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機動戦士ガンダム SEED C.E71 連合兵戦記(仮)

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間章 2話 燻る火種

C.E 53年 大西洋連邦領 カリフォルニア州 サクラメントでファーストコーディネイターとして知られるジョージ・グレンが、ナチュラルの少年に射殺されるという事件が起きた。
ジョージ・グレンは、この直前にプラントに居住するコーディネイター達の地球産業と人類社会への貢献、そしてナチュラルとコーディネイターの融和について講演した後であった。
彼を殺害した少年は、宇宙飛行士を目指していたもののコーディネイターの誕生によって夢を断たれ、その後も、コーディネイターの活躍により、望んでいた職業に就けなくなったといったことを経験し、コーディネイターとして生まれなかったことを悲観視したことがその動機であり、事件は少年の単独犯行であると大西洋連邦警察は判断した。

この少年について、同情論を訴えるブルーコスモス系団体とコーディネイターに対する憎悪犯罪であるとして厳罰を訴える人権団体との間で裁判期間中に抗争が起きた。

長い裁判を経て、最終的に少年は、犯行時に正常な精神状態ではなかったという複数の精神科医の結論を理由に無罪判決が下されたが、これには、ブルーコスモスの暗躍が有力視されている。

また暗殺には、ブルーコスモスがバックに存在したという説から、コーディネイターの優位性を訴えるコーディネイター内部の過激派を否定していたグレン氏を憎むコーディネイターの活動家が黒幕だった、大西洋連邦の特殊部隊がバックにいた、影響力を失った宗教団体や原理主義過激派の仕業だった等、少年の背後関係が明らかにされなかったこともあり、事件の黒幕を巡って百家争鳴する説が生まれた。

そしてその翌年のC.E 54年 本来なら、34年から大西洋連邦 ユーラシア連邦 東アジア共和国の3か国のプラント理事国の主導でL5宙域に建設されていた工業スペースコロニー群 プラントの居住可能スペースコロニーが目的の過半数を超えたという人類の宇宙における偉業で有名になるはずだったこの年は、恐るべき疫病とその犠牲者の血で後々に知られることとなった。

C.E 54年に全世界で猛威を振るった伝染病 S2インフルエンザ(S1は再構築戦争期に発生 約1000万人が亡くなったとされる)は、再構築戦争の被害が回復していなかった東南アジア、アフリカ等を中心に、多くの人間を死に至らしめた。
最初の感染者が現れた地域は、諸説あるものの、インドと中国南部が有力視されている。
このS2インフルエンザは、全世界に数ヵ月で広まり、医療設備の整った地域でも、数多くの犠牲者を出した。

だが、遺伝子操作によって生み出されたコーディネイターは全く犠牲者が出なかった………この事実は、いずれ、コーディネイターがナチュラルに取って代わるのではないか?というコーディネイター脅威論拡大の原因となった。

S2インフルエンザ自体は、当時、ジョージ・グレンを中心とした科学者たちによって設計され、34年から建設が開始され始めた工業スペースコロニー群、プラントのコロニーの一つであるフェブラリウス市 で、C.E 55年10月29日にワクチンが開発され、その後、地球でもワクチンが大量生産されたことで終結した。

人々は、ペストやスペイン風邪、エボラ出血熱、そして再構築戦争期のS1インフルエンザを彷彿とさせるこの恐るべき病原菌の脅威から守られたのである。

だが、薬学ノウハウがナチュラルに比べて劣っているコーディネイターがワクチンを開発(誤解されているが、S2インフルエンザワクチンの開発には、ナチュラルの科学者も参加している。)したという事実は、コーディネイターの犠牲者がゼロだったということと合わせて、53年にファースト・コーディネイター ジョージ・グレンがナチュラルの少年に暗殺されたことに対する報復ではないのか?という陰謀論も出始めた。

各地でコーディネイターとナチュラルの間で対立が生じ、コーディネイターに対するテロが発生した。
この時期に起こった事件では、大西洋連邦のバトンルージュ病院襲撃事件、メトロポリタン歌劇場銃撃事件、ユーラシア連邦 タシュケントのリンチ事件、犠牲者100人を出したアフリカ ナイロビでの爆弾テロ事件等が有名である。

多くのコーディネイターとそのナチュラルの家族達は、反コーディネイター感情が比較的少ない太平洋のオーブ連合首長国やスカンディナヴィア王国に移民するか、当時、建設が進められていたプラントに移住することとなった。
これが、プラントが実質上、コーディネイター居住区となる要因となった。

この時期、プラント建設に従事していたコーディネイターの権利向上のために結成されていた政治団体 Zodiac Alliance of Freedom Treaty=自由条約黄道同盟(ザフト、軍事部門を指す際には、黄道同盟よりもこの名称が用いられることが多い)が勢力を拡大し、プラント理事国からの独立を唱え始める。

