動し

「―――――」

続けて自身の霊力(マナ)で氷のエネルギー球をリィン達を包囲するように複数召喚した。

「燃え尽きろ―――フレインバル!!」

「消し飛びなさい―――レイ=ルーン!!」

召喚された複数のエネルギー球だったが、リウイの炎を纏った魔法剣による斬撃とベルフェゴールの純粋魔術によるエネルギー波を受けると一瞬で消し飛ばされた。

「―――――」

一方敵は暗黒の霊力を剣に纏わせて斬撃を叩き込むクラフト―――アビスセイバーをトヴァルとセレーネ向けて放ち

「っと!」

「ハッ!」

襲い掛かる暗黒の斬撃を二人はそれぞれ大きく後ろに跳躍して回避した。



「二の型―――洸波斬!!」

「!?」

敵が攻撃を終えるとリィンが敵の背後から神速の斬撃波を叩き込み、後方からの奇襲攻撃を受けた敵はのけ反った。

「混沌の女神(アーライナ)よ、裁きの鉄槌を今ここに―――混沌の暗黒槍!!」

「魔力よ、爆ぜよ―――――アウエラの導き!!」

敵がのけ反るとそれぞれ詠唱を終えたペテレーネは頭上に具現化した膨大な魔力が込められた暗黒の魔槍を、エリゼは片手に集束した純粋魔力の球体をそれぞれ左右から同時に敵に叩き込んだ!

「――――!?」

高火力の魔術を左右同時に受けた敵は悲鳴を上げると共に怯み

「光よ、我が剣に宿れ―――エクステンケニヒ!!」

「すごい―――ねこアッパー!!」

「――――!?」

更にリウイの光の魔法剣とベルフェゴールの強烈なアッパーをその身に受けた事によって再びのけ反った。

「これで決めます!運命の門、 汝も見るか、高貴なる極光!!」

「こいつで止めだ!」

するとその時それぞれSクラフトを発動したセレーネは自身の背後に門を具現化させ、門から聖なる光の奔流を敵に襲わせ、トヴァルは空中に展開させた5つの巨大な魔法球を1つにした後魔法球の所まで跳躍し、そのまま両手を振り下ろして魔法球を敵目掛けて叩き落とした!

「マジェスティ・ゲイト!!」

「リベリオンストーム!!」

「―――――――!!??」

そして二人のSクラフトを受けた敵は地面に膝をついていた!



「はあっ、はあっ……!」

「わたくしたちの勝ちですわね……!」

「やったか……!?」

「―――いえ、まだです!」

仲間達が勝利に安心している中、ペテレーネが警告をすると敵の周囲に何かの”気”が纏った後敵は立ち上がり、凄まじい咆哮をした!

「ええっ!?」

「なっ!?まだ立ち上がるのかよ……!?」

未だ戦闘続行の様子を見せる敵の様子にセレーネとトヴァルは驚き

「………なるほど。どうやら奴は”例の力”を実戦で試すのに絶好の相手のようだぞ、リィン・シュバルツァー。」

「はい!神気――――合一!!」

リウイの言葉に頷いたリィンはその場で集中し、自らに秘められた”力”を解放した!



「兄様……」

「うふふ、ようやく扱えるようになったその”力”でサンドバッグにしてあげるのね♪」

力を解放したリィンの瞳は真紅の瞳になり、更に黒髪は銀髪へと変貌し、全身に凄まじい”気”を纏い、変貌したリィンを見たエリゼはリィンにとって”トラウマ”でもあった8年前の出来事を思い出して心配そうな表情で見つめ、ベルフェゴールは興味ありげな様子でリィンを見つめていた。

「――――大丈夫だ、エリゼ。陛下達に俺に足りなかったものを教えてもらって……ようやく、扱えるようになった。」

自分を心配しているエリゼに優し気な微笑みを浮かべて答えたリィンは普段扱っている太刀を鞘に収め、強敵が相手の時だけ扱うようにしている”慈悲の大女神アイドス”が宿った太刀―――神剣アイドスを鞘から抜いた!すると神剣アイドスから凄まじい神気や魔力がさらけ出され、神剣の神気や魔力をその身に受けた敵は思わず後ずさった。

「―――お前の”力”、見せてみろ、リィン・シュバルツァー。」

「はい!――――八葉一刀流中伝リィン・シュバルツァー―――参る!」

リウイの言葉に力強く頷いたリィンは一人で敵に向かい、戦闘を再開した!



