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ソードアート・オンライン∼稲妻の狩人と金色の狼∼

作者:村雲恭夜
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第一剣 アルゲード

 
前書き
本編のスタート! 

 
ドスジャギィとの戦闘を終え、俺は疲れていたこともあり、転移結晶でジンオウガと共に五十層《主街区》アルゲードに転移し、そこにあるエギルの店の前に立っていた。
アルゲードの街を簡潔に表現するなら、《猥雑》の一言につきる。
はじまりの街に在るような巨大施設はなく、広大な面積に無数の隘路が重層的に張り巡らされており、様々な店が軒を連ねている。
実際、アルゲードの裏通りで迷うプレイヤーも続出している。ここに来てから半年の俺だが、ジンオウガが居なければそのプレイヤー達と同じになっていただろう。
「いつ来ても騒がしいな……」
そう口に出すが、この雰囲気は結構気に入ってたりする。現実では家から余り出なくなっていた事もあり、割と面白かったりする。
「それより、中に入らんのか?」
ジンオウガに催促され、俺は扉を開ける。
「うっす、エギル」
「よお、ライトじゃねぇか」
ここの店の店主、エギル。彼の人柄は会話しなければまず分からず、その顔は失礼ながら悪役のそれにしか見えない。
「今回の戦利品を持ってきた、買い取りと、後必要なアイテムの補充を頼む」
「ライトはお得意様だからな、悪どい真似はしませんよっ、と……」
言いながら、エギルは俺の出したトレードウインドウを覗きこんだ。
「今回もまぁこんなに売りに出して来るなぁお前......別に金とかに困ってねぇんだろ?」
「まぁ、何処かの買い取り屋のお陰でな。ただ、俺の武器はこいつだけって決めてるし、在っても使わねぇもんばかりだからな。安く叩いても良いぞ、どうせ中層の剣士クラスの育成に回すんだろ?」
「知ってたのかよ......人が悪いなお前さんは」
エギルはそう言うと、トレードウインドウを操作し、金額を入れるとトレードが完了する。
「サンキューエギル」
「Thank Youと言いたいのは俺なんだがな......。ミザール!ライトの奴が来たから上がるついでに物を持ってきてくれ!」
エギルが叫ぶと、近くの棚から見慣れた顔が箱をもって現れた。
「ライト君、お帰り!」
「よ、今日も稼いでたかミザール?」
箱をカウンターに置いてエプロンを取るのはミザール、幼馴染みであり......《攻略組》の一人、狙撃槍のミザールと呼ばれる俺が知る限り最強のゲーマーだ。
「まぁね、槍の代金集めないとだし。この世界の槍って投げるのに特化してないから苦労するよ......」
「そもそも槍は投げるものではなくて突くものなんだけどな......」
呆れながらエギルに代金を払うと、道具を全て適当にストレージにぶちこむ。
「ね、今日のご飯は何!?」
「んー......考えてねぇな。ジンオウガ、なに食いたい?」
とジンオウガに問うが。
「なるべく肉だ」
とまぁこの始末である。肉しか基本食わねぇのかお前。
すると、店のドアが開き、誰かが入ってきた。
「あれ、ライトじゃねぇか」
入ってきたのはキリト。同じく《攻略組》メンバーの一人で、俺が知る限り最強に近いソロプレイヤーだ。
「お、キリト。攻略からこっちにそのまま来たのか」
「キリト君いらっしゃーい」
キリトに俺達が言うと、手を上げて反応する。
「今回も疲れたけど、良いのが帰りにドロップしてな、エギルに売ろうかと」
「へぇ、どんなのだ?」
俺は聞くと、キリトはストレージを可視にして俺達に見せる。
「おいおい、S級のレアアイテムじゃねぇか」
「《ラグーラビット》といやぁ、最高級食材じゃん。現物は初めて見るな......」
「キリト君のラックすごっ......」
俺達の反応を見て、キリトは言う。
「料理スキルは上げてないから、食べようとしても変になるだけだし、それにこんなもん使えるほどスキルあげてる奴なんてそうそう居ないだろ?だから売りに来たんだよ」
「そうだったか。......涎を垂らすな阿呆」
ミザールを叩いて正気に戻すと、キリトに言う。
「まぁ、そんなキリトにお願いなんだが。明日の攻略手伝ってくれないか?」
勿論ミザールもと付けると、キリトは怪しげに俺を見る。
「急にどうしたんだ?何時もはそこの狼と一緒に行くだろ?」
誰が狼......あ、狼だと言うジンオウガの声はさておき、俺はキリトに理由を言う。
「お前も聞いてると思うけど、《軍》が近々攻略しに来るって話をな......。最近の奴等はちょっと危ういし、先にボス部屋見つけて《攻略組》のレイドを早めに打診して置きたくてさ」
「ああ、その噂なら俺も聞いたな。......まぁ了解した、お前が居るなら変なピンチにはならないだろうし、何より狙撃槍のミザール様が居るもんな?」
「その二つ名で私を呼ばないでよキリト君!!」
キリトを殴ろうとするミザールを拘束して、俺はエギルの店を後にした。


■■■


自宅に付くと、ミザールが椅子に座って憤慨する。
「もー、だからあの二つ名は嫌なのにぃ......」
「お前が遠くからクリティカルポイントに槍を投げるのが悪い......」
装備を外して私服になると、椅子に座ってストレージの整理をする。
「なぁ、新羅」
「んー?」
現実での名を呼ぶと、ミザールは反応してこっちを見る。
「もしよ、この世界がクリアされたら......どっか出掛けるか?」
「どっかって何処?」
俺は少し考えると、ジンオウガを頭に乗せながら言う。
「お前の好きなとこ。まぁお金の心配は在るけど、お前の行きたいところなら何処でも連れてってやるよ、約束する」
そう言うと、ミザールは笑って言う。
「じゃ、死亡フラグへし折ってでもクリアしないとね、この世界」
「建てた記憶は無いのだがなぁ......」
俺は笑いながら言うと、キッチンに入って食事を作り始めた。 
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