当初、ザフトは、旧プラント理事国から非合法組織と見なされており、地下組織として活動していた。
また、サボタージュ活動やデモのみならず非合法活動にも手を染めており、理事国の駐留軍を占領者と非難するパンフレットをドローンを利用して散布する、理事国の駐留軍や統治に関係する人物の誘拐、地下工場(プラントの砂時計型コロニーを含め、大抵のスペースコロニーには、内側の居住エリアの地表部だけでなく、地上の地下に当る外壁エリアが存在している)での銃火器密造と言った行為を行っており、一部の武闘派は、駐留軍との銃撃戦さえ繰り広げた。

更にこれらのザフトの活動に反発する地球のブルーコスモスは、プラント内に理事国パスを用いて旅行者に紛れ、テロ活動を行い住民や施設に被害を与えた。

駐留軍は、コーディネイター国家建設、プラントの独立を叫ぶザフトも、蒼き清浄なる世界の為に、というスローガンを掲げるブルーコスモスも共にテロリストとして摘発していた。
だが、駐留軍や理事国関係者を狙うザフトとコーディネイターを狙ってテロをするブルーコスモスでは、優先順位は明らかに前者に偏っていた。

更に駐留軍内部にブルーコスモスのシンパがいたことや理事国の政治家の傲慢な対応もあってプラントに居住する市民の対理事国感情は悪化していった。

C.E 57年 度重なるプラント内部での騒乱と黄道同盟主導のサボタージュ活動とブルーコスモスのテロ活動に伴う経済的損失を憂慮した理事国は、プラントに自治組織としてプラント自治評議会を設立した。この時、黄道同盟は、プラント内部の政治団体として合法化された。


ザフトが合法化されるとプラント自治評議会(後のプラント最高評議会)に後のプラント指導者となるシーゲル・クライン、パトリック・ザラを初めとする黄道同盟メンバーが次々と当選した。

またプラント理事国も他コロニーの開発事業の影響でコストカットを迫られており、プラントにある程度の自治権を認め、駐留軍の規模縮小を行った。

だが、プラント市民とザフト関係者の多くがこの監視付きの自治に満足することはなかった。

ザフトは、独立に向けて、招聘したコーディネイター傭兵(遺伝子調整が上手くいかなかった等の理由で失敗作として捨てられたコーディネイターを引取り、軍事訓練を施す組織サーカスや軍事企業によって作られた戦闘用コーディネイターがその主体)を教官として党員に軍事訓練を施した。

その一方で、プラント理事国の強大な軍事力(大西洋連邦だけでも当時4個宇宙艦隊を保持しており、他国も、それに呼応して宇宙軍拡を進めていた)に対抗すべく、63年に宇宙開発用作業機器として開発されていた宇宙機器「モビルスーツ」を改良し、機動兵器化する研究を始めた。

当初、彼らは、この兵器をプラント内部と周辺宙域でのゲリラ戦用のパワードスーツとして研究していたが、同時期に宇宙用の機動兵器「モビルアーマー」の第1号 ミストラルが大西洋連邦で開発され、更に各国がモビルアーマーの研究開発を進めたことが、その研究を汎用機動兵器にまで昇華させる切欠となった。

そして、C.E 65年にその研究は、モビルスーツ試作第1号「ザフト」の開発として実を結ぶこととなる……

C.E 68年、プラント自治評議会議長にシーゲル・クラインが就任した。

なお、この当時、地球でもコーディネイター過激派と思われるテロが頻発し、ブルーコスモスの盟主に、ブルーコスモスの創始者の一族でもあるアズラエル家当主となったばかりの24歳の若手 ムルタ・アズラエルが就任した時期でもある。

12月には、プラントが南アメリカ合衆国の企業から食糧の不正輸入を図り(当時、プラント以外の従来型コロニーや月面都市では、限定的ながら、食糧の生産が行われていたが、プラントはその形状が農業生産に向いていないとされ、食糧生産が禁止されていた。)食糧を輸送する途中だった輸送船マンデルブロー号が大西洋連邦宇宙軍の静止を振り切って逃亡を試み通信衛星に衝突して大破するという事件(マンデルブロー号事件)が起こった。

シーゲル・クラインは、食糧の自主生産のため、69年、プラントはユニウス市の7〜10区(ユニウスセブン〜10コロニー)を穀物生産プラントに改装した。

この改装にユニウス市が選ばれたのは、元々ユニウスは、宇宙での植物栽培研究や農林水産学の為の研究設備が存在していたため、食糧生産用に短期間で転用することができると考えられたからであった。