「―――――!」

敵は自分に向かってきたリィン目がけて剣を振り下ろしたが

「遅い!四の型―――紅葉切り!!」

リィンは瞬時に回避し、更に反撃に敵の背後へと駆け抜けると同時に抜刀による斬撃を敵に叩き込んで敵の背後へと回り

「ハァァァァァ………弧影斬!!」

続けて太刀を鞘に収めた後抜刀による衝撃波を放って敵にダメージを与え

「二の型・改―――紅蓮剣!秘技―――八葉滅殺!オォォォォォ………!―――止めっ!」

更に太刀に炎の魔力のカマイタチを纏わせて電光石火の早さで敵に攻撃した後連携して全身の力を振りしぼり敵を乱れ切り、最後に強烈な斬撃を叩き込むと共に敵の正面へと駆け抜けた。



「――――――」

リィンによる一方的な攻撃を受けた敵は状況を変える為に再びクラフト―――轟雷を放ったが

「秘技―――裏疾風!斬!!」

リィンは再び電光石火の早さでカマイタチを纏った太刀を敵に叩き込んで敵の背後へと駆け抜けて襲い掛かる雷を回避し、更に追撃に斬撃波を叩き込んでダメージを与えた。

「二の型――――大雪斬!!」

敵に休む暇を与えないかのように次の攻撃に移ったリィンは跳躍して敵の腕目がけて静かなる気を纏わせた太刀を振り下ろした!膨大な魔力や神力を纏う神剣アイドスに加えてリィンの”力”が上乗せされた剣技は謎の鉱石でできている敵の装甲を易々と斬り裂き、斬り裂いた腕は地面に落ちると怪しげな光を放って消滅した。

「――――――!!??」

リィンの剣技によって四本ある腕の内半分である二本の腕を斬り裂かれた敵は悲鳴を上げるかのように咆哮を上げながら暴れていた。

「これで決める!無明を切り裂く閃火の一刀………はあああ………!」

するとその時リィンは太刀に闘気による膨大な炎を纏わせ

「はっ!せい!たあ!おおおお………!」

一瞬で敵に詰め寄って凄まじい早さの連続攻撃を敵に叩き込んだ!

「終ノ太刀―――――暁!!」

そして敵の背後へと駆け抜けたリィンが太刀を鞘に収めると炎の大爆発が起こった!

「――――――!!??」

八葉一刀流”七の型”の奥義でもあるリィンのSクラフト―――終ノ太刀・暁をその身に受けた事によってついにダメージに耐えきれなくなった敵―――イスラ=ザミエルは咆哮を上げながら消滅した!


「あ……!」

「おお、やったか……!」

「お見事です……!」

「兄様……!」

「うふふ、やるじゃない、ご主人様♪」

リィンの勝利にセレーネ達と共に喜んだベルフェゴールはリィンの身体の中へと戻り

「ふう…………」

リィンは解放していた”力”を抑えて元の姿へと戻った。

「倒し切るのに5分か。及第点といった所だな。あれ程の”力”ならば最低でも3分に凝縮できるはずだ。」

「……はい。まだまだ精進が必要な事が今回の戦いでよくわかりました。」

リウイの評価を聞くとリィンは静かな表情で頷いたが

「だが……お前は恐れていた”力”をようやく”実戦”で扱いこなした。八葉の剣士としてはまだまだだが、少なくても次代のメンフィル皇帝であるリフィアを守護する親衛隊の隊員として相応しい強さなのは俺が保証する。」

「陛下………勿体なきお言葉です。」

リウイの称賛を聞くと呆け、そして口元に笑みを浮かべて会釈をした。



「兄様……!」

「お見事でしたわ……!」

「よっ、お疲れさんだったな。」

「ええ、セレーネとトヴァルさんも。エリゼ、怪我はないか?」

「わ、私のことよりも兄様の方が……!リフィアや陛下達より話は聞いていましたけど……お身体の方は大丈夫なんですか?」

リィンに心配されたエリゼは逆にリィンを長年悩み続けた”力”を扱って戦ったリィンを心配した。

「はは、少し疲れたくらいさ。……この”力”と上手く付き合って行く為にも、とにかく精進あるのみだ。」

「兄様……」

「フフ、ユミルを騒がせた謎の魔獣の撃破もできましたし、ひとまずこれで一件落着ですわね。」

リィンの言葉を聞いて静かな表情でリィンを見つめているエリゼの様子をセレーネが微笑ましそうに見守って呟いたその時

「クスクス―――それはまだ早いんじゃないかしら?」

突如空から妖艶な声が聞こえて来た!



「え………」

「………―――上だ!」

声を聞いたペテレーネは呆け、声がどこから聞こえてきたかがわかったリウイは空を見上げ、リウイに続くようにリィン達が空を見上げるとどこからともなく飛んできた蒼い鳥が石碑に止まった。

「蒼い………鳥?」

「はじめましてになるわね、”灰”の”起動者(ライザー)”……いえ、まだ”試練”を乗り越えていないから”起動者候補”のリィン・シュバルツァー君。」

蒼い鳥にセレーネが呆けているといているとなんと鳥から女性の声が聞こえて来た。

「え――――」

「こいつは……」

「と、鳥が喋って……?」

「そ、それよりも……どうしてお兄様の名前を……」

「使い魔の類か。」

「恐らく使い魔を媒体にして私達に話しかけているのでしょうね。」

鳥がしゃべり、更にリィンの名前を呼んだ事にリィン達が驚いたり戸惑っている中リウイとペテレーネが冷静な様子で鳥を見つめていると、なんと蒼い鳥から”蛇の使徒”の第二柱―――”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダの幻影が現れた!



「!彼女は……!」

「―――結社”身喰らう蛇”の”蛇の使徒”の”第二柱”―――”蒼の深淵”か。」

クロチルダの姿を見たペテレーネは目を見開き、リウイは真剣な表情でクロチルダの正体を言い当てた!

「なっ!?」

「”結社”の最高幹部だと……!?」

クロチルダの正体を知ったリィンとトヴァルは驚いた様子でクロチルダを見つめ

「ふふ、どうやらその様子だとそっちにお世話になっているレオンが私達の事もしゃべったみたいね。まあ、でも”使い(グリアノス)”越しで失礼だけど一応自己紹介だけしておくわ。――――結社”身喰らう蛇”の第二使徒、”蒼の深淵”ヴィータ・クロチルダよ。」

「”蛇の使徒”と言う事はクロスベルの湿原帯で出会った”鋼の聖女”やノバルティスと同じ結社の最高幹部か……!その最高幹部が何故俺を知っている!?」

「そ、それに他にも意味深な事を言っていましたわよね……?」

「ええ……確か”灰”の”起動者”―――いえ、”起動者候補”、だったわね。」

妖艶な笑みを浮かべているクロチルダに見つめられたリィンは厳しい表情でクロチルダを睨み、不安そうな表情をしているセレーネの言葉に頷いたエリゼは真剣な表情でクロチルダを見つめた。



「ふふ、それを知りたければリィン君を”導く”使命を持っている魔女である”トールズ士官学院”の士官学院生であるエマ・ミルスティンを探しなさい。今もエマは私達の目から身を隠しながら君の事を必死に探しているはずよ。」

「なっ!?何でそこで”Ⅶ組”のメンバーが関係してくるんだ!?」

「”トールズ士官学院”……確か250年前に起こったエレボニアの内戦――――”獅子戦役”を終結させたドライケルス大帝が建てたエレボニアに古くからある伝統的な士官学院でしたよね?」