これらのプラント自治政府によるプラントを私物化するかのごとき行動にプラント理事国の世論は、激昂した。

地球にいるプラント理事国の国民からすれば、今まで資金や食糧、資源を提供して貰っておきながら、宇宙軍が駐屯(各国宇宙軍は、プラントに迫るデブリや隕石の処理も行っていた)しているだけである。
………にもかかわらず、勝手に工業生産ノルマを圧政だと主張し、プラントを改装し独立を図るなどというのは、恩知らずの泥棒以外の何物にも見えず、当然ともいえた。

この世論を受けてプラント理事国は、実力行使してでも排除すると、駐留宇宙艦隊を中心に編成した鎮圧部隊を投入した………この時点では、誰もがプラント理事国が鎮圧を成功させると見ていた…

だが、現実は、それらの予想を大きく覆した。

宇宙艦隊は、改装作業用の作業機器とみられていたモビルスーツによって半数が撃破され、残りの艦隊は近くの駐留拠点に退却させられてしまうという結果に終わったからである。


これに衝撃を受けた者たちの中で未来を見据えていたのは当時、月面最大の軍事拠点 プトレマイオス基地の宇宙艦隊に所属していたドゥエイン・ハルバートン大佐の派閥とブルーコスモスであった。

ハルバートン大佐は、鎮圧艦隊敗北の原因を鎮圧艦隊がスペースコロニー群を背にしているザフト軍に対してビームによる艦砲射撃が行うことが出来なかったことであると判断し、今後、高威力兵器の仕様が限定されるスペースコロニー周辺、内部での戦闘ではMSが威力を発揮すると考え、大西洋連邦軍もMS開発すべきであると提唱した。

ブルーコスモス、特に盟主ムルタ・アズラエルは、まだMSを開発せずとも、従来の機動兵器 MAによる一撃離脱戦法で対処可能であると判断していた。(ちなみにMAの元祖は空軍時代のジョージ・グレンがテストパイロットとなった宇宙戦闘機である。)

69年9月、大西洋連邦軍の試験型MA TS-MA2mod.00 メビウス・ゼロを発展させた TS-MA2 メビウスがロールアウトした。このモビルアーマー メビウスは、MA共通の弱点である運動性を補うために2基のメインスラスターユニットを稼働させることで迅速な方向転換を行うことが可能であった。

対モビルスーツ戦を初めて視野に入れて開発されたMA メビウスは、アズラエル財団傘下の軍事企業を中心に大増産が開始され、他のプラント理事国の艦隊にも供与された。

これらの動きにプラント自治評議会を改称したプラント最高評議会は、パトリック・ザラを初めとする武闘派は、直ちに独立宣言を発表すべきだと、評議会とプラント市民に訴えた。
だが、自由条約黄道同盟時代からの盟友であり、プラント最高評議会議長のシーゲル・クラインは、時期尚早であると判断していた。

この当時、ザフト軍の装備は、モビルスーツを除けば、輸送艦改造の武装艦や駐屯艦隊からの鹵獲品が大部分で、仮設武装艦の装備は、デブリ除去用のミサイルとレーザー砲のみで到底艦隊戦など出来るはずもなかった。

後にザフト軍の主力艦艇として活躍するナスカ級、ローラシア級は、近い将来、火星圏、木星圏での宇宙開発のために建造が進められていた宇宙船を転用したもので、プラントの宇宙船ドックで建造が進められていたが、まだ2隻が就航したばかりであった。

流石に、まだプラント市民の世論の大部分も理事国の強大な艦隊と戦争により、生活が脅かされることへの不安からこの時点では地球と本格的に武力衝突を望んではいなかった。

C.E 70年 2月5日、プラント理事国とプラントの間で緊張が高まる中、国際連合の仲介で、月面都市コペルニクスでプラント理事国とプラントとの間で会議が開かれることとなった。

だが、テロによってその会議は、血で染められた… 会議が行われるはずだったコペルニクスのビルで爆弾が炸裂、会議参加予定の理事国側代表と国際連合事務総長を含む国際連合首脳陣は全員死亡し、難を逃れたのは、シャトルが途中で故障したために付近の月面都市に入港していたシーゲル・クラインらプラント代表のみであった。

C.E 70年 2月7日 大西洋連邦を初めとするプラント理事国は、コペルニクスの爆弾テロを「コペルニクスの悲劇」と名付け、プラントを不法占拠するザフトによるテロと断定した。

更に、これを地球各国とそれに属するナチュラル、コーディネイターに対する宣戦布告であると見做すと発表、先の事件で事実上崩壊した国連に替わって、プラント理事国を中心とした新たなる国際調停機関 地球連合が創設された。

加盟各国軍は、地球連合軍として、軍服、戦艦から小銃に至るまで装備の共通化が進められた。

各国宇宙軍にも、大西洋連邦の最新鋭機 メビウスが供与されはじめ、大西洋連邦では辺境資源衛星、コロニー守備軍を除く全ての宇宙艦隊にメビウスが装備されることとなった。

 
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