「ああ……そこに所属している士官学院生が何故俺を………」

クロチルダの話を聞いたトヴァルが驚いている中エリゼに視線を向けられて頷いたリィンは真剣な表情で考え込んだ。

「――――敵の戯言に耳を貸す必要はない。」

「リウイ様の仰る通りです。どんな”使命”なのかはわかりませんが、メンフィル帝国所属のリィンさんがエレボニアの事情に付き合う義理はありません。」

「陛下……ペテレーネ神官長……………――はい……!」

しかしリウイとペテレーネの助言を聞くと呆けた後気を取り直し、考える事を止めた。



「ふふ、確かにメンフィル所属のリィン君にとって”今は”何の関係もない状況だけど……リィン君には気の毒だけど、”幻焔計画”の成就の為にリィン君にエレボニアの内戦に関わってもらう為にも少々”強引な方法”を取らせてもらったわ。」

「”幻焔計画”………」

「恐らく”リベールの異変”の”福音計画”の時のような結社による新たな”計画”なのだろう。」

「そ、それよりもお兄様をエレボニアの内戦に関わってもらう為に”強引な方法”を取ったと言いましたけど………」

クロチルダの話の中にあった不穏な言葉が気になったセレーネは不安そうな表情で呟いた。

「本当ならリィン君の大切な妹を攫うつもりだったのだけどね。”英雄王”が傍にいる状況で攫うなんてさすがに無理だから、標的を二人の母親に変えたわ。」

「え――――」

「エリゼを攫うつもりだっただって!?しかも標的を俺達の母親に変えたって、まさか――――!」

クロチルダの話を聞いたエリゼは呆け、リィンは血相を変えてクロチルダを睨んだ。

「フフ……君のご想像の通りよ。まあ、もしかしたら一生懸命走れば、何とか間に合うかもしれないわよ?」

そしてリィン達に伝える事が終わったクロチルダの幻影は消えた後蒼い鳥――――グリアノスはどこかへ飛び去った。

「くっ……言うだけ言って……!」

「そ、そんな……母様が……」

「おい、グズグズしている暇はなさそうだ!」

「母さんが危ない……急いでユミルに戻ろう!」

「「は、はいっ……!」」

「ええ……!」

「ああ。」

そしてリィン達はユミルへと急行した。



~温泉郷ユミル・シュバルツァー男爵邸前~



その後ユミルに到着したリィン達はルシア夫人がいると思われるシュバルツァー家の屋敷に急行するとそこにはルシア夫人とセオビット、マーリオン、そして水の結界によって囚われの身となったアルティナがいた。

「母さん――――!」

「あ………無事に戻ってきたのですね、リィン、エリゼ。陛下達もご無事のようで何よりです。」

自分の所に急行してきたリィン達を見たルシア夫人は安堵の表情をし

「そ、それはこちらの台詞です!母様こそ、よくぞご無事で………先程”結社”の”蛇の使徒”が母様を攫うと言って、本当に心配していました……!」

「エリゼ……ふふ、危ない所をそちらのお二人が助けてくれたのです。」

安堵の表情をしているエリゼの言葉を聞いたルシア夫人は苦笑しながらセオビットとマーリオンに視線を向けた。



「ご主人様……ご指示通り………ルシア様の護衛を完遂しました……」

「フフ、後で褒めてね、父様♪」

「貴女方は……!」

「確か……リウイ陛下の使い魔のマーリオン様とシルフィエッタ様のご息女のセオビット様……でしたわよね?どうして御二方が……」

それぞれリウイに声をかけたマーリオンとセオビットを見たエリゼは驚き、セレーネは戸惑いの表情で二人を見つめた。

「俺達がシュバルツァー家の屋敷に入ったあたりから、何者かの視線を感じていたからな。そしてその視線はエリゼとルシア夫人に向けていた。さすがに俺達が傍にいるにも関わらずエリゼに危害を加えるような無謀な真似は普通に考えてしない。よってその何者かの狙いはルシア夫人に集中する。」

「そして父様は私達に彼女をアーツ―――ホロウスフィアで姿を消した状態で護衛するように命じたのよ。視線の正体のその娘もその鉄屑の光学迷彩機能でも使って姿を消していたようだからね。」

「……………」

「アーツを使って姿を消してまで護衛させるなんて……凄い念の入り用ですわね……」

「でもリウイ陛下の思慮深さのお陰で母様が誘拐されずにすんだわ……母様を守って下さり、本当にありがとうございます……!」

「フフ、さすがリウイ様ですね。」

「おいおいおい……!って事はまさかさっきの奴の退治の加勢を申し出たのも、男爵夫人を狙っていた”結社”の手下を炙り出す為だったんですか!?―――って、その娘は!?」

「―――その小娘を炙り出すのはあくまで”ついで”だ。………どうやらその小娘の事を知っているようだな?」

リウイとセオビットの説明を聞いたリィンは驚きのあまり口をパクパクさせ、呆けた様子で呟いたセレーネの言葉に安堵の表情で答えたエリゼはリウイ達に感謝の言葉を述べ、ペテレーネは微笑み、トヴァルは信じられない表情で声を上げた後アルティナの容姿を見ると驚き、説明を補足したリウイはアルティナを知っている様子のトヴァルに視線を向けた。

「………クラウ=ソラス………」

一方マーリオンによる水の結界に囚われたアルティナはセオビットとマーリオンとの戦いによって敗れ、残骸となったクラウ=ソラスを呆然とした様子で見つめていた。

「は、はい……猟兵達がアルフィン皇女殿下を連行しようとした際突然”唄”が聞こえてきたんですが……その”唄”の影響によって猟兵達は操られてアルフィン皇女殿下を置いてユミルから去り、そしてその人形を操る子供が突然現れて皇女殿下を連れ去っていったんです。」

「彼女がアルフィン殿下を…………」

リウイの質問に答えたトヴァルの話を聞いたルシア夫人は複雑そうな表情でアルティナを見つめていた。



「な―――――アルティナ!?」

するとその時グリアノスが上空から現れるとクロチルダの幻影が現れた。

「クロチルダ様……申し訳ありません。ご指示通り、第2目標―――ルシア・シュバルツァーを確保しようとした際、アーツ―――ホロウスフィアもしくは光学迷彩機能を使って姿を消していた第2目標の護衛に迎撃され、敗北し、更にクラウ=ソラスは破壊されました。………任務失敗です。また、クラウ=ソラスが破壊され、わたし自身が囚われの身となった為、今後の任務の遂行は不可能と判断します。」

「何ですって!?――――!!貴女は……”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”の一人――――”紅の殲滅姫(クリムゾン・ルインプリンセス)”セオビット・ルアシア!クッ……私の策が読まれていたというの!?」

アルティナの報告を聞いて血相を変えたクロチルダはクラウ=ソラスの残骸、セオビットに気づくと目を見開いて驚き、そして自分の策が読まれていた事に信じられない思いをしていた。

「フッ、俺がこの郷に現れた時点で貴様の浅はかな考えの策が崩れ去っている事を悟り、その小娘を素直にユミルから撤退させておくのが”最善の判断”である事もわからないとは……それでよく結社の最高幹部が務まるものだな?”外法狩り”―――いや、”千の護手”によって暗殺された”白面”でももう少しまともな判断をしたと思うがな。」

「………ッ!……………”英雄王”、私と”取引”をしてもらえないかしら?」

リウイに嘲笑されたクロチルダは悔しそうな表情で唇を噛みしめたがすぐに気を取り直してリウイに話しかけた。



「え………」

「結社の最高幹部が”英雄王”相手に”取引”だと!?一体何を考えていやがる!?」

クロチルダの提案にペテレーネが呆けている中トヴァルは厳しい表情でクロチルダを睨んだ。

「………捕えたアルティナをこちらに返してもらう事と、彼―――リィン・シュバルツァー君をエレボニアの内戦に関わらせる事よ。」

「え………」

「な――――」

「に、兄様をエレボニアの内戦に……!?」

「ど、どうしてお兄様を他国の内戦に関わらせないといけないんですか!?」

クロチルダの取引内容を知ったルシア夫人は呆け、リィンは絶句し、エリゼとセレーネは信じられない表情で声を上げた。

「……”幻焔計画”での私の”使命”の一つ―――それは現代の”騎神”同士の戦い――――クロウが駆る”蒼”とリィン君が駆る予定である”灰”の戦いを見守る事よ。」

「クロウ――――エレボニア全土でテロ活動を行い、”西ゼムリア通称会議”の時にも”鉄血宰相”の命を狙ってオルキスタワーを襲撃したエレボニアのテロリスト――――”帝国解放戦線”のリーダー”C”であるクロウ・アームブラストか。」

「……………」

クロチルダの説明の中から出たある人物の名前を聞いたリウイは静かな表情でその人物の情報を呟き、トヴァルは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



「ふふっ、既にクロウの情報をそこまで掴んでいるなんて、さすがはメンフィル帝国といった所ね。」

「世辞は不要だ。仮に俺がその取引内容に応えたとしたら、貴様は何を見返りにするつもりだ。」

「それは今後ユミルを含めたエレボニアと接しているメンフィル帝国領に貴族連合に手を出させない事よ。これでも私は”貴族連合”の”裏の協力者”として”主宰”であるカイエン公に重用されている身でね。カイエン公も私の要請には基本応えてくれるし、いざとなれば暗示で貴族連合にメンフィル帝国領に手を出させない事を命じさせるわ。勿論内戦に関わったリィン君も内戦が終結―――いえ、”蒼”と”灰”の決戦が終わった後五体満足でそちらに帰す事を約束するわ。”貴族派”と”革新派”、どちらが勝ってもね。」

「……………」

「勝手なことを………!」

「お兄様………」

(そうまでして、何で”結社”はリィンを内戦に関わらせたがるんだ……?)

「……その口ぶりですと貴女達”結社”はエレボニアの内戦の勝敗に興味はないのですか?」

クロチルダの説明を聞いたリィンは真剣な表情で黙り込み、エリゼは怒りの表情でクロチルダを睨み、セレーネは心配そうな表情でリィンを見つめ、トヴァルは厳しい表情で考え込み、ある事が気になったペテレーネは真剣な表情でクロチルダに問いかけた。

「ええ、我々”結社”の”幻焔計画”の目的の一つは”蒼”と”灰”の勝負の”舞台”を導く事。”蒼”と”灰”の勝敗以外は興味はないとカイエン公にも伝えて了承してもらっているわ。………内戦が起こっているエレボニアの領地と接しているメンフィルの民達の安全を確保できる事もそうだけど他国の貴族であるリィン君をエレボニアの内戦に関わらせた事で、エレボニアに対して有利な交渉もできるし、更に”騎神”も一体手に入る事になるわ。メンフィルにとっても損ではない話でしょう?」

「…………………」

クロチルダに問いかけられたリウイは少しの間目を閉じて黙り込んでいたがやがて目を見開いて口を開いた。



「―――随分と舐められたものだな。」

「え…………」

リウイの言葉を聞いたクロチルダは呆け

「メンフィルは”光と闇の共存”を謳う国。当然”闇”の勢力―――”結社”のような裏社会に生きる者達とも時には協力し、互いの利益の為に利用し合う事もある。だが……民達の身の安全や国の益と引き換えに同胞を―――ましてやまだ成人もしていない同胞を裏切り、敵に売り渡すような真似をする程落ちぶれてはいないッ!」

「………ッ!?」

膨大な覇気をさらけ出したリウイの覇気を受け、幻影であるにも関わらず、リウイの覇気に呑まれて息を呑んだ。

「陛下………」

「リウイ様……」

一方その様子を見守っていたリィンは呆け、ペテレーネは微笑んだ。

「―――失せろ。メンフィルは”誇り”すら持たない薄汚い犯罪者共と取引はしない。そしてメンフィルが関わった時点で貴様ら結社の下らん”計画”とやらは崩壊した事を思い知れ。」

リウイは魔剣の切っ先をクロチルダに向けてクロチルダを睨んで宣言し

「くっ………!」

クロチルダは唇を噛みしめて幻影を消し、幻影が消えるとグリアノスはユミルから飛び去って行った――――









 